ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

61 / 89
大蛇の牙(連邦視点)

「こちらC小隊! 黄昏だ! 奴が現れた!!」

 

「全員で囲め!! 今の俺たちなら、連携さえ取れればやれる!!」

 

 クイン隊長とコイル少尉の叫び声が耳に響く。

 ガンキャノンの残骸の向こう側、燃える炎を纏うように立つ橙色のMSは、ザクとは違う新型になっている。

 

 不意打ちとはいえ、ガンキャノンのバックパックを的確に狙い撃ったその技量はすさまじいの一言だが……今の私の頭の中には、恐れなどというものは存在していない。

 B小隊、そしてローリー中尉を殺した目の前の憎き敵に対する怒りが、私を突き動かした。

 

「よくもっ! よくもローリー中尉をぉぉっ!!」

 

「ソナっ! 迂闊だぞっ!!」

 

 卑怯な不意打ちで殺された中尉の最期が、何もわからずにコロニー落としの犠牲になったであろう家族のそれと重なった。

 シールドを前に出し、ビームサーベルを引き抜いた私は、真っすぐに黄昏の大蛇に向かって突っ込んでいく。

 

 勝算はあった。相手の武装はビーム兵器ではない。ならば、ルナ・チタニウムの装甲を抜くことはできないはずだ。

 迎撃で発射されるショットガンをこのシールドで防ぐ。そして、そのままサーベルで斬り捨てる。

 そういった絵を描いていた私は、黄昏のMSがショットガンの発射体勢に入る様を見て耐える覚悟を固めたのだが……待っていたのは、予想外の展開だった。

 

「なっ!? し、シールドが……ああっ!?」

 

 発射された弾丸はルナ・チタニウムで作られた陸戦型ジムのシールドを容易く撃ち抜いた。

 盾が貫通され、それを持っていた左腕だけでなく右手の一部にまで散弾が命中してしまった私のジムは、小さな爆発を起こして両腕が使用不可能になる。

 

 ガシャン、という音と共にポンプアクションで空薬莢を排出した黄昏は、その銃口を私へと向けた。

 やられる……! と恐怖したその瞬間、背後から飛び込んできたウィル少尉とコイル少尉のジムがマシンガンを乱射し、黄昏のMSを牽制する。

 

「やらせるかっ! このクソ野郎っ!!」

 

「こっちだって新型なんだよ! 今までとは違うぜ!!」

 

 そう叫びながら、黄昏をマシンガンで攻撃する二人であったが……黄昏は、近くの建物を上手く使ってその攻撃を回避している。

 しかし、戦闘能力を失った私のジムから奴を引き離すことは成功し、その間にクイン隊長が私に声をかけてきた。

 

「ソナ、無事か!?」

 

「私は平気です! でも、ジムが……!」

 

 私のジムは左腕を失い、右腕もマニピュレーターを破壊されている。

 もう武器を持てなくなった私の機体は、戦いに参加できなくなっていた。

 

「下がれ、ソナ! その機体じゃ無理だ!」

 

「いいえ! 囮にならなれます! 汚名挽回のチャンスを――!!」

 

「馬鹿を言うな! 相手はあの黄昏の大蛇だぞ? 死ぬつもりか!?」

 

 私が怒りに身を任せたせいで、連携が崩れてしまった。

 その失敗を取り返すチャンスが欲しいと訴える私であったが、その間にもウィル少尉とコイル少尉は黄昏と激しい戦闘を繰り広げている。

 

 マシンガンの弾を撃ち尽くし、リロードを行う余裕はないと判断した二人は、黄昏を挟み込むように位置取りながらビームサーベルを抜いた。

 

「俺から仕掛ける! 任せたぞ、ウィル!!」

 

 黄昏のMSは、モノアイを動かして真反対に位置する二人のジムを見ていた。

 自分の側から視線が外れたことを察知したコイル少尉は、その瞬間にバーニアを吹かして一気に黄昏へと突撃する。

 

「ぐっ! うああっ!! まだ、まだだぁっ!!」

 

 しかし、相手は黄昏の大蛇……やはり甘くはない。

 即座に反転したMSは私の時と同じようにショットガンを発砲し、コイル少尉のジムのシールドと片腕を破壊した。

 

 だが、私が両腕を破壊される様を見ていたおかげか、上手く体勢を作り上げたコイル少尉のジムは、シールドとそれを持つ腕を失っただけで済んだようだ。

 右腕にサーベルを持ち、よろめきながら再突進する彼のジムの反対側から、ウィル少尉のジムがサーベルを手に黄昏のMSへと斬りかかる。

 

「喰らえっ! 黄昏っ!!」

 

 上段からの振り下ろし攻撃。完璧に決まったと、そう思った。

 しかし、黄昏は信じられない反応速度を見せ、腰からサーベルを引き抜くとウィル少尉の攻撃を受け止めてみせたではないか。

 

 その反応速度はもちろん、黄昏のMSが私たちと同じビームサーベルを装備していることに愕然とする。

 二人の連携が食い止められたと思い、絶望する私であったが……この状況こそが、二人が思い描いていた場面そのものだった。

 

「よくやった、ウィル! あとは俺に任せろっ!!」

 

 片腕を失ったコイル少尉のジムが叫びながら再び突撃する姿を見た私は、ハッと息を飲んだ。

 そうだ、黄昏が装備しているのはショットガン。一発撃ったら、薬莢の排出が必要になる。

 コイル少尉を撃った直後に仕掛けてきたウィル少尉のサーベルを防ぐために、黄昏はその薬莢の排出ができなかった。

 そして今、奴のMSは片腕が塞がっている……あれならば、右腕に持っているショットガンに弾を装填することはできない。

 

 いける……! あの黄昏の大蛇を、討ち取れる。

 絶対に奴を逃がさないとばかりにサーベルでMSを押し込むウィル少尉と、その奮戦を無駄にしないために全力で突っ込むコイル少尉の隻腕のジムを見つめながら、私は勝利の予感を感じ取っていた。

 

 ――黄昏が片腕で構えたショットガンのフォアエンドが、独りでに動いている場面を見るまでは。

 

「ダメだ、コイル! 装填は終わっているっ!!」

 

「え……? あがっっ!?」

 

 私とほぼ同時にそのことに気付いたクイン隊長が叫んだ時には、もう手遅れだった。

 盾も破壊されたコイル少尉が二発目の射撃を防げるはずもなく、コックピットブロックを穴だらけにされたジムがそのまま崩れ落ちる。

 

 コイル少尉を仕留めた後、流れるような動きでウィル少尉のジムのコックピット部分に銃口を向けた黄昏は、自動で薬莢が排出されたショットガンの引き金を静かに引いた。

 

「あ――」

 

 あまりにも攻撃に意識を向け過ぎていたウィル少尉は、最後の瞬間に自分の絶望的な状況に気付いたのだろう。

 死の間際とは思えない呆けた声を最後に、ほぼゼロ距離で発射されたショットガンでコックピットを撃ち抜かれた彼のジムが後方に吹き飛び、動かなくなる。

 

「う、ウィル少尉……! コイル少尉……っ!!」

 

「油断した……っ!! 俺たちは自分たちの機体の性能に酔って、相手のMSをどこか見下してしまっていたんだ……!!」

 

 少し考えればわかることだ。ショットガンはポンプアクションを必要としているが、MSの武装として配備されているそれが、全部手動で行う仕組みになどなっているわけがない。

 片腕を破壊されればその時点で使えなくなるような欠陥武装を、我々よりもMS開発のノウハウを持っているジオンが作るわけがなかった。

 しかも、配備されたのはエース専用機だ。そんな武器を渡すわけがないだなんて少し考えればわかるはずなのに……完全に、ジオンのMSを下に見てしまっていた。

 

「こちらF小隊! 紫色のザクが増援に来た! こいつら、信じられないくらいに強い! うっ、うわあっ!?」

 

「A小隊! 新たな敵戦力が合流! かなり厳しい状況だ! 誰か、増援に来られるか!?」

 

「なんだこいつら!? 旧型のザクだろ!? なのになんでこんなに動けるんだ!? このジムが、どうしてこんな奴らにやられ――!?」

 

 気が付けば、戦場の空気は一変していた。

 私たちが有利な状況は完全に覆され、各地で苦戦の報告が上がっている。

 

 足元を掬われた……そう思った時には、もう手遅れだった。

 愕然とする私の耳に、フェデリコ総隊長からの最悪の報せが届く。

 

「こちらフェデリコ……! ビッグトレーが敵のMS部隊に制圧された。これ以上の戦闘は不可能だ。全員、この場から離脱しろ! A20ポイントで合流だ!!」

 

「そんな……負けた? あれだけ有利だったのに、こんなにあっさりと逆転されるだなんて……!?」

 

 信じられない。悪夢を見ているようだ。

 ほんの十数分前まで、私たちは勝利を目前としていたではないか。それなのに、どうして撤退戦に挑もうとしている?

 慢心のせいなのだろうか? 油断した結果、私たちは手の中にあった勝利を取りこぼしてしまった?

 

 そんなふうに呆然とする私へと……クイン隊長が指示を出す。

 

「ソナ、聞いたな? A20ポイントだ、先に行け」

 

「隊長!? 何を……?」

 

 ビームサーベルを手に、隊長のガンダムがゆっくりと前に出る。

 黄昏のMSもショットガンの弾が切れたのか、銃を捨てると手にしていたサーベルの光を揺らめかせながら迎撃の構えを取った。

 

「お前のそのジムじゃ、こいつの追撃からは逃れられない。俺が時間を稼いでいる間に撤退するんだ」

 

「そんな!? 囮になるんだったら、私が――!」

 

「言っちゃ悪いが、お前じゃ五秒ともたん。安心しろ。量産品とはいえ、俺はガンダムに乗ってるんだぞ? 倒すまではいかずとも、時間を稼ぐことくらいならできるだろうさ!」

 

「っっ……!」

 

 隊長の言う通りだ。私が残っても、一瞬で黄昏の大蛇に斬り捨てられるだろう。

 私より腕も、機体のスペックも上であるクイン隊長に任せ、ここは撤退した方がいい。

 

「……申し訳ありません、隊長」

 

「気にするな。部下のために命を張るのが俺の仕事だ。さあ、行け!!」

 

 言われるがまま、罪悪感を嚙み殺して、私はジムを走らせる。

 一直線に走りながらも背後を振り向いた私の目に、クイン隊長が黄昏の大蛇に挑みかかる姿が飛び込んできた。

 

「黄昏……っ! お前に殺された部下たちとB小隊の仇だっ!! これ以上、お前にやらせはせんぞっ!!」

 

 そう叫びながらも、怒りに任せて動いたりはしない。

 クイン隊長はサーベルを振るい、一合、二合と黄昏と切り結んでいく。

 

 流石の技術を持つ隊長は、ガンダムの性能を存分に引き出していた。

 私たちがあっという間にやられてしまった黄昏を相手に、見事な近接戦を繰り広げる隊長が、鍔迫り合いの状態でビームサーベルを押し込みながら唸る。

 

「ローリー、コイル、ウィル……! 他にも、お前に殺された仲間は大勢いる! 俺たちは、お前を絶対に許さないっ!! このガンダムでならっ! あいつらの仇を――!!」

 

 じりじりと、隊長がサーベルを押し込んでいく。

 ガンダムのパワーが黄昏のMSに勝っているのだと、このままいけば、隊長はあいつを討ち取れると……撤退しながら、私は思った。

 

 これまで奴に殺された仲間たちの想いを、無念を、ガンダムの力を借りて晴らしてほしい。

 クイン隊長ならそれができると……私が心の底から信じ、願った時だった。

 

「なっ……!?」

 

 ギュイン、という静かな音が響く。それに続いて、クイン隊長の絶望したような声が響いた。

 私の視線の先、黄昏のMSと鍔迫り合いをし、少しずつ相手を押し込んでいた隊長のガンダムは今……その胸に、サーベルを突き刺されている。

 

 片方の腕で隊長のサーベルを受け止めながら、もう片方の腕で二本目のサーベルを引き抜いた黄昏は、ビームの刀身を作り上げながらそれをガンダムの胸に突き出したのだ。

 

 伸びた刃は胸部装甲を貫通し、バックパックまでもを貫く。

 赤熱した装甲が溶解し、徐々に崩れていく中……自らの敗北を悟ったクイン隊長が大声で叫ぶ。

 

「が、ガンダムでも、勝てないのか……!? この化物に、俺たちは――ぐあああああああああっ!!」

 

「隊長ーーーっ!!」

 

 断末魔を上げたクイン隊長のガンダムが、大爆発を起こす。

 吹き飛んだガンダムの首が地面を転がり、黄昏のMSの足元で止まる様が目に映った。

 

「みんな、みんなやられた……! あいつに、ジオンに殺された……っ! ちくしょう……! ちくしょうっ!!」

 

 ほんの少し前まで一緒に戦っていた仲間たちは、もうこの世にいない。

 あの男……黄昏の大蛇に、全員殺されてしまった。

 

 私だけが生き延びて、他のみんなは殺された。私を守るために、みんなは犠牲になったのだ。

 

「絶対に許さない……! お前たちは私が殺す! みんなの仇は、絶対に討つ……!」

 

 もう数え切れないくらいに出ているセモベンテ隊の犠牲者に、また新しい名前が刻まれる。

 その死を背負い、怒りへと変え、絶対にサブナック隊と黄昏の大蛇をこの手で屠ってみせると……涙を流しながら、私は強く自分自身に誓うのであった。




本当にすいません。
今回、汚名挽回の誤字報告をたくさんいただいたのですが、あれはZガンダムでのジェリドの発言のパロディ的な感じなので、わざとああしています。

わかりにくいネタを入れてしまって申し訳ありません。
誤字報告も、いつも本当にありがとうございます。助かってます。
あれはわざとなんだよっていう連絡と、謝罪でした。

あとガンダムの首が転がってるシーンは某クソゲーのパロディです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。