神奈川県の山中。
新緑の香りが鼻をくすぐり、鳥のさえずりが遠くで聞こえる。しかし、獣槍の震えはますます強くなっていく。
「この場所に獣槍が反応してるってことは……」
猫猫が周囲を見回す。「何かがあるはずよね」
「ああ。鬼石か、あるいはその手がかりが……」
突然、地面が小刻みに揺れ始めた。
「何だ?」
俺は警戒して如意を構える。
「こんなところで地震?」
猫猫が不安そうに辺りを見回す。
その時、地面から異様な音が聞こえてきた。
ズシン……ズシン……
まるで地下深くから何かが這い上がってくるような音だ。
「猫猫、下がれ!」
俺は即座に彼女を庇うように前に出る。
地面が盛り上がり、土が舞い上がる。
突如、地面を突き破って巨大な影が現れた。
「キャアッ!」
猫猫が悲鳴を上げる。
それは7メートルを超える巨大なモグラ型の化け物だった。長いミミズのような舌が口から伸び、その目は赤く光っている。
「スナカケババア……!」
俺は反射的に叫んだ。
「猴鬼っこいつは」
「まさか、ここで現れるとはな、しっかりと捕まっておけよ」
その言葉と共に、猫猫に近付き、抱える。そのまま近くの木へと避難する。
その瞬間。
俺達がいた場所が爆発した。地中から飛び出した何かが地面を砕いたのだ。
「猫猫!」
「はい!」
「如意を使って奴を引き付けておく。お前はその隙に逃げろ!」
「でも」
「お前が怪我したら意味がないだろうが!」
その言葉に猫猫は一瞬躊躇ったが。
「分かった」
「よし」
そうして、俺はすぐさま如意を構える。スナカケババアの怪童子と妖姫が現れた時こそ好機だと思い。
「はぁぁ!」
鬼の気を高めると同時に跳躍する。そして空中で身を翻しながら如意を投擲した。如意は光の軌跡を描きながら飛翔し、スナカケババアに命中する。
「ギャオォォ!」
巨体が苦痛に悶え、地中に潜り込む。
しかし次の瞬間、別の場所から再び出現し、その長い舌で俺を捕らえようと伸ばしてきた。
「させるか!」
俺は瞬時に如意を手元に戻し、舌を打ち払う。しかし敵もまた素早く動き、今度は爪で地面をえぐりながら突進してきた。
「ちっ!」
俺は素早く右に跳んで回避するが、地面から巻き上がった砂塵に一瞬視界を奪われる。
「この野郎……!」
如意をゆっくりと構える。
「何やってんのよアンタ、こんなカッコいい時に遅れちゃってさ!」
聞き覚えのある声が響いた瞬間、赤と青の閃光が空から降りてきた。
「なっ!?」
スナカケババアの舌が俺の顔面に向かって伸びてくる寸前、その舌に何らかの衝撃が走り、弾かれた。
「ヴァ〜カが! こんな奴相手に時間かけすぎなのよ」
そこに立っていたのは、右半分が赤、左半分が青という奇抜な衣装を纏った小柄な人物だった。
「嘘吐鬼!?」
「あれ、知ってるの?」
猫猫が驚いた表情で問いかける。
「ああ、俺と同じ鬼だ」
そう答えながらも、俺の目はスナカケババアから離せない。
嘘吐鬼はスナカケババアを見上げると、「へぇ〜」と感心したような声を上げた。
「猴鬼が何やら変化していると聞いて来てみたら、こんなデカブツと遊んでいるなんて。アンタも随分暇人なのね」
「うるさい!なぁ、良いから手伝いやがれ」
「はいはぁいっと」