ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
「お前たち、何を騒いでいる? さっさと席に着け」
凛とした女性の声が響いた瞬間、部屋の中の空気が変わった。
ガスをはじめとした言い争いをしていた仲間たちもきびきびと席に戻り、彼女のことを見つめる。
エヴァ・ヨハンソン大尉……銀色の長髪が美しい、僕たちの上官。
担当教官でもあり、第二特別競合部隊の総隊長でもある彼女は、僕たちが話を聞く状態になったことを確認するとブリーフィングを始める。
「まず最初に報告がある。我々第二特別競合部隊は、本日よりその名を『サブナック隊』と改める。お前たちの階級が上がったのもその影響だ。特別競合部隊としての認可も下り、ここからは各員の戦功に応じて評価を付けていく。今、ここに集められているのは、エリート部隊への転属を有望視されている隊員たちの上澄み……いわば、選ばれし者たちだな」
「つまり、この中の誰かがキシリア様が設立するエリート部隊に編入していただけるということですか!?」
「まあ、そういうことだ。無論、死んだらどれだけ戦果を挙げていてもその時点でアウト。代わりの補充兵が送られてきて、そいつにチャンスが与えられる。だから死なないことを第一に考えろ。では、我々サブナック隊の初任務に就いて説明を行う」
ヨハンソン大尉の話を聞いた仲間たちは、強いやる気を見せ始めた。
自分たちが競合部隊の中でも上澄みであること、ここからの作戦で大きな活躍を見せればエリート部隊に編入してもらえることを聞かされて、期待に胸を躍らせているのだろう。
食い入るように自分を見つめる部隊員たちへと、大尉は初任務についての話をしていく。
「お前たちも知っての通り、我が軍は地球への侵攻作戦を発令した。既に第一次降下作戦は実行され、オデッサ周辺の地域を確保したという情報は聞いているはずだ」
ヨハンソン大尉の言葉に、静かに頷く。
同じように頷いた他のメンバーたちを見つめながら、大尉は話を続けていった。
「第一次降下作戦の成功を受け、上層部は第二次降下作戦の実行を決めた。我々サブナック隊もその任務に参加する。これを見てくれ」
そう言いながら大尉は背後にあるスクリーンに映像を投影し始めた。
地球とその付近の宙域を簡易的に描いたその映像を指し示しながら、作戦の詳しい説明を続けていく。
「第二次降下作戦は二つのフェーズに分けて行われる。まずは第一フェーズ、先んじて第一部隊が北米地域に降下。地上部隊として、キャリフォルニア・ベースへと進攻する。後続部隊は地上部隊の進攻に合わせ、衛星軌道上から直接降下。主要な防衛施設を叩き、連携して敵基地を制圧する……というものだ。我々サブナック隊は、第二陣のメンバーとしてこの作戦に参加する」
(地球……そうか、地球に降りるのか……)
前世の記憶を蘇らせながらも、この世界の地球は僕が暮らしているそれとは大きく違うことを自覚する。
ただ、それでもやっぱり地球に降りると思うとなんだか懐かしく思えて……それが母なる地球と呼ばれる所以なんだろうなと、この星の偉大さを理解した。
「また、本作戦への参加に合わせて、キシリア閣下がサブナック隊専用にカスタムしたザクを用意してくださった。作戦開始までに各自で乗り込み、機体の状態に問題がないか確認すると共に慣らし運転をしておけ」
そう言ったエヴァ大尉が映像を切り替えれば、そこに武装した騎士の姿が描かれたエンブレムが胸に刻まれているザクⅡが映し出される。
表示されているスペックや機体の形式番号が【MS-06F】であることを確認した僕は、これが現時点での最新鋭機に近いザクであることを理解し、小さく唸った。
(F型……! 地上戦用のJ型じゃないのか……)
ザクに関しては結構詳しい僕は、この細かな違いについて理解できている。
実はザクと一口に言っても違いがあり、少し前のルウム戦役に参加していたザクたちは、一般的に知れ渡っているザクとはちょっと違う種類なのだ。
ルウムで活躍したザクは、通称C型。ここまでの戦争では核装備に関する取り決めが成されていなかったため、対核兵器用の装甲が取り付けてあるザク。
そこから南極条約を経て、核装備の不使用を決めたために必要なくなった装甲を取り外して運動性と稼働時間を上昇させたものが、一般的に知れ渡っているこのF型だ。
CとFでは運動性に大きな違いがあり、重力下ではその差が明確に出る。
上層部も第一次降下作戦でその違いを確認したからこそ、惜しみなくF型を配備してくれたのだろう。
ちなみにJ型というのは陸戦仕様にチューンされたザクのことで、宇宙で運用できない代わりに地上では高い運動性を有しているザクのことだ。
【MS IGLOO】の有名なエピソードの中で
正直に言えば、地球に降りるんだからJ型のザクが欲しかったのだが……まあ、F型を数十機用意してくれてる時点で超太っ腹な対応なのだから、キシリア様には文句など言えない。
初陣を共に飾ったザクⅠとの別れは悲しいが、性能がいい機体に乗ることは僕たちの生存確率の飛躍的な上昇につながるわけだから、ありがたく新機体を受領することにしよう。
「作戦は五機編成の小隊で望む。私を含めた三十五名を七つの小隊に分け、総隊長である私の指揮の下で作戦を遂行せよ。今からその割り振りを発表する。このメンバー振り分けは随時変わることになるだろうが……今回、小隊長に任命された者は、仲間の命を預かっている自覚を持って行動するように」
大尉の言葉を受けた仲間たちが背筋を伸ばして自分の名前が呼ばれる瞬間を待ち始める。
僕も緊張感に息を飲んでから背筋を伸ばす中、ヨハンソン大尉は今回の小隊の割り振りを発表していった。
「レッド小隊、隊長はガスだ。メンバーは――」
真っ先に名前を呼ばれたガスが小さくガッツポーズを取る。
どうやら、ヘンリーを死なせたことに対して悪影響がなかったことを喜んでいるようだ。
……仲間が死んでいるというのにあの反応は変じゃないかと考える僕の前で、次々とヨハンソン大尉は小隊の割り振りを発表していく。
ブルー小隊はセシリアが、グリーン小隊はオリバーが……と、成績上位者が小隊長を務める形で割り振りが行われていく中、僕の名前は最後の小隊まで呼ばれなかった。
「……最後、ホワイト小隊。ここは私が小隊長を務める。メンバーはリリア・ヴァレンタイン、ロバート・ヴェルチ、アクセル・クリムゾン、そして――」
そこで言葉を切ったヨハンソン大尉が僕を見やる。
僕がその視線に応えるように彼女を見つめ返す中、大尉は静かに最後のメンバーの名を告げた。
「……クロス・レオンハート、以上五名だ。各員の奮戦を期待する。作戦開始は三月の十一日……それまでに状態を万全にしておくように。以上、解散!」
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