ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
「イフリート……! こいつが僕の……!!」
「はい。MS-08TX【イフリート】……ツィマッド社にあった7号機をベースとして様々な技術を盛り込み、ほとんど別の機体として仕上がっています」
そう言いながら、ミアが僕にノートを差し出す。
詳しい情報はここに書いてあるのだと、そう理解した僕はマニュアルを受け取り、その中身を読みながらミアの話を聞いていった。
「まず第一に、この7号機にはクロスさんのG型ザクはもちろん、イフリート4号機……ウルフ・ガー隊のヘンリー・ブーン大尉の機体の戦闘データを参考にカスタムが施されています。驚異的な運動性を誇る連邦軍の新型MS【ガンダム】と戦闘を行った数少ないパイロットであるお二人のデータは、かなり参考になりました」
「そうか、ブーン大尉の……」
同型機であるイフリートを駆っていたブーン大尉のデータも使われているという話を聞いた僕の胸に、一抹の寂しさがこみ上げてくる。
同時に、彼の「生きるための戦いを続けろ」という最後の言葉を思い出した僕は、大尉が僕に力を貸してくれているような気持ちにもなって、心の中で感謝を述べた。
「『第603試験隊』とウルフ・ガー隊。両隊の協力なくして、この子の完成はあり得ませんでした」
「もちろん、ミアたちノイジー・フェアリー隊の協力もね。これまで出会った人たちが力を貸してくれた……って考えると、少し誇らしいかな」
ミアの言葉にそう言いつつ、改めてイフリートを見やる。
また一つ、背負うものが増えてしまったなと考える僕へと、ミアは機体の解説を続けていった。
「まず基本的なスペックですが、G型ザクを超える性能を誇るイフリートをベースとしたことで大幅に向上しています。脚部にG型ザクと同様の追加のバーニアを装着してありますので、運動性に関しては通常のイフリートを凌駕しているはずです。また、この機体にはツィマッドが新たに開発した技術である『流体パルスアクセラレーター』を採用していて、反応に関してもG型ザクとは比べ物にならないものになっています」
「その辺りのことは自分で乗って確かめてみるよ。色々と、面倒をかけて悪いね」
「いえ、これは私たちツィマッドからしても新技術のデータが取れる絶好の機会ですから。それに、搭載されている新機能はこれだけじゃないんです」
微笑んだミアが、意味深に手招きをする。
耳を貸せということだと思った僕が背の低い彼女に合わせて屈めば、ミアは小さな声でとんでもないことを言ってきた。
「実はこの7号機には、クロスさんが鹵獲したガンダム・ピクシーに搭載されていた『教育型コンピューター』が載せられているんです」
「えっ……!?」
「技術に関してはツィマッドだけでなく、ジオニックも吸収、学習しました。生産にはもう少し時間がかかる予定ですが、クロスさんにここまでの新技術を搭載したMSを渡すのには、エースパイロットの戦闘技術をコンピューターに学習させたいという思惑もあるんです」
僕くらいのガンダム好きでも知っている『教育型コンピューター』が自分の機体に搭載されていることを知って、愕然としてしまう。
僕がピクシーを鹵獲したせいでとんでもないことになってないかと今さらながら思い始める中、ミアは武装についても話をし始めた。
「武装に関してはザクのマシンガンやドムのジャイアント・バズーカを使えるようになっていますが……もちろん、この子専用の武装も用意してあります。ガンダム・ピクシーのビームダガーを研究したことで、我々のビーム兵器に関する技術も大幅に向上しました。先ほど話した『流体パルスアクセラレーター』を採用して開発予定のギャンにも搭載するビームサーベルを二本、この子にも装備してあります」
「ビームサーベルを!? それは、すごいな……!!」
「驚くのはまだ早いですよ。基地周辺に投棄されていた連邦軍のMSからは技術的な情報は得られませんでしたが、あれはルナ・チタニウム合金の塊みたいなものです。研究材料として回収させていただき、武装開発に役立てた結果……同型のMSの装甲ならば貫通できる専用ショットガンの開発に成功しました」
G型ザクの武装では大いに苦戦した、ルナ・チタニウムの装甲。
それを破壊する武装の数々を搭載しているイフリートの恐ろしさに、僕はごくりと息を飲む。
「装甲に関してはベースのイフリートと大差ありませんが、対ビームコーティングを施しています。まあ、気持ち程度の効果だと思ってください。盾はグフと同じ、左手にマウントする形のシールドを装備できるようにしてあります。といったところで解説は以上ですね。詳しくは、先ほどクロスさんが仰っていたように実際に乗ってから確かめてみてください」
「ありがとう、ミア。そうさせてもらうよ」
既に試運転の準備は整っているようだ。説明を受けて早々にイフリートのコックピットに乗り込んだ僕は、その中が乗り慣れたG型ザクのそれと大差ないことに気付く。
ここももしかしたらミアやツィマッドの人たちが気を使ってくれたのかもなと思いながらモニターをONにすれば、ギャレット少佐の顔が映し出された。
「ミアから説明は聞いたみたいね。実際に乗ってみて問題がなければ、あなたをサブナック隊のみんなのところまで送り届けさせてもらうわ。そこまでが、私たちの任務だから」
「ありがとうございます。また、色々お世話になってしまいますね」
「遠慮しないでくださいよ! 私たちとクロスさんの仲じゃないですか!」
「色々と勉強させていただきますよ、曹長殿!」
見目麗しい女性からの黄色い声援……というと聞こえはいいが、今から兵器の試運転を行うと追加すると途端に話が鉄臭くなるのはどうしてだろうか?
どうにも締まらないなと苦笑を浮かべながら、僕は新たな相棒の性能を確認すべく、イフリートの試運転に臨むのであった。