ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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ガンキャノン、現る

「……大尉、見えますか?」

 

「ああ、居るな」

 

 僕にとっては二度目、大尉たちにとっては三度目の襲撃。

 同じ日にこれだけ執拗に攻撃を受けたら、相手側からしたら堪ったものではないだろうと思いながら基地の様子を窺った僕は、その中心に立つ一機のMSの姿を見止めた。

 

 砲台も倉庫も破壊され、防衛戦力はほぼ皆無。

 そんな基地の中で堂々と立つガンダム・ピクシーは、僕たちを待ち受けているように見えた。

 

「奥の滑走路に輸送機(ミデア)が見えます。どうやら連中、この基地を放棄するつもりのようです」

 

「新型は俺たちと最後に決着をつけるために待ってたってか。ありがたいことだな」

 

「サキ、ヘンリー、クロス、わかっているとは思うが油断するなよ。奴の覚悟は本物だ。不意を打てた先ほどとは別人だと思え」

 

 奇襲を受け、後手に回って出撃した先ほどとは状況が違う。

 ピクシーのパイロットは僕たちを待ち受け、倒すつもりであの場に立っているのだ。

 

 ピリピリとしたプレッシャーを感じながらも、ゆっくりと四機編成で基地へと進攻していく僕たちは、ピクシーの動きに意識を向けていた。

 あともう少しで射程範囲に入るとなったその瞬間、誰にとっても予想外の事態が発生する。

 

「なっ、なんだ!? 基地が爆発した!?」

 

「罠か!? それにしてはタイミングが早過ぎる気が……!!」

 

 輸送機とピクシーの間、そこにあった幾つもの建物が次々と爆発を起こす。

 最初は機密保持のための自爆装置が発動したのかと思ったが、それにしては規模が大き過ぎるしタイミングが妙だ。

 

 同時に、ミデアの様子を確認した僕は、その挙動に違和感を覚え、大尉に向かって叫ぶ。

 

「大尉、輸送機が発進準備に移っています! あいつら、新型を放棄していくつもりなのか!?」

 

 今、基地には僕たちを迎え撃とうとしているピクシーが残っている。

 本来、この機体はホワイトベースに届けるはずの重要なMSで、同時に彼らにとっては何よりも重要視すべきもののはずだ。

 

 そのピクシーを残して飛び立とうとしているミデアの様子から、先ほどの爆発も併せて何か妙な事態が起きていることを確信する僕の耳に、ウルフ・ガー隊のみんなの声が響く。

 

「大尉、私は滑走路に向かいます。新型の相手はお任せします」

 

「そうか、それでこそお前だな……クロス、お前はサキを援護してやってくれ。新型は、俺とマーチンで相手をする!」

 

「了解……! 輸送機は任せてください!」

 

「腕が鳴るな! 思いっきり暴れてやろうぜ!!」

 

 二機ずつの部隊に分かれ、僕は先行するサキ軍曹に続いて滑走路へと向かう。

 防衛戦力がほぼ残っていない今ならば、輸送機の一つくらい簡単に墜とせると思ったのだが……僕たちの前に、ミデアから出てきた赤い巨人たちが立ち塞がった。

 

(ガンキャノン……! こいつもいただなんて……!!)

 

 RX-77-2……『ガンキャノン』。

 【機動戦士ガンダム】でも主役メカのガンダムと並び活躍した、ホワイトベース隊の主力モビルスーツの一機。

 流石にガンダムほどの戦果は挙げていないが、両肩のキャノンを見てもわかる通りの高い中距離支援性能を活かし、前線で戦うガンダムをサポートし続けた。

 

 そのガンダムと比べて機動性こそ落ちるものの、なんと装甲は同機を上回っている。

 確かドムのバズーカの直撃にも耐えてなかったかと考えたところで、二機のガンキャノンたちが肩のキャノン砲から砲撃を繰り出してきた。

 

「ちぃっ! ミデアが脱出するまでの時間稼ぎをするつもりか!?」

 

「いや、こいつらは……!!」

 

 ガンキャノンたちの攻撃から牽制ではない、本気で僕たちを仕留めようとする意識を感じ取った僕は、パイロットたちが時間稼ぎを目的としていないことを理解する。

 おそらく、彼らはピクシーのパイロットの部下なのだろう。出撃したのも、輸送機を守るためではなく、僕たちと戦う上官を援護するために飛び出したのだ。

 

 でなければ、こんな戦い方はしない。ギリギリまで牽制を続けて、発進準備が整ったところでミデアに飛び乗ればいいのだから。

 そうしないでがむしゃらにキャノン砲を繰り出すガンキャノンたちの戦いぶりを見ていた僕の前で、サキ軍曹がザクバズーカを叩き込む。

 しかし、真っ向からバズーカを受けたというのに、ガンキャノンは問題なく動くと共に再び砲撃を繰り出してきた。

 

「バズーカすら効かないの!? どんな装甲してるのよ、あのMSは!?」

 

「こうなったらもう、接近戦しかない……!!」

 

 あのガンキャノンたちはホワイトベース隊のそれが装備していたビームライフルのような手持ち武器は持っていない。

 武装は完全に肩のキャノン砲だけで、接近さえすれば撃破できる可能性がある。

 

 問題は、二機のガンキャノンが繰り出す当たったら致命傷になりかねない砲撃の雨を掻い潜りながら接近できるかどうかだ。

 行くならば僕だと、G型ザクの機動性を活かして囮役を引き受けようとした僕であったが……それを伝える前に、サキ軍曹のザクがバズーカを連射しながらガンキャノンたちへと突っ込んでいった。

 

「サキ軍曹!? 何を!?」

 

「さっきの借りは返しておくよ! 囮役は、私がやる!!」

 

「無茶だ! あなたのザクじゃ、機動性が――!」

 

「馬鹿! 生きたい理由がある奴に、囮役なんて任せられるわけないでしょ!」

 

 そう、どこか優し気に言ったサキ軍曹のザクが、バズーカを撃ちながら真っすぐにガンキャノンたちに突撃していく。

 何発かの直撃を受け、体勢を崩しながらも彼女を迎撃していたガンキャノンの砲撃が、ついにサキ軍曹のザクを捉え、小さな爆発を起こした。

 

「軍曹っ!!」

 

「くうっ! まだまだぁっ!!」

 

 肩のシールドで砲撃を防いだサキ軍曹であったが、その衝撃で腕ごとシールドは吹き飛んでしまった。

 撃ち尽くしたバズーカを放り捨て、ヒートホークを掴んだ彼女は、スピードを緩めることなくガンキャノンへと突っ込んでいく。

 

 そのまま、一機のガンキャノンを押し倒すように体当たりを食らわせた彼女のザクが地面を転がる中、僕はバーニアを吹かせてもう一機のガンキャノンへと突撃していた。

 

「やらせるかあああっ!!」

 

 仲間の機体に絡み付くようにしながら地面を転がったザクへと攻撃を繰り出そうとしているガンキャノンに肉薄しつつ、ヒートホークを構える。

 正面装甲を切り裂くにはパワーが足りないと感じ取った僕は、ガンキャノンの四肢……脆弱な関節部分に狙いを定めて斧を振るう。

 

 狙い澄ましたその一撃はガンキャノンの右腕を肩からすっぱりと切り落とし、僕の狙いが間違っていなかったことを証明してみせた。

 そのまま、相手の背後に回った僕は、慌てるガンキャノンの脚部をヒートホークで叩き斬ってみせる。

 

「うおおおおおおおおおっ!!」

 

 雄叫びを上げながら、バランスを崩したガンキャノンにタックル。

 うつ伏せに倒れたその機体のキャノン砲を踏みつぶし、完全に動きを封じたそのタイミングで、動かなくなったサキ軍曹のザクを振りほどいたもう一機のガンキャノンが立ち上がった。

 

(一対一……やれるか? いや、やるしかないんだ!)

 

 数の上では互角。だが、装甲の強度差が僕の前に重い現実となって横たわっている。

 ヒートホークを上手く関節に叩き込めなければ、僕は有効打を失う。そうなれば、待っているのはキャノン砲による一方的な蹂躙だけだ。

 

 今だけでいいから、本当に……ビームサーベルが欲しい。心の底から僕はそう思った。

 赤熱した刃を唸らせるヒートホークを構えながら、こちらの出方を窺っているガンキャノンと相対する僕が敵の隙を狙う中、コックピットの大声が響く。

 

「くそったれ! 大尉、あとは頼んだぜ……!」

 

「マーチン! くそっ!!」

 

 断末魔の声に続いて聞こえた、爆発音。それがハガー曹長のザクが破壊された音だと理解した僕は、一つの命が失われたことを理解すると共に歯を食いしばる。

 仲間が、生きて欲しいと思っていた人が、また死んだ。その現実に心を握り潰されるような痛みを感じる僕へと、今度はサキ軍曹が言う。

 

「クロス……次は私の番だ」

 

「っっ!? 何を言ってるんですか、軍曹!?」

 

「輸送機が発進準備に入ってる。今から私はこのザクを乗り捨てて、あいつに潜り込むつもりだ。そして……内部から破壊する」

 

 それは即ち、ミデアを道連れに自爆するという意味だった。

 その言葉を聞いた僕が息を飲む中、サキ軍曹は別れの言葉を口にし始める。

 

「楽しかったよ、クロス。出会って間もなかったけど、一緒に戦えて良かった。あんたの生きる理由によろしくね」

 

「待ってくれ……! ダメだ、軍曹!!」

 

「悪いけど、もう決めたんだ。ありがとね、クロス」

 

 死を覚悟した……いや、自ら死を選ぼうとしているサキ軍曹の声が頭の中に響く。

 ハガー曹長の死を受け入れる間もなく、サキ軍曹もまた命を散らそうとしていることに我慢ができなくなった僕は、思わず大声で叫んだ。

 

「待てって言ってるだろ! 言うことを聞けよ!」

 

「クロス……?」

 

 思わず口を突いて出た敬語も何もない言葉に、サキ軍曹が驚きの声を漏らす。

 そんな彼女へと、僕は今までで一番の感情を乗せた声で言った。

 

「サキ軍曹、上官命令だ。ザクから降りて、安全な場所に退避してくれ。あの輸送機は……僕が墜とす!!」

 

 それしかない。彼女の命を救うには、それ以外の方法はない。

 目の前のガンキャノンを行動不能にし、続けてミデアを撃墜する……それをあと数十秒以内にやらなければ、サキ軍曹は自爆の道を選ぶだろう。

 

 だから、やるしかないんだ。これ以上、大切な仲間を死なせないために。

 早鐘を打っていた心臓の鼓動が少しずつ静かになっていくことを感じながら……僕は、意識を研ぎ澄ます。

 狙うべき場所、すべき行動、自分の動き。その全てを頭の中で組み立てるのではなく、直感で感じ取りながら……僕は愛機を駆り、ガンキャノンへと挑みかかっていった。

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