ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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使い捨ての屍食鬼たち

「前方、敵戦車部隊です!! 上空からはセイバーフィッシュが来ています!!」

 

「弾幕を張れ! 対空防御だ!! 前方の戦車にも注意しろ!!」

 

 山道を進む僕たちサブナック隊は、敵の猛攻を凌ぎながらどうにか進軍を続けていた。

 今までのように個人が好き勝手に動くのではなく、情報を共有しつつ迫る敵に対処しているおかげで、大きな被害は出ていない。

 チームワークを活かそうという考えの下、これまで準備してきたものがしっかりと花開いている。

 

 上空の戦闘機に関してはドムキャノンを受領したアクセルを中心とした対空戦闘部隊が対応し、地上からの攻撃には僕やヨハンソン隊長が機動力で掻き回しながら着実に潰していく。

 ザクに乗るみんなはその援護をこなし、流動的に役目を変化させていくことで、どんな状況にも対応できるフォーメーションが出来上がっていた。

 

「足を止めるなよ! ゲリラ戦を仕掛けている二部隊のためにも、なんとしてでもここを奪還するんだ!!」

 

 ヨハンソン隊長の声に反応しながら、敵の本隊を目指して前へ前へと進軍する僕たち。

 戦車隊と戦闘機を蹴散らしていく最中、強いプレッシャーを感じたのとほぼ同時にリリアの叫びが響く。

 

「上っ! タンクがいるっ!!」

 

 闇夜のフェンリル隊が進む道と僕たちが進んでいる道を隔てる丘の上、そこに量産型のガンタンクが並んでいた。

 地の利を生かし、頭上から砲弾を浴びせてくるガンタンクは、量産型といっても十分過ぎるほどの脅威がある。

 

「あの野郎! こっちの攻撃が届かないからって好き勝手しやがって……!!」

 

「数が多い! 厄介なところにいてくれるな、本当に!」

 

 ほぼ固定砲台としての役目しかない量産型ガンタンクだが、この頭上から降り注ぐように浴びせられる砲弾は脅威でしかない。

 こちらはジャイアント・バズーカやマゼラトップ砲で対抗できなくもないが、上を取られているというのはかなり厄介な話だ。

 

 どう対応するか……とバズーカを構えながら攻撃を回避していた僕であったが、その目に一機のガンタンクが飛んできたビーム砲に射抜かれて大爆発を起こす様が飛び込んでくる。

 ハッと息を飲む中、僕たちの上空を巨大な影が通過していくと共に愉快気な声が聞こえてきた。

 

「はははははっ! 死ね! 連邦のゴミ共がっ!!」

 

 MA(モビルアーマー)『アッザム』……いや、その装甲を強化した機体だから、『アッザム改』とでも呼ぶべきなのかもしれない。

 弱点である巨体をカバーするように追加された装甲のおかげで防御力は格段に上昇し、マゼラトップ砲の直撃にも耐えられるとのことだ。

 攻めに関してもビーム砲での遠距離攻撃と特徴的な武装であるアッザム・リーダーによる接近してきた敵への対処も兼ね備えているため、隙がない。

 

 現に長射程を誇るガンタンクの射程外から攻撃しているところを見ると、その脅威度はかなりのものに思えた。

 

「クローディオだけ楽しんでズルいなぁ……! 俺たちの分も残しておいてくれよ!」

 

「クククッ! お前たちの出番は後だ、後! この先に、獲物がわんさかいるんだからな!」

 

 丘の上を確保し、僕たちに対して有利を握っていたであろうガンタンク部隊が、さらに上である上空からの攻撃で殲滅させられていく。

 皮肉なその状況を見ながら、通信機から聞こえてくるグール隊の声に眉をひそめる僕へと、アクセルが声をかけてきた。

 

「頭上からの砲撃が止んだ! 今がチャンスだ!」

 

「ああ、アクセル! リリア! 先行しよう! ついて来てくれ!!」

 

 頭上からの砲撃が止んだことで、敵の陣形に隙が生まれた。

 バーニアを吹かし、二機のドムタイプMSを引き連れながら、僕は敵の真っただ中を突き進んでいく。

 

 並ぶ61式戦車をマシンガンで蹴散らし、上空の敵はアクセルのドムキャノンに対処してもらう。

 進んだ先に配置されていたミニトレーに狙いを定めたリリアは、ジャイアント・バズーカの砲弾を次々と浴びせていった。

 

「これで、墜ちてっ!!」

 

 一発で戦艦を墜とせるとも言われているジャイアント・バズーカを何発も浴びたミニトレーは、あっという間に戦闘能力を失った。

 動けなくなった敵が抵抗を止めたことで、僕たちもまた攻撃の手を止める。

 

「ちっ……! また手柄を取られちまったぜ。まあ、今回はドムの機動力と火力があってこその動きだし、デカブツ相手はお前らの方が向いてそうだから仕方がないけどよ」

 

「ガスも少しは殊勝なことが言えるようになったじゃん! 感心、感心!!」

 

 山道の制圧はほぼ完了した。この待ち伏せ部隊の指揮を執っていたミニトレーが動きを止めたのだから、攻撃を仕掛けてくる敵はいないだろう。

 

『こ、こちら、ミニトレー……我々はもう戦えない。降伏するから、命だけは――』

 

 動きを止めたミニトレーからの降伏宣言に返事をしようとした僕であったが……それよりも早く、飛んできたビームが敵を射抜く。

 僕があっと思った時にはミニトレーは爆発四散し、轟々と燃える炎がその場に残された。

 

「今のは……グール隊か!? どうしてこんな真似を!?」

 

 ミニトレーはもう動ける状態ではなかった。無理にトドメを刺す必要なんてなかったはずだ。

 降伏宣言中にいきなり攻撃を仕掛けるだなんて……とグール隊の残虐性に驚愕する僕であったが、彼らにとってこの程度の行為はほんの挨拶のようなものでしかない。

 

 後方から僕たちが制圧した山道を通り、ザクやドムが一気に敵の本隊へと向かっていく。

 ミニトレーと戦車隊、そしてこの場の指揮官がいるであろうビッグトレーへと攻撃を仕掛けるグール隊は、敵を蹴散らしながら歓喜の叫びを上げていた。

 

「あはははははは! 連邦の蛆虫どもが、俺たちに勝てるわけないだろうが!!」

 

「お前たちは地べたに這いつくばっていればいいんだよ! 私たちに踏みつぶされるためにさぁ!!」

 

「なんなの、あいつら……? やってることが戦争じゃあない。あんなの、ただ殺しを楽しんでるだけだよ……!!」

 

 吐き気を催す邪悪を感じ取ったであろうリリアが苦し気に呻く。

 実際、グール隊は敵を徹底的に蹂躙するだけでなく、敵の攻撃を受けた仲間を助けるどころか嘲笑いながら盾として利用する始末だ。

 

 僕たちサブナック隊も仲良くやってきたと言える自信はないが……あれはもう、そういうレベルじゃあない。

 リリアの言った通り、敵味方問わずに殺しを楽しんでいるだけだと思う僕へと、アクセルが言う。

 

「知ってるか、クロス? グール隊は俺たちと同じ、キシリア様が作った部隊らしい」

 

「そうなの? でも、だったらどうしてギレン総帥派であるロメオ少将の下についてるんだ?」

 

「わからん。そもそもキシリア様直属の部隊だというのも、本人たちが言っているだけだからな。奴らの暴挙に業を煮やした連中が本国に問い合わせたようだが、答えは沈黙だったらしい」

 

 キシリア様の直属兵を名乗って好き勝手しているが、本国はグール隊に対する回答を控えているし、派閥が違うはずのロメオ少将の麾下(正しくはギベオンのだが)として活動しているところを見ると、相当に特殊な部隊なようだ。

 作ったはいいが、どう扱えばいいのかわからなくてとりあえず放置している……というふうにしか見えないこの状況だと、上層部の無責任さに苛立ってしまう。

 

「あんなもの、人間じゃあないわ。ただの兵器よ……!!」

 

 セシリアがそう言ってしまうくらいには、グール隊は人間として異質だった。

 人を殺すためだけの兵器……というと別のある物を思い出してしまうが、そう思わせるくらいにはグール隊の面々を僕たちと同じ人間だとは考えたくない。

 

(あんなものを生み出して、放置するだなんて……キシリア様もギレン総帥も、何を考えているんだ……?)

 

 戦争に勝つためという大義名分があるとはいえ、あんなものを存在させていいのだろうか?

 この戦いが終わった後、役目を終えたグール隊はどうなるのだろうか?

 

 もしかしたら、総帥たちがこのオデッサに彼らを派遣したのは、あわよくば扱いにくいこの部隊が全滅してくれないかと期待してのことかもしれない。

 結局、生み出された彼らも上層部にとっては使い捨ての小道具になるのかと……そんなことを考える僕の耳に、ヨハンソン隊長の声が響いた。

 

「全員、聞こえるか? どうやらマルコシアス隊が苦戦しているようだ。ここはグール隊とフェンリル隊に任せ、我々はマルコシアス隊の援護に向かうぞ!」

 

 これ以上、グール隊の近くにいたくなかったから、その命令は逆にありがたかった。

 しかし、仲間が苦戦しているという状況をありがたがる不謹慎さを自分で窘めた僕は、仲間たちと共にマルコシアス隊の援護へと向かうのであった。

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