ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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生きて宇宙に帰るために……

(今のところ、敵影はなしか……ただ、このまま波乱なく終わりってわけにはいかないだろうな)

 

 防衛任務の最中、警戒を続ける僕はそんなことを考えていた。

 オデッサ基地中央近くに存在している打ち上げ施設から、今まさに飛び立とうとしている大型艦なんて目立つに決まっている。

 普通に考えれば、敵の司令官が乗っているであろうこの艦の発進を阻止するために連邦軍が押し寄せてきて当然だ。

 

 もうそれができてしまうくらいには、戦線は押し込まれている。

 ロメオ少将のあまりにも杜撰な采配にも責任はあるが、マ・クベ司令が指揮を執っていたとしても結果は変わらなかったことを知っていた僕からすれば、敗戦の責任を少将にどうこう言うつもりはない。

 

(結局、大局は変えられないってことか……今まで色々やってきたけど、ここで勝つことは無理だったしな……)

 

 多数の敵部隊を撃破し、ジオン側のMSの性能向上にも貢献し、エースを守り、ガンダムまで鹵獲したが……それでも、戦況をひっくり返すには至らない。

 これが国力の差かと、少し前にガイア大尉と話したことを思い返しながら心の中で呟いた僕の耳に、歩み寄ってきたザクからの通信が響いた。

 

「クロス、調子はどうだ? って、今聞くことでもないか」

 

「敵の姿が見えないというのは、それはそれで不安になるな……」

 

「ヴィンセント、セベロ……」

 

 マルコシアス隊の中でも親しい二人が声をかけてきたことで、少しだけ気を緩めた僕が彼らの名前を呼ぶ。

 小さく息を吐いた僕の傍で警戒を続けながら、二人はこう話を続けてきた。

 

「もう少しで宇宙に帰れるんだな。クロス、お前には色々と世話になった」

 

「珍しいな、セベロがそんなことを言うなんて」

 

「俺だって感謝の気持ちくらいは抱くさ。ここまで生き延びられたのは、お前の助けがあったからこそだと思う。本当にな」

 

「気にするなよ。仲間同士なんだ、助け合って当然でしょ?」

 

 宇宙に帰る直前だからか、普段とは少し違う雰囲気のセベロが僕に感謝を伝えてくる。

 彼に対して僕が返事をする中、ヴィンセントは何かを思ったようにこう言ってきた。

 

「サブナック隊に比べて、マルコシアス隊はかなりの被害が出てる。この半年間で部隊の半分以上が犠牲になった。それでもまだ、俺たちは競い合うことを止められないみたいだ」

 

「ああ……仕方がないんだろう。特別競合部隊というのは、そういう仕組みなんだからな……」

 

 作戦開始前、ヴィンセントたちが仲間内で何か言い争っていたのは知っていた。

 僕が以前に助けたギーが、不用意な発言をしたらしい。

 

 生き残った者こそが正義であり、死んだ者は運か技術がなかったと切り捨てるのが僕たち特別競合部隊の正しい考え方なのだろう。

 ただ、そうやって割り切ることが人として正しいと思えないというのが、僕やヴィンセントたちの考えだった。

 

「……今のうちに言っておくか。エリート部隊への転属おめでとう、クロス」

 

「どうしたんだよ、急に?」

 

「当たり前だろう? お前以外の誰がエリート部隊に入るっていうんだ? スコアはもちろん、それ以外での貢献もあまりにも大きい。宇宙に上がれば、お前はキシリア様からの推薦を受けて、エリート部隊入りするに決まってるさ」

 

「そうか……でも、そういうのはどうでもいいんだよな……」

 

 マルコシアス隊もサブナック隊も、上を目指して戦う若者たちの集まりだ。

 でも、僕はそういうのはどうでも良かった。最初から、みんなで生き延びることを目的に今日まで戦い続けてきた。

 

 救えなかった命も、守れなかった命も無数にある。

 今までの戦いに意味はあったのかと思いたくなることもあったが……それでも、こうして仲間たちと一つの戦いを終え、故郷に戻ることができるということに嬉しさを感じていた。

 

「全員で生き延びることが大事か……そうだな。俺ももっと早くにその考えに至っていれば、部下を死なせることもなかっただろうに……」

 

「セベロ……」

 

 少し前の戦いで小隊員を全滅させてしまった彼に、気にするなとは口が裂けても言えない。

 ただ、気にし過ぎていてもその死に心が引っ張られてしまうことも確かだ。

 

 僕が彼になんと声をかけるべきか迷っていたその時……ヨハンソン隊長の声が響く。

 

「敵影だ! MSと戦車の混成部隊が接近してくるぞ!! 全員、戦闘態勢を取れ!!」

 

「来たか……!」

 

 ふぅ、と小さく息を吐くと同時にモニターを確認し、迫る敵影を見やる。

 想像以上の数が近付いていることを見て取った僕は、そりゃあこの戦いに負けるわけだと自嘲気味に笑った。

 

「連邦にはまだまだ無傷の戦力が残ってたんだな。命懸けで後方に奇襲をかけたことが馬鹿馬鹿しくなる」

 

「レビル将軍は多少の損耗は覚悟で中核を担う部隊を守り、物量で押し切る策を打ってきたって、シュナイド隊長が言ってた。今後の戦いを考えて、MSは外周に配置していたらしい」

 

「つまり、この戦いでは連邦は戦車や戦闘機を主力として戦ってたってことか。それで負けてるってことは……」

 

 今後の戦いを考えれば、それが正解なのだろう。

 戦車や爆撃機は宇宙に持っていけないし、ここからの戦いはMSが主役になる。

 

 オデッサ作戦で今後の主力に損害を与えてしまうよりは、残っていた兵器をメインに部隊を組み、それを犠牲にしてでもこちらを押し潰す戦いをした方が後々の戦いで有利になれるはずだ。

 

 今後の戦局まで考えて采配を振るったレビル将軍と、目の前の状況すら理解できずに戦うロメオ少将。この二人がぶつかり合った時点で、勝敗は決していた。

 改めて状況の絶望さにため息を吐いた僕は、気持ちを切り替えると共に目の前の敵を睨む。

 

(今はここを生き延びることだけを考えるんだ。それが、僕のすべきことだろ……!!)

 

 みんなと生きて宇宙に帰る。それが今、僕のすべきことだ。

 負けが決まっていたとしても、できることはある。黒い三連星たちとの会話の後から抱えていた迷いを振り払うように操縦桿を握る僕の気持ちを代弁するように、シュナイド隊長が全員に指示を出した。

 

「マルコシアス、サブナックの両隊員に告ぐ……絶対に死ぬな! 全員で宇宙に帰るぞ!!」




毎日投稿はできないと思いますが、体調が復活したので更新を再開します。
仕事の穴をあけてた分を取り戻さなくちゃなので今まで通りにはいかないと思いますが、ご理解いただけると幸いです。
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