青森の冷たい風が、猫猫の顔を撫でるように吹き抜ける。俺のヘルメットのシールド越しに見える彼女の横顔は、どこか夢見心地だった。日本列島の最北端、ここ青森は、まるで彼女の故郷である中国とは異なる次元にあるかのような光景を呈していた。
「猫猫、どうだ? ここが青森だ。日本の中でも、特に風情のある場所だろ?」
俺はバイクの速度を落とし、ゆっくりと市街地を走らせながら尋ねた。彼女は黙って頷くと、周囲をぐるりと見渡した。
「うん。東京とは全然違うね。空気が冷たくて、静かで……。」
彼女の言葉に、俺は少し驚いた。
「こういう所も好きなのか」
「そうだね、なんだって、こういう場所には天然の毒があるから」
「・・・ここでも毒かよ。というよりも日本でそういう危険な毒はそんなにないはずだけど」
俺は笑いながら言った。しかし、猫猫の表情は真剣そのものだった。
「だからこそ、ここでしか手に入らないものがある。それに、この景色を見ると、興奮するね」
「はぁ、本当に」
俺は呆れてため息をついた。彼女と旅をしていると、常に新しい発見がある。それだけに、彼女を連れて旅をしていることを誇りに思っていた。
俺と猫猫は、青森の目的地である山に辿り着く。山々は白い雪に覆われ、冷たい空気が肌に突き刺さる。
「ここに、一体何がいるの?」
猫猫は俺の顔を見上げて尋ねた。その瞳は、まるで猫の眼のように鋭く光っていた。
「ユキニュウドウという奴だ」
俺は、魔化魍の名前を告げた。その言葉に、猫猫の顔に緊張の色が浮かんだ。
「青山の雪山の中にいるはずだけど」
俺はそう言いながら、目的地である雪山へと向かって行く。バイクを駐車場に停め、二人で山道を歩き始めた。
雪道は滑りやすく、足元に注意を払わなければならない。しかし、俺と猫猫は慣れた様子で進んでいく。彼女の足取りは軽やかで、まるで雪の上を舞うようだった。
「猫猫、寒くないか?」
俺は彼女に声をかけた。彼女はニヤリと笑って答えた。
「寒い」
そう、コートをかなり纏いながら向かう。
すると、猫猫は双眼鏡を使って周囲を見渡した。
「あれが」
猫猫の視線の先に、奇妙な影が見えた。それは一本足しかない、雪男のような風貌だった。
だが、その顔はまるで1つ目のマンモスのように見えた。
俺は猫猫に近づき、その影を確認する。
「あれが、ユキニュウドウだ」
俺は静かに言った。猫猫は驚いた表情で俺を見つめた。
「本当に、魔化魍って変な奴ばっかりだな」
「まぁ、否定はしない」
そうしながら、構える。