ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
危機的状況での合流
「クロス、無事だったか」
「お待たせしてしまい申し訳ありません、隊長」
核ミサイルの発射を止めてF91ポイントに向かった僕は、一足先に到着していたヨハンソン隊長に応答した。
サブナック隊のみんなも合流地点に到達できたようだが……MSの損傷がひどい。
被弾しているのは当たり前。片腕がなくなっているものや頭部が破壊されているものもいて、ここに到達するだけでも相当な困難があったことが見て取れる。
やはり、戦力に勝る連邦の包囲網を突破するのはかなり厳しいということだろう。
「こっちはまだマシだよ。マルコシアス隊の方は、犠牲者もかなり出てるし……」
そう声をかけてきたリリアに反応してマルコシアス隊の方を見てみれば、確かにかなり数が減っていた。
ヴィンセントやシュナイド大尉にセベロたちといった腕のいいパイロットたちは無事に到着できているようだが、小隊員を務めていた面々がかなりいなくなっている。
MSの損傷も僕たち以上にひどく、かなりの被害を受けたことが一目でわかった。
「ここからどうするんですか? 脱出ルートのあては……?」
「沿岸地域にまで辿り着ければ、潜水艦が迎えに来てくれることになっている。厳しい道のりになるだろうが、どうにかそこまで向かえれば……」
「厳しいなんてものじゃないですよ。そんなの、ほぼ実現不可能だ……」
シュナイド大尉の言葉に、意気消沈した誰かが言う。
ここで絶望したらダメだと言いたくはなったが、彼の言葉は正しくもあった。
核ミサイルの問題が解決したことで、連邦軍も残存戦力の掃討に注力できるようになっただろう。
オデッサの外周には部隊が配備されているだろうし、その包囲網を突破しながら背後から追いかけてくる部隊の相手もしなければならないのだ、困難を極めることは間違いない。
(しかも、みんなのMSはダメージを受けていて性能を100%発揮できるわけじゃない。かなり厳しいぞ……)
僕のイフリートは損傷が少ないが、他のみんなはそうではない。
先ほど述べたようなダメージを受けたザクたちは、移動の速度もガクッと落ちているだろう。
その状態で敵から逃げながら包囲網を突破するというのはかなり困難だと思えた。
「しかし、やるしかないんだ。ここで諦めて死を選ぶわけにはいかない」
シュナイド大尉の言う通り、ここで諦めるわけにはいかない。
だが、現実的に考えてかなり無理のある脱出作戦だということも理解している僕たちが反応に困る中、セベロの声が響く。
「隊長、提案があります」
「なんだ、言ってみろ」
「敵の追討を防ぐ殿となる部隊を置くべきです。そうしないと、我々の全滅は目に見えています」
セベロの言うことは尤もだった。
おそらく、普通に移動してもどこかで連邦軍の部隊に追いつかれ、挟み撃ちに遭う。そうならないために、後方から迫る敵軍を足止めする部隊は必要だが……問題は、その足止め部隊に参加した人間が無事に合流できるかどうかだ。
正直に言ってしまえば、死ぬ可能性が高い。
そんな危険な役目を誰かに担わせることを、シュナイド大尉たちが良しとするわけがなかった。
「ダメだ。お前の意見は理解できる。だが、危険が大き過ぎる」
「しかし! このままでは全滅です! 部隊の中には機動力が大きく低下しているMSに搭乗している者もいる! 誰かが残って時間を稼がなければ……!!」
「仮に殿を作るとして、誰が残る? 一人二人が残ったところであっという間に撃破されて終わりだ。無駄死に以外の何物でもない」
シュナイド大尉とヨハンソン隊長は移動する部隊の指揮を執らなければならないから、殿として残るわけにはいかない。
その上で、この危険な役目を引き受ける人員が三名……いや、四名は必要になる。
このまま脱出を図ってもそう上手くはいかない。良くて半壊、最悪は全滅……と考えた僕は、足止めを担当する部隊の必要性を理解した上で、口を開いた。
「僕が残ります。みんなは、先に行ってください」
「クロス……!?」
「何言ってるの、クロス!? 無茶だよ!」
「セベロの言っていることは正しい。ここで誰かが敵の足止めをしなくちゃ、最悪全滅だってあり得るんだ。だったら、機体のダメージが一番少ない僕が残った方がいい」
「っ……!!」
ダメージが大きいMSに捨て駒になれと言うのは簡単だし、兵法でいえば無事な戦力を温存できるそちらの方が正しいのだろう。
でも、僕はそんなことはしたくない。全員で生き延びることを目指して戦ってきた以上、ここで犠牲が出ることを容認した作戦を立てるなんてナンセンスだ。
足止めをした上で、生き残ればいい。僕ならそれができる……だなんて口が裂けても言えないが、それを実現するのがエースパイロットというやつなのだろう。
無茶な作戦でも、完遂できる可能性があるのならば賭けてみたい。
みんなで生き延びるにはこれしかないと、そう判断して足止め部隊に志願した僕の答えを聞いたリリアは、しばし押し黙った後に言う。
「……だったら、私も残る。嫌とは言わせないから」
「リリア、でも――」
「私のドムだって損傷は少ない! それに、機動力だってイフリートに負けてないはず! 全員で生き残ることが目的なら、私が残る方がいいはずでしょ!?」
リリアには、こんな無茶な作戦に付き合ってほしくなかった。
でも、彼女の剣幕や強い想いを感じた僕は、自分が無理をしようとしている自覚も相まって何も言えなくなってしまう。
「……死ぬのも生きるのも、二人一緒だよ。クロスを置いて一人で生き延びたって、私は全然嬉しくないんだからね」
「……わかった。でも、君も僕も死なないよ。絶対に生き延びる、約束だ」
リリアに何を言っても、残るという意思を変えることはないだろう。
それほどの覚悟を彼女から感じた僕は、リリアの意思を尊重すると共に改めて彼女と生き延びるという思いを強める。
「なら、俺も残る。お前たちだけに無茶はさせられん」
「無理よ、アクセル! あなたの機体はダメージが大き過ぎるわ!」
「だが、しかし……!!」
リリアに続いて志願するアクセルであったが、彼のドムキャノンは片腕を失い、性能を100%引き出せない状態になっている。
そのことをセシリアから指摘されても引こうとしないアクセルへと、ガスが口を開いた。
「セシリアの言う通りだ。お前が残っても逆に足手纏いになるだけだろうよ。残るなら……俺だな」
「なっ……!?」
ガスが発した一言に、アクセルだけでなく僕たち全員が驚きに目を見開いた。
あのガスが、自らこんな危険な任務に志願するだなんて……と驚愕する僕へと、彼は言う。
「これ以上、お前に手柄を立てさせるのは癪だからな。それに、お前がいないサブナック隊でエースになっても仕方がねえ。貸しを作るためにも、残ってやるよ」
「ガス……! ありがとう……!!」
へっ、と小さく笑って、ガスは通信を切った。
これで三人だと考える僕へと、今度はセベロが声をかけてくる。
「足止め部隊の発足を提案したのは俺だ。マルコシアス隊からは、俺が代表して残る」
「セベロ、クロス、俺も残る。五人いれば、どうにか危機も乗り越えられるはずだ」
「いや……ヴィンセント、お前はみんなと一緒に行ってくれ。こっちも厳しい戦いになるだろうが、包囲網を抜ける戦いも苦しいものになるはずだ。お前はそっちで、隊長とみんなを助けてやれ」
「でも……!」
「僕からも頼むよ。サブナック隊のみんなのことは、君に任せた」
セベロに続き、ヴィンセントもこちらに参加すると声を上げてくれたが、僕たちはそれを断った。
敵陣の包囲を抜く戦いも厳しくなることは予測される。マルコシアス隊のエースであるヴィンセントの力は、間違いなく必要になるはずだ。
「この四人で敵の追撃を防ぎ、脱出までの時間を稼ぎます。隊長たちは包囲網を抜け、沿岸地域で味方部隊と合流してください。僕たちも、すぐに追いつきますから」
「……わかった。すまない、クロス」
ここで誰かが残った場合と、そうでなかった場合、二つの結果をシミュレートしたであろうヨハンソン隊長が苦し気な声で言う。
シュナイド大尉は納得できず、どうにか僕たちを説得しようとしてきたが、もう覚悟は決まっている。
オデッサ防衛戦から核ミサイルの発射阻止、そして脱出の支援……休む暇もない、厳しい戦いの連続だ。
でも、全員で生き延びるためにはこの厳しい戦いを潜り抜けるしかないと自分に言い聞かせて、僕は次なる戦いへと身を投じていった。