ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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救出作戦・ブリーフィング

 シュマイザー少佐はそう言いながら、モニターに幾つかの画像と基地周辺の地形を表示する。

 それを一つ一つ確認しながら、ブリーフィングを進めていった。

 

「我々が向かう基地は既に数日間に渡って攻撃を受け続けている。砲台をはじめとした防衛戦力は破壊され、サブナック隊のMSが懸命に抗戦を続けているが、状況は芳しくない」

 

「基地を放棄して脱出しないってことは、連邦軍に包囲されてるってことですね?」

 

「その通りだ。この画像を見てくれ」

 

 部下からの発言を受け、シュマイザー少佐が一つの画像を大きくする。

 上空から撮影したであろうその画像には、ビッグトレーが捉えられていた。

 

「これが敵の指揮車両だ。こいつからの指示を受け、MS隊と戦車部隊が基地を包囲している。上空から撮影された画像を見る限り、かなりの戦力だぞ」

 

「こりゃあ、確かに……まだ十八そこらの新兵に相手させるには、骨が折れる戦力ですね」

 

 続いて表示された画像には、基地を取り囲む連邦軍の戦力が撮影されていた。

 61式戦車の大隊にガンキャノン、陸戦型ジムで構成されたMS部隊。しかもその中には陸戦型ガンダムの姿まであるではないか。

 

「ガンキャノンにジム、それにガンダムまでいるだなんて……!!」

 

「こいつはクロス・レオンハート曹長が鹵獲したエースパイロット用の機体とは違う、量産機だ。しかし、それでもザクを遥かに凌駕するスペックを有している」

 

「そんなMSを有しているだなんて、どんなエース揃いの部隊が参加してるんだよ……!?」

 

「おそらく、ここ最近北米から移動してきたセモベンテ隊だ。鹵獲ザクを使用しての騙し討ちを繰り返していた連中だが、連邦製のMSを受領して、暴れ回っているようだ」

 

「セモベンテ隊……!?」

 

「鹵獲ザクを使ってた部隊って、もしかして……!!」

 

 セモベンテ隊の名前と、その戦法を聞いた僕とアルマがほぼ同時に息を飲む。

 フェデリコ・ツァリアーノが指揮する部隊が、このオデッサ近辺まで来ていると……因縁の部隊とのまさかの再会に驚く僕たちであったが、そんな空気の中で少し粗暴な雰囲気の男性隊員が言う。

 

「はっ……! しかし、連邦もかなりの馬鹿と見える。これだけの戦力を有しておきながら、未だに基地を落とせていないんだ。戦慣れしていないひよっこたちでもどうにか相手できるくらいの腕前ってことでしょうな」

 

「レンチェフ少尉、敵を侮るな。仮にも敵はMSを部隊で運用し、そのデータと経験を蓄積させ続けていた相手だ。一筋縄ではいかん」

 

「しかし、少佐殿。事実、相手はザクを凌駕するMS部隊と大量の戦車部隊を有しておきながら、基地を落とせずにいます。これはどういうことですかね?」

 

 レンチェフ……と呼ばれた隊員は、少し苛烈な性格をしているようだ。

 あるいは、戦争の相手である地球連邦軍の兵士に対して、激しい怒りを持っているせいか、発言が過激になっているきらいがある。

 

 ジオン軍人の悪い部分を見せているレンチェフ少尉が相手を舐めるのは仕方がないのかもしれないが、セモベンテ隊……特にあのフェデリコはかなりの強敵だ。

 その彼が、ヨハンソン隊長やアクセルたちがいるからといって、これだけの戦力を持っておきながら基地攻略に何日も時間をかけるだろうか?

 

 違和感の答えを探るようにソンネン少佐やヨハンソン隊長からの教えや、これまでの経験を振り絞って考えた僕は、そこで出した答えを声に出して呟く。

 

「そうか、指揮官が違うんだ……」

 

 その呟きを聞いたシュマイザー少佐が小さく頷く。

 彼の副官と思わしき男性とマットと呼ばれていたスキンヘッドの男性は、そんな僕の意見を捕捉するようにこう言ってくれた。

 

「おそらく、今回の指揮を執っているのはビッグトレーに乗っている誰かでしょう。セモベンテ隊は、その指揮下に組み込まれている。故に、彼らは自分たちの判断で動くことができないでいる」

 

「今回の指揮官の頭の中には、MSを使っての戦闘に関する知識がない。だから、戦車部隊の中にMSを組み込んで戦わせるくらいしかできないんでしょう。それだと、MSの性能は十分に発揮できませんからね。こうなるのも仕方がない」

 

 ホワイトベース隊や後に開発されるジムとボールで編成された連邦軍の部隊を見ればわかりやすいだろうが、戦い方としては前衛で近接戦闘を行うガンダムやジムのような機体を、ガンタンクやガンキャノン、ボールといった機体が長距離砲撃で支援するというのが連携というものだ。

 

 しかし、この部隊の指揮を執っている人間には、そういったMS運用の発想がない。

 だからただ戦車隊にMSを同行させているだけなのだ。

 

 これだと、MSがその性能を発揮できるとは言い難い。

 別に戦車はMS以上の射程を有しているわけではないし、そもそも前衛の概念がないのだから一緒にいるだけのMSたちも戦車たちと基地を砲撃することくらいしかできないからだ。

 

 先行して内部に突っ込んでいくと今度は戦車砲での同士討ちが始まる可能性があるし、ガンキャノンなんかの砲撃戦仕様機はもっと後方から攻撃した方が有用に扱える。

 無理に足並みを揃えさせようとしているせいで、逆に足並みが揃わなくなっている……というのが、基地を包囲する軍勢の現状だった。

 

「しかし、ここまで防衛戦力を破壊できれば、もうあと一押しだ。敵はおそらく、戦車とMSの連携を捨てる。基地内にMS部隊を進攻させ、戦車隊は基地からの脱出を図ろうとする戦力を殲滅する役目を任せられるはずだ」

 

「自分も同意見です。相手があのセモベンテ隊だというのなら……絶対にそうします」

 

 フェデリコが油断できない相手だということもある。しかし、それ以上に彼は憎い僕たちサブナック隊を自分の手で潰したいはずだ。

 おそらくは今晩、奴は夜襲を仕掛けてくる。そこで僕たちに引導を渡すつもりだ。

 

「敵の布陣が見えてきましたね。MS隊は基地内に進攻。その周囲を取り囲むように戦車隊を配置する……相手のMS隊の数を考えるに、四方から攻め立ててくるはずです」

 

「我々のやるべきことは二つ。一つは基地の包囲を突破し、内部の味方と合流すること。もう一つは、敵の指揮車両を攻撃し、撃沈することですね」

 

「うむ。敵の戦力は我々を凌駕している。しかし、敵の意識が基地に向いているおかげで、その背後を突くことは容易だ」

 

 モニターに基地周辺の地形と、敵の布陣を表示する少佐。

 その一つ一つを動かしながら、彼は作戦を発表していく。

 

「まず、全機で敵の包囲の一角を崩す。できる限り迅速に動き、次の作戦行動に移ってもらいたい」

 

「これはいざという時のための脱出ルートを確保しておく意味もあるんですね?」

 

「ああ、その通りだ。敵の包囲を崩したら、そこからは部隊を分ける。背後から現れた我々に敵も驚き、混乱するだろう。その間にレッドチームは敵の目から逃れられるこのルートを使い、指揮車両に接近してくれ。残りのメンバーは基地内で応戦している味方に順次合流、レッドチームが指揮車両を墜とすまで時間を稼いでもらいたい。チーム分けはこうだ」

 

 作戦を解説した後、モニターにチームの割り振りを表示するシュマイザー少佐。

 ざっと名前を確認した僕は、自分が単独で動く遊軍としての立ち位置を与えられていることに気付く。

 

「少佐殿、レオンハート曹長はチームではなく一人で動くんですか?」

 

「ああ。彼の機体は我々のMSの性能を遥かに凌駕している。無理に足並みを揃えようとすると、逆に彼の脚を引っ張りかねない。故に、単独で動いてもらう……構わないな、曹長?」

 

「はい、問題ありません」

 

 出会って間もないというのに、シュマイザー少佐の頭の中には既に僕たちのデータも入っているようだ。

 これがあの【ジオニックフロント】を攻略する実力を持った指揮官ということか……と思いながら、僕は少佐の判断に同意する。

 

「ブリーフィングは以上だ。この作戦は迅速さはもちろん、守備と攻撃の役割分担も重要となる。防衛に回る部隊が敵を苦戦させられれば、その分レッドチームの存在も奴らの頭の中から消えるはずだ。レッドチームも、味方の犠牲を抑えるために迅速に指揮車両を破壊してくれ……以上。機体の確認が終了次第、出撃だ。各員の奮戦に期待する」

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