ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
(相手はガンダム、僕にやれるか……?)
見える手近な防衛砲台を狙って、マシンガンを連射。
戦力を確実に削りながらも、僕の意識はやはりガンダム・ピクシーに向いている。
「冗談だろ? 直撃だぞ!?」
僕の攻撃がヒットしたというのに、即座に回避運動を取ったピクシーを見たハガー曹長の叫びが響く。
そう、そうだ。今、僕の攻撃は確かに直撃した。それでも、あのガンダム・ピクシーは平然と動いているのだ。
「あの機動性でマシンガンを受け付けない防弾性能を持ってるっていうの!?」
「しかし、攻撃は当たった。やはり、奴はまだあの機体の操縦に慣れていないようだ」
細身で軽装甲といっても、あのピクシーも本家ガンダムと同じルナ・チタニウム製だ。生半可な攻撃が通じないことはわかっていた。
ただ、それでも……今までの経験を考えると、ザクならばかなりのダメージを負っていてもおかしくない攻撃の直撃を平然と耐えられてしまうと、心にくるものがある。
そりゃあ、初めてガンダムと戦った時のシャアも「連邦のMSは化物か!?」と叫びたくなるだろう。
現在進行形であの時の赤い彗星の気持ちを理解させられている僕は、あのピクシーへの対策を必死に考えていく。
(今の僕の手持ち武器はマシンガンとヒートホーク、クラッカーが二つ……遠距離からの有効打は一つもない。だったら接近するしかないけど……やれるか?)
マシンガンよりも強力な武装であるマゼラトップ砲やバズーカは、今の僕の手元にはない。
仮に持っていたとしても、多分弾速の遅いバズーカは当たらないだろう。
ガンダムへの有効打になりそうな武装といえば、ヒートホークしかないが……ゴリゴリの接近戦用機体であるピクシーに近付くというのは、リスクがあり過ぎる。
ただ、それでもやるしかない。08小隊の隊長も言っていた、「守ったら負ける、攻めろ!」の精神で挑むしかないのだ。
「大尉! 接近戦を仕掛けてみます! 死んだら線香の一本でも供えてください!!」
こういう役目ってやられ役の噛ませ犬が担うよなと思いながら叫んだ僕は、ヒートホークを手にピクシーへと突っ込んでいく。
二本のビームダガーを逆手に持った特徴的な構えのガンダム・ピクシーへと斧を振り下ろせば、相手は大きく後方へとジャンプしてその一撃を躱してきた。
(速っ! でも、動きがオーバーだ。やっぱりこいつ、操縦に慣れてな――)
回避運動にしては大袈裟なジャンプをしたピクシーを見た僕は、先のマシンガンを回避し切れなかった場面も含め、相手が機体の操縦に慣れていないことを確信する。
どうにかその隙を突ければと考えた途端、離れた位置にいたピクシーが一気にこちらへと突撃してきたではないか。
「うおおおおおおっ!?」
ギリギリで……本当にギリギリのところで、繰り出されたビームダガーでの一撃をヒートホークで受け止める。
相手も防がれると思っていなかったのか、動きが完全に止まったところで距離を取るために繰り出したキックで細身のピクシーを蹴り飛ばしながら、僕はコックピットの中で荒い呼吸を繰り返していた。
(危ない……! 信じられない機動性だ……!!)
頭ではわかっていたが、一瞬でも気を抜いたらやられる。身構えている間は死神は来ないと誰かが言っていたが、気を抜いた途端に首筋に鎌を当てられた気分だ。
今、僕は、これまでの戦いの中で最も死の予感を感じ取っている。心臓の鼓動が初陣の時よりも早鐘を打っていることを感じた僕が、ごくりと息を飲んだ瞬間だった。
「大尉、新手です! 別のMSが出てきました!!」
「なんだと!?」
そんなサキ軍曹の叫びにレーダーを確認すれば、新たに三機のMSの反応が近付いていることがわかった。
そちらへと視線を向けた僕が目にしたのは、オレンジ色の装甲が特徴的なジムだ。
「新手かよ!? 新型一機だけでも手一杯なのに、冗談じゃねえぞ!?」
多分あれは、陸戦型ジムというやつだ。連邦軍が最初期に生産し始めたMSで、その性能は通常のジムよりも高かったはず。
何よりの問題は……と考えたところで、マシンガンを放ったサキ軍曹の声が響く。
「こいつも攻撃が効かない!? どれだけ硬いのよ、連邦のMSは!?」
そうだ。普通のジムは生産性を重視してややグレードダウンした素材が使われているが、この陸戦型ジムの装甲はガンダムと同じルナ・チタニウム製だ。
しかもピクシーと違って盾まで持っているから、防御性能だけでいえばこちらの方が上ということになる。
唯一の救いは、武装がマシンガンであるということ。これでビームライフルなんて持ち出された日には、絶望以外の何でもなかった。
僕に代わり、ピクシーの相手をしてくれていたブーン大尉は、ガンダムタイプと互角の戦いを繰り広げながら指示を飛ばしてくる。
「こいつの相手は俺に任せろ! お前たちは、新手を頼む!!」
「了解……!!」
今、ピクシーには遠距離武装がない。そのおかげで近距離戦が得意なイフリートが、ガンダムタイプに渡り合えている。
しかし、ここに支援攻撃を行う陸戦型ジムが参加してしまえば、話が変わってしまう。こちらが優位性を失う前に、あの小隊を叩かなくては。
「ダメだ、攻撃が効かない! や、やられる……っ!」
「サキ軍曹、下がってください! こいつらは、僕が!!」
マシンガンの弾を撃ち尽くしても平然としている三機のジムが、サキ軍曹に狙いを定める。
彼女の窮地を救うため、僕はG型ザクのバーニアをフルスロットルで吹かし、攻撃を仕掛けた。
ヒートホークを握っていて良かった。相手よりも早く、接近戦に持ち込める。
マシンガンを撃つジムたちを横目に、G型ザクの機動性を活かして大きく回り込むように接近した僕は、こちらを向いたMSの胴体を狙って一気に刃を叩き込んだ。
「性能はザクを凌駕しているが……動きは素人だ! これなら……MSの性能の差で勝敗が決まるわけじゃないってことを見せてやる!!」
決して気を抜いているわけではない。ただ純粋に、これまで相手をしてきたフェデリコたちと比べれば、このジムのパイロットたちの腕前は素人同然だ。
というより、実際に素人なのだろう。連邦のMSの生産と配備は始まったばかり、乗り手たちはまだ操縦に慣れていないのだ。
一つ、振り抜いた斧で陸戦型ジムの上半身と下半身を泣き別れにした僕は、即座に次の目標に狙いを定める。
至近距離にまで近付かれたというのに、必死にマシンガンの銃口を向けようとしてくるそのジムの腕を落とし、続けてコックピット部分にヒートホークを叩き込んだところで、最後の一機へと集中。
ようやく近接武器であるビームサーベルを引き抜こうとした相手であったが、その隙にゼロ距離まで詰めた僕はマシンガンを連射した。
流石のルナ・チタニウム合金も超至近距離からの乱射を耐え切ることはできず、最後のジムも煙を上げてその場に崩れ落ちてしまう。
「早い……!! 三機のMSを、一瞬で……?!」
そうサキ軍曹は言ってくれているが、僕だってかなりギリギリだった。
相手の腕が温くなければ、こんな真似はできないと……そう言いかけたところで、基地からの砲撃が襲ってくる。
「うおおおっ!? 大尉、マズいぞ! 砂嵐が完全に消えたら、基地からの砲撃が正確になる!!」
「ここは一旦退くしかないか……!!」
敵の防衛戦力はほぼ崩した。陸戦型ジムも、三機撃破して小隊は壊滅だ。
ピクシーの破壊という目標は達成できていないが、戦果は十分。むしろこれ以上の戦闘継続はリスクが高まる一方だと判断したブーン大尉は、一時退却を指示する。
「敵の戦力は把握した! 次が勝負だ!! 全機、合流ポイントまで下がれ!」
「了解!」
砂嵐をスモーク代わりにして、一気に戦線から離脱する。
途中、僕たちの退却を阻止しようとする基地からの砲撃が襲ってきたが、ピクシーは追撃してこなかった。
(あれがガンダム。あれが、連邦のMS……これから僕たちが、戦わなければいけない相手……!!)
決着がついたわけではない。損害は向こうの方が上だろうが、こちらが押されていた気分だ。
改めて、戦場で強烈な圧を放っていたガンダムの脅威を認識しながら、僕はこれから待ち受ける戦いの厳しさを想像し、息を飲むのであった。