スナカケババアの爆散からしばらく後。山は静まり返り、破壊された神社の瓦礫が月明かりに照らされていた。
「ふぅ……終わったか」
俺は息を整えながら獣槍を地面に突き刺す。黄金の鎧は光を失い始め、徐々に消えていった。
「ヴァ〜カが! 随分と派手にやったじゃない」
嘘吐鬼が軽く笑いながら近づいてくる。彼女の赤と青の衣装は煤で汚れていたが、本人は全く気にする様子もない。
「お前こそ、助かったぞ」
「まぁね。あんたが一人じゃこのデカブツは荷が重かっただろうし」
嘘吐鬼はそう言いながら周囲を見回す。
「にしても、あのデカブツ……スナカケババアだっけ? あんな化け物がこの時代にまだいるなんてね」
「ああ。最近になって魔化魍の活動が活発になってきているらしい」
「へぇ~」
嘘吐鬼は興味深そうに頷く。
「で、あんたは何を探してるわけ?」
「え?」
「だってさっきから妙に落ち着かないでしょ? 何かを探してる目つきよ」
俺は少し驚いた。この小柄な鬼は人をよく観察している。
「ああ。鬼石だ。清めの音を直接大地に送り込むための」
「鬼石……?」
嘘吐鬼は眉をひそめる。
「戦国時代から続く伝説の石らしい。猫猫の祖父が言っていた」
俺は猫猫の方を見る。彼女は巻物を大切そうに抱えていた。
「そういえば、この巻物に書かれていたのは鬼石のことだけじゃなかったよね?」
猫猫が口を開く。
「確か……『大地の怒りを鎮めるには、鬼石の力が必要』って書いてあったわ」
「つまり、この近くにあるってことか?」
「多分ね。でも具体的な場所までは……」
「いや、手がかりはある」
俺は周囲の空気を吸い込む。
「感じるんだ。清めの音の残響を」
スナカケババアを倒した時から漂っている気配。普通の鬼には気づかないほどの微かな波動。
「へぇ〜」
嘘吐鬼が感心したように声を上げる。
「さすが、古代の鬼の力を一番に継いでるだけあるわね」
「そんな大げさな……」
「いやいや、マジで凄いって。普通の鬼ならそんな微妙な違いなんて感じ取れないもん」
嘘吐鬼はそう言いながら、目を閉じる。
「あ……確かにちょっと違うかも。この場所だけなんか澄んでる」
「俺だけじゃなくてお前も感じ取れるのか?」
「まあね。私は感知系の鬼だから」
嘘吐鬼は自慢げに言う。
「で、どこに向かえばいいの?」
「ああ、この方向だ」
俺は山の奥を指差す。
「あっちに何かがある。清めの音が特に強い」
「なら急いだ方がいいんじゃない?」
猫猫が心配そうに言う。
「どうして?」
「だって魔化魍が大発生してるんでしょう? こんな貴重な場所を彼らが狙わないはずないじゃない」
「確かに……」
俺たちは互いに顔を見合わせる。
「よし、行こう」
三人は山の奥へと足を踏み入れた。