嘘吐鬼は余裕の表情で口笛を吹きながらスナカケババアに向かって歩き出した。
嘘吐鬼の手の甲から4本の爪を伸ばし始める。
「鬼爪」
そうして、ゆっくりと構えながら。
「ふっ」
スナカケババアの片方である怪童子に向けて、まるで猫のように跳躍する。
「シャァァァァ!」
「ぐがぁぁぁぁぁ」
爪が怪童子の顔に深く食い込む。
スナカケババアは苦痛の叫び声をあげる。
同時に俺も動き出す。
「ほらよ」
俺は如意を回転させながら投げつけた。
如意は空中で蛇のように曲がりながら、もう一方のスナカケババアの妖姫の背中に突き刺さる。
「ギィィィィ!」
妖姫の悲鳴が山中に響き渡る。
だがスナカケババアの身体から発せられる紫色の煙が周囲を覆い始めた。
「鬼幻術・霧景色だ!」
嘘吐鬼が叫ぶ。
「本当に器用な事を」
「そっちが言う?」
嘘吐鬼が出した霧。
それによって、スナカケババアの怪童子・妖姫の2体は、俺達の姿を捉える事は出来ない。
だからこそ、俺はその隙に一気に詰め寄る。
スナカケババアの怪童子は俺の接近に気付いたのか、その長い舌を振るう。
しかし、如意による鞭の使い方が利いているのか、その攻撃は容易く躱せた。
「この程度かよ」
俺は冷笑を浮かべながら、怪童子の正面に立ちふさがる。
そして、如意を振り上げると同時に。
「はっ!」
掛け声と共に一気に振り下ろす。
如意の先端は怪童子の頭部に直撃し、その堅い皮膚を打ち砕く。
「グギィィ!」
怪童子は悲鳴を上げるが、それでもなお舌を伸ばしてくる。
「まだ抵抗するか」
俺は軽蔑の視線を向けながら、如意を両手で握りしめる。
「そんな動きじゃ避けられないぞ」
そう言いながら如意を旋回させると、その軌道上に怪童子が飛び込んできた。
「グェェ」
怪童子は如意の回転に巻き込まれるようにして吹き飛ばされる。
「終わりだ」
俺は如意を頭上で回転させると、その先端が怪童子に向かって一直線に伸びていく。
まるで意志を持ったかのように如意は怪童子の胸に突き刺さり、その体を貫通する。
「グギイイィ!」
怪童子は最後の悲鳴を上げながら動かなくなった。
一方の妖姫は嘘吐鬼の方へと向かっていく。
「ヴァ〜カが!そんなもんじゃ俺を止められないよ」
嘘吐鬼はそう言いながら左手の指を軽く動かす。
すると指先から細い糸が伸びていき、妖姫の首に巻き付く。
「鬼糸だ」
嘘吐鬼が右手の親指と中指を擦り合わせると、その糸が妖姫の首を締め上げていく。
「ギャァァ!」
妖姫は苦し気に叫ぶが、すでに首は締まり始めていて、声も次第に出にくくなっているようだ。
「こんなもんでいいかね」
嘘吐鬼はそう言うと指を動かす。
すると糸が首を切り裂き始め、やがて完全に切断された。
「ヴァ~カが! まだ甘いね」
嘘吐鬼がニヤリと笑う。
「全く無茶ばかりして」
「それが私の売りなんでねぇ」
嘘吐鬼はそう言いながら、切断された首を見下ろす。
「これで終わりかな」
俺は怪童子を見ながら言う。
そう言っていると、地中から現れたのは、スナカケババアの本体。
「さて、本番だな」