灯鬼の放った矢が清めの波動を纏いながら俺に向かって飛んでくる。その速度は常人の目では捉えられないほど速い。
「ほう……」
俺は如意を素早く回転させ、螺旋を描くように矢を受け止めた。矢は如意に接触した瞬間、清めのエネルギーが火花を散らす。
「まだまだ」
灯鬼が弓を構え直すと同時に、俺は地面を蹴って突進した。如意を握る手に力を込め、一気に接近する。
「!」
灯鬼は素早く哉生明を構え直し、俺の振り下ろす如意を受け止めた。金属がぶつかり合う音が境内に響く。
「なるほど」
俺はそのまま力押しで如意を押し込むが、灯鬼は意外にも力強い。彼女の筋肉が緊張し、額に汗が浮かぶのが見えた。
「思ったよりやるじゃないか」
「当たり前だ……京都を守るのが私の使命だからな」
灯鬼は哉生明を巧みに操り、弓部分を横薙ぎに振るう。その動きと共に清めの気が三日月状の波動となって放たれた。
「おっと」
俺は猿のような身のこなしで跳躍し、波動を避ける。その瞬間、灯鬼の姿がぼやけた。彼女は既に次の矢を番えていた。
「見え見えだぜ」
矢が放たれる前に、俺は地面を蹴り、樹木の幹を蹴って宙を舞う。灯鬼の放った矢は空を切るが——
「なっ!?」
突然、矢が無数に分裂し、全方位から俺を狙ってきた。まるで分身の術だ。
「これが私の『鬼闘術・月時雨』だ!」
灯鬼の声が響く中、俺は木々の間を縫うように飛び跳ねる。猿飛佐助もかくやという身軽さで、木の枝から枝へと移動し、分裂した矢を次々と避けていく。
「おもしろい技だ」
俺は笑みを浮かべながら灯鬼を見下ろす。
俺は木の枝から軽やかに降り立ち、灯鬼の前に立った。灯鬼は弓を下げず、警戒を解かない。
「お前のような鬼が、なぜここに」
灯鬼の問いには鋭い緊張感が漂っていた。俺は如意を地面に突き立て、真剣な眼差しを向ける。
「災害に備えるためだ」
「災害……?」
「ああ。最近の魔化魍の異常発生は尋常じゃない。このままでは大規模な災害が起きる」
灯鬼の表情が僅かに緩むが、まだ弓は下ろさない。
「それで清めの力を高める物を探しているのか」
「その通りだ。ここ京都には古代から伝わる清めの技法があると聞いてきた」
猫猫が巻物を広げながら一歩前に出る。
「これが証拠です。太古の鬼が残した『清めの秘法』。各地の清めの力を集めることで鬼石の鼓を活性化させることができると」
灯鬼は猫猫の方を一瞥すると、深いため息をついた。
「なるほど……」
彼女はついに弓を下ろした。
「だが簡単には教えられない。ここにあるのは、それ程の代物だからな」
「どうすれば?」
「簡単だ、私に勝てば教えてやろう」
灯鬼が弓を構える。清めの気配が彼女の周りを包み込み始めた。俺も如意を握りしめる。
「面白い」
俺たちは再び向き合った。