ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
いきなり話が飛んでしまったせいで混乱させてしまって申し訳ありません。
とりあえず、0時に2話更新させていただいたので、本来の話の流れはこうだったとご理解いただけると幸いです……
「クロス、ちょっといいか?」
「ん……? ヴィンセント! どうしたんだい、急に?」
僕がマルコシアス隊に所属しているパイロット、ヴィンセント・グライスナーに声をかけられたのは、ある朝のことだった。
第二次降下作戦のキャリフォルニア・ベース攻略戦で肩を並べて戦った彼とは、それからもちょくちょく交流がある。
聞くところによると、ヴィンセントも専用の陸戦高機動型ザクを受領し、マルコシアス隊でエースとして実力を付けているとのことだった。
ただまあ、基本的に僕たちは別の部隊の人間であり、しかも特別競合部隊の第一と第二という全員がライバル関係にある部隊に所属している。
最近は任務の忙しさもあって、なかなか話す機会がなかったわけで、そんな中で久しぶりにヴィンセントから声をかけられた僕は、嬉しさを感じながら彼との会話に興じていった。
「悪いな、色々と大変だろうに。話は聞いてる、すごい活躍みたいじゃないか」
「尾ひれが付いてるだけだよ。ヴィンセントの方こそ、ビッグトレーを墜としたり、シュナイド隊長と一緒に活躍してるって話をきくけど?」
「俺がすごいんじゃないさ。隊長と同じ小隊なおかげだよ」
そう謙遜しつつも、今のヴィンセントは地球に降りてきたばかりの頃よりも精悍な顔つきになっていることが見て取れた。
彼も数多くの修羅場をくぐってきたんだろうなとその顔を見て思う僕へと、少し押し黙った後でヴィンセントが言う。
「クロス、頼みがあるんだ。俺の仲間と、少し話をしてもらえないか?」
「え……?」
いきなりのヴィンセントからの頼みに、僕は怪訝な表情を浮かべながら詳しい解説を求める。
ヴィンセントは、少し悲しそうな表情を浮かべながら、口を開いた。
「実は――」
△ ▽ △ ▽ △
「ここ、座ってもいいかな?」
「ん? ああ、好きにしてくれ」
昼、食堂に向かった僕は、ヴィンセントの情報通りに座っていたとある人物を見つけ、その向かい側に座った。
浮かない顔をしている彼は僕を一瞥した後、無言で食事を続けていく。
僕も同じく目の前の料理を口に運び、お互いに無言の時を過ごした後……意を決し、彼の名前を呼んだ。
「君は、マルコシアス隊のセベロ・オズワルド……だよね? はじめまして。第二特別競合部隊サブナック隊のクロス・レオンハートだ」
「……!!」
僕から自己紹介をされたセベロが、驚いた表情を浮かべる。
僕の顔を少し見つめた後、彼は視線を逸らし、つらそうな表情を浮かべながら口を開いた。
「……評判は聞いている。専用機を与えられている、サブナック隊のエースなんだろう? 俺に何の用だ?」
「いや……特に用があるってわけじゃないんだけど、君と少し話がしたいんだ」
「俺に? サブナック隊のエースが?」
「ああ。愚痴を聞いてもらいたいって言った方がいいかもしれない。同じ苦しみを抱えているであろう、君にね」
「っっ……!!」
僕のその言葉にセベロが息を飲む。
苦しさや後悔が入り混じった複雑な表情を浮かべた彼は、やがてため息を吐くと共に口を開いた。
「聞いたのか? 俺の失態を……」
「……ああ」
机に両肘を突き、組んだ両手の上に額を乗せたセベロが俯きながら言う。
彼の言葉に答えながら、僕はヴィンセントから聞いた話を思い出していく。
目の前の彼、セベロ・オズワルドは……マルコシアス隊A小隊の隊長を務めている。
僕がピクシーと戦っていたあの日、サブナック隊がそうであったように、マルコシアス隊も連邦の輸送機を待ち受け、襲撃する作戦に参加していた。
その戦いの中で戦果を焦ったセベロは、小隊員と共に突出し、初めて遭遇した連邦のMSと戦って……部下たち全員を死なせてしまったのである。
どうやらマルコシアス隊は小隊がA~Gと名付けられており、A小隊に近い方が優秀なパイロットが集まっているとうわさされているようだ。
しかし、これは眉唾ものである。なにせ、かなり腕がいい上に専用機まで与えられているヴィンセントがG小隊に所属しており、それだと評価がおかしくなるからだ。
だがしかし、やっぱり若さゆえの過ちというものは誰だって起こすもの。
そういったうわさを信じたセベロは、A小隊のリーダーを務める自分こそがマルコシアス隊の中で最も優秀でエースパイロット部隊への転属に近い男だと、そう思うようになっていったらしい。
実際、これはセベロだけがそうだったわけではないらしい。
ヴィンセントの話によれば、このうわさはマルコシアス隊のほとんど全員が信じているようだ。
だからセベロだけが悪いわけではないし、彼がプライドを増長させてしまったのも、ここまで何度も語っているジオン軍人特有のプライドの高さが原因だと考えていいだろう。
しかし、結果は結果だ。
A小隊でありながらなかなか目立った戦果を挙げられず、最底辺のG小隊であるヴィンセントの活躍を目の当たりにし続けたことで手柄を焦ったセベロは、先に述べた通り、部下を全滅させてしまった。
彼の小隊以外にも犠牲者を多く出したマルコシアス隊は小隊を再編成し、七小隊あった部隊はA、B、D、F、Gの五小隊にまで減ってしまったという。
セベロは今現在もA小隊の隊長として新たに加わった部下たちから高い尊敬を寄せられているというが……それにしては、かなり苦しそうな顔をしていた。
その理由になんとなく察しがついている僕の前で、セベロは自身の胸中を吐露する。
「俺が戦功を焦って突出したせいで、あいつらは死んだ。あそこで他の小隊と連携していれば、あいつらは今も生きていたんだ。新しくA小隊に配属された仲間たちは、俺を激しい戦火の中で一人だけ生き残った優秀な隊長として認めてくれているが……正直、つらい。あいつらは俺が殺したようなものなのに、そんな賞賛を受けても、ただただ苦しいだけだ」
「……わかるよ、その気持ち。君とは少し違うのかもしれないけど、仲間が死んでいるのに褒められてもつらいだけだよね」
「……!! お前も、なのか……?」
セベロの質問に対して、自嘲気味に笑いながら頷く。
ウルフ・ガー隊とこなした先の任務について話した僕は、首を振りながら静かに言った。
「新型を鹵獲できたのも、僕の力じゃあない。隊長が命を賭して戦った結果なんだ。僕は何もできなかった。目の前で死ぬ隊長を見送ることしかできなかったんだよ」
「そうか……」
周囲からは尊敬の眼差しや賞賛の言葉を寄せられる。
ただ、自分の中にあるのは仲間を失った苦しみや後悔ばかりで、素直にそれらを受け止めることができない。
それでも、弱音を吐くわけにはいかない立場にいるという、少し状況は違うが似た苦しみを抱えていることを吐露した僕とセベロは、少しだけお互いをわかり合えるようになっていた。
「お前はすごいよ、クロス。仲間を思いやり、協力するその思考は、本来俺が持っていなければならないものだったんだ。それが真のエースに必要な能力であり、隊長として当たり前の責任だったはずなのに……」
「君も十分にすごいさ、セベロ。そうやって、仲間の死から逃げずに全てを受け止めて、苦しんでいる。隊長としての責務を果たそうと必死になっているじゃないか。仲間をこう言いたくはないが、サブナック隊のみんなにも見習ってほしい姿勢だよ」
静かにだが、お互いを称え合った僕たちの間に、再び無言の時が流れる。
今度はセベロの方から口を開き、僕を見つめながらこう言ってくれた。
「……また、話をさせてもらってもいいか? お前になら、マルコシアスの連中には言えないことも話せそうだ」
「ああ、もちろんだよ。話すだけじゃなくて、戦場でも頼ってほしい。部隊は違えども、僕たちは仲間なんだからさ」
セベロもきっと、長い夜の中にいる。
彼にとっての夜明けが来ることを祈りながら、一人の友人として彼を支えようと、僕は思った。