ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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twilight(連邦視点)

『こっ、こちらブラック小隊、バクスリー! もう持ちこたえられない! 助けてくれえっ!!』

 

「そうだ! 惨めに泣き叫べ! お前たちには、無様なその姿が相応しい!!」

 

 目の前のザクが発したであろう救難要請を聞きながら、私は大声で吠えた。

 サーベルを振るってその腕を吹き飛ばし、片腕になったザクを蹴り飛ばしても、心の中の怒りが消えることはない。

 

 どれだけ悲鳴を上げ、どれだけ無様な死に様を晒そうとも、私がジオンを許すことなどないのだ。

 そう……私は決して、ジオンを許さない。私から何もかもを奪った極悪非道の連中は、皆殺しにしてやる。

 

 オーストラリア、シドニー……私の故郷。

 軍に所属し、なかなか帰ることもできなかったけど、大切な家族と友達が住んでいたその故郷は……ジオンが落としたコロニーによって破壊された。

 

 父も母も弟も、友人も恩師たちも……全員、ジオンの非道な作戦によって殺された。

 何もかもを奪われた憎しみが、怒りが、今の私を突き動かす原動力だ。その怒りを胸に訓練を重ね、今私は、セモベンテ隊のMSパイロットとして憎いジオンの連中を追い詰めている。

 

 サブナック隊……これまで何度も戦い、その度に仲間を殺されてきた。

 しかし、もうそんな目には遭わない。今度は私たちがこいつらを蹂躙する番だ。

 

『バクスリー! 私たちが援護するから、逃げてっ!!』

 

「逃がすわけ、ないだろうがっ!!」

 

 先ほどの通信を聞いて助けに来たであろうザクのパイロット……若い女の声だ……を聞きながら、私は吠える。

 私の家族は逃げられなかった。助けを求めることすらできなかった。それなのに、お前たちが生きているだなんて許されるわけがない。

 

「死ねっ! お前たちジオンは全員死ねっっ!!」

 

『うわあああああああああああああっ!!』

 

 逃げようとするザクの背中に、ビームサーベルを叩き込む。

 惨めで無様な悲鳴を上げながら、私の目の前でザクは爆発四散した。

 

『バクスリー! このっ、よくもぉっ!!』

 

「ちっ……!!」

 

 仲間の死に激高したザクが、バズーカを撃ってくる。

 狙いは正確で、ギリギリのところで回避できたが、体勢が崩れてしまった。

 次の攻撃は避けられない……と冷や汗を流す私であったが、バズーカを構えるザクに砲弾が飛び、武装ごとその腕を吹き飛ぶ光景が目に映る。

 

「ダメよ、ソナちゃん。突出するのはあなたの悪い癖ね」

 

「申し訳ありません、ローリー中尉。助かりました」

 

 私を助けてくれたガンキャノンのパイロット、ローリー中尉からの叱責が飛ぶ。

 普段は優しく穏やかな人だが、戦場ではこうして部下を叱責する厳しさを持つ、尊敬できる上官だ。

 

 そんなローリー中尉に続き、小隊長たちからもお叱りの言葉が次々と送られてきた。

 

「ローリーの言う通りだ。お前は少し落ち着け」

 

「ジオン野郎を許せないって気持ちは俺たちも一緒だ。一人で先走るなよ」

 

「殺すために死に急いじゃ意味がない。仲間の仇を討つために、生き延びるという気持ちを忘れるな」

 

「はい……申し訳ありません」

 

 ジムのパイロットを務めるウィル少尉とコイル少尉、そしてこのC小隊の隊長であり、陸戦型ガンダムのパイロットでもあるクイン大尉からも叱責された私は、自分を気遣ってくれる先輩たちに感謝しながら返事をした。

 彼らも皆、家族や仲間をジオンの連中に殺されている。復讐したいという気持ちは、私に負けていないはずだ。

 

『うっ、ま、まだ……っ!!』

 

『リリア、下がれ! その機体じゃ無理だ!!』

 

 その怨念を押し殺しながら作戦に従事できる先輩たちはやっぱりすごいなと考える中……腕を破壊されたザクがよろよろと立ち上がった。

 立ち上がったザクを庇うようにもう一機のザクが駆け付けてくるも、マシンガンの攻撃など痛くもかゆくもない。

 背中にマウントしていたシールドで弾丸を防ぎ、敵を睨みつけた私は、心の中で燃え上がるどす黒い炎を感じながら唸った。

 

「仲間同士で助け合いか? 人の心など持たないジオン軍人共が、一丁前に人間の真似事をするなっ!!」

 

『ぐっ! ぐおおおっ!?』

 

 私が動くよりも早く、クイン隊長たちが攻撃を仕掛けていた。

 マシンガンとロケットランチャーの斉射を受けたザクはシールドでそれを防いだものの、爆風に吹き飛ばされて大破し、崩れ落ちる。

 

『アクセルっ!!』

 

「ざまあ見ろ。そんなポンコツで、ジムとガンダムに勝てるもんかよ」

 

「終わりだな。ここだけじゃなく、他の部隊も殲滅を終える頃だろう」

 

 ウィル少尉とコイル少尉が言う通り、他の小隊からも通信で敵を追い詰めているという報告を受けていた。

 唯一、敵の指揮官機と戦うフェデリコ総隊長のA小隊が苦戦を強いられているようだ。

 

 A小隊にはレックスとブリッツがいる。あの二人なら問題ないと思うが、やはり心配だ。

 クイン隊長も同じことを思ったのか、武装を確認しながらローリー中尉に指示を出す。

 

「ローリー、そのザクたちを片付けてくれ。終わったらフェデリコ少佐と合流し、敵の指揮官機を叩く」

 

「了解……悪く思わないでね」

 

 やはりローリー中尉は優しい。仲間を何人も殺してきたサブナック隊の連中に、ジオンの屑どもを殺すことに、罪悪感を抱いているのだから。

 中尉に心苦しさを味わわせるくらいなら、私が代わりにトドメを刺すと……そう言おうとした瞬間だった。

 

「こちらA小隊! 敵の増援だ! 新型のグフとザクたちが現れた!!」

 

「レックス……!?」

 

 慌てたレックスの声と、増援が出現したという情報に驚いた私がクイン隊長を見やる。

 隊長も予想外の展開に驚いたようだが、即座に冷静さを取り戻すと他の小隊に連絡を取った。

 

「B小隊、聞こえるか? グフたちの相手はそちらがしていたはずだ。取り逃がしたのか?」

 

 少し前、グフたちをあと一歩まで追いつめたという報告を受けていた私たちは、相手をしていたB小隊のメンバーに語り掛ける。

 しかし……いくら待ってもB小隊からの応答はなく、徐々に違和感を広がり始めた。

 

「どうなってる? B小隊の状態は?」

 

「ショーン? マック、エリオット!? 誰でもいいから応答しろ!!」

 

「ブレイン? ねえ、返事をして! ブレイン!!」

 

 私たちと歳も階級も近いブレインに応答を求めても、返事は返ってこない。

 ミノフスキー粒子が濃いせいで通信機器に影響が出ているのだろうか? という希望的観測を抱きかけた私であったが、コイル少尉の叫びを聞いて、その願望は木っ端微塵に叩き壊された。

 

「くそっ! 戦車隊の包囲が崩されただって!? なんでそんな大事なことをさっさと報告しねえんだ!?」

 

「それは本当か、コイル!?」

 

「間違いありません! 増援が来てる! あの指揮官、どこまで俺たちの足を引っ張れば気が済むんだよ……!?」

 

 新たな敵がここにやって来た……その情報は、私たちを大いに動揺させる。

 しかし、相手が誰であろうとも大丈夫なはずだ。ジオンのザクと私たちのMSとの間には、大き過ぎる性能差があるのだから。

 

「……B小隊もそうだが、フェデリコ総隊長たちが心配だ。急いで合流しよう。ローリー、早くトドメを――」

 

 基地のこの区画を確保するより、新手の敵部隊に備えてフェデリコ総隊長と合流すべきだとクイン隊長が冷静な判断を下す。

 その後、ローリー中尉に早くトドメを刺すように指示を出そうとした彼であったが……その言葉が紡がれるよりも早く、大きな爆発が起こった。

 

「ちゅ、中尉!?」

 

 二機のザクにトドメを刺すべく、キャノン砲を構えていたローリー中尉のガンキャノンが……突如として、大爆発を起こす。

 何が起きたかわからずに叫んだ私は、ガンキャノンの背中が激しく燃えている様を目にして、中尉が背後から撃たれたことに気付いた。

 

 如何に頑強な装甲を持つガンキャノンでも、バックパックは脆い。

 数少ない弱点であるそこを狙い撃たれるとスラスターだけでなくキャノン砲の砲弾にも誘爆し、内部から破壊されてしまう。

 新手の出現に意識を向けていたせいで、周囲の警戒が疎かになっていた……その代償となってしまったローリー中尉のガンキャノンを、私たち全員が見つめながら叫ぶ。

 

「ローリーっっ!!」

 

「誰だ!? 誰がやった!?」

 

「敵の増援だ!! すぐそこにいるぞ!!」

 

 レーダーを確認し、未知の反応があることに気付いた私たちが武器を構える。

 ゆらり、ゆらりと燃えるガンキャノンの炎の向こう側、陽炎を纏うようにして、()()は立っていた。

 

「あいつは……っ!?」

 

 ……この戦いの初日から、疑問に思っていた。

 サブナック隊にいるはずの奴が、あの憎き橙色の蛇の姿が、どこにもないことを。

 

 見慣れたザクとは違う、新しいMSに乗っているが……間違いない、奴が来たのだ。

 

「……なあ、こいつが来た方角って……?」

 

「ああ……B小隊がいたはずだ」

 

 それでもう、全てを理解する。ショットガンの空薬莢を排出し、次の一撃に備える奴の姿を、仲間の命を奪い続ける蛇の姿を、私は睨む。

 今までどこにいたのだとか、そんなことはどうだっていい。気にしている暇なんてない。

 

 私たちにとっての夜。死を運ぶ()()が、形を持って目の前に立っている……それが、今この状況の全てだった。

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