「えっと、どういうことですか?」
俺は急展開に戸惑いながらも尋ねる。
「簡単に言えば、私はこのアームドセイバーを作り上げた技術者だ。そして獣槍はその原点とも言える武器。君がこれを扱えるようになれば、私にとっても大きな発見になる」
小暮と名乗る男性はそう説明してくれた。
「それで、具体的にどうすればいいんですか?」
「まずは君の今の状態を把握する必要がある。獣槍が君を選んだということは、相当強い鬼の気を持っているはず。でも、それを使いこなせていないようだね」
小暮さんはそう言うと、テーブルの上に書類を広げ始めた。
「この獣槍は通常の武器と違って、使用者の鬼の気を極限まで引き出す特性がある。だから使い手は常に己の力をコントロールできなければ暴走してしまう。前の持ち主は最終的に自我を失って暴走し、多くの被害を出したと言われている」
俺は息を飲んだ。あの戦いの最中に感じた恐怖が甦ってくる。
「つまり、獣槍を使うには、自分の鬼の気を完璧にコントロールする必要があるんですね」
「そういうこと。まずは基本から始めよう。鬼の気の流れを意識すること。それから徐々に引き出す力を調整する訓練をしていくんだ」
そうして始まった特訓は想像以上に厳しかった。
最初の数日は座禅を組んで鬼の気の流れを感じることだけに集中させられた。
「もっと集中しろ。自分の体の中に流れる力を感じ取るんだ!」
小暮さんの指導は的確だが容赦ない。
「鬼の気は心臓から指先まで、全身に流れている。その流れを止めたり加速させたりするイメージを持つことが重要だ!」
最初は全く感じられなかった体内のエネルギーが、徐々に認識できるようになってきた。それはまるで血管の中を流れる血液のように、一定のリズムで脈打っている。時には激しく、時には緩やかに。
「いいぞ!その感覚を忘れるな!」
小暮さんの声が響く中、俺は目を閉じて集中し続けた。
一週間が過ぎると、実践訓練が始まった。
「今日は実際に槍を使ってみよう。ただし、最初は刃を鞘に収めたまま」
俺は獣槍を握りしめる。握るだけで体が熱くなるのを感じた。
「ゆっくりと槍に意識を集中させて。鬼の気を槍に送り込むイメージを持て」
言われた通りにすると、槍が微かに震え始めた。
「よし!次は少しずつ力を増していくんだ。でも決して暴走させないように注意しろ!」
少しずつ鬼の気を注ぎ込んでいくと、槍の震えが大きくなり、柄の部分が赤く輝き始めた。
「ストップ!そこで止まれ!」
その声に我に返った時、俺は汗だくになっていた。
「素晴らしい成長ぶりだ!もしかしたら、君ならばアームドセイバーも使えるかもしれません」
「いや、それはちょっと、さすがに二つ同時は」
「あぁ、そうだったら。獣槍はおそらくは使用者の意思とは関係なく勝手に来るからな。残念で仕方ないよ、本当に」
そうしながらも、小暮さんは笑みを浮かべる。
「しかし、君の身体、他の鬼とは違うようだが」
「まぁ、俺の師匠の特訓が他とは違う感じがしたので、それが関係しているのかもしれません」
「ふむ、その鬼の名前は」
「えっと、確かカブキでした」
それを聞くと、小暮さんは驚いた様子で眼を見開く。
「カブキだって!?まさか、本当か!」
「えっえぇ、どうしたんですか」
すると、小暮さんは驚いた様子だった。
「その鬼の名前は知っている。戦国時代において、鬼を裏切った鬼。それがカブキだ」
「えっ」
それは、俺にとっては驚きを隠せなかった。