「これが……」
猫猫は巻物を広げながら呟いた。古ぼけた和紙に墨で書かれた文字が並んでいる。普通の人間には何が書かれているのかまったく理解できないだろう。
「これ、本当に読めるの?」
俺は疑問に思いながら聞いた。
「うん、この文字は……多分古い漢字をベースにした暗号みたいなものだと思う。古い日本語と中国語が混ざっているから、分かりにくいけど」
猫猫は静かに読み進めながら、ときおり難しい顔をして考え込んでいた。
神社の奥深くに隠されていた巻物。それはかつてこの地を治めていた鬼族の古老が残した警告と予言を記したものだった。
「世の歪みは増大し、やがて大地より魔の瘴気が噴き出す。古の封印は既に弱まり、魔化魍は地上に溢れ出さん。唯一の希望は巨大なる鬼石。鬼石に太鼓の力で大地に直接清めの音を送り込む“清めの儀式”を行えと」
「清めの儀式?それで魔化魍を抑えられるの?」
「おそらく。でも詳細はここには書かれていない。ただ、鬼石の在り処だけは示されている」
猫猫は巻物の最後のページを開いた。
「これが鬼石の場所……でもこれ、いったいどこの土地なんだ?」
「さぁね、書かれた時期には、全国地図もないかなり古い時代だし」
「……猫猫の祖父さんは、このことを知っていたのか?」
「多分ね。だからこの神社でずっと過ごしていたんだろうね。でも、私にはまだ全部は解読できていない。少なくとも鬼石の手掛かりはあるみたい」
「それなら、行くしかないな」
「え?今すぐ?」
「ああ。魔化魍が無秩序に大発生する前に、この鬼石を見つけないと」
「でも……どうやって?」
「とりあえず、巻物に書かれた場所に向かうしかない」
「巻物に書かれている場所……」
俺は猫猫から巻物を受け取り、最後のページをじっくりと見た。そこには奇妙な図形と幾つかの漢字が書かれている。
「これは……何かの山脈を示しているのか?」
猫猫が横から覗き込んできた。
「うん、多分ね。でも具体的な場所が分からないと」
「というよりも、この時代と同じ物があるとは限らないんじゃないか?」
俺は考え込む。戦国時代から数百年。地形や地名が変わっていても不思議ではない。
「何か目印みたいなものは書いていないか?」
巻物を隅々まで調べるが、具体的な目印になりそうなものは見当たらない。
だが、獣槍が震える。
「獣槍が、もしかしたら示してくれるかもしれない」
俺は獣槍を握りしめ、祈るような気持ちで巻物の上にかざしてみた。すると獣槍の石突部分が微かに光る。
「本当に、まだまだ旅は続きそうだね」
「本当に」