ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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第二次地球降下作戦編
超ギスギス部隊


 僕が所属している特別競合部隊は、普通の部隊と大きく違う点がある。

 それは、部隊員全員が仲間であると同時に、戦功を競うライバルだという部分だ。

 

 一年戦争開戦にあたり、ジオン軍は広くMSパイロットを募集し、訓練を行っていた。

 しかし残念なことに、そういった訓練生がエリートコースに選抜されるには、才能と同じくらい家柄という部分も重視されたわけだ。

 

 同程度の腕前を有していたとしても、家柄が優れている方がエリートコースに乗り、そうでない者は僻地に飛ばされるか、人数合わせみたいな形でいつ死ぬかもわからない激戦地にいきなり配属される。

 そもそもMSの数には限りがあり、折角訓練を積んで才能を開花させても、パイロットとして認められない者だっていた。

 

 そんな状況に追いやられた者たちの中からキシリア様が才能があると見込んだ者たちを集め、そこで戦果を挙げた者は後に結成する予定のエリート部隊に配属することを約束した上で結成されたものこそが、僕が所属する特別競合部隊なのである。

 

 以前に少し話したが、この特別競合部隊は二つ存在しており、僕は第二部隊と呼ばれる方に所属していた。

 第一部隊との差はよくわからないが、二より一の方が優秀な人材が集まっているともっぱらの噂だ。

 

 話を戻すが、最初に言った通り、僕たち特別競合部隊のメンバーは全員がライバルなのである。

 周囲の人間よりも戦果を挙げ、エリート部隊への配属権利を勝ち取る……そのことを第一に考えているメンバーが集まっているから、部隊員同士仲良くなんて夢のまた夢みたいな話だ。

 

 階級に関しても敢えて最下層である二等兵からスタートし、戦果を挙げることで昇進していくというわかりやすく対抗心を煽る形を取っている。

 特に上位成績者たちは全員が全員バッチバチにやり合うライバル関係で……もうお互いが一秒でも早く死んでもらいたがっているということが感じ取れるくらいに険悪な関係になっていた。

 

 実を言えば、僕がこの部隊で何よりも重視されるMSの操縦技術に関してごまかしていたのは、その険悪なムードの中に入りたくないと思ったからというのもある。

 うっかり成績上位に入ってしまったら、戦場で背中を預けるはずの仲間から弾丸をお見舞いされかねないと恐れていた僕は、前世での記憶を取り戻してからできる限り彼らとの関わりを持たないようにしていたのだが……そういった小手先のごまかしが通用しなくなるほどに、時代は僕たちを巻き込みながら大きく動き始めていた。

 

(軍曹……こんな僕が軍曹かぁ……)

 

 『第603技術試験隊』を離れ、本来の自分の所属である特別競合部隊に帰還した僕は、ブリーフィングルームに向かっていた。

 正直、部隊を離れている間に色々と状況が変わり、今はそれを飲み込むのに必死である。

 

 レビル将軍が脱走し、連邦とジオンの戦争が続くことは知っていたが、その後に続くあれこれによって、この特別競合部隊にも様々な変化が起きていた。

 その内の一つが、二等兵から一気に軍曹まで階級が上がったことだ。

 ちなみにこれは僕が特別なのではなく、地球侵攻作戦の発令と共に本格的に競合部隊が活動開始するということで、体裁を整えるためのものでもある。

 

 ただ、ある意味特別な部分もあって……一等兵、上等兵、伍長を飛び越して一気に軍曹まで昇格したことも驚きだが、さらに驚くべきことに第二部隊のほとんどのメンバーは伍長止まりだったということだ。

 軍曹まで昇格したのは、ブリーフィングルームに集められている一部の精鋭メンバーのみという話を小耳に挟んだ僕は、かなり嫌な予感を覚えていた。

 

(みんな、ブリティッシュ作戦に参加して手柄を立てたんだよな……僕がそこに加わったのは、サラミス級を落とした報告が部隊長に伝わったからか……?)

 

 キャデラック特務大尉も言っていたが、特別競合部隊のメンバーはあのブリティッシュ作戦に参加していた。

 そこで連邦軍と戦闘を行い、少なからず手柄も立てたはずだ。

 

 そういったメンバーが集められているということや、地球侵攻作戦が発令されたばかりという状況を考えると……ブリーフィングルームで何を行うかも自ずと理解できる。

 第二部隊の中から、第二次地球降下作戦に参加するメンバーが集められ、その説明を受けるのだ。

 

 正直、地球での戦いは泥沼も泥沼の苦し過ぎるものになると知っているから、あまり行きたくはなかったが……『第603技術試験隊』での経験を経て、僕はできる限り誰にも死んでほしくないと思うようになった。 

 それはもちろん、僕のことをライバル視してくる部隊の仲間たちもそうだ。

 重力戦線は厳しいものになるが……その中で僕の力がみんなを助けられるならそうしたいと、強く思っている。

 

 やれるだけのことはやろう。まずは仲間たちとコミュニケーションを取り、協力関係を築くのだ。

 そうとも、ライバルとはいえ、これから共に戦う仲間になるのだから、警戒する必要なんてないはず。

 ブリーフィングルームの前までやって来た僕は、深く息を吸うと共に扉を開け……中に足を踏み入れると共に、三秒前までの能天気な自分の考えを後悔した。

 

「来たかよ、カス野郎」

 

「えぇ……?」

 

 部屋の中には既に集まっていた仲間たちがいて、僕に向けて一斉に嘲笑や敵意を向けてきていた。

 あるいは僕に興味はないとばかりに無関心な態度を取る者もいて、ここが自分にとってアウェーであることを理解した僕へと、一人の男が声をかけてくる。

 

「よう、クロス。ポンコツパプアで行く、楽しい休暇の旅はどうだった?」

 

「ガス……そんな言い方は止めてくれ。僕もパプアのみんなも、命懸けで任務に臨んだんだ」

 

 ガス・デズモンド……それが僕に声をかけてきた青年の名前だ。

 歳は僕と同じ十八。茶色い髪をソフトモヒカンにカットしている、功名心と野心の強い男である。

 成績は第二部隊の中で一位。やや向こう見ずなところがあるが、MSでの格闘戦においてはかなりの実力を持つと評されていた。

 

「命懸け? 命懸けだと? そういう言葉はな、最前線で連邦のクズどもと戦った俺たちが言うべき言葉なんだよ。お前はただ、ゆっくりのんびり後方で届け物をしてただけじゃねえか」

 

 僕をそう嘲笑うガスだったが、実際に僕が何をしていたかは知らないのだろう。

 『第603技術試験隊』の任務内容はそう簡単に話していいものではない。ヨルムンガンドに関する情報やルウムで何があったのかも話すわけにもいかない僕は、自分が何をしていたかを言わずにただ黙っていた。

 

「納得いかねえぜ。命懸けの戦いをした俺たちと、ブリティッシュ作戦に参加すらしていなかったお前が、どうして同じ階級なんだ? お前はどんな手段を使ったってんだよ? なぁ!?」

 

「……さあ、僕に聞かないでくれよ。僕だってここに呼ばれて戸惑ってるんだからさ」

 

 それが向けられている敵意の理由か、とガスの言葉を聞いて僕は全てを理解した。

 まさか僕が護衛任務の最中にサラミスを二隻沈め、ルウム戦役にも一応参加していただなんて知る由もないみんなは、ブリティッシュ作戦で手柄を立てた自分たちと僕が同じ階級でいることに腹を立てているのだろう。

 

 ガスと彼の取り巻きである男子たちに睨まれながら、自分が置かれている状況や彼らの気持ちを理解していった僕は、そこであることに気付き、小さな声で呟く。

 

「ヘンリー……そうか、彼は……」

 

 ガスの取り巻きの一人、ヘンリー・シモンズ。

 成績十二位であり、普段からガスと一緒に行動している彼の姿が、今ここにない。彼のために空けられている席もない。

 

 おそらく彼は、ブリティッシュ作戦で命を落としたのだろうと……悲しい現実を理解して顔を伏せた僕へと、ガスが吐き捨てるように言う。

 

「ああ、あいつはノロマだったからな。セイバーフィッシュに取り囲まれて、撃ち落とされちまったんだよ。本当、トロい奴だぜ!」

 

「ガス、何を言ってるんだ? 仲間が死んだんだぞ? なんで喜べる!?」

 

「はぁ? 仲間だって? 馬鹿言ってんじゃねえよ。俺たちはライバルだ、エリートとして認められるためにお互いを蹴落とし合う、敵同士なんだよ。そのライバルが勝手に自滅してくれたんだから、喜ぶに決まってんじゃねえか!」

 

 ヘンリーとガスはそれなりに仲が良かったはずだ。しかし、ガスは仲間であり友人でもあるヘンリーの死を、侮辱しながら笑ってみせた。

 その態度が信じられなかった僕が愕然とする中、ケラケラと楽しそうな笑い声が響く。

 

「あははははっ! そんなふうに笑ってるけどさ~……ガスの方こそ、ヤバいんじゃないの?」

 

「ああ? 何言ってんだよ、リリア?」

 

 急に笑い声を上げたかと思えば、意味深な笑みを浮かべながらガスにそんなことを言ったのは、成績第九位のリリア・ヴァレンタインだ。

 メスガキという言葉がぴったりな雰囲気の彼女は、ケタケタと笑いながら訝しむガスへとこう答える。

 

「だって、ヘンリーはガスが指揮を執ってた小隊のメンバーだったじゃん! ヘンリーが死んだってことは、ガスの指揮能力に問題があったってことじゃないの?」

 

「なんだと……!?」

 

「……確かにね。私たちの中で唯一の戦死者を出した小隊の指揮官であるあなたには、大きな責任があるはずよ」

 

「MSの操縦技術はあっても、小隊長としての能力は別ってことだな。こりゃあ、マイナス評価喰らってんじゃねえの?」

 

 リリアに同意するように、成績二位のセシリアと三位のオリバーがガスへと言う。

 成績が近いこの三人の仲は特に険悪で、ライバルたちから煽られたガスは顔を真っ赤にしながら叫んだ。

 

「俺は悪くねえ! ヘンリーの奴がノロマだったからやられたんだ! 俺はあいつに足を引っ張られた被害者なんだよ!!」

 

「あははははっ! 必死過ぎて面白~っ!」

 

「ダッサ。自分でもマズいって自覚があるから、そこまで必死になるんだろ?」

 

「余裕のない男って格好悪いわよ? 少しは落ち着きを身に着けなさいよ……って、あなたに言っても無駄でしょうけど」

 

(そ、想像以上のギスギス感……! ウチのトップ層って、こんな感じだったんだ……)

 

 なんだかもう色々とマズい気しかしない。というより、終わってる。こんな状態で連携なんて取れるのか?

 みんなが参加したブリティッシュ作戦も最初から最後まで戦闘してたわけじゃなくて、指定のポイントまでコロニーを護送し、その間に戦闘を行うくらいのものだったはずだ。

 

 相手はセイバーフィッシュを基本とした戦力だけだったし、その程度ならこのバラバラ感でもどうにかなるかもしれないが……これから始まる地球降下作戦ではそうはいかない。

 せめて敵のMSが出てくるまでには協力関係を構築しないと、勝負にならないぞ……と言い争いを続けるみんなを見つめながら僕が考えていた時、ブリーフィングルームの扉が開き、第二部隊の総隊長殿が中に入ってきた。

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