ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
本来の浮上ポイントから場所を変更し、ユーコンを降りた僕たちは、闇夜のフェンリル隊との合流ポイントへと急行した。
そこで待っていた彼らの指揮用車両に入ったところで、ギャレット少佐がフェンリル隊の面々へと代表して挨拶をする。
「ノイジー・フェアリー隊、キリー・ギャレット少佐。MSパイロット四名と共に到着しました」
「通信に応えてくれたこと、改めて感謝する。闇夜のフェンリル隊の指揮官、ゲラート・シュマイザーだ」
精悍な顔つきの男性が、ギャレット少佐に向けて敬礼の姿勢を取る。
彼が通信の相手だったシュマイザー少佐かと考える中、フェンリル隊の面々が驚いたように言ってきた。
「これは……驚いたな。まだ子供じゃないですか」
「女の子が中心になって構成されているMS部隊があるだなんて……!!」
そう口にした男女二人も、この中では大分若いように見える。
決して僕たちを軽んじているわけではなく、純粋に驚いたんだろうなと考える中、シュマイザー少佐が僕たちを見つめながらいった。
「ギャレット少佐、一つ質問をさせてもらいたい。私もノイジー・フェアリー隊については知っている。我々と同じ、キシリア様からの認可を受けた特別部隊……その構成員は全員、女性だと聞いていた。ならば、そこの彼は何者だ?」
「シュマイザー少佐が仰る通り、我々は女性のみで構成されている部隊……彼は部隊員ではありません。我々が護衛し、オデッサに向かっている最中でした」
「クロス・レオンハート曹長です。今、基地で救援を求めているサブナック隊の一員であります」
ギャレット少佐から話のバトンを引き継ぎ、自己紹介をする僕。
そんな僕の話を聞いたフェンリル隊のメンバーたちが、先ほどよりも驚いた表情を浮かべる。
「クロス・レオンハート……!? 暁の十字架か?」
「連邦の新型MSを鹵獲しまくってるエースだろう? サブナック隊は子供たちばかりで構成されるとは聞いていたが、連邦から恐れられる化物がこんな若造だったとはな」
「口を慎め、オースティン。レオンハート曹長はお前より階級が上だ。それに、ルウム戦役からMSに搭乗している。パイロットとしては、お前より先輩と言える立場だぞ?」
「おっとぉ……! こいつは失礼しました、曹長殿。にしても、上もよくわからんもんです。噂になるほどの戦功を挙げてるエースを、どうしてまだ曹長にしたまんまなんですかね? 新型を鹵獲したパイロットが曹長止まりじゃあ、俺もいつまで経っても軍曹から昇進できませんよ」
……この状況で言うのもおかしな話だが、おしゃべりな禿げ頭のこの隊員の声にはとても聞き覚えがある。
なんかこう、ドスを片手に分身したり、どこからでも現れそうな極道みたいな雰囲気があった。
(いや、そんなこと考えてる場合じゃない。みんなが危ないんだ、救出作戦に集中しよう)
という、所謂『中の人ネタ』を頭の中から追い出した僕は、目の前の作戦に意識を向けていく。
改めて考えてみると、サブナック隊のみんなのピンチを察知できたこともそうだが、闇夜のフェンリル隊が協力してくれるというのはかなりラッキーだ。
(闇夜のフェンリル隊……ギリギリ、名前は知ってるぞ。なにせ、あの【ジオニックフロント】に登場する人たちだからな……!)
【ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079】……それは、現在でもかなり異色と呼ばれているガンダムゲーム。
何が異色なのかという部分だが、【ガンダムVS】シリーズのようなアクションゲームや【Gジェネ】シリーズのようなシミュレーションRPGが多いガンダムゲームの中で、その要素を半分ずつ有しているリアルタイムストラテジージャンルのゲームというところだろう。
他にも、完全にジオン軍をメインとして扱っていることや、MSの動きがかなりもっさりしていることも挙げられるが……何よりもこのゲームを有名にしているのは、その高い難易度だ。
アクション要素よりも戦略的要素を重視している【ジオニックフロント】は、作戦の立案から装備の選択、さらに作戦中の指揮行動やMS部隊の操作などを行い、ステージクリアを目指さなければならない。
本作のMSは上述した【ガンダムVS】シリーズのような機敏な動きはできないし、下手をすれば戦車にだって撃ち抜かれて撃破されてしまう。
特にホワイトベース隊が出現するステージでは、実際のジオン兵がガンダムに遭遇した時の恐ろしさを体験できると評判だ。
しかし、決して理不尽な難易度には設定されていないことから、このゲームを神ゲーと評する人も多いらしい。
所謂、スルメゲーに属しているであろう【ジオニックフロント】。そのメインとなる部隊が、この闇夜のフェンリル隊なのだ。
ゲラート・シュマイザー少佐以下、部隊には歴戦の猛者が集まっている。
戦力の中には旧ザクも混じってはいるが、パイロットの腕前は全員が全員、かなりのものだ。
何より、シュマイザー少佐という頼りになる指揮官もいる。
これまで数々の作戦を成功に導いてきた彼がいれば、きっとサブナック隊のみんなを助け出せるはずだ。
「……おしゃべりはここまでにしよう。今は、救援を求めている友軍を助けることに集中すべきだ」
シュマイザー少佐の一言に、この場の空気が変わる。
僕も、フェンリル隊のみんなも、ノイジー・フェアリー隊のみんなも……彼に視線を向ける中、シュマイザー少佐は静かに言った。
「では、ミッションの内容を解説する。全員、心して聞くように」