ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
「まさか、ガスが残ってくれるとはね。自分から言い出した時はびっくりしたよ」
「うるせえ。言っただろ、お前だけにスコアを稼がせたりはしないってよ」
敵が迫ってくるまでの僅かな時間、僕は殿に残った仲間たちと会話を交わしていた。
僕たち以外にも迎撃のために残った他の部隊のザクたちの姿もあり、少しだけ心強さを感じる。
だが、連邦の物量にかかれば、この程度の部隊なんてあっという間に蹴散らされてしまうのだろう。
あくまで自分たちの役目が敵の撃滅ではなく、進軍速度を遅らせつつ撤退することだと肝に銘じる中、ガスがこんなことを言ってくる。
「お前、本当はリリアを残したくなかったんじゃねえのか? 隊長たちと一緒に撤退してほしかったんだろ?」
「……まあね。こっちが危険だってのは、わかりきってることだからさ」
撤退を続けるヨハンソン隊長たちの部隊も外周に配置されている連邦軍を突破して沿岸部に向かわなければならないが、こちらはそれに輪をかけて危険な戦いが待っている。
できることならば、リリアには殿として僕と一緒に残らず、みんなと一緒に脱出してほしかったというのが本音だが、ガスの質問に正直な想いを吐露した後で、僕は言う。
「でも、残ることになったなら覚悟を決めるまでだ。一緒に生き延びるために全力で戦うだけだよ」
「……へっ、それを聞けて安心したぜ。お前が戦況に絶望して、女と一緒に心中するだなんて馬鹿なことを考えてないってわかったからな」
「……もしかしてだけど、心配してくれたの? 僕が死ぬつもりじゃないかって?」
「馬鹿が、んなわけねえだろ。俺のライバルがヘタレじゃなくて良かったって意味だよ」
そう返してくるガスだが、その言葉が真実ではないことはなんとなくわかった。
サブナック隊が結成された頃から大きく変わった彼のことを頼もしく見つめながら、僕は静かに言う。
「……生き残ろう。それで、みんなで一緒に
「はっ……! 今さら何を言ってんだよ? 俺は
どこまでも素直じゃないが、ガスもまた全員で生き残るつもりでいることがわかって安心できた。
そう、彼と会話を交わす僕であったが……ガスは小さな声で、こう述べてくる。
「……だけど、そう思ってない奴もいるみたいだがな」
「……気付いてたか」
「そりゃあな。あんな陰気なオーラを出しまくってたら、誰だって気付くだろ」
ガスが誰のことを言っているかは僕にだってわかる。
僕たちと一緒に残ったマルコシアス隊の代表、セベロのことだ。
自分から殿を務めることを宣言した彼からは、悲壮な決意が伝わってきていた。
ガスが言う通り、今のセベロからは命を投げ捨てることすら厭わない覚悟のようなものを感じる。
「マルコシアス隊のメンバーはほとんど戦死してた。多分、セベロが隊長を務めていたA小隊のメンバーも……」
仲間との連携を重視して戦う、一度預かっていた部隊を全滅させてしまったセベロは、気持ちと意識を切り替えて再び隊長としての任務に挑んでいた。
しかし……このオデッサの激戦は、そう甘いものではない。そう簡単に生き延びられる戦場ではないのだ。
指揮官があのガルシア・ロメオだったという不幸もある。
彼らに置き去りにされたというあまりにもひどい裏切りに遭ったという予想外の事態もあった。
A小隊のメンバーが全滅したとしても、それはセベロの責任ではない。
彼に責任がないとはいえないのかもしれないが……彼のせいでそうなったとは絶対に言えないだろう。
それでもセベロは自分を責めている。僕もその気持ちは理解できた。
仲間の死を背負うことの苦しみを理解できるからこそ……セベロには、ここで死んでほしくはない。
ヴィンセントやシュナイド大尉もそう思っているだろうからと思う中、僕は迫るプレッシャーを感じ、呟いた。
「来たか……」
まだ視界で捉えられたわけではない。だが、着実に迫る敵意のようなものを感じる。
生死を分ける戦いが目前にまで迫っていることを理解し、息を吐く僕へと、リリアのドムから通信が入った。
「ねえ、クロス。この戦いで生き残ったらさ――」
「生き残ったら、じゃないよ。生き残るんだ、みんな一緒に」
「……!」
彼女が全てを言い終わる前に、僕はそう言葉を返す。
話を聞いてしまったら、なんだかガンダム世界でありがちな死亡フラグになりそうだ。
だから、敢えて言わせない。代わりに、明確な未来を答えとして述べる。
僕の答えを聞いたリリアはわずかに息を飲んだ後……少し嬉しそうな声で、こう言葉を返してきた。
「そうだね、生き残ろう。みんなで一緒に……!!」
それでいい。誰も死なせやしないし、僕もここで死ぬつもりなんてない。
ここまできて死んで堪るかと思いながら前方を注視した僕の目に、連邦軍の戦車隊とMS部隊が映る。
どれだけ厳しくても、あれをどうにかしないと僕たちに未来はない。
凌いで、守って、なんとしてでもこの戦いを生き抜いてやると誓いながら、僕はイフリートを駆り、敵部隊へと挑みかかっていった。