ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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師弟VS強襲型ガンタンク部隊

「ソンネン少佐……!」

 

 重力戦線が始まって間もない頃に出会い、僕に戦術のイロハを教えてくれた恩師、デメジエール・ソンネン少佐。

 優秀な戦車乗りとしての技術をMTヒルドルブのパイロットとして存分に発揮し、共に肩を並べて戦ったこともある彼が、この危機的状況に駆け付けてくれた。

 

 出来過ぎた展開だとは思いながらも、これが夢でないことを激戦の中で傷付いた体から伝わる痛みによって確信した僕が破顔する中、強襲型ガンタンクたちが進路を変え、ヒルドルブへと向かっていく。

 どうやら彼らは新たに現れた機体を優先して倒すべきだと判断したようだ。三機で再び編隊を組みながら、猛スピードで突っ込んでいく。

 

「はっ! 俺に狙いを変えやがったか。面白れぇ、MTの戦い方を教えてやるよ!」

 

 即座に自分が標的になったことを察知したソンネン少佐もヒルドルブを走らせて回避運動を取る。

 ガンタンクたちから放たれた砲撃を巧みな操縦で回避しながら、少佐は機体を駆っていった。

 

「そいつの機動力は知ってる! 走破性能もまずまずだが、こいつはどうかな?」

 

 そう言いながらヒルドルブの主砲に砲弾を装填したソンネン少佐が次なる攻撃を仕掛ける。

 こちらへと突っ込んでくるガンタンクたちの進路を阻むように焼夷弾を放ち、燃え上がる炎によって進路を変えさせて連携を乱した少佐は、そこからも適切な対応を見せて攻撃を躱し続けていった。

 

「クロス! あれってソンネン少佐だよね!?」

 

「ああ、間違いない! 僕たちを助けに来てくれたんだ!!」

 

 三機編隊のガンタンクが繰り出す連携攻撃を巨体を誇るヒルドルブで回避し続け、翻弄するソンネン少佐。

 オデッサ基地に転属してからも戦いを続けていたであろう彼の技術は、数か月前までよりもさらに磨き上げられているように見える。

 

「教科書通りの綺麗な連携だ。だが、だからこそ動きは読み切れる!」

 

 まるでランバ・ラルのようなことを言うソンネン少佐だが、実際その通りなのだろう。

 ヒルドルブもそうだが、陸戦強襲型ガンタンクはMSというよりも戦車に近い機体……扱い方もベースはそちらになってくる。

 そして、連邦にはまだMSを活用した戦いのデータは揃っていない。陸戦強襲型ガンタンクという特殊な機体の特性も考えれば、火力と走破能力が高い高機動戦車として扱う兵たちが多くいてもおかしくないだろう。

 

 歴戦の戦車兵であり、戦車教導団の教官を任されるほどの実力者でもあるソンネン少佐にとって、その動きは容易に見切れるもの……少佐の腕前もあるだろうが、回避に徹するならば容易に対処し切れる。

 そんなことを考えながらヒルドルブとガンタンクたちを見つめていた僕は、二つの事実に気付いた。

 

(あのガンタンクたち、動きが丁寧だ。ソンネン少佐の言う通り、綺麗過ぎる……)

 

 巧みな連携からの的確な攻撃。相手がソンネン少佐だからこそ仕留められてはいないが、教科書通りの戦い方というのはイコールして優れた戦い方という意味でもあり、十分過ぎるほどの脅威となり得る。

 だが……少し冷静になった僕は、あのガンタンクたちからそこまでプレッシャーを感じなかった。

 その理由が何であるか考えた時、僕ははっとすると共に答えに至る。

 

(違うんだ、パイロットが! あいつらは、【MS IGLOO】に登場したパイロットたちじゃあない!)

 

 理由は割愛するが、本来の陸戦強襲型ガンタンクのパイロットたちはあんなお行儀のいい戦い方なんてしない。

 その戦いぶりを見た者曰く「神風」……つまりは特攻としか思えない捨て身の戦い方をしていたのである。

 

 自爆装置を搭載している陸戦強襲型ガンタンクの乗り手たちは、様々な事情のせいで命を投げ捨てる覚悟ができていた。

 故に、死兵となって戦った彼らの命を省みない戦い方が陸戦強襲型ガンタンクの性能とマッチし、驚異的なまでの戦果を挙げていたのだろう。

 

 しかし、今、僕の目の前にいるガンタンクたちのパイロットたちはそうじゃない。

 正しく戦車に似たMSを駆る、ごく普通の優秀な兵士たちだ。

 

 先の一幕でもそうだ。ソンネン少佐がスモークを散布した時、そして焼夷弾を放った時……ガンタンクたちは動きを止め、安全なルートを取った。

 もしも僕が知るパイロットたちがあの機体に乗っていたら、無視して危険地帯を突っ切る。

 そうしなかったことから考えても、乗り手たちは一般的な思考を有していると、ある意味で陸戦強襲型ガンタンクの最大の脅威となり得る部分がなくなったことを安堵した僕は、同時にもう一つの事実に気付いていた。

 

(相手はソンネン少佐の動きに合わせて、教科書通りの戦い方をしてくる。ということは、つまり……!)

 

 戦車の動き方を熟知しているわけではないが、部隊の動かし方ならばMSも似たようなものだ。

 その部分はソンネン少佐に叩き込んでもらったし、そのおかげで少佐がどう動くのかも僕は予測できる。

 師匠と弟子という関係だからこそ生まれた優位性。少佐の動きを予想することはつまり、ガンタンクたちの動きを読むことにつながるのだ。

 

(あの状況なら、少佐は大きく迂回して敵の包囲から逃れようとする。ガンタンクはそれを抑えるために先回りするだろうから――)

 

 ペダルを踏み、イフリートのバーニアを吹かした僕は戦いを続けるヒルドルブとガンタンクの動きを確認しながら、次の一手を読んでいく。

 僕の予想通り、二機のガンタンクがヒルドルブを追い立て、そこを狙い撃とうとした残りの一機が足を止める様を目にした僕は、完全に意識を少佐に向けている相手にマシンガンの雨をプレゼントしてやった。

 

「よし! こいつら、装甲はそこまで強くない!」

 

 機動力重視ということもあるのだろうが、陸戦強襲型ガンタンクの全身には至る所に火器が装備されている。

 そのせいで誘爆の危険性が跳ね上がっており、僕が狙い撃った機体もどこぞの火器に引火したせいで爆発を起こし、機体が動かせなくなっていた。

 

「よくやった、クロス。俺の教えを忘れちゃいないようだな」

 

 一機が脱落したせいで連携が完全に乱れたガンタンクたちを振り切って、ソンネン少佐が僕の方向へとヒルドルブを走らせる。

 その途中で砲身を反転させた少佐は動かなくなったガンタンクに一撃を食らわせ、完全に破壊してみせた。

 

「これで残りは二機。数が減った以上、これまで通りの戦い方はできなくなる。ここで一番賢い選択は撤退だが……まあ、そう来るよな」

 

 こちらへと一直線に突っ込んでくるガンタンクたちの姿を見たソンネン少佐がそうなることを予想していたように呟く。

 おそらくはヒルドルブの装填の隙を狙った、文字通りの特攻。どちらか片方が倒されても、もう片方が相手を仕留められればいいという原作のパイロットたちと同じ捨て身の思考にあのガンタンクのパイロットたちも辿り着いたのだろう。

 

 少佐は焦ることなく、装填した砲弾を片方のガンタンク目掛けて発射し、見事に命中させた。

 残り一機になったガンタンクが仲間の死を背負って突撃してくる中、少佐は言う。

 

「一番頭の悪い手を選んじまったな。確かにこの方法なら俺に接近できるだろう。だが……お前らに仲間がいるように、こっちにも頼りになる弟子がいるんだよ」

 

 ソンネン少佐が何を考えているか、僕には理解できている。

 敵は残り一機、動きも直進というわかりやすいもの。ならばもう、何も迷うことなんてない。

 

 少佐のヒルドルブとすれ違うようにバーニアを吹かせてガンタンクへと突撃した僕は、サーベルを抜きながら思い切り上に飛び、敵の頭上を取った。

 全ての武装が対応できない位置を取った僕はそのまま落下すると共にガンタンクの真上からサーベルを突き刺し、一気にトドメを刺す。

 

 イフリートが飛び退いたのと、ガンタンクが爆発を起こしたのはほぼ同時だった。

 その爆発を見つめながらサーベルを収納した僕へと、ヒルドルブからの通信が入る。

 

「ちょっと見ない間にまたMSを乗り換えやがって……立派にエースやってるじゃねえか、えぇ?」

 

「まだまだ未熟ですよ、僕は。少佐が助けに来てくれなかったら、どうなってたことか……」

 

「はっ! 変わんねえなあ。まあ、自信過剰になってるお前なんて見たくもねえから、それでいいんだけどよ」

 

 そう、軽口を叩く少佐との会話に懐かしさを覚えた僕は緩く笑みを浮かべる。

 しかし、ソンネン少佐は一つ息を吐くと、僕へと言った。

 

「久々の再会に積もる話もあるだろうが、今はそんなことしてる場合じゃねえ。今のうちに撤退しないと、新手が来るぞ」

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