ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
「大変なことになった……これは、かなりの事態だ……!!」
その報せが届いたのは、11月4日のことだった。
青い顔をしているヨハンソン隊長から話を聞いた僕も、彼女と同じような顔色になっていたと思う。
知っていたはずの話だが、それがついに起きてしまった。
そんなことを考える僕へと、隊長は話を続ける。
「まさか、あのランバ・ラル隊が木馬に敗北するとは……」
ドズル・ザビ中将からガルマ様の敵討ちを命じられたランバ・ラル隊は、幾度となく木馬ことホワイトベース隊に攻撃を仕掛けていた。
そのランバ・ラル隊がホワイトベースへの白兵戦を仕掛けたのが、昨日の3日。作戦は惜しくも失敗し、多くの犠牲が出たという。
ランバ・ラル隊は実質的に壊滅……ジオンは、大きな戦力を失ったのである。
瞬く間に広まった情報はジオン内部に大きな動揺をもたらした。
あの青い巨星が堕ちたという悲報は、兵士たちの士気を低下させるに十分過ぎるほどの威力を有している。
ここ、オデッサでも話と動揺は広まりつつあり、連邦の軍勢が集結していることもあって、戦う前からとんでもない危機に瀕してしまっていた。
(こうなることは僕だってわかっていたはずだ。でも、実際の影響がこんなにも大きなものになるだなんて……!!)
エースが墜とされるというのは、ここまで周囲に悪影響を及ぼすものだということを僕はこの時初めて知った。
普段冷静なヨハンソン隊長でもこうなのだ、サブナック隊のみんなやオデッサ基地の兵士たちの動揺は、本当にすごいことになってしまっている。
これが実際に見る、ホワイトベース隊やガンダムが生み出した影響かと……改めてその恐ろしさを目の当たりにした僕が息を飲む中、ヨハンソン隊長が話をしていく。
「詳しい情報はまだ入っていない。生存者がどれだけいるのかも、木馬がどれだけの被害を受けたのかもだ。隊は壊滅したが、ランバ・ラル大尉は無事という可能性もある。巨星が堕ちてさえいなければ、兵の動揺も収まるはずだ……!」
ヨハンソン隊長はそう言っているが、僕は彼がどうなったかを知っている。
ホワイトベースに乗り込みながらも敗北を喫した彼は、戦いの厳しさを教えると共に自ら命を絶った。
おそらく、もう……ランバ・ラルは生きていない。その情報が入った時、兵士たちはどうなるだろうか?
改めてホワイトベース隊の恐ろしさを理解すると共に、士気が大幅に低下することは間違いないだろう。
そんな状態でオデッサ作戦に臨むとなれば、敗北は必至だ。
わかっていたことだが、これがジオンが負けていくまでの道のりかと……改めてその過酷さと救われなさに僕が拳を握り締める中、不意に部屋の扉が開いた。
「失礼いたします。ヨハンソン大尉、ランバ・ラル隊についての追加の情報が入りましたので、ご報告に参りました」
「……どんな情報だ?」
険しい表情を浮かべた大尉が、入ってきた兵士へと尋ねる。
ただ、彼の強張った表情を見れば、その内容は明らかだった。
おそらく彼が持ってきたのは、ランバ・ラル大尉が戦死したとの報告だろう。
絶望を広げるような情報を事前に知っていた僕は心構えができているが、隊長がどう思うのかは不安だ。
せめて、少しでも励ませるようにと考える僕であったが……兵士が告げたのは、全く予想外の報告だった。
「ご報告します……ランバ・ラル大尉は、生きております。負傷こそしておられますが、命に別状はないとのことです」
「えっ……!?」
「ほ、本当か……!? 青い巨星は、堕ちていなかったんだな!?」
……あり得ない。何かの間違いだ。
ランバ・ラルが生きているだなんて、明らかにおかしい。
いや、ジオン軍にとってはこれは本当に喜ぶべきことなのだろう。僕だって嬉しいと思う気持ちはある。
だがしかし、本来の歴史とは大きく違うこの出来事に直面した僕は、困惑を隠し切れずにいた。
(なんでそうなった? どうして大尉は生きて……?)
実際に関わり、死ぬはずの戦いに介入して命を救ったソンネン少佐とは違う。
僕はランバ・ラル隊に一切関わっていないし、戦場にも立っていないはずだ。
それなのにどうして彼が助かったのかと考えた時、僕は数日前のマ・クベ司令の話を思い出し、ハッとした。
(僕のデータを得たおかげで、グフとJ型ザクの性能が大幅に向上した……!! そのせいなのか……!?)
もしも僕が知る以上にグフとザクの性能が上がっていたとしたら、ランバ・ラル隊とホワイトベース隊の戦いも原作通りとはいかなくなる。
グフとの戦いでガンダムも大破していたし、ホワイトベース隊は原作以上の苦戦を強いられたはずだ。
そのせいでゲリラ戦に対抗するための力が落ちた。ランバ・ラル隊を退けるだけの力はギリギリ残っていたが、完全に掃討ができなかったためにラル大尉は逃げ延びることができてしまった。
可能性は十分にある。というより、これしか考えられない。
敗北こそ喫したものの、ランバ・ラルという大人物を死なせずに済んだことは間違いなくジオンにとってプラスに働くと……少しだけ喜びかけた僕であったが、そこで違和感に気付いた。
「あの……ラル大尉は生きてらっしゃったんですよね? だったらその、どうしてそんなに険しい表情なんでしょうか……?」
この情報を伝えに来た兵士は、かなり強張った表情を浮かべている。
事前に原作を知っていたこともあったが、あの表情を見たからこそ、届いたのは凶報だと僕は思った。
しかし、伝えられたのはラル大尉の生存報告……紛れもない吉報だ。
では何故、彼はそんなに深刻な表情を浮かべているのだろうか?
まだ何かがある、僕はそう思った。
ヨハンソン大尉も僕の言葉で違和感に気付き、兵士を見つめる中……ごくりと息を飲んだ彼が言う。
「続けて、もう一つ報告させていただきます。マ・クベ中将のオデッサ基地司令解任と、更迭が決まりました……!!」