ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
「僕とガスが前に出る! リリアとセベロは援護を!!」
武装と機体の性能を考えれば、この陣形がベストだ。
僕のイフリートとガスのグフカスタムは近接戦闘が得意だし、リリアのドムのジャイアント・バズならば遠距離からでも十分な火力になる。
唯一、セベロのザクのみが相手に決定打を与えられないが、そこは割り切るしかない。
味方のMSも戦闘態勢に入っていく中、一足先に敵陣へと入り込んだ僕はそのままザクマシンガンを乱射して戦車部隊を蹴散らしていく。
続くガスが前衛を務める陸戦ジムをガトリングガンで牽制すれば、脚を止めたその機体をリリアのドムがバズーカで砲撃してくれた。
(よし! 敵の出鼻をくじいた! あとは無理して突っ込まず、進軍の勢いを殺していけばいい!)
先制攻撃を仕掛けるのはリスクがあったが、敵の進軍の勢いをどこかで殺しておかなければ物量差で僕たちは轢殺されてしまう。
脚を止めさせ、少しでも長く膠着状態を作る。その上でこちらが撤退する隙を作り出すことが、僕たちが生き延びるために必要な条件だ。
作戦前にある程度の補給は受けたとはいえ、無茶はできない。
特に機動力の低いセベロのザクが損傷を受けて行軍速度が落ちれば、一気に全員生還の難易度が上がることを理解しているからこそ、僕は彼を支援役として自ら前線に出ることに決めたのだ。
「ザクの部隊が戦車を攻撃してくれてる! クロス、俺たちはMSをやるぞ!」
「ああ! 前に出過ぎるなよ!!」
こちら側の戦力で陸戦型ジムに有効打を与えるためには接近戦を行わなければならない。
そして、誰かが前線を張らなければ、進軍してくる敵MS部隊の攻撃によって、ザク部隊は全滅させられてしまうだろう。
敵の注意を引き付けられるのは、機動力に優れる僕のイフリートかガスのグフカスタムしかいない。
ただ、前に行き過ぎれば集中砲火を受けてそのまま撃墜されてしまうこともわかっている僕たちは、味方部隊の配置を確認しつつ、時に敵の攻撃をいなし、時に連携して連邦軍を迎撃していった。
「奴ら、まだMSの運用が甘いな! 支援機を前に出して砲撃を繰り出す形にすれば良かったものを、逆にしたからガンタンクたちが暇してるぜ!」
「油断するな、ガス! いざとなれば、連邦はなりふり構わず味方ごと砲撃してくるかもしれないんだぞ!!」
順調にジムと戦車を撃墜していくガスに対して、セベロの叱責が飛ぶ。
ガスの言う通り、前衛をジムと戦車に任せているこの陣形は、支援機を上手く活用できない運用法だ。
これから先の戦いに備え、以降の戦いの主力となり得るMSを温存するために戦車隊を使い潰す戦い方なのかもしれないが、確かに甘さが目立つ。
あるいは、進行中にゲリラ的な方法で攻撃を仕掛けられた際にガンタンクが最前線に立っているとマズいと考えたのかもしれない。
どちらにせよ、敵に陣形を整えさせる前に鼻っ柱を殴りにいった僕たちの動きはある程度効いているはずだ。
(だけど、なんだ? 何か違和感がある。何かを見落としてないか……?)
ここまで僕たちは数の差を埋める戦い方ができている。しかし、同時に上手くいき過ぎているという感覚もあった。
様々な要因が重なっているということもある。だが、ここまで連邦が支援機や陸上戦艦による砲撃を行わないのはどういうことだ?
何かがおかしいと……そう、僕が疑念を抱き始めた、その時だった。
「っっ!? セベロ、回避行動を取って!!」
「何だって!? うわあっ!?」
「リリア! セベロっ!」
何かを感じ取ったリリアとセベロが射撃の手を止めて回避運動を取れば、彼女たちがいた場所に砲撃が飛んできた。
続いて、後方で支援射撃を行うザクたちへと次々と砲弾が降り注ぎ、立て続けに爆発が起きる。
「なんだ、今のは!? ガンタンクの砲撃か!? 奴ら、俺たちじゃなく後方部隊を狙って……!?」
接近戦を繰り広げる前線部隊を無視して、後方の支援射撃を行う部隊を攻撃する。
長距離射程を誇るMSを有する連邦軍は、まず僕たちの連携を絶とうとしているのだろう。
しかし、対応策はある。むしろこれはピンチではあるがチャンスでもあった。
「みんな、下がるんだ! 他の部隊と足並みをそろえて、指定したポイントまで引くぞ!」
そう、これでいい。僕たちが今、臨んでいる戦いは防衛戦でも侵略戦でもなく、
無理に前に進む必要も、その場に留まり続ける必要もない。敵の砲撃に対処しやすいポイントはピックしてあるから、そこまで下がりつつ相手の進軍を遅らせればいいのだ。
「ちっ! 連邦軍の連中、いい気になってバカスカ撃ちやがって……!!」
「言ってる場合じゃないでしょ? さっさと引くよ、ガス!」
ストレスこそ溜まるが、決して砲撃の勢いは強くない。これならば被害を抑えつつ撤退し、改めて陣形を組み立てられるはずだ。
……そう、頭ではわかっている。だが、どうしても僕の心からは先ほどから感じている違和感と不安が消え去ってくれない。
何かを……とても重要な何かを見落としている。そんな予感を抱いた僕は、空気を揺らす唸り声を耳にして、ハッと息を飲んだ。
「うおっ!? な、なんだぁっ!?」
「っっ……!?」
驚くガスと僕の間を、くすんだ茶色の鉄塊が勢いよく走り抜けていく。
前線を張っていたザクたちを一瞬のうちに抜き去って、後方の支援部隊の下まで辿り着いたその鉄塊は、左右の腕に取り付けられていたガトリング砲を無遠慮にぶっ放してみせた。
「うっ、うわああああっ!」
「こいつはいったい……!? があっ!?」
「し、支援部隊が……!? くそっ!! 何なんだよ、あいつはっ!?」
「あれは、まさか……!!」
数機のザクを破壊した砂塵と同じ色の鉄塊が、再び荒野を疾走し始める。
一見するとあれは巨大な戦車に見えるが……違う。あれはあの機体の真の姿じゃあない。
嫌な予感を覚えた僕が連邦軍の方を見やれば、砂埃を上げて同じ機体たちがこちらへと向かってくる様が目に映った。
姿勢の低い高速移動形態ではなく、本来の姿……僕たちが見慣れたガンタンクによく似ているその姿を目にしたガスが、呻くように言う。
「まさか、あれもガンタンクなのか? あんな速度で走る砲撃機なんてありかよ!?」
そう、そうだ。あれはガンタンクで間違いない。僕もあの機体のことは、よく知っている。
RTX-440【陸戦強襲型ガンタンク】。変形機構と驚異の機動性を有する、ガンタンクの発展形とでも呼ぶべき少数生産機……だったはずの機体。
本来は三機しか生産されていなかったはずの陸戦強襲型ガンタンクが編隊を組み、合計六機存在している様を目にした僕は、絶望的な状況に呻くことしかできなかった。