「歌舞鬼……」
小暮さんの口からその名が出た瞬間、空気が凍りついたような気がした。
「戦国時代に魔化魍に与した鬼……彼は鬼の誇りを捨てた裏切り者だと言われている」
俺は言葉を失った。師匠がそんな人物だったなんて。だがすぐに反論した。
「いえ、師匠は裏切り者なんかじゃありません!確かに人間と接する機会は多かったですが……」
小暮さんは鋭い目で俺を見つめた。
「裏切り者の噂は根強く残っているが、実際のところ詳しい記録はほとんど残っていない。ただ……」
彼は少し考え込むように言った。
「歌舞鬼は子供が好きだったという記録はある。それに人間への未練を捨てきれない表情をしていたとも」
「それは……」
俺は思い出した。
それは、子供の時に出会った。
その時の師匠は、確かに優しかった。
時には厳しかったが、それでも鬼となろうとした俺を徹底的に鍛えてくれた。
「けれど、戦極時代の鬼がなぜ」
「・・・歌舞鬼は、魔化魍の力を取り込んだと聞く。それを考えれば、もしかしたら生きていた可能性もあったが」
「・・・」
同時に、俺は思い出したのは、師匠との最期の戦い。
「師匠は、最期には牛鬼になりました」
それが皮肉にも、俺が最初に戦った魔化魍でもあった。
「・・・力を求めるあまり鬼としての力を制御できなくなり、力に飲み込まれて本当の化け物と化してしまった人間。それが牛鬼だ。経緯を考えれば、予想は出来たが」
それと共に、小暮さんは俺を見つめる。
「だからこそ、俺は鬼としての強さを得る為に、師匠を超える必要があるんです。獣槍を自在に操る必要があるんです」
「なるほど、そういう事か。ならば尚更君には才能がある。私も出来る限り協力しよう」
「獣槍の制御方法を考えるには……」
小暮さんは考え込みながら部屋の中を見回した。そしてふと目に入ったのは、棚に並べられたディスクアニマル達。
「これは……」
小暮さんが一つのディスクアニマルを手に取ると、その表面に刻まれた紋章を見つめた。
「これは……戦極時代のディスクアニマルの原型」
「え?」
俺は驚いて小暮さんの手元を見た。
「これは……師匠の遺品です」
俺はそのディスクアニマルを見つめた。
「師匠が亡くなる前に託してくれたものです」
「なるほど」
小暮さんは目を細めてそのディスクアニマルを観察した。
「・・・もしかしたら」
すると、小暮さんは、そのままディスクアニマルを見つめながら、すぐに解析を始める。
「小暮さん?」
「君が獣槍を制御出来たのは、戦国時代の厳しい時代を生き抜いた歌舞鬼を師匠にした結果、君は現代の鬼ではなく、最も強いとされた戦国時代の鬼に近い身体をしている。そして、獣槍の制御を行うのに適しており、それの鍵となるのは、これだったんだ」
「師匠の」
「・・・正直、歴史だけ見れば、彼は裏切り者かもしれない。だが、同時に彼の背景を考えれば仕方なかったのかもしれない。だからこそ、君が証明するんだ」
それと共に、小暮さんは。
「君が、歌舞鬼の求めた理想を体現させるんだ」