ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
11月1日、オデッサにて、壺の人と
「ふぃ~……みんな、お疲れ!」
「悪いな、クロス。俺たちの訓練に付き合わせてしまって……」
「気にするなよ。早く新しいMSに慣れてもらわないと、実戦で実力も発揮できないだろ?」
格納庫でアクセルとそんな会話を繰り広げながら、僕は凝った肩を解すように首を回す。
ここ最近、過密なスケジュールをこなしているせいで疲労が溜まってはいるが、この先の展開を考えるとここでの苦労がそのまま生存確率につながるため、四の五の言っている余裕はない。
今日もそれなりにスケジュールが詰まっている僕は、MSから降りてこちらへと駆け寄ってくるリリアへと言う。
「この後はブリーフィングだ。シャワーを浴びるなら、急いでね」
「はいは~い! クロスも一緒に入る? 水の節約にもなるでしょ?」
「そのまま
「……二人とも? こんな場所で変な話をしないでくれる?」
「いいじゃん! 折角、新しいMSにも私とお揃いのタトゥーを入れてあげたんだからさ~!」
「お揃いじゃないでしょ? 君のお尻にあんなマークは入ってないよね?」
そう言いながら、僕は近くのハンガーに格納されているドムを指差した。
わかりにくいが、あのドムの右臀部(スカートの右後方部)には僕のイフリートに刻まれているものとよく似ている蛇のマークが描かれている。
リリアの悪ノリだったのだが、それがまた余計な誤解と新しい悩みの種を生んだことは、想像に難くないだろう。
「物資もそこまで余裕があるわけじゃないんだから、そういうのは止めなって……!」
「ちょっとしたペイントなんだから大丈夫だよ! 許可も貰ったしさ!」
誰が出したのかわからないけど、こんな悪ノリに乗っからないでほしかった。
そうは思いつつも、リリアがぺんぺんと自分のお尻を叩く姿を見ると、ドキッとしてしまうことも確かだ。
緊張状態でもそういう欲はしっかりあるのだなと自分の男としての性を自覚しながら、僕はため息を吐く。
そうした後、色々と様変わりした自分とサブナック隊の状況を頭の中で振り返っていった。
宇宙世紀0079年11月1日……僕たちは、オデッサ基地にいた。
北米に並ぶジオンの地上における重要拠点であるオデッサは、徐々に集まりつつある連邦の軍勢に対抗するために緊張状態になっている。
(ちなみにノイジー・フェアリー隊は予定通り北米にトンボ返りし、闇夜のフェンリル隊は補給を終えた後で別の戦場へと旅立っていった)
僕たちサブナック隊もこれからしばらく後に発令される連邦の『オデッサ作戦』に備えて防衛戦力として招集されたわけなのだが……先の作戦において、多くの人員とMSを失ってしまった。
そんな僕たちをオデッサで待っていたのは冷たい叱責の声……ではなく、予想外の好待遇だったのである。
大破したザクたちは修理できるものは修理し、そうでないものは新しいザクを用意してもらえた。
しかもその際、ガスのグフたちも含めて新型のパーツに組み替えられるものは組み換え、性能の上昇を目的としてのカスタムまでしてもらえたわけだ。
極めつけは、ジオンの新型MSであるドムタイプを三機も回してくれたことである。
リリアとセシリアにドムを一機ずつ、アクセルには砲戦仕様に改造したドム・キャノンが配備されるという好待遇っぷりだ。
僕のイフリートもミアから渡されたであろうマニュアルの下、徹底的な整備がされている。
同じ特別競合部隊であるマルコシアス隊はそんなことになっていないのに、どうして……? と思いながらも、深手を負った部隊に対するこの待遇を心の底から感謝しつつ、僕たちは機体の習熟訓練や連携を深めるために時間を費やしていた。
先にも述べたが、これから間もなくして『オデッサ作戦』が発令される。
そこでは厳しい戦いが待っているだろうし、犠牲者を少なくするためにもできる限りのことをしておく必要があった。
ドムの受領と各部隊の連携の強化は、オデッサでの戦いを切り抜けるための大きな力になる。
訓練、ブリーフィング、訓練、会議からの訓練からのブリーフィング……と、一番最初に述べたように過密なスケジュールをこなしている僕たちは、それなりに疲労を感じつつも自分たちが着実にレベルアップしていることも感じていた。
(やれる限りのことはやろう。それが、明日につながると信じて……!)
もう本当にやれることをやるしかない僕としては、今に全力を尽くすしかなかった。
それが明日を切り開く力になると信じて進みつつ、ブリーフィングに向かおうとする僕であったが……そこに、とある人物が近付いてくる。
「クロス・レオンハート曹長……少し、時間をいただけるかな?」
「え? あっ……!?」
急に名前を呼ばれて驚いた僕は、自分に声をかけてきた人物の顔を見て、さらに驚いてしまった。
独特な髪形とこけている頬、悪人面というか目つきが悪いというか、蛇のような見た目をしているその人物へと、慌てて敬礼の姿勢を取りながら答える。
「お、お疲れ様です! マ・クベ司令!!」
「そう固くなるな。部下の習熟訓練に付き合ってやるとは、面倒見がいいじゃないか」
あまり表情を変えずにそう言う彼……オデッサ基地司令であるマ・クベ中将の言葉に、妙な圧を感じる。
褒めてもらえているはずなのにそう思えないのは、彼が悪人面だからなのだろうか? それとも、僕ですら知っている大物を目の前にして緊張しているせいなのかはわからないが、いきなりの最高責任者の登場に僕は大いに動揺していた。
(ほ、本当に、この人だけはよくわからないんだよな~……! すっごくよくしてくれてるのはわかるんだけど、それが妙に不安だ……!!)
当たり前の話なのだが、僕たちサブナック隊が再び戦力を整えられたのは、オデッサの司令であるマ・クベ中将が手を回してくれたおかげだ。
ザクやグフの修理や新MSの配備なんかは、彼が動いてくれたおかげでできたことである。
意味がわからないのは、どうしてだか僕たちにだけ好待遇をしてくれることだ。
最初は同じキシリア様の麾下部隊だからかと思ったが、立場が同じはずのマルコシアス隊にはそこまでのことはしていない。
サブナック隊だけが優遇されていることに一部からは不満の声が出ているが……実際に優遇されている僕たちとしては、どうしてそこまでのことをしてもらえるのかがわからなかった。
「この後、ブリーフィングがあることは知っているが……ヨハンソン大尉には話をしてある。少し、私に付き合ってもらえるかな?」
「は、はい……!」
この基地の責任者であり、中将というポジションのマ・クベ司令の命令を断れるわけがない。
あれ? そういえばこの人って大佐じゃなかったっけか? と思いながらもリリアとアクセルと別れた僕は、配下(多分ウラガンって人だ)を下がらせると、僕と二人だけで話をし始めた。