ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
一旦削除してこの話に続けて投稿してあるので、改めて正しい流れでお話を楽しんでいただけると幸いです。
サブナック隊のみんな、調子に乗ってます
――宇宙世紀0079年10月20日。僕がゴビ砂漠での任務を終えてから、一週間の時間が流れた。
先の任務で乗機であったザクを失った僕は、過酷な任務を達成したご褒美も兼ねて、休暇を与えられている。
無論、完全休養というわけではなく、ヨハンソン隊長に色々と教えてもらいながら、指揮官としての勉強を進めていた。
ソンネン少佐から教わったことが役に立ったが、まだまだ僕は学ぶべきことが多いということも実感した一週間でもあったわけだが……周囲のみんなからすると、僕がそんな日常を過ごしているのが不思議で仕方がないようだ。
一応僕は、ガンダムタイプを鹵獲し、困難が過ぎる作戦を成功させたすごい人ということになっているらしい。
実際その通りかもしれないし、戦功を考えればとっくに尉官どころか佐官になっていてもおかしくないとアクセルは言っていたが、そうはならない理由を僕はなんとなく理解していた。
近年の作品ではそんな雰囲気はないが、ジオンというのは基本的に男尊女卑思考が強い上にプライドがチョモランマよりも高い人間が多い。
実際、作品によってはあの赤い彗星のシャアが周囲の軍人に妬まれていたりもしたわけで、自分より年下の軍人が高い地位に昇進したり、英雄だなんだと褒め称えられることを嫌う者はかなり多いのだ。
そんな軍の中で、ザビ家の人間とはいえ女性であるキシリア様の配下の部隊、それもヨハンソン隊長という女性が部隊長を務めるサブナック隊から僕のような若造が昇進したら、もう妬みがとんでもないことになるだろう。
それこそかつて僕がサブナック隊で味わった気まずさなんて比じゃないレベルで年上の部下たちからせっつかれることになるわけで、そんなのは僕としては絶対に御免だった。
というわけでガンダム・ピクシーの鹵獲に関してはジオン軍が誇る勇猛な特殊部隊、ウルフ・ガー隊が決死の戦いの果てに手に入れたものとなっている。
彼らの犯罪歴も今回の功績を黙っておくことと引き換えに抹消してもらったし、上層部からすれば嬉しいことこの上ないだろう。
仲間たちの未来を切り開くために散っていった勇猛なるウルフ・ガー隊の悲劇という感動的なシナリオが完成したことで、ジオン軍の士気はガルマ・ザビの国葬の時同様にぶち上がっていた。
そんなこんなで僕の立場は変わることなく、サブナック隊に残り続けている。
リリアを置いて別の部隊に行きたくなんかなかったし、これでいいのだ。
ただ、そんな僕にも悩みの種がないわけではない。
サブナック隊に蔓延する、とある空気が僕の頭を悩ませている。
今までのように、僕を仲間外れにしてくる者はまだいるし、大半のメンバーが僕とはお近づきになりたくない様子であることは変わりないのだが……そこはどうだっていい。
僕が気になっているのは、
……言い方を変えよう。なんというか今、サブナック隊のみんなは連邦軍のことを恐れなさ過ぎている。
色んな状況が重なった結果、みんなは戦いや敵に対する恐怖心がほぼなくなっているのだ。
少し時間を巻き戻さなければならないが、僕がウルフ・ガー隊と共にピクシーとの戦いに臨んでいた時、サブナック隊のみんなも連邦軍のMSと初めての戦闘を経験していた。
その戦いに関しては、ヨハンソン隊長にドムが届いていたことやアクセルやリリアといった既にMSとの戦闘経験があったメンバーがいたこともあり、特に問題なく迎撃できたようだ。
ここまではいい。問題はここからだ。
犠牲者ゼロ。それもかなり楽勝ムードだったおかげで、サブナック隊のみんなは正しく相手の脅威を理解できずにいるのである。
実際それは仕方がないことで、相手の脅威を知っていたアクセルたちやその危険性を察知したヨハンソン隊長は、相手が真価を発揮する前に速攻で撃破した。
ガスのグフのヒートサーベルや隊長のジャイアント・バズであっさり撃破された連邦軍のMSを見てしまえば、みんながその脅威を正しく認識できないのも当たり前といえば当たり前かもしれない。
そこに続いて、僕が新型MSを鹵獲したという話が入った。
それだけならば問題がなかったのかもしれないが、ウルフ・ガー隊が囚人部隊だという情報がマズかったようだ。
先にも述べた通り、ジオンというのはプライドが成層圏を突破するくらい高い人間が多い。それはもちろん、僕たちサブナック隊のメンバーも同じだ。
当然、犯罪者の集まりであるウルフ・ガー隊は彼らにとって見下すべき存在であり、大したことのない連中だというプライドによる思い込みが発生する。
さて、ここで問題だ。
見下している囚人部隊と元々そこまで高い能力を有しているわけじゃなかった補欠部隊員(僕)が組んで、連邦軍の新型MSを鹵獲しました。
プライドが地球から最も離れたスペースコロニー『サイド3』まで届きかねないくらいに高いジオン軍人たちは、どう思うでしょう?
……答えは簡単、「やっぱり連邦軍のMSって大したことないじゃん!」だ。
そこに士気をぶち上げるギレン総帥の演説やら、目下最大のライバルである僕のザクが失われて出動できないから大チャンスだという状況が重なった結果、サブナック隊のみんなのやる気は不必要なレベルで高まってしまっているのである。
調子に乗り過ぎている、といえばわかりやすいだろうか?
次の戦いでは自分が活躍し、エースと呼ばれる存在になってみせると、誰もが意気込み過ぎているのだ。
もちろん、リリアやアクセル、ガスにオリバーといった連邦軍のMSの脅威を身を以て経験した者や、セシリアのように冷静に状況を分析して、落ち着いて対応できているメンバーもいる。
ヨハンソン隊長もみんなの増長を叱責しているが、それでもやっぱり若さゆえの過ちが止められそうにもないというのが現状だ。
僕が話をしようとしても、「隊長気取りかよ」といって耳を貸してくれない。
こんな状況で連邦軍のMSの性能を目の当たりにして、その脅威度を認識してしまったら、大パニックになってしまうだろう。
こう言ってはなんだが、MSとの初めて戦闘を行い、それなりの犠牲者が出たマルコシアス隊の方がまだマシな状況かもしれない。
やっぱり、早めに天狗になっている鼻をへし折られるのって大事なんだなと考えながら悩んでいた僕は、そのマルコシアス隊の人間からとある頼みを引き受けることになった。