灯鬼の放った無数の矢が四方八方から俺を狙い撃つ。
俺は如意を旋回させながら防御しつつ、木々を蹴って立体的に移動する。
「お前……まるで猿だな!」
灯鬼の嘲笑が聞こえるが、気にしない。この状況は正直不利だ。
彼女の遠距離攻撃は正確無比で、しかも分裂してくる。俺の如意による防御にも限界がある。
(このままじゃ勝てない……)
心の中で呟く。
灯鬼の矢は止むことなく降り注ぎ、境内の地面に無数の穴を開けていく。
「どうした!諦めるか!」
灯鬼の声が響く。
だが俺は考えた。灯鬼の弱点……それは恐らく近距離戦だ。
彼女は遠距離戦闘に特化しており、弓という武器自体が接近戦に向いていない。
けれど、ある程度の接近戦にも対応する事は出来る。
ならば。
「喰らえ!」
灯鬼が最後の一矢を放った瞬間、俺は突然の行動に出た。
「っ!?」
如意を真っ直ぐと灯鬼に投げつけたのだ。
灯鬼の驚きの表情が一瞬見える。
だが、彼女はすぐに弓で如意を弾き飛ばす。
その刹那の隙。
俺は既に地面を蹴り、灯鬼に向かって突進していた。
「なっ!」
灯鬼が気づいた時には遅い。
俺は彼女の懐に入り込み、拳を繰り出した。
「灯鬼!近距離戦は苦手じゃないのか!」
拳が灯鬼の腹部を捉える。
「くっ!」
灯鬼が呻き声を上げるが、すぐに弓で薙ぎ払おうとする。
俺はその動きを読んでいた。
弓が薙ぎ払われる寸前、俺は身体を反転させて回避。
そして再び拳を繰り出す。
「お前は確かに弓と遠距離戦では強い!だが!」
俺の連撃が灯鬼の体を捉えていく。
「ここまで接近された戦闘は不得意じゃないのか!」
「うっ……!」
灯鬼が苦痛に顔を歪める。弓を構えようとするが、俺の動きの方が速い。
「これがお前の弱点だ!」
俺の拳が灯鬼の胸部を打つ。
「……っ!」
灯鬼の体が後方に吹き飛ばされる。
彼女は境内の石畳に叩きつけられ、咳き込む。
「な……なぜ……」
灯鬼の声が震えている。
「なぜ……ここまで接近戦に強い……?」
俺はゆっくりと歩み寄る。
「俺は常に最悪を想定して戦う。遠距離武器を使う相手に対して近距離戦で勝つ方法も知っている」
灯鬼は弓を必死に構えようとするが、手が震えて上手くいかない。
「私は……負けられない……!」
彼女が再び矢を放とうとした瞬間——
「終わりだ」
それと共に、脚に鬼火を纏い、蹴る。灯鬼は受けようとするが、蹴りと同時に放たれた清めの波動によって吹き飛ばされる。
灯鬼は地面に倒れ込み、動かなくなった。
「灯鬼……」
俺は近づき、彼女の傍らに膝をつく。
「まだやるか?」
灯鬼は弱々しく首を振った。
「……いいえ」
彼女の目には悔しさと同時に敬意が浮かんでいた。
「あなたの言う通り……私は近距離戦が苦手だった」
「だが遠距離戦では素晴らしい腕前だ」
俺は立ち上がり、地面に落ちた如意を拾い上げる。
「お互いの得意な領域で戦うべきだったな」
灯鬼はゆっくりと起き上がり、俺を見上げた。
「私はあなたを認める……」