ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
『力を合わせる、だと……? お前と、俺たちが……? どんな顔でそんなことを言っている!? 黄昏の大蛇!!』
僕の言葉に、怒りを爆発させたであろうフェデリコの声が響く。
そうなるだろうと予想していた僕であったが、それでも渋い表情を浮かべざるを得なかった。
『お前に今まで、何人の部下を殺されてきたと思ってる!? そのお前と協力しろだと!? ふざけるな!』
「わかっている! だが、今はそれどころじゃあないんだ! あなただってそれは理解しているだろう!?」
『ぐっ……!!』
軍人としてのフェデリコ・ツァリアーノはこの状況で何をすべきか理解しているはずだ。
しかし、人間としてのフェデリコは部下たちの仇である僕と組むことを良しと考えられないでいる。
そう考えるのが当たり前だと、彼の怒りも当然のものだと考えながらも、今は協力なくして状況の打開は不可能だと考える僕の耳に、第三者の声が響いた。
『隊長、黄昏の言う通りです。ここは協力しましょう』
『レックス、お前……!?』
まだ若い部下の言葉に、フェデリコが息を飲んだことがわかった。
驚く彼へと、レックスと呼ばれた青年が話を続ける。
『核ミサイルが発射されたら、何万……いや、何億もの人たちが犠牲になるんだ! 俺たちはあいつらみたいに敵を殺すために戦ってるんじゃない! 俺たちは、市民を守る連邦軍の軍人でしょう!?』
『………』
『隊長の気持ちはわかります! でも、黄昏は俺を助けてくれた! 信じましょう、あいつの言葉と行動を!』
どうやら彼は、僕が先ほどアッザムリーダーから助けたジムのパイロットだったようだ。
部下の熱心な説得を受けたフェデリコが悩む中、クローディオへと怒りをぶつけ終えたギベオンが動き出す。
「クローディオ、お前はこの部隊と共に奴らを始末しておけ。私は基地の防衛に向かう」
「は、はい……! 殺せる、あいつを殺せるんだ……!! ひひひ、ははははははっ!!」
ミサイル発射基地を防衛する味方の援護に向かうべく、ギベオンがこの場を離脱していく。
このままでは核ミサイルの発射まで、粘られてしまうだろう。
「頼む、フェデリコ・ツァリアーノ……!! 民間人を守るために、力を貸してくれ!」
自分が私怨に囚われていては、何の罪もない多くの市民が犠牲になる。
部下の言葉と僕の説得に耳を貸してくれたフェデリコは、そこで一度自分の感情を押し殺すと、軍人としての責務に舵を傾けることを決めたようだった。
『……わかった。この一回きりだ。お前と手を組もう、黄昏……!!』
「ありがとう……! 貴方の勇気に、心から感謝する……!!」
一度限りになるだろうが、セモベンテ隊との共闘関係を築けた僕はフェデリコの英断に心から感謝していた。
ちょうどそのタイミングで仲間からの連絡を受け取ったであろうジムのパイロットがそれを報告してくる。
『報告です! 基地の情報をハッキングした結果、核ミサイルの発射を阻止する中止コードの存在が判明しました! 基地に乗り込む必要はありますが、それを入力さえすればミサイルの発射を阻止できるとのことです!』
『それで? 肝心の中止コードはわかってるのか!?』
『それが、八桁の数字であることまでしかわかっておらず……ですが、コードの存在が書かれたファイルの中に暗号文章で「獅子が持つ金貨に刻まれている」と……』
金貨……その報告を受けた僕は、咄嗟にマ・クベ司令から受け取ったあの硬貨を取り出した。
そして、そこに刻まれている数字を目にして、全てを理解すると共に口を開く。
「……00790131」
『何……?』
「南極条約が締結された日が、そのままミサイルの発射を阻止するコードになっているんだ! これを連邦の仲間たちに伝えてくれ!」
硬貨に後から刻まれたであろう八桁の数字……この戦争において、核兵器の使用を禁止する南極条約が締結された日付が、そのままこの悲劇を阻止するための抑止力として重要な意味を持ってくれている。
間違いなく、中止コードを用意したのはマ・クベ司令だ。こうなることまで予測した上で、核ミサイルの発射を阻止するための策を用意しておいたのだろう。
個人的な贈り物兼依頼料と司令は言っていたが、そんなものよりももっと重要な意味があったじゃないかと苦笑を浮かべた僕は、フェデリコへと言う。
「ここは僕が引き受ける。あなたたちはさっき離脱した指揮官機を追ってくれ」
『無茶だ! MSの小隊と最新鋭のMAを一人で相手するつもりか!? 俺たちがあいつらの相手をして、お前があの指揮官機を追った方が――』
「これがベストなんだ。ジオン軍の僕が中止コードを伝えても、連邦軍に警戒されるのがオチだ。あの男……ギベオン・グレイズの防衛部隊との合流を阻止しつつ、ミサイルの発射を阻止するには、あなたたちが動いた方がいい」
今この状況においては、一分一秒が惜しい。中止コードの真偽を疑われて時間を取られた結果、ミサイルが発射されましただなんてことになったら後悔してもし切れない。
だから、フェデリコたちに向かってもらう。セモベンテ隊を二つに分け、ギベオンの足止めと中止コードの報告を行ってもらっている間に、僕がグール隊をここに足止めしておく。
『……了解した。ここはお前に任せよう。セモベンテ隊、行くぞ!!』
これがベストだという僕の作戦に、フェデリコも同意してくれたようだ。
部下たちに指示を出す彼へと、あのジムのパイロットが言う。
『隊長、申し訳ありません! 俺はここに残ります!』
『どうした? 何かあったのか、レックス?』
『MAの電撃攻撃で機体に不具合が出ているんです。行軍についていけるかどうかも怪しい……だったら、俺はここで黄昏と一緒にあいつらを迎え撃ちます!!』
『……わかった。死ぬなよ、レックス』
『はい!』
アッザムリーダーによるダメージを理由に、ここに残ることを決めたジムを残してセモベンテ隊がギベオンを追跡していく。
それを阻止すべく攻撃を仕掛けようとするグール隊へと、僕は残ったジムと一緒に牽制射撃を加えた。
「貴様、裏切ったのか!? 連邦軍に寝返ったんだな!!」
「でもちょうどいい! これでお前を殺す正当な理由が手に入った!」
「……好きに言えよ。お前たちに何かを理解してもらうつもりは毛頭ない」
正当な理由なんてなくとも僕を殺すつもりだっただろうに、よく言うものだ。
そう考えながら、僕は武器をショットガンへと持ち替える。
敵はドムが2機にグフが1機。そして、MAアッザム改が1機。
パイロットの腕前もかなりのものなのだろうが……ここで死ぬだなんてまっぴらごめんだ。
ミサイルの発射も阻止して、生きてリリアの下に戻る。
その覚悟を固めながら、僕は仲間であったグール隊との戦いに身を投じていった。