ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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閑話・黒い三連星との会話

「よう、調子はどうだ?」

 

「名前は確か、クロスとか言ったな? 大活躍みたいだったじゃねえか」

 

「あっ……! あ、ありがとうございます! 黒い三連星と呼ばれる皆さんに褒めていただけて、光栄です!」

 

「そう固くなるなよ、クロス。お前さんも暁の十字架と呼ばれるエースパイロットだ。階級も近いし、もう少し気楽になれ」

 

 戦闘が終わり、安全圏内に脱出した僕は、補給を受けている最中に合流した黒い三連星たちに声を掛けられ、背筋を伸ばした。

 初代ガンダムに登場し、そこから有名キャラとしてガンダムを知らない人たちにまでその存在を知られるようになった彼らとこうして話をしていることに緊張する僕へと、ガイア大尉が言う。

 

「敵はまだMSを運用し始めてから時間が経ってない。操縦技術に関してはそう大したもんじゃあないが……あの性能は恐ろしいな」

 

「ははっ! とは言え、俺たちの敵じゃあないだろ? 今日も山ほどぶっ潰してやったしな!」

 

「うわさの連邦の白い奴もオデッサに来ないとなると、俺たちに勝てる奴なんていないんじゃないのか?」

 

「かもな……クロス、お前はどう思う?」

 

 ガイア大尉の言葉を、マッシュ中尉とオルテガ中尉が豪快に笑い飛ばす。

 そういえばぼくはこの二人と同じ階級なんだよなと思いながら、ガイア大尉からの質問に対して、こう答えた。

 

「確かにパイロットの腕前で考えるならば、お三方に敵う敵はそうそういないと思います。しかし……()()()()ですから」

 

「ふむ、そうだな……」

 

 僕の意見に、ガイア大尉が唸りながら同意を示す。

 あまり周りに聞こえていい話ではないと判断したであろう彼は、周囲の様子を窺った後で声を落とし、僕へと言ってきた。

 

「俺も今回、連邦の物量を目の当たりにしたが……恐ろしいもんだな。こんな後方にまでMS部隊が配備されているとは思いもしなかった」

 

「だが、倒せたじゃあないか! 最初に一当てした連中はほぼ壊滅状態! マルコシアス隊を襲った奴らにもかなりの被害を与えられただろう!?」

 

「声が大きいぞ、オルテガ。お前の言っていることは正しいが、それで戦局が傾くレベルじゃないという話をしているんだ」

 

 今回の戦いの目的は、敵の後方部隊に打撃を与えることでオデッサへの進軍を遅らせるというものだ。

 その部分でいえば、僕たちの目的は達成できたし、相手に与えた被害を考えれば、大勝利といっていいだろう。

 

 しかし……丘陵地帯を制圧していた部隊と、ゲリラ戦を仕掛けた部隊、最後に出てきたセモベンテ隊という今回僕たちが相手にした部隊は、連邦軍の中のほんの一部でしかないのだ。

 

 後方も後方と言っていい部隊にもMSが配備されているということは、最前線にはこれ以上の数のMSが配置されているということだ。

 ここで勝利を掴み、後方部隊に被害を与えたとしても、戦局に大きな影響は出ない。

 一応グール隊も含めて五つのエースパイロット部隊が集結し、危険な任務に挑んでいるというのに、マクロ面で見ると敵に大した打撃を与えられていないと考えると、なかなか絶望的なものがある。

 

「マルコシアス隊だって腕の悪い連中じゃあなかった。しかし、隊員たちが好き勝手やった結果、あの様だ。これまでは戦車が相手だからどうにかなってきたんだろうが、もう相手は俺たちと同じ土俵に立ってる。これまでのやり方は通用しない」

 

「仰る通りです。僕たちも少し前の戦いで連邦軍のMSと戦い、大きな被害を出したからこそ、その脅威を認識できました。その経験がなければ、僕たちもマルコシアス隊と同じ状況に陥っていたでしょう」

 

「……作戦前に少し、マルコシアス隊のシュナイドと話したんだがな。あいつもこの状況に不安を抱いていたようだ。鼓舞の方向性を間違えたかもしれないと、そう言っていた」

 

「鼓舞の方向性?」

 

「ああ。連邦の物量は圧倒的だ。だからこそ、それを覆せる一騎当千の兵士が必要だと、それが自分たちだと、そう言って隊員たちを鼓舞していたらしい。思えば、それが隊員たちの増長を招いてしまったのかと、戦功を焦る部下たちの様子を見て、苦心しているようだった」

 

「はっ……! そんなもん、そいつの責任じゃあねえだろ。若い奴は手柄を焦るもんだ。特別競合部隊だなんてものに所属してる連中は、特にな」

 

 オルテガ中尉の言うことは尤もだ。

 【ガンダム】においても若い兵士が戦功を焦ったために物語が進むだなんてことは往々にあるし、某白い悪魔もそういった兵士の独断専行から誕生したという経緯がある。

 

 しかし、その兵士が勝手な行動をした上で見事に戦死したことから考えても、もうそういった独断専行が許される状況ではなくなっているというのが現状だ。

 

 今回は僕たちがいたからギーやセベロたちを助けることができた。

 だが、一歩間違えれば彼らも、そして僕たちもやられていたかもしれない。

 

「……皆さんは、勝てると思いますか? この戦いに……」

 

「はっ! 愚問だな!! 俺たちは勝つためにここにいる、そうだろう!?」

 

「どんな戦場でも、勝つために全力を尽くすのが兵士の役目ってもんだ。まあ、連邦のMSなんて目じゃねえ。すぐに戦況をひっくり返してやるさ」

 

「そういうことだ。負けることを考えて戦いに臨む奴なんていない。お前も全力を尽くせよ、クロス」

 

「はっ……!」

 

 ……多分、ガイア大尉だけは薄々感じ取っているとは思う。このオデッサに満ちる、敗戦の空気を。

 他の二人はあまり気にしていないのだろうが、そう簡単に覆せるような戦況じゃないことは、見て明らかだった。

 

 それに、ガイア大尉だって気付いていない。僕が言う「この戦い」というのは、オデッサだけでなくジオンと連邦の戦争のことを指しているということに。

 僕が未来を知っているということもあるが、この先に待ち受けている出来事を考えると、気が重くなって仕方がなかった。

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