ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
――宇宙世紀0079年10月23日。軍人には全く関係のないハロウィンが近付くキャリフォルニア・ベースのブリーフィングルームに、僕たちは集められた。
サブナック隊のメンバーが揃った部屋の中を見回したヨハンソン隊長が、咳払いをした後で話を始める。
「全員、集まったな。では、次の作戦について伝える。これより我々サブナック隊はジオン軍の重要拠点、オデッサに向けて出発し、その防衛任務に就くことになった」
やはりか、という空気が漂っていた。
少し前から連邦軍が反攻作戦を計画し、オデッサ周辺に戦力を集めているという話は聞いていたが、僕たちも防衛作戦に参加することになりそうだ。
『オデッサ作戦』と呼ばれるこの戦いに参加することと、そこで起きる数々の激しい戦いを思い返した僕が息を飲む中、ヨハンソン隊長は話を続けていく。
「連邦軍はMSの量産に成功し、かなりの戦力をオデッサに集めている。我々サブナック隊は周辺の基地を防衛しつつ、オデッサに集結する敵の戦力を少しでも削るために戦うことになるだろう。正直、これはかなり厳しい任務だ。オデッサでの戦いは、過去最大に熾烈を極めるものになる」
連邦の物量と、ビーム兵器を運用できる技術力。この二つがどれだけ脅威なのかは、僕も重々理解している。
それが大集結して攻めてくる光景を想像した僕は、恐怖に背筋を震わせながら息を飲んだ。
「今より三時間後、我々はオデッサに向けて出発する。各員、準備をしておけ。以上だ。ただし……クロス、お前は少し、キャリフォルニア・ベースで待機していろ」
「えっ……!?」
もうすぐにここを発つという話を聞いた僕は大きく頷いたのだが、ヨハンソン隊長はそんな僕に名指しで待機命令を出した。
驚く僕に対して、隊長はこう話を続ける。
「お前は今、自分のMSがないじゃないか。じきにお前用のMSが届けられる。それを受領してから、私たちを追ってこい」
「あ、余ってるザクに乗るのではだめなのでしょうか? MSの受領はオデッサに到着してからでもいいのでは……?」
「いいわけがないだろう。相手の戦力が集結しているところに補給部隊を送るよりも、ここで確実に受領する方が安全だろうが」
今、この緩み切っている空気のサブナック隊から離れるのは少し怖い。
僕がどうこうではなく、リリアやアクセルの身に何かが起きそうで怖かった。
しかし、ヨハンソン隊長の言うこともご尤もなので、僕はそれ以上は何も言えず、黙って頷くことしかできない。
結局、そこで解散指令を受けたみんなと一緒に一度部屋に戻った僕は、荷支度だけして出撃するみんなを見送ることになってしまった。
「大丈夫だよ、そんなに心配しなくても。私たちのこと、少しは信用してよね」
輸送機に乗り込む寸前、リリアはそう言ってくれたが……やっぱり不安だ。
何か良くないことが起こる気がする。これまで何度も感じた胸騒ぎに不安を覚えながらも、僕は皆を見送り、キャリフォルニア・ベースに一人残ることになったのであった。
△ ▽ △ ▽ △
キャリフォルニア・ベースの司令から呼び出しを受けたのは、その翌日のことだった。
その呼び出しに応えて司令室に向かった僕は、見知った顔がいることに気付いて驚きながら口を開く。
「ギャレット少佐! お久しぶりです!」
「ふふふっ! 久しぶり、元気そうね」
キリー・ギャレット少佐……少し前に出会った、ノイジー・フェアリー隊の指揮官である彼女との再会に、不安でいっぱいだった僕の心に明るさが戻る。
予想もしていなかった来客に驚く僕に向け、彼女は笑みを浮かべたまま、話をしてくれた。
「遅くなってごめんなさいね。本当はサブナック隊の出発前に届ける予定だったんだけど、新技術を搭載するってことで予定より少し遅くなってしまったみたいなの」
「は……? あの、どういう意味で……?」
ギャレット少佐の言っていることがわからなかった僕が、頭の上に?を浮かべながら首を傾げる。
そんな僕に対して、くすくすと笑ってみせた彼女は、クリスマスの夜に我が子にプレゼントを渡す寸前の母親のような表情を浮かべながらこう言ってきた。
「一緒にハンガーに行きましょうか。そこで、詳しく話をしたい子が待ってるはずだから」
△ ▽ △ ▽ △
「クロスさん! お久しぶりです!」
「元気にしてましたか? 曹長殿!」
「またこうしてお会いできて嬉しいです!」
「アルマ、ヘレナ、ミア! みんなも元気そうで何よりだよ!」
ギャレット少佐とキャリフォルニア・ベースのMS格納庫へと向かった僕は、そこで待っていたノイジー・フェアリー隊の三人との再会に笑顔を浮かべた。
厳しさを増していく北米戦線で彼女たちがどうしていたか心配だったが、怪我もなくとても元気そうで本当に良かった。
リリアたちがいないことを残念がる彼女たちであったが、気を取り直すように咳払いをしたミアが僕へと言う。
「お待たせしました、クロスさん。あなた用のMS、お届けに上がりました!」
「僕のMS!? え、ちょっと待って。なんでノイジー・フェアリー隊に僕のMSが……?」
順番的におかしいというか、変な話だ。
僕用のMSが届いたというのなら、キャリフォルニア・ベースにそのまま届ければいい。どうして一度ノイジー・フェアリー隊を経由して……? と考える僕へと、ギャレット少佐が言う。
「あなたの新しい専用MS開発計画は、ミアが自分の両親……つまり、ツィマッド社の研究員に提案してスタートしたものなの。だから、あなたに届ける前に重力下での最終チェックをミアが担当したってわけ」
「そ、そうだったんですか!?」
「以前、ドムのデータ収集を手伝っていただいた時、クロスさんのデータも録らせていただいたんです。G型ザクでは近い内に限界がくることもわかってましたし、私たちを助けてくれたクロスさんに恩返しがしたくって……」
そう、恥ずかしそうに語ったミアが、頬を赤らめながらはにかむ。
彼女の気遣いに感謝する僕へと、ギャレット少佐が耳打ちをしてきた。
「一つ、汚い大人の話をするとね……ツィマッドは、エースパイロットであるあなたを自社側に取り込みたいのよ。あなたの戦闘データとMSの運用データを確保することで、ジオニックよりも高性能な新型MSの開発を目指してる。そういう思惑もあるってことを覚えておいてね」
「は、はぁ……」
ミアはそういった事情は知らないのだろう。しかし、戦場でなくとも様々な形で戦いというのは行われているものだ。
ジオニックとツィマッド、ジオンのMS製造の二大巨頭であり、ライバル関係にある二社の競争に自分が巻き込まれかけていることに困惑する僕であったが、そんなことを知る由もないミアが声をかけてきた。
「では、早速クロスさんのMSを紹介しますね! こちらにどうぞ!」
興奮気味に鼻息を噴くミアは、どことなく誇らし気だ。
MSが好きというのもあるし、両親や自分が所属する会社が作り出したMSを僕に見せられるのが嬉しくて仕方がないのだろう。
あのミアが、ここまで自信を持っているということは、相当なMSらしい。
そう思いながら彼女の後ろを歩いていった僕は、今しがた運び込まれたばかりといった様子のMSの姿を目にして、ハッと息を飲んだ。
「この機体は……!?」
「見覚え、ありますよね?」
新しい愛機となるMSを見上げる僕の顔を、ミアが覗き込みながら言う。
そんな彼女の言葉に頷きながらも、僕は視線をMSから外すことができなかった。
機体のカラーリングもそうだが、細やかな部分に差が存在している。
だが、このMSは僕もよく知っている機体だ。
ほんの数週間前、肩を並べて戦ったMS。パイロットの技量もあってのことだが、あのガンダム・ピクシーを相討ちにまで持ち込んだスペックを誇る機体。
鮮烈な輝きを放つ炎の魔神が、装いを新たに僕の前に立っていた。
昇進に関してはちゃんとしますので、ちょっと待っててねって感じです!
(理由があって少し遅らせてます!)