早朝の京都。朝霧が街を包み込み、寺院の屋根に残った露が朝日に輝いていた。俺と猫猫はバイクを神社の駐車場に停め、ヘルメットを外した。
「やっぱり京都は雰囲気が違うな」
俺が言うと、猫猫は周囲を見回しながら答えた。
「江戸時代から変わらない景色も多いわね。特にこの地区は……」
彼女は古い地図を広げながら説明を続ける。
「太古の記録によると、この地区は鬼と魔化魍との激戦地だった。当時の鬼が築いた結界が今も残っているはず」
「結界か……」
俺は目を細めて周囲を見渡した。
確かに微かに感じられる清浄な気配。しかし同時に、その隙間を縫うように蠢く不穏な気配を感じる。
「けれど、こんな所に、それを高める物はあるの?」
「ある」
猫猫は断言した。
「この京都には古来より伝えられてきた清めの技法がある。それを取り入れれば鬼石の鼓の力を高められる」
「技法……?」
「それが、この本に書いてある」
猫猫は懐から古い巻物を取り出した。
「戦国時代の鬼が残した『清めの秘法』」
「ほう……」
俺は猫猫から巻物を受け取り、目を通す。
「どうやら古代の鬼達がその技術を残したらしく、それらを巡り、各社の清めの技法を学ぶことで……」
「鬼石の鼓を活性化させる力が得られる」
猫猫が説明を引き継いだ。
「だからこそ、ここに来たけど」
「・・・これは」
そうしていると、こちらに向けての殺気を感じる。
同時に俺に向かって、矢が襲い掛かる。
その瞬間、俺は如意でその攻撃を弾く。
「いきなり、どういうつもりだ」
そう、現地の鬼だと思われる人物が、その手に持つ弓をこちらに向ける。
「貴様らは、何者だ?この場所を荒らしに来たのか?」
女は険しい表情で問いかけてきた。
「違う。俺たちは清めの力を集めに来た」
「清めの力だと?」
「あぁ、俺は猴鬼、そういうお前は」
「私は灯鬼、京都を守る鬼だ」
その言葉に猫猫が驚いた表情を見せる。
「京都の鬼……!」
「ほう……」
俺は灯鬼をじっと観察した。彼女の装束は伝統的な巫女装束に似ているが、動きやすさを考慮して改良されている。腰には弓と矢筒が装備されていた。
「清めの力と言ったな。何のために?」
「魔化魍の異常発生に対処するためだ」
「ふん……」
灯鬼は疑わしげな目で俺たちを見た。
「最近は各地で魔化魍の活動が活発になっている。貴様らもその一員かと思ったが……」
「違う。俺たちは解決しようとしている」
「どうだかな」
灯鬼は弓を下ろすことなく続けた。
「この地を守るのは私だ。余所者が勝手に何かをすることは許されない」
「協力したいだけだ」
俺は落ち着いた声で説得する。
「お互いの目的は同じだろう?魔化魍を減らすために」
灯鬼は少し考え込んだ後、口を開いた。
「……証明してみせろ」
「証明?」
すると、灯鬼は、既に構えていた。
「実力で示せってか」
そうして、俺も構えた。