ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
「こちらサブナック隊! マルコシアス隊、聞こえるか!?」
「っっ! こちらマルコシアス隊、シュナイドだ! 援軍、感謝する!」
移動しながら通信を確認していた僕の耳に、ヨハンソン隊長とシュナイド大尉の会話が飛び込んでくる。
戦闘区域が近付いていることを理解して緊張しながらも、僕は状況を把握するために二人の会話に意識を集中させていった。
「すまない。この部隊の主力は戦車隊だと聞いていたが、MS隊が現れた。そのせいで突出していたF小隊と、そのサポートに向かったA小隊が危機に瀕している」
「残るB、D、G小隊は!? 無事なのか!?」
「無事ではあるが、戦線の維持に努めているせいで二小隊の救援に向かう余力がない! すまないが、A小隊とF小隊の救援を頼む!」
「了解だ。クロス、話は聞いていたな!? お前はホワイト小隊とブルー小隊を率いて敵に囲まれている二小隊の救援に向かえ! 残りのメンバーは私と共にシュナイド大尉たちの援護だ!」
「了解っ!!」
ヨハンソン隊長の指示に従い、分かれた小隊たちの片方を指揮しながら孤立している味方の救出に向かう。
全速力でMSを走らせた僕たちは、開けた視界の先で敵に囲まれているマルコシアス隊F小隊の姿を目にした。
「うわああああああっ!」
「た、隊長っ! 助け――っ!!」
「くそっ! くそっっ!!」
「ギー! クソ! F小隊が敵にやられている!!」
目の前で爆散した二機のザクのパイロットと、F小隊の隊長であるギー・ヘルムートの叫びが響く。
そんな彼の危機を目にしたであろうセベロの声を聞いた僕は、彼に向かって呼びかけた。
「セベロ、無事か!? 助けに来たぞ!」
「その声、クロスか!? すまない、助かった!!」
仲間のピンチに無茶な動きをしようとしていたセベロが、僕の呼びかけを聞いて動きを止める。
まだ敵に囲まれきられてはいないA小隊と、生き残りがギーだけになってしまったF小隊の状況を確認した僕は、後ろのみんなに指示を出した。
「ブルー小隊はA小隊と合流し、撤退の援護をしてくれ! ホワイト小隊はF小隊を囲む敵を後方から攻撃する! 味方の脱出を援護するんだ!」
「了解!」
僕の指示を受けたみんなの動きは素早かった。
セシリアがドムを駆り、ジャイアント・バズーカによる射撃で数機のジムを破壊したかと思えば、その後方からザクがマシンガンを乱射し、敵の動きを牽制する。
遠距離からではマシンガンは決定打にはならないが、そうしてよそ見をしている間にA小隊は確実に敵の包囲から脱しつつあった。
彼らが囲まれずに済めば、一気に状況が楽になる。僕もまた目の前の陸戦型ジムをショットガンで撃ち抜きながら、囲まれるギーへと近付いていく。
「F小隊、こちらサブナック隊ホワイト小隊のクロス・レオンハートだ! 機体は動かせるか!?」
「ああ、なんとかな……」
「なら、急いで包囲から脱出を! 僕たちが援護するから、急げ!!」
「くっ……! 了解……!!」
既にF小隊の生き残りは彼だけだ。その状況と、突出した結果、味方の足を引っ張ることになった自分に屈辱を感じているのだろう。
しかし、だからといって死んでも何の意味もない。僕の言葉に素直に従ったギーは、ザクのバーニアを吹かして必死に敵の包囲を突破し始めた。
「止まるなよ! 囲いを突破したら、そのまま味方部隊と合流する! みんなも続いてくれ!!」
既に戦いは脱出戦に移行している。元々が敵の進軍を遅らせるためのゲリラ戦なのだから、一当てした時点で撤退しても構わないはずだ。
「こんな後方にまでMSを配備してるだなんて……! 連邦は、どれだけのMSを生産しているの……?」
シュナイド大尉も言っていたが、事前の情報ではここの主力は戦車隊とのことだった。
それなのにMSが増援として駆け付けられるということは、包囲網の外周であるはずのこの位置の近辺にそれなりの数のMSが配備されているということなのだろう。
性能差もそうだが、この数の差こそがジオンと連邦の最大の差だ。
一つの戦場の実力差はどうにか埋められても、戦争という規模で見た時の国力の差はどうしたって埋められないと……敵の物資の豊富さを改めて認識した僕たちが、本隊との合流を目指して必死に逃走を続けていた時だった。
「っっ!? 何か来る! 警戒を!!」
直感で何かが近付いていることを感じた僕が叫ぶと同時に、頭上からそれが降ってきた。
複数のミサイルを回避し切れず、直撃してしまったA小隊のザクが、爆発を起こして残骸になる。
「ベネット! くそぉっ!!」
「ミサイルランチャー!? そんな武器まであるの!?」
180㎜キャノン砲とも違う、追尾性能と破壊力に長けた武装。
完全に意識していなかったミサイルでの攻撃に続き、砲弾が雨のように降り注いでくる。
どうにか撤退しつつ攻撃の出所を探していた僕は、遠くに見える部隊がこちら目掛けて砲弾を発射していることに気付いた。
しかし、今からあの部隊を叩くわけにはいかない。今は撤退を目的として動いているのだから、ひたすら逃げることしかできないのだ。
「とにかく敵の射程から離れましょう! こう移動すれば……!!」
攻撃からの回避を優先したセシリアが、多少遠回りになるが安全なルートを提示する。
一瞬、そちらに進むことを考えた僕であったが……うっすらと感じる気配を察知し、仲間たちへと言った。
「ダメだ! このまま一気に突っ切る!」
「無茶よ! 機動力のあるMSに乗ってる私たちはまだしも、ダメージを受けたマルコシアス隊のザクたちじゃ、この攻撃は避け切れないわ!」
「そう思わせて、僕たちを追い込むことが敵の策略だ! セシリアが提示したルートの先には、敵の待ち伏せ部隊がいる!!」
「!?」
僕が
あくまで勘だが、タイミングやこうして時間稼ぎしていることから考えて、まだ敵の配置は完全に終わっていないはずだ。
その前に一気に突っ切ってしまうことが一番の方策だと、そう告げた僕に応えるようにギーがザクを全力で走らせる。
「これ以上足手まといになってたまるか!! 突っ切りゃいいんだろ!?」
「ギー! だから突出するなと……ええい! A小隊も続け!!」
「……ねえ、もしかしてマルコシアス隊ってうちの連中よりも馬鹿が多いんじゃないの!?」
「かもな。だが、おかげで覚悟は決まった。突っ切るぞ!!」
砲撃の雨あられをどうにか避けながら、僕たちは一直線に進んでいく。
マルコシアス隊の二小隊はかなり苦戦しながらも直撃は避けており、流石はエースパイロット集団だと思わせるような技量を見せてくれている。
そうして命懸けの直進を続けた僕たちは、ようやく合流ポイントが見える段階までやって来た。
そのタイミングで強い殺気を感じた僕は、ペダルを踏み込んでイフリートを再加速させる。
側面から飛んできた桃色のビームが先ほどまで自分がいた空間を貫き、そのまま飛んでいく様を目にした僕は、やはりなという感覚を覚えた。
今のは遠距離からの狙撃ではなく、近距離からの攻撃だと……そのことに気付いた仲間たちが周囲を警戒する中、奴らが姿を現す。
『この移動ルート、やはり待ち伏せを読まれていたか! 個人の動きだけではなく戦術も理解してきたな、黄昏……!!』
「そりゃあ、何度もあなたたちと戦ってれば、そうなりますよ……」
誰かに言うわけではなく、コックピットの中で一人呟く。
本来とは違う位置で攻撃を仕掛けたが故に狙いの甘さはあったが、それでもやはり相手は戦巧者だ。
木々を掻き分けながら姿を現した陸戦用ガンダムとジムの姿を見つめる僕には、そのパイロットが誰なのか既にわかっている。
フェデリコ・ツァリアーノと彼が率いるセモベンテ隊……因縁の部隊との再会は、オデッサとの戦いをさらに厳しく、険しくする予感を僕に感じさせていた。