URBAN_MYTH Files No.■ ―鬼の住む村― 作:モコモコ毛玉
【注意事項!!】
・感想などによる原作のネタバレ禁止。
・意図的に先行プレイで明かされている内容以外を接種していない状態で書いているため、原作とは大幅な乖離が存在する可能性がございます。
・縦読み推奨。
12/14:続きを書くにあたって読みにくいと感じた部分を修正。
SURVEY―調査―
その村には、鬼が住んでいました。
鬼の主食は人間で、なかでも若者の肉は特に美味であるとされていたそうです。故に鬼は人へ扮し、獲物を求めて各地へ赴いては赤子や幼子を拐い、村へ持ち帰ると宴を催していました。
しかし時代の移ろいと共に山は拓かれ、野は道となり、人の往来が活発になるにつれて鬼の狩りは困難をきわめます。
このままではいけない――鬼は悩んだ末に村へ人間を招き、もてなすようになりました。
やがて定住する人々が増えてくると鬼は産まれた子らをひっそりと匿い、食糧として備蓄するようになったのです。
何人もの幼子が絶望のうちに死にました。
何人もの赤子が無知のままに死にました。
そうして "彼" も――。
鬼は退治されなければいけません。
それが、あの村から唯一生き延びた私の責務であると信じて。
※ ※ ※
砂利道にガタガタと揺れる車内から望む景色が様変わりしなくなってどれくらい経ったんだろう。
右を見れば青々とした田園風景が。左を見ればほんの少しだけ眉間へシワを寄せる運転手―― "
「ごめんなさい……私のせいでジャスミンさんの休日まで」
「別にあざみーが謝る事じゃないでしょ、前にも言ってるけど悪いのは人づかいが荒いセンター長だし。ホント、都市伝説が絡むと見境がなくなるというかなんというか……振り回されるこっちの身にもなれっつーの」
何処か呆れたように続いた「はぁ」という
(うう……どうしてあんなの見つけちゃったんだろう。)
遡る事、数時間前。
私が "それ" を発見したのは本当に偶然の事だった。
――此処、都市伝説解体センターで私が働く事になってから早数ヶ月。
今にして思えば最初から全部、
――あれはこっち、これはあそこにしまわないと駄目なんだよね。
初めて訪れた時は綺麗に保たれていた資料室もここ最近の目まぐるしい日々に揉まれていたのか、誰かに荒らされたと言われたら信じてしまいそうなほど目も当てられない光景に見て見ぬふりもできなくて、突然の休暇を言い渡された私は自主的に掃除・整頓へ乗り出していた。
そうして手をつけて、改めて思う――此処には都市伝説に関することなら国内外問わず
「なんだろう、これ……うひぃっ!?」
ポツリ。独り言を零しながら手に取ったそれは資料室の隅にまるで隠されているかのように放置されていた。パッと見、何処からどう見ても薄汚れたノートにしか見えないそれの中を覗いてみると飛び込んできたのは目が眩むほどの文字。文字。文字。
眼鏡をつけなくてもわかるほど強烈に
「――駄目じゃないですか、あざみさん。資料は大切に扱っていただかないと」
まるでそれすら予期していたかのように、いつの間にかそこに居た
「ご、ごご、ごめんなさい! 弁償ですか、幾らになりますか!?」
真っ先に口をついて出た言葉がそれなのはどうなんだろうと自分でも思うけど、此処へ来た当初、似たような流れを経験している私の身としては気が気じゃなかった。そんな私の反応が
嘆息を吐かれるでもなく「あざみさん」と名前を呼ばれて、恐る恐る顔をあげた私に
「弁償代は結構です。この資料は借り物でも曰くつきの品でもないですから、そう警戒なさらずとも大丈夫ですよ」
「そうですか? よ、良かったぁ……あっ、でも壊しちゃったのは良くない事ですよね」
「元々、随分とくたびれたノートでしたから壊れるのも仕方のない事です。私も手伝いますよ」
カラカラと音をたてて、こういったら失礼だけど
「このノートって、本当に曰くつきじゃないんですか?」
「はい。これはあざみさんが来るよりも前に
「気になるというか、えっと……眼鏡をつけなくてもくっきり見えちゃうくらい痕跡がすごいといいますか」
まとまっていた状態でも凄まじい存在感があったのに、それが散らばったせいで床一面が痕跡に覆い隠されているような光景は少しばかり、ううん、すごく恐いものだ。
そんな私の疑問に
"これも
そう零す
「先ほど休暇を伝えたばかりで申し訳ないのですが、あざみさん、調査をひきうけてくれますか」
「んぇっ!? えっ、と、それは物によるというかなんというか……」
「――そうですか、うけてくださいますか。いやはや、あざみさんは仕事熱心ですね。休日を返上してまで解体に尽力したいというその熱意、都市伝説に対する好奇心、素晴らしい事です」
そんな事は言ってない。と、戸惑いから声をあげる
(これって、もう逃げられないやつなんじゃ――?)
気づいた頃には手遅れだ。こうなってしまった
「もう、わかりました。受ければいいんですよね……わかりましたよぅ」
「流石はあざみさん、話が早くて助かります。安心してください。今回は
と、続く言葉に "それならまあ" となってしまう辺り、私も私で大概なのかもしれない。そんな事を思いながら調査内容などについて確認しようとしてふと、一つだけ、さっきの
「あの、さっきセンター長さんの都合って言ってましたよね。それってどういう――」
どういう意味なんですか――そう問うよりも早く、
"今回の案件、依頼主は
それからはもう、あれよあれよという間に話が進められて――というより「仔細は既にジャスミンへ伝えていますので、詳しくは彼女から聞いてください」の一言で流されたんだけど――そうして
あの時、私が資料室の惨状を無視して休暇を満喫していたならきっとこうはならなかった。
「――いや、あざみーが休暇を満喫する事を選んでたとしても結果は変わらんて。どうせ、センター長なら何から何まで織り込み済みっしょ」
「そ、それはそうかもしれないですけど……」
こともなげに淡々と告げる
そんな私を見兼ねてか、呆れてか、
「で、SNSの方に仕掛けた針の調子はどんなもん?」
「んー……どれも微妙というか、パッとしないものばっかりです。いつもと違って文字が動くとかも全然ないですし」
「その文字が動くとかは相変わらずよくわかんないけど、やっぱり食いつきは悪いか」
まるでわかりきっていたかのような発言にどういう意味かを尋ねる私へ
「この案件、前にも調査した事があるから。あざみーがセンターに来る数年前くらいだったかな、その時にSNS調査を担当してたのがあたし。んで、同じようにどん詰まった……っていうかあれか。そこら辺の説明なりなんなり一切うけてない感じ?」
「うけてない、ですね……仔細はジャスミンさんに伝えてあるからって、こう、丸投げしてました」
「ははは、ホント、バックレてやろうか」
乾いた笑い声をあげる
苛立ちを滲ませた
「あざみーはさ、 "
※ ※ ※
その村には、鬼が住んでいました。
鬼の主食は人間で、なかでも若者の肉は特に美味であるとされていたそうです。故に鬼は人へ扮し、獲物を求めて各地へ赴いては赤子や幼子を拐い、村へ持ち帰ると宴を催していました。
しかし時代の移ろいと共に山は拓かれ、野は道となり、人の往来が活発になるにつれて鬼の狩りは困難をきわめます。
このままではいけない――鬼は悩んだ末に村へ人間を招き、もてなすようになりました。
やがて定住する人々が増えてくると鬼は産まれた子らをひっそりと匿い、食糧として備蓄するようになったのです。
何人もの幼子が絶望のうちに死にました。
何人もの赤子が無知のままに死にました。
――そこまで言って、
「えっと、本当にそれだけなんですか?」
「そっ。
今回の案件について過去の調査結果などを教えてもらいながら悪路に揺られ続けること数時間。
温かな湯に浸りながら改めておさらいをする中で感じたのはどうしても拭いきれない違和感で。
「なんか、今までのと違ってすごい中途半端といいますか……雰囲気も少し違う気がするというか」
「それねぇ……前の時にあたしもおんなじような事を思ってセンター長に何回も確認とったけど、結論から言えば今と変わらず。鬼を扱う都市伝説自体はモノとして珍しくはないし、少なくとも
あたしが調査に関わったのは数年前だし、何かしら目新しい情報の一つや二つ見つかってくれれば儲け物って考えてたけど、甘かったか――そう呟いた
もしかしたら
「んーむむむっ……なんか、すごくモヤモヤします」
「それは同感。とはいえ、あたしらに出来る事なんてたかが知れてるんだからそこはいつも通りやるしかないでしょうよ。とりあえず、しばらくは此処を拠点にするとして明日、なる早で
「はい、それでオケです! ――って、此処、すごく高級感に溢れてるというかそんなに何泊もして大丈夫なんでしょうか」
「大丈夫でしょ、今回の件に関する諸経費は全部センター長が負担するって
そう言うなり大きく伸びをした
(たまには、こういうのも良いのかな……調査を蔑ろにしてるとかじゃないし、うん。今まで頑張ってきた自分への御褒美というか。)
振り返ると本当に、本当に、ここ最近は激動としか表現できない毎日の連続だった。目まぐるしい日常は刺激的と言えば聞こえは良いけれど、裏を返すなら疲労が絶えない日々という事でもある。それを思えば確かに
そう思うことにしよう。と、羽休めへ意識を寄せた矢先、私の視線は
「あの、ジャスミンさん――」
「――言わんでも大丈夫。見えてるモノは違うだろうけど、たぶん気づいてる物はあざみーとおんなじだわ」
空気くらい読んでほしいわ。と、ボヤく
もちろん単なる偶然という可能性は捨てきれない。そう思って早足にしてみたり、わざとゆっくり歩いてもみたけど突きつけられた現実は頭の痛くなる物で。
「ど、どどど、どうしましょう……これって完全につけられてますよね!?」
「此処まで意図的につけ回してくるって事はそういうことなんでしょ。ホント、いったい何が目的なんだか……このまま続けてても
たぶん、続く筈だった言葉は「そこの角で捕まえるか」とかそんな感じだと思う。でも実際に
※ ※ ※
"あの都市伝説には、続きがあるんです。"
軌跡の主 "
その村には、鬼が住んでいました。
鬼の主食は人間で、なかでも若者の肉は特に美味であるとされていたそうです。故に鬼は人へ扮し、獲物を求めて各地へ赴いては赤子や幼子を拐い、村へ持ち帰ると宴を催していました。
しかし時代の移ろいと共に山は拓かれ、野は道となり、人の往来が活発になるにつれて鬼の狩りは困難をきわめます。
このままではいけない――鬼は悩んだ末に村へ人間を招き、もてなすようになりました。
やがて定住する人々が増えてくると鬼は産まれた子らをひっそりと匿い、食糧として備蓄するようになったのです。
何人もの幼子が絶望のうちに死にました。
何人もの赤子が無知のままに死にました。
――そうしてまた一人。
今度の供物は森で両親とはぐれた村娘でした。
言葉巧みに近づいた鬼は何も知らない村娘を暗い、昏い、地下深くへと
そんな悲劇の連鎖は永劫続くかと思われました――しかしある時、鬼にとって予想外の出来事が起こります。
偶然、村を訪れていた旅人に真実を知られてしまったのです。
そうして始まった鬼と旅人の攻防が続く事、幾晩。幾日。いったいどれほどが経ったのでしょう。
死闘の末、地に伏せたのは旅人の方でした――。
「――しかし、鬼もまた深手を負ってしまい身を隠す事を余儀なくされました。かくして村には仮初の平穏が訪れたのです」
そうして
「協力感謝します。ですが一つだけ、先ほどの続きが本物という根拠は?」
「そうですね……お二人を納得させられるような物は残念ですが。ですので、信じるも信じないもそちらの自由です。私はただ、私が知っている
一触即発の緊迫感というのはきっと今みたいな空気を言うんだろうな。と、私は内心ビクビクしながら、二人のやり取りをほんの少し離れた場所で畳へ横になりながら眺めていた。
程なくして
「はぁ……いや、やりにくいわ。ホントこういうの柄じゃないんだけど」
「うぅ、すいません。ジャスミンさんが話してくれてる間に何度かためしてみたんですけど、どうしても直視できなくて」
「いちいち謝らんでいいって。今のあざみーが冗談抜きに気分悪そうなのはあたしでも見てわかるし、とりあえずユリちゃんへの聞込みはこっちでやっとくから。あざみーはあざみーで情報整理なり、休むなり、無理ない範囲でテキトーにやっといて」
と、離れ際に
(申し訳ないなぁ……本当なら私の仕事なのに。あー、もう!)
苛立ったところでどうしようもないことはわかってる。だからこそ
私の眼は普通じゃない――。
物心ついた時から視えていた
今までたくさんの痕跡を否が応なく突きつけられてきたけど此処まで生理的に気持ち悪いと感じる
(とにかく私は私に出来ることをしなきゃ。となると、まずは情報整理だよね……寝る前にセンター長さんへ報告しないといけないし。うん。そこから始めてみよう。)
『えっと、そもそも今回の調査をすることになったのは私が資料室で見つけた一冊のノートがキッカケだった。そういえばあれも痕跡がすごかったよね、文字もビッシリと詰まってて――うぅっ、今思い返してもゾワッとする。最初は呪いのノートなんじゃないかって思ったんだけど、センター長さんが言うには過去に取扱っていた案件の調査資料なんだよね』
『――よく覚えていましたね。その通りです、あのノートはあざみさんが私のもとを訪れるよりも前に
『ふふん、私だってちゃんと成長してるんですよ?』
私が情報をまとめようとすると何処からともなく私の脳に灼けついた
『そうして脱線しやすいところは相変わらずですね』
『うっ……そ、それは今後の課題ということで。って、そうじゃなくて!』
『では話しを戻しましょうか。今回の件に関する概要は先ほどあざみさんがまとめた通りで問題ありません……ですが、この案件はあざみさんが今日に至るまで触れてきたものと比べると些か毛色が違っていましたよね?』
淡々と、悪びれる素振りさえみせない想像上の
確かに今回の
『SNS調査の時にジャスミンさんも言ってたけど情報が少ないというか、少なすぎるというか……いつもならある手応えみたいなのが全然ないんだよね――』
―― "
『そうですね、あざみさんも感じたその手応えのなさ・不鮮明さこそ、この "
『うんうん。ジャスミンさんが言うには数年前にセンター長さんと調査にあたった時も同じ壁とぶつかって、なんとか "
『あざみさんの納得は一旦、脇へ置きましょう。肝心の調査は今回も難航を極めたようですが……しかし、一つだけ前回と明確に異なる成果がありました』
その問いかけに私が真っ先に思い浮かべたのは
途端にこみ上げてくる気持ち悪さをなんとか呑み込んで、改めて考えるとたしかに
『ユリさんについてはジャスミンさんが話を聞いてくれてるから、後で教えてもらってその時にまとめなおそうかな……うん。とりあえずは此処までにしておこう』
一呼吸をいれてからゆっくりと目を開いて私はまとめた情報を手帳へと書き込んでいく。
これでひとまず今の私にできることは終わり。と、そうして手持ち無沙汰に逆戻りしてしまった時に気が抜けてしまったのかもしれない――不意に
「あの、ユリさんは……」
「もうだいぶん前に帰った。まー、雑に要約すると "夜無村《よなきむら》へ行くのオススしない" って話しだったわ。後をつけてきたのは、たまたま
言われたことに近くの壁掛け時計を見ると長針は私が確認した時よりも一時間ほど未来を指していた。その事に申し訳なさを感じる暇もなく、枕元へ置いていたセンターとの連絡用のスマートフォンに浮かんだ "
「――調査初日お疲れ様です。既にあざみさんとジャスミンから送られた報告には目を通しましたが、今回は随分と大きな成果があったようですね。
「そうは言っても
「たしかに調査すべき点は増えました。ですが先ほどのジャスミンの疑問も含めて、今のまま調査を進めていけばそう遠くないうちに答えの方から歩み寄ってくると思いますよ」
顔をみなくてもわかるほど喜色が染みた声へ冷や水をかけるようにまっすぐ自身の考えを述べた
「現時点で断言は出来ませんが、恐らくジャスミンとあざみさんが耳にした
――はぁッ?
――あの、それって本当に
ポツン。と、生まれた束の間の沈黙。
「彼女が口にする "鬼" とはいったい何を指しているのか……現段階でそれを特定するにはあまりにも情報が不足しています。ですが
――
だから口では曖昧を
"今から数年前、
「――それはだけ、偽りようのない事実ですから」
※ ※ ※
翌日。
朝一番に宿を出た私と
「――そのぅ、本当に大丈夫なんでしょうか」
昨日と変わらず砂利道に揺れる車内でポツリ。零れ落ちた不安にほんの少しだけ間をおいて「行けばわかるでしょ」とハンドルを握る
「でもでも、あの都市伝説やユリさんの忠告が本当なら夜無村ってすごく危ない場所なんじゃ……あのセンター長さんも気をつけてくださいって言ってたんですよ!?」
「まあ、
「私だって本当に鬼がいるとは思ってないですけど、でも実際に未解決事件が起きた村なんですよね?」
それは昨夜、
「もし当時の痕跡とかが見えちゃったらどうしよう……未解決ってことは犯人は捕まってないってことだよね? そうなったら私、消されちゃうのかなぁ」
「だから心配し過ぎだっての。そもそもあざみーがみえてるモノはあざみーにしかみえてないワケでしょ、なら黙ってる限りはバレようなくない?」
「それはそうですけど、ユリさんの時みたいなのをまた見てしまうんじゃないかって思うと正直、行きたくない気持ちが
そこまで言って、心の内で零した筈の独り言へ返事があったことに慌てて口を噤む私を横目に
「どうしても嫌ならバックレても良いんじゃない? 何度も言ってるけど、あたしにはあざみーがみてる "痕跡" とやらもセンター長の千里眼なりもぶっちゃけ意味不明でしかない。でもそのよくわからんものが原因であざみーが体調を崩したり、センター長に至っては本当にドンピシャで電話してきたり、そういうのをこれまで何回も見て体験してきてるわけ。だから "あたしには理解できない何かがそこにある" のは理解してるつもり」
ぶっきらぼうに告げられた
そんな私の様子が
「まっ、あざみーがどうするかはあたしが口だしするもんでもなし、そこはどうぞご自由にって事で。どっちみち村にいる
紡がれた言葉の先、
―― "うーわ、悪趣味。"
ポツリ。そう零した
※ ※ ※
「――観光客のおかげで村は潤ってるし、うちみたいな
そこまで言って、ハッとしたように「すまないねえ、お客さんにこんな愚痴を聞かせちゃうなんて」と申し訳なさそうに微笑んだ
「
「あの教授はいつもそうなんで……ホント、人使いが荒いというか遠慮を知らないというか。絶対にロクな死に方しませんね、あれは。あざみーもそう思うっしょ?」
「へぅっ!? えっ、あっ……そ、ソウダネ!」
踏んだり蹴ったりとはたぶんこういうことを言うんだろうな。と、
現地で調査するにあたって自分の身分を誤魔化したり、それっぽい事情を
なっている筈、なんだけどなぁ――。
(嘘をつくのは苦手って自覚はあるけど、本当にこればっかりは全然慣れる気がしないよ……もう。)
他でもない
「――と、ところでさっき
「応ともさ。
しみじみと過去を噛みしめるような
「昼夜問わず野山を探しまわって、姉さんなんか好意的だった村の連中からも
本当、馬鹿な姉さんだよ。と、そう締めくくる
私たちは調査をするために
(センター長さんからはチクチク言われるかもしれないけど、うん……
これで文句を言われたらその時はその時。むしろ調査が一日で完了してしまうことの方が珍しいし、いざとなれば
途端、
「あんまり外から来たのお客さんにこういう事ばかり言ってるとまた
――あまりにも真剣に紡がれる言葉の意味を理解したのは実際に歓楽街を訪れてみて直ぐのことだった。
最初はそういうモノなんだと思っていた。
だからこそ、私がはぐれないように腕をひいてくれている
「――えっ、なに。あざみーって見た目によらずこういうの慣れてる感じなの、まじで?」
「えっ。と、慣れてるというか……こういう霧みたいなのってなんかおばけ屋敷みたいというか、そういう演出でよくありそうだなって。だからあんまり恐くないといいますか」
「いや、おばけ屋敷て。こんな世紀末なアトラクションが許されてたら流石に正気を疑うわ……
吐き捨てるよう言いきった
その表情は深刻そうではないけど、何か気づくことでもあったのだろうか――と、どう声をかけてよいものか悩んでいると不意に
「ねえ、あざみー。ちょい確認なんだけどあざみーには此処が霧に覆われてるように見えてるわけ? もしそうなら霧の濃さなり、なんでも良いからもうちょい詳しく教えて」
「ほぇ、えと、そうですね。濃さでいえばすごく濃い方、なのかな……一寸先が見えないくらい酷いわけじゃなくて目を凝らせば先は見えるくらいの濃さで本当にアトラクションとかテーマパークの演出みたいだなって。後は――あっ、色はいちごシロップみたいでちょっと美味しそうかも?」
正直、自分でも何を言ってるんだろうと思うけど私の返事に
それが何を意味するかなんて火を見るよりも明らかだ。
「やめておきな、また具合悪くなったらどうすんの」
「あはははは……やっぱり、そうなんですね」
たぶん。というよりもほぼ確実に、私と
辺り一帯を漂っている薄紅色の霧は同じ裸眼であっても昨夜、宿で出会った
「――でもまあ、あざみーからしたら不愉快だろうけど今回ばっかりはみえない方がラッキーだと思うわ。あのセンター長が忠告する時点でマトモじゃないのは覚悟してたけど、幾ら人目につきにくい場所には自然と人目につきたくない人が集まるにしたって限度ってもんがあるでしょ」
つうか
もし。もしもだ。私のみえてる風景が現実とはまったく違うモノだとしたら――ふと、今まで考えたこともなかったそんな
「なんだかよくわからないけどジャスミンさんの言葉の節々から色々と耳を塞ぎたくなるような不穏さが滲みでてることだけはわかりました」
「それだけ伝わってれば今は十分。でもってごめん。どっかでスマホ落としたっぽいわ……多分、
「えぇっ!? い、いいですけど、それならはやく戻りましょうよ!」
霧の中から届いた言葉が真っ赤な嘘だということは私でもすぐに理解できた。これまでもそうだったけど、現地で調査を行う時、
でもそうして歩いてきた道のりを辿ろうする私たちを呼び止める声が一つ。
霧の中を掻き分けて現れた男の人は自らを "マヒト" と名乗ったのでした。