ジオン兵に転生するって知ってたら、もっと真面目にガンダム見てたのに!   作:じおじお

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キャリフォルニア・ベース攻略戦

 ――宇宙世紀0079年3月11日、ジオン軍は第二次地球降下作戦を発令。地球の北米地域に多くの部隊を送り込んだ。

 降下地点付近の基地を制圧しつつ、地上部隊は連邦軍の重要拠点であるキャリフォルニア・ベースへと進攻していく。

 

 第一部隊降下から二日後の3月13日、僕たちサブナック隊のメンバーもまた作戦に参加すべく地球へ降下。

 同じくこの作戦に参加することになった第一特別競合部隊改め、マルコシアス隊との共同任務にあたる。

 

 HLVを使って軌道上から直接攻撃目標に降下した僕たちの任務は、大きく分けて二つある。

 

 一つは地上部隊の援護。内と外からの同時攻撃でキャリフォルニア・ベースの陥落を目指すこと。

 そのために基地内の防衛施設を破壊し、相手の抵抗力を削がなければならない。

 

 もう一つは今後の地球侵攻作戦のために、潜水艦ドックを確保するというものだ。

 当たり前のことだが、海など存在しないコロニー育ちのジオン軍は宇宙船は作れても潜水艦は作れない。

 造船技術やその活用方法を学習するためにも、潜水艦ドックを確保し、あわよくば連邦軍の潜水艦を奪取して解析しつつ、戦力として併合してしまいたいという狙いがあるのだろう。

 

 地球に降下した僕たちはキャリフォルニア・ベースに降り立つと共に、その二つの任務を遂行すべく即座に行動を開始する。

 まずは降下地点にいた敵戦力との戦いだが、これは問題にならなかった。

 

「くそっ! 雑魚のくせに数だけは多いなぁ!!」

 

「ロバート! 無駄口を叩いてないで、敵の殲滅に集中しろ!」

 

 迫る61式戦車へとマシンガンを乱射しながら叫ぶホワイト小隊の一人、ロバートへとヨハンソン大尉の喝が飛ぶ。

 サブナック隊全員が無事に基地に降下できたことを喜ぶ暇もなく、僕たちは基地の防衛戦力との戦いを繰り広げていた。

 

 敵の戦力の大半は戦車と戦闘機なのだが、ロバートの言う通り数が多い。

 さらに初の重力下での戦いもあってか、みんなは思うように動けないでいるようだ。

 

「なんだ!? こっちの弾が全然当たらないぞ!?」

 

「照準のプログラムに異常が? 確認した時はそんなものなかったはずなのに……!!」

 

「ちくしょう! こうなったら接近戦で仕留めるしかねえ!」

 

「馬鹿野郎! 小隊長が連携を乱すような真似をするな!!」

 

 思っていた形とは違う初任務の状況に苛立ちを覚えたのか、サブナック隊のみんなは叫ぶようにして連絡を取り合っている。

 そんな中、冷静に状況を確認した僕は、マシンガンの狙いを通常よりも少し上に設定すると共に引き金を引いた。

 

 軽い反動の後、撃ち出された弾が狙い通りに61式戦車に命中し、大爆発を起こす。

 そのまま第二目標、第三目標と続けて狙い撃つと共にその全ての射撃が命中したことを確認した僕は、自分の考えが間違っていないことを確信し、頷いた。

 

(重力の問題だ。設定は宇宙でしたから無重力環境での照準になっている。だから、重力の影響を受けて微妙に狙いがズレるんだ)

 

 考えてみれば当たり前のことだが、地上と宇宙では環境が何もかも違う。

 宇宙で問題なく動いたからといって、地球上で同じような動きが再現できる保証はどこにもないのだ。

 

 そういった違いに気付いているのは僕の他にもう二人。一人は当然、総隊長であるヨハンソン大尉。

 そして、もう一人はというと……今しがた、バズーカを使って上空の戦力を撃ち落としたところだ。

 

「敵戦闘機を撃墜した。正面戦力は隊長とクロスが削ってくれている。今なら前に出られるだろう」

 

「よくやった、アクセル! 全体、警戒しつつ敵戦力を殲滅せよ!」

 

 アクセル・クリムゾン……無口で何を考えているかわからない雰囲気があるが、冷静な判断が下せるホワイト小隊の一員。

 おそらく彼は、地上で宇宙と同じような動きができないことを予測していたのだろう。

 だから大多数のメンバーがマシンガンを主武装に選ぶ中、一人だけ直撃せずとも爆風で敵機を落とせるバズーカを選び、その強みを活かして活躍している彼の判断力には、僕も一目置いていた。

 

 ヨハンソン大尉もここで重力下での照準は無重力下でのそれとは違いがあることを全員に教え、それを参考にしたみんなは次々と攻撃を命中させていく。

 あっという間に敵戦力を殲滅したところで、アクセルが声をかけてきた。

 

「敵は全員潰せたようだな。今のうちに補給がしたい。バズーカの弾倉が余っていたら、分けてくれ」

 

「ああ、いいよ。航空戦力を潰してもらえて助かった。ありがとう」

 

「お前こそ、早い段階で照準の狂いの原因に気付いていたようだな。戦車を潰せたのはお前のおかげだ」

 

 一応、サブの武装として用意しておいたバズーカの予備弾倉をアクセルに渡せば、彼はそのお礼とばかりにマシンガンの弾倉を僕に渡してくれた。

 全員をライバル視しているサブナック隊には珍しく、助け合う気持ちがある彼の行動に驚きつつも、もしかしたらアクセルは無口なだけでいい奴なのかもしれないと僕は思う。

 

「よし、作戦を次の段階に移すぞ! レッド小隊は潜水艦ドックに向かい、敵戦力を殲滅した上で確保しろ! ブルーとグリーン小隊は地上部隊の援護を! 残りの小隊は流動的に動きつつ、全体を援護する!」

 

「了解!」

 

 命令を受けた僕たちは、各小隊に分かれて各々に与えられた任務に当たっていく。

 ガスたちレッド小隊の援護のために潜水艦ドックに向かう僕たちは、その途中であまり妨害を受けないことを疑問に思いながら、話をしていた。

 

「変だな……? キャリフォルニア・ベースって、連邦軍の重要拠点なんでしょ? どうしてこんなに抵抗が少ないの?」

 

「先ほど、通信を傍受したところによると、基地の戦力は被災地復旧のために出払っているようだ。我々にとっては都合がいいが、相手は運がなかったな」

 

「そうか……北米は、コロニー落としの被災地でもあるのか……」

 

 およそ二カ月前に行われたブリティッシュ作戦。僕は参加こそしなかったが、ヨーツンヘイムの中で見た光景は忘れられない。

 地球に向けて進んでいったコロニーは、あの後この付近に落下したのだろう。

 そこで出た被害を想像して複雑な表情を浮かべる僕の耳に、小さな声が響く。

 

「いっぱい、死んだんだね。いや、私たちが殺したのか……」

 

「リリア……?」

 

「……なんでもない」

 

 ホワイト小隊の一員、普段はふざけたり誰かをからかったりしているリリアが、そういった雰囲気を感じさせない声で呟く。

 彼女の態度に違和感を覚えた僕であったが、そのタイミングで潜水艦ドックに攻撃を仕掛けてきたガスの声が通信機から聞こえてきた。

 

「こちらレッド小隊、俺たち以外に潜水艦ドックに攻撃を仕掛けているザクがいる!」

 

「レッド小隊、それは共同で任務に当たっているマルコシアス隊のザクだ。連携し、任務を――」

 

 ブリーフィングでも第一特別競合部隊との合同任務だと言っていたじゃないかと、ちゃんと話を聞いていなかったであろうガスの言葉に頭を抱える僕であったが、本格的に困惑したのはこの後だった。

 協力しろと言われているというのに、なんとガスはマルコシアス隊を敵視し始めたのである。

 

「こいつ! 俺の手柄を奪いやがった! 俺が追い詰めた戦車だったのに、横取りしやがった!!」

 

「へへっ! 逆に奪ってやったぜ! 手柄を立てるのは俺たちだ! こいつらに邪魔なんかさせねえ!」

 

「突っ込め! マルコシアスなんかに手柄を立てさせるな!!」

 

「おい、お前たち! ガス! 馬鹿な真似は止せ!!」

 

 ガスだけでなく、レッド小隊全員がマルコシアス隊に手柄を奪われまいと無茶苦茶な行動を取り始める。

 何をやってるんだと言いたくなるが、潜水艦ドックの確保を命じられているマルコシアス隊の小隊も似たような感じで、お互いが連携を取るどころか足を引っ張り合っていた。

 

「うっ、うわああっ! 敵の攻撃だ! くそっ! くそっっ!!」

 

「ガス、一旦下がれ! 潜水艦ドックへの攻撃は、ホワイト小隊が引き継ぐ!!」

 

「……何やってるのよ、あの馬鹿は。本当、小隊長としての適性が皆無なんだから」

 

 レーダーと通信でその醜い争いを確認していた僕たちは、予想通りの展開になったことにため息を吐く。

 セシリアの言葉に同意するしかない僕たちの前で、ガスたちレッド小隊が(ついでに彼らの部隊と足を引っ張り合っていたマルコシアス隊の部隊も)撤退していく中、ヨハンソン大尉が先陣を切ってその代役を務めに向かう。

 

 同じくホワイト小隊のメンバーである僕たちもドックに向かう中、何か妙なプレッシャーを感じた僕は、その出所を探るように視線を横に向ける。

 そうすれば、マルコシアス隊のザクを背後から狙う戦車の姿がそこにあったではないか。

 

「っっ! 危ないっ!!」

 

 思わず叫びながらマシンガンを乱射した僕は、戦車が攻撃を仕掛ける前に撃破できたことに安堵のため息を漏らす。

 続けて、激しい攻撃を繰り出してくる潜水艦ドックの防衛戦力から隠れるように遮蔽物の影に身を潜ませたところで、通信が入った。

 

「すまない、助かった!」

 

「仲間同士助け合うのは当然のことだよ。ここからは、お互いに協力していこう」

 

 若い……多分、僕と同じくらいの年頃の青年の声に、そう応える。

 近くに隠れていた彼のザクが飛び出し、牽制射撃を加えたところを目にした僕は、そうして作ってもらった敵の隙を見逃さずに遮蔽物の影から飛び出し、防衛戦力に攻撃を叩き込んだ。

 

 マシンガンの斉射を加え、落下地点に見えた砲台に向けてヒートホークを振り下ろす。

 ザクッ、という手応えと共に砲台が溶断されていく中、僕を狙っていたセイバーフィッシュが不意の射撃を受け、煙を上げて墜落していく様が目に映った。

 

「ありがとう、助かったよ」

 

「気にしないでくれ。さっきの借りを返しただけだから」

 

 牽制射撃で隙を作り、そこから突っ込んでいった僕の援護までしてくれたマルコシアス隊のザクへと感謝すれば、気のいい返事が返ってきた。

 的確な状況判断と射撃技術に感嘆する中、通信機からヨハンソン大尉の声が響いてくる。

 

「クロス! 聞こえているか!? 今、地下で別動隊がドックの制圧に動いてくれているおかげで、相手は混乱している! お前はそのまま潜水艦ドックに侵入し、地上から押さえろ!」

 

「了解です!」

 

 ヨハンソン大尉からの指示を受け取ったところで、今度は隣のザクからの通信が入った。

 

「今、総隊長から潜水艦ドックに突入するよう指示を受けた。君もそうなんじゃないか?」

 

「ああ、同じ命令を受けたよ」

 

「なら、ここは手柄とか、戦功とかは抜きにして、まずは勝つために協力しないか?」

 

「さっき言ったはずだよ。ここからは協力していこうって……僕は最初からそのつもりさ」

 

 スラスターを吹かし、ドック内に侵入。残る戦車と砲台の数と位置を確認しつつ、マシンガンのマガジンを交換する。

 マルコシアス隊のザクが同じく態勢を整えている様を見つめながら、僕は彼へと言った。

 

「僕はサブナック隊所属、クロス・レオンハートだ。君の名前は?」

 

 ガチン! という音が響き、視線の先のザクがマシンガンを持ち直す。

 モノアイをこちらに向けた彼は、僕に応えるように自分の名前を教えてくれた。

 

「ヴィンセント。ヴィンセント・グライスナー。マルコシアス隊、G小隊所属だ」

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