ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに! 作:じおじお
「わかってます。ですが、仲間の一人が手酷くやられてしまっていて……」
強襲型ガンタンクを退けた今が撤退の最大のチャンスであることはわかっている。
しかし、乗機に大きなダメージを受けたセベロを連れて、どう移動すべきかを僕は悩んでいた。
「リリア、セベロのザクの状態は?」
「動けはするけど、機動力は結構落ちてる。あと、これ以上の戦闘は難しいと思う」
たかがメインカメラをやられただけだ! と宣った悪魔がいるが、実際にメインカメラをやられた時のダメージはかなり重い。
視界不良に加えてバランサーの故障によって思うようにザクが動かせなくなるということは、戦闘を行うことはほぼ無理だということになる。
「どうする、クロス? 追ってくる連中から逃げられたとしても、この先には待ち構えてる連邦軍がいるんだろ? 沿岸部に逃げるなら、戦闘は避けられないぜ」
「ザクを放棄して、誰かが二人乗りをするのがベターか……それならまだ、脱出の可能性はある」
「馬鹿なことを言うな! 包囲網を脱出するにせよ、厳しい戦いが待ち受けてるのは間違いない! それを二人乗りの窮屈なコックピットで乗り切れると思っているのか!? 俺は置いて行け!」
「それこそ馬鹿なことだ! みんなで生きて帰らなきゃ、意味がないだろう!?」
頑ななセベロにそう言いつつ、僕は必死に考えを巡らせる。
こうして話している間にも時間は過ぎているし、連邦軍も迫ってきているはずだ。早く決断を下さないと、取り返しのつかないことになってしまう。
でも、だからといってセベロを置いていくわけにはいかない。
何か全員で生き残る方法はないかと可能性を模索していたところ、不意にイフリートが途切れ途切れの通信を拾った。
『こちら……チーム……少尉だ。我々は今、脱出の準備を……オデッサ周辺にいる仲間たちは……Z87ポイントに集結し……繰り返す。Z87ポイントで我々と合流……』
「クロス、聞いたか?」
「はい。脱出の準備を進めていると、確かに言っていました」
即座に地図を確認し、Z87ポイントまでの距離を確認する。
ここからそう離れておらず、しかも連邦の包囲網からは少し離れているおかげでこれ以上の戦闘をする必要もなさそうだ。
これならばザクを放棄せずとも移動し、味方部隊と合流できるかもしれない。
しかし、こちらの選択肢を取ることには、一つの問題があった。
「待てよ! Z87ポイントに向かうってことは、沿岸部には向かわないってことだろ? 隊長たちと合流しないってことか!?」
「そう、なるよね……」
Z87ポイントで待つ味方部隊と合流すれば、当然ながらサブナック隊のみんなとは合流できなくなる。
これから先の戦いを、自分たちだけで潜り抜けなければならなくなるということだ。
仮にオデッサを無事に脱出できたとしても、再度みんなと合流できるかはわからない。
今後、はぐれ部隊として活動しなければならなくなるという事実に重みを感じる僕たちへと、セベロは言う。
「だから言ってるんだ、俺はここに置いて行け! 援軍も来てくれたんだ、お前たちだけなら連邦の包囲網を突破できるはずだろう!?」
「でも、そんなことしたら、あなたは……」
「クソッ……! どうすりゃいいんだよ……!?」
セベロを救うために本隊との合流を諦めるか、それともセベロを犠牲にして沿岸部に向かうか……この選択は重要だ。
どちらが正しいのかがわからずに迷う仲間たちと同様に僕も答えが出せずにいたが、そんな僕へとソンネン少佐が声をかけてくる。
「クロス、時間がない。お前がどうするか決めるんだ。それが隊長を担うお前の役目だろ?」
ソンネン少佐は僕たちについて来てくれはするのだろうが、この部隊のメンバーではない。
だからこそ、部隊の仲間をどうするかは自分たちが……隊長である僕に決めろと、そう言ってきたのだろう。
階級が最も高い自分が決断するのではなく、セベロとチームを組んでいる僕たちに判断を委ねた。
それはきっと、間違いのない判断ではなく、後悔しない決断を下せと……そう少佐が言いたいことに気付いた僕は、深呼吸をした後で一つのシンプルな答えを出す。
(そうだ、答えは決まってる。僕は、誰にも死んでほしくないと思って戦い続けてきたんだ。なら、選ぶ道は……)
目の前に救える命がある。そのための決断も下せる。その先に困難な道が待っていることがわかっていようとも、それを突き進んででも貫きたい覚悟がある。
ならば、選択肢は一つだと……答えを決めた僕は、仲間たちへとそれを伝えた。
「……Z87ポイントに向かおう。みんなで生き延びることを優先するんだ」
「よせ、クロス! 俺は――」
「やめろ、セベロ。中尉殿がそう判断したんだ、俺たち下っ端はそれに従うべき……そうだろ?」
「っっ……!」
僕の判断に反論しかけたセベロを、ガスがそう言って制止する。
生真面目なセベロはその言葉に何も言えなくなり、それ以上は抵抗することをやめた。
「少佐はどうしますか? 自分の部隊と合流する予定があるなら……」
「へっ……! 残念ながら、俺の部隊は散り散りになって連絡も取れねえ。お前らと一緒に行かせてもらうよ」
一応、確認をしてみれば、ソンネン少佐はそう答えてくれた。
セベロを含めて五名。今後は、このメンバーで行動していくことになる。
だがまずは、Z87ポイントで待ってくれている部隊と合流しよう。
仲間たちに声をかけ、僕は目標地点を沿岸部から変更し、動き出す。
(この決断が正しいのか間違っているのかはわからない。でも――)
何が正しいのかわからないのなら、せめて自分の心に従った決断を下そう。
そう思い、選んだ道を進む僕に、仲間たちが何も言わずについて来てくれることが、少しだけ嬉しかった。