ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
「貧乏くじって……うわっ!?」
僕の提案に若干嫌なものを感じたのだろう。迷いを見せていたレックスであったが、アッザムが放ったメガ粒子砲をギリギリで回避したことで改めて自分たちの現状を把握したようだ。
このままの状況であり続けるのも、行動を起こすのも、どちらも平等にリスクがある。
ならばせめてこちらが主導権を握る形でリスクを背負ってやると、そう判断したであろう彼からの返事が響いた。
『わかった……その提案に乗ろう。それで、何をすればいいんだ?』
「ありがとう。やることは簡単だよ」
提案に乗ってくれたレックスに感謝しつつ、作戦の内容を伝える。
とは言いつつも、作戦なんて言うのが馬鹿馬鹿しくなるくらいにシンプルな僕の提案を聞いたレックスは、少し引きながらこう言ってきた。
『……ジオンのエースって頭がどうにかなってる連中だらけなのか? それ、作戦って言わないだろ?』
「自覚はあるよ。ただ、勝ち目を作るにはこれしかない」
『そうだな……一度乗るって言ったんだ、やってやるさ』
そんな会話をしているところに、アッザムが放ったメガ粒子砲が飛んできた。
それを左右に分かれて回避したのを合図として、僕たちは作戦を実行する。
「ちっ……! こいつら、自棄にでもなったのか?」
右と左、大回りに軌道を取りながらアッザムへと接近していく僕とレックス。
その姿を見たクローディオは、舌打ちをしながら速度が速い僕の方に狙いを定めた。
「墜ちろよ! 裏切り者!!」
「ふっ……!」
距離が近付いた分、メガ粒子砲の回避は困難になっている。
しかし、ありがたいことにアッザムの砲台の動きが見えている僕は、そこから敵の攻撃の軌道を予測して前もって回避運動を取ることができた。
「なんだ、こいつ!? どうしてこの距離でメガ粒子砲を回避できる!?」
こちらを押し潰さんばかりに放たれるプレッシャーを跳ね退けながら接近してくる僕に対して、クローディオも苛立ちと恐怖を感じているようだ。
僕がさらに苛烈になる攻撃を回避し続ける中、彼はあることに気付く。
「もう一機! 連邦のMSだ!!」
そう叫んだ彼が僕への攻撃を一時中断し、反対方向へとカメラを移動させる。
回避運動を取っていたせいで突貫の速度が落ちていた僕よりも早くにレックスのジムが、アッザムの真下にまで到達しようとしていることに気付いたであろうクローディオは、焦りを多分に含ませながら再び叫んだ。
「やらせるか! もう一度、リーダーを喰らいな!!」
「ぐっ!? ぐああああっ!!」
真下にまで迫った敵を迎撃するための兵器、アッザムリーダー。
先ほど、レックスに使用したその武器を再度発射したクローディオが、ジムに乗る彼に電撃を浴びせかける。
「はははははっ! 馬鹿が! 二手に分かれて接近し、貧乏くじを引いた側が攻撃を回避している間に、もう片方が懐に潜り込む作戦だったんだろ!? 残念だったなぁ! そんなことしても、何の意味も――!?」
僕たちの作戦を打ち破ったと判断したクローディオの得意気な叫びが聞こえてくる。
しかし、違う。彼は勘違いをしている。
僕たちが望んでいたのはまさにこの状況だし、貧乏くじを引いたのは先に狙いを付けられた僕じゃなく、リーダーを喰らったレックスの方だ。
『黄昏っ! あとは、任せたぞっ!!』
途切れ途切れに聞こえてくるレックスの声を耳にしつつ、クローディオの意識が彼に向いている間にアッザムの真下に潜り込んだ僕は、マシンガンを頭上に向けて構える。
予想外の速度で接近されたことに焦ったであろうクローディオであったが、すぐに余裕を取り戻すと僕に向けて言ってきた。
「無駄だ! お前たちの武器じゃあ、このアッザムの装甲を抜くことなんてできっこない!!」
彼の言う通りだ。ビーム兵器でもなければ、増強されたアッザム改の装甲を貫通することはできないだろう。
ただし……無理に装甲を貫通させる理由なんてどこにもない。相手の弱点がわかっているのならば、そこを狙えばいいだけの話だ。
(見えた、そこだっ!!)
レックスを迎撃するために放ったアッザムリーダー、その発射口。
まだ閉じ切っていないそこに狙いを付けた僕は、引き金を引いて弾をバラ撒く。
内部に繋がっているそこに吸い込まれていったマシンガンの弾は、その奥に格納されているアッザムリーダーや内部機構に着弾すると共に次々と誘爆を起こしていった。
まさか、装甲ではなく中身を攻撃されるとは思っていなかったであろうクローディオは、爆発を起こしながら徐々に落下していく自分の機体の状態に焦りと恐怖を募らせているようだ。
「うわあああっ!? こんなっ、こんな馬鹿なっ!! 動けよアッザム! 動けっ!!」
必死になってアッザムを動かそうとするクローディオであったが、もう何もかもが遅い。
十分に飛びつける距離にまで落ちてきたMAを見つめながらビームサーベルを引き抜いた僕は、アッザムに通信を繋ぎながら言う。
「お前たちとは気が合わないと思ってたけど、どうやらそうでもなかったみたいだな。ついさっき、同じ気持ちになれた」
「わっ! わっ! わあああああっ!?」
ブースターを点火し、大きくジャンプ。
握り締めたサーベルをアッザムに突き刺し、深くまで押し込む。
「僕も、お前たちのことは気に入らなかったんだ。初めて意見が合って嬉しかったよ、クローディオ」
「うわああああああああああああああああっ!」
確実にトドメを刺した後でアッザムから離れ、電流を浴びているレックスを救出しながらさらに距離を取る。
墜落したアッザムが爆発を起こして残骸になるまでの全てを見守った僕は、ジムの中にいるレックスへと声をかけた。
「生きてるかい?」
『ああ、なんとかな……ただ、もう機体はほとんど動かない。電流二連続はダメージが大き過ぎた』
「作戦なんて名ばかりのごり押しだったからね。無茶に付き合わせてすまなかった」
プスプスと煙を上げているジムを見ながら、僕は中のパイロットを守り抜くその頑丈さに感心した。
同時に、ザクが同じ目に遭っていたら、そのパイロットもただでは済まないだろうなとジオンと連邦のMSの性能差を目の当たりにしたところで、レックスが言う。
『あんた、どうするんだ? 連邦に投降するのか?』
「いや……待ってくれてる人がいるんだ。仲間たちと合流するよ」
『そうか……』
相手が相手とは言え、同じジオン軍の部隊と戦った僕にも何らかのお咎めがあるだろう。状況を考えれば、ここで連邦に投降した方がいいのかもしれない。
だが、リリアやアクセルたち、サブナック隊のみんなを置いていくわけにはいかなかった。
大切な仲間である彼らと合流すると告げた僕に対して、レックスが言う。
『こんなこと、言うべきじゃないのかもしれない。だけど……黄昏の大蛇、核ミサイル発射の阻止に手を貸してくれたこと、俺は強く感謝している。あなたの行動のおかげで何億もの人々の命が助かるかもしれない。本当にありがとう』
今まで命を奪い合う戦いをしてきた相手からの感謝の言葉に、僕は小さく笑みを浮かべた。
立ち去る前、僕はレックスへと最後の言葉を投げかける。
「……クロス・レオンハートだ」
『えっ……?』
「クロス・レオンハート……それが僕の名前だよ。レックス、こちらこそ感謝している。僕を信じ、共に戦ってくれてありがとう」
願わくば、もう彼とは戦場で顔を合わせたくない。だけど、そんな甘い願いは叶わないことなんてわかってる。
イフリートのスラスターを吹かし、合流地点へと向かいながら……僕は、一時の共闘を果たした連邦の兵士との間に芽生えた絆を、強く噛み締めるのであった。
次回からオデッサ脱出編になると思います。