それでもダスカは走らない   作:シェーク両面粒高

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第12話 誰がために

 BBQとキャンプの2日目を日曜日に終えた。日曜日は早朝に少し体を動かしたあと片付けをして午前中の内に解散となった。特にこれといった出来事もなく、アタシはパーマーと一緒に母の車で帰った。

 パーマーは行きと同じく女学院の寮まで送った。白を基調とした中世の欧州風のそれは見るからに格式高い建物だった。

 

 

 

 その翌日……月曜日の午前中、アタシは街の方へトレーニングシューズを買いに出かけていた。ゴールデンウィークの祝日なので、電車の中も街も多くの人出があった。

 

 自宅を出る前にシューズ用のお金を母からもらい、ウマ娘専門のスポーツ用品店を訪れた。母は「ママも一緒に行こうか?」と言ってきたが、1人で大丈夫だからと断った。もう子どもじゃないんだから1人でシューズを買うぐらいできる。

 

 ……と断ったはいいものの、そもそも何が良くて何がアタシに合っているのか全く分からない。シューズの形状は元より、蹄鉄だって色々な形や材質があったので、やはり一人で選ぶのは困難だった。

 なので店員に話を聞きながらシューズや蹄鉄を選んだ。シューズはすんなり決まったが蹄鉄をどうするかが非常に迷った。鉄製やアルミ製だけならまだしも、形状の他にも合金の金属の含有量や比率などの違いがあり、目が眩むほどの種類があるのだ。結局はその道のプロである店員に勧めてもらったものから選んだ。鉄製の方が安く耐久性もあり店員はそちらを勧めてきたのだけれど、どうにも足運びがしっくり来なかったため、結局アルミ合金の蹄鉄を選んだ。高価ではあるが、母からのお金はかかっても良いから違和感のないものを選べと言われていたのも手伝った。

 家には姉たちが使っていた蹄鉄を打ったり外したりする道具があるので、その辺のメンテナンス機具は購入しなかった。

 

「ありがとうございましたー!」

 

 担当してもらった店員の元気な声を背に店を出た。

 

「〜〜♪」

 

 シューズと蹄鉄が入っている手提げ袋を周りに気づかれない程度にテンポよく前後へ振りながら、無意識的にアタシは鼻歌を歌っていた。

 

(これでコース走ってみたい……明日、早く来ないかしら!)

 

 コンクリの道路でシューズを履く訳にはいかないので、必然的にこれで走るのは明日のクラブの練習を待つことになる。明日が今から待ちきれなかった。

 

「……あ」

 

 駅までの帰り道、通りがかった公園にいくつかのキッチンカーが並んでいた。祝日、更にはお昼時なのもあってそこそこ賑わっていた。

 その中には以前、パーマーと一緒に購入したはちみ―のキッチンカーもあった。色々な場所で移動販売をしているのだろう。遠目から見るに、他にもホットドッグやクレープなどのキッチンカーもあるようだった。

 定期的にこうやってキッチンカーが集まっているのだろうか。普段は通らない公園なのでその所は分からなかった。

 

「帰ったらお昼だけど……」

 

 食べたい。

 自宅に帰ったら母が昼食を用意しているからここで食べる必要はないのだけれど、賑わう人たちが美味しそうに食べたり飲んでるのを見ると、どうもその誘惑には抗い難かった。

 ……うん。昼食と夕食を少し減らせばトントンだろう。アタシは公園へ足を踏み入れた。

 

「少しぐらいなら…………え?」

 

 公園に入ると、キッチンカーや人々を遠巻きに眺める見知ったウマ娘の姿があった。

 

「アクア?」

 

 そのウマ娘とはアクアだった。彼女は1人でその光景を離れたところで見ていた。近くにあの母親の姿は見当たらなかった。

 上下ジャージで首にタオルを巻いている姿から察するに、トレーニング中なのだろうか。

 

「アクア。こんにちは」

「えっ? あっ、スカーレットさん。こんにちは」

 

 近づいて挨拶をするとアクアはペコリと頭を下げた。

 

「一人? お母さんかお父さんは?」

「ぼく一人です」

「トレーニング?」

「自主トレのロードワークです。あとは家まで帰るだけです。さっきメニューが終わって、今は休憩してます」

「そうなのね。休みの日まで偉いわ」

「トレセンに入るためには必要なことですから!」

 

 ……トレセンに入るため、ね。

 

『将来はアクアをトレセンに入れたいらしいよ』

 

 あの合宿でパーマーからそんな話は聞いていた。もっとも、母親が娘をトレセンに入れさせたいのと娘本人が入りたいのとでは意味合いが違ってはいるけれど。

 

「スカーレットさんは? えっと、買い物ですか?」

 

 彼女はアタシが持っている手提げ袋を見ていた。

 

「ええ。シューズを買いにね。……あ、そうだ。アクア、何か食べる?」

「へ?」

 

 アクアは一瞬キッチンカーへとやった視線を、すぐにアタシへと戻した。

 

「いや、ぼくお金持ってませんし……」

「アタシが奢るわよ。何がいい? 飲み物ははちみーで良いとして、食べ物は?」

「ぼ、ぼく、母さんにジュースは禁止されてるので飲めません」

「はあ!? 禁止!?」

 

 思いもしなかったワードが出てきた。この子はジュースも飲めないって言うの? 

 

「トレセンに行くための身体を作るために、甘い物とか身体に悪いものがいっぱい入ってるジュースは駄目だって、母さんが。だからぼく、はちみーとか……ジュースは飲んだことないです」

「飲んだことない……」

 

 絶句した。いくらか制限をかけるのは分かるが、飲んだことが無いレベルで制限しているとなると流石にイカれてる、と思う。

 

 

 だってそんなの、()()じゃない。

 

 

 ……だが、逆にこれはチャンスではないか? 

 

「……アクア、お母さんは今いないのよね?」

「? はい。家にいます」

「そう。ちょっと待っててね。そこのベンチにでも座っておいて」

「え? スカーレットさん?」

 

 アタシははちみーのキッチンカーに向かった。ちょうど誰も並んでおらず、レギュ―サイズで全部普通のオーソドックスなものを2つ購入しアクアの元へ戻った。彼女はアタシが言った通りにベンチに座っていた。

 

「はい、はちみーよ。あげるわ」

「え、い、要りません。さっきも言いましたけど、ぼく──」

「1杯のジュースぐらい、どうってことないわよ。それにアクア、さっきじーっとキッチンカーの方見てたでしょ。本当は飲んでみたいんじゃないの?」

「…………それは」

「……実はアタシね、トレセンに入ったウマ娘と知り合いなんだけど」

「えっ!?」

「そのウマ娘、確かに飲み物や食べ物に気をつけてはいたけど、小さい頃から普通にジュースも飲んでたし、甘いものも食べてたわよ」

 

 本当は知り合いじゃなくて肉親である姉たちのことだった。アクアに言った通り、彼女らは普通に何でも飲み食いしていた。

 

「…………」

「だから、ほら。どう?」

 

 アクアは押し黙り、差し出されたはちみーを前にして心の中で葛藤しているようだった。

 

 これだけして無理なら仕方ないと思っていた。アタシが2つ飲もうかと思い、はちみーを引っ込めようとした瞬間──

 

「……じゃ、じゃあ、いただきます……」

 

 ──アクアははちみーを両手で受け取った。

 

「…………」

 

 彼女は両手の中にあるはちみーを見つめていた。信じられない物を目の前にしているといった様子だったが、彼女はおずおずとストローに口をつけた。薄黄色いはちみーがゆっくりとストローを上り、彼女の口内へと入っていった。そして──

 

「っ!? ~~!!!」

 

 ──アクアの目は驚いたように見開かれ、そしてその瞳は輝いていた。

 

「……ぷはっ」

 

 ストローから口を離した彼女はアタシの方を見た。その瞳はまだ輝いて爛々としていた。

 

「美味しい?」

「はい……はいっ! すごく甘くて、でもスッキリしてて、おいしいですっ!」

 

 彼女は夢中でストローに吸いついていた。二口、三口と回数を重ねるごとに、ひと口で飲む量が増えていき、あっという間に半分ほど無くなった。

 

「こんなにおいしいんだ……」

 

 彼女はまじまじと手の中で揺れる黄金色の液体を見つめていた。

 

「ジュースとは言うけど、はちみつを使ったドリンクだし他の清涼飲料水みたいにお砂糖がいっぱい入ってるわけでもないわ。それにお砂糖なら、普段飲むスポーツドリンクにも入ってるわよ」

「そうなんですか? 知りませんでした。スポーツドリンクもあまり飲まないから」

「え? スポドリ飲まないの?」

「はい。トレーニング中に飲むものも母さんが作った特製のドリンクです。いつも色んな粉を混ぜて作ってくれるんです。あ、これもスポーツドリンクって言うんですか?」

 

 アクアは腰に巻いていたウェストポーチからスクイズボトルを取り出した。

 

「えーっと……成分的には、どうなのかしらね……塩分とか糖分は入ってるとは思うけど……」

「?」

 

 正直、そこまで徹底しているのかと少し感心してしまった自分がいた。

 複雑な気持ちを抱きつつ、アクアを見ると、彼女はまたキッチンカーの方へ視線をやっていた。その視線の先には客が捌けたホットドッグのキッチンカーがあった。

 

「……ホットドッグ食べる?」

「ええっ!?」

「アタシ食べたいんだけど、帰ったらお昼あるからミニサイズの半分程度でいいのよね。ねえアクア、ミニサイズの半分だけ食べてくれない?」

「……………………はい」

 

 長い沈黙の後、彼女は首を縦に振った。

 アタシはキッチンカーへと行き、店主のおじさんにあの子と2人で食べるのでミニサイズを半分に切ってほしいと言うと、彼は快く応じてそうしてくれた。

 

「どうぞ」

「あ、ありがとうございます。はちみーだけじゃなくてホットドッグまで……」

 

 はちみーをベンチに置いたアクアは半分になったホットドックを様々な角度から眺めていた。

 

「……もしかしてホットドッグを食べるのも初めて?」

「はい。というか、ソーセージ食べたことないです。母さんが脂がたくさん入ってて、体に良くない添加物もたくさん入ってるからって。母さんはそういうのは猛毒だから食べちゃ駄目って言うけど……最近になって、ぼく以外みんなが普通に食べてるの見たら、本当はそんなわけないって分かっちゃって…………」

「…………」

 

 BBQである程度分かっていたこととはいえ、この調子ならソーセージどころか相当な種類の食品も制限されているのだろう。

 

「甘いものとかも食べちゃいけないの?」

「そんなことありません。チョコレートとアイスもおーがにっく? とかの変なものが入っていないなら食べてもいいって。でも……」

 

 アクアの視線の先には、ソフトクリームを2人で頬張る母娘の姿があった。

 

「ああいうソフトクリームとか……ケーキとかも、食べたことないです」

 

 遠い目をしてポツリとこぼしたその呟きは、とても淋しそうに聞こえた。

 ケーキを食べたことがない。……「誕生日にケーキを食べたことないの?」とは、可哀想に思えて訊けなかった。

 

 彼女は言い終えるとホットドッグを頬張った。

 

「!! ~~っ♪」

 

 はちみーを飲んだ時と同じように、彼女の瞳は輝いていた。ぱくぱくと食べ進めて、あっという間に食べてしまった。ついでにはちみーも飲み干していた。

 アタシもそんな彼女の様子を見ながらホットドッグを平げた。作り立てなのもあってソーセージがジューシーで美味しかった。

 

「スカーレットさん、ありがとうございました。はちみーもホットドッグもすごくおいしかったです」

「なら良かったわ。あ、アクアのお母さんには内緒よ」

「…………はい」

「? ……アクア?」

「あの、母さんのことなんですけど……玉ねぎを切るときのこと、ごめんなさい」

 

 あのBBQのトラブルについて、アクアはアタシに頭を下げて謝ってきた。

 

「なんでアクアが謝るの」

「ぼくの母さんのことだからです。たぶん、スカーレットさんに嫌な思いをさせたと思うから」

「アクア……」

「だからごめんなさい」

 

 また彼女は頭を下げた。

 

 そんな彼女を見て、おそらく彼女が母親のことで他人に謝るのは初めてのことじゃないんだろうと思い至った。……小学5年生の子どもが親のことで頭を下げるなんて、誰でもできることじゃない。

 

「別に今は気にしてないから、大丈夫よ」

 

 あの玉ねぎの一件については正直どうでもよくなっていた。それよりも、今の話を含めそれ以降で発覚したアクアの母親についてのことが気にかかっていた。……いや、正しくは母親のコントロール下にいるアクアについてだ。

 

「アクアはあのお母さんに口にするものとか、たくさん制限されてるのよね? ……つらくない?」

「つらくなんてないです。トレセンに入るためだから」

 

 アクアはきっぱりと言い切った。

 

 だが、美味しそうにはちみーとホットドッグを口にするアクアの姿とその主張は矛盾しているように感じた。

 

「母さん、元々はすごく走るのが速いウマ娘だったんです。トレセンにだって絶対に入れるって言われてたらしいです。母さんもトレセンに入ることがずっと夢だったって」

「……?」

 

 突然始まったのは母親の身の上話だった。

 

「でも練習中に大きな怪我をしちゃって、トレセンに入るどころか全力で走ることすらできなくなったんです。すごく悔しかったって母さんは言ってました」

 

「……だから、トレセンに入るって夢をぼくが叶えてあげたいんです。ぼくは母さんじゃないけど……でも、母さんはぼくに夢を見てくれてる。これはぼくと母さん2人の夢なんです」

 

 アクアがアタシを見つめる目には嘘や偽りはなかった。心の底からそう思っているのだろう。

 叶えられなかった母親の夢を娘が受け継ぐ。よくよく思うと、他のスポーツに比べてウマ娘のレースではそういう話が多いと思う。たしか、数年か前に秋華賞を勝った眼鏡のウマ娘もそんな話をインタビューで言っていたなと思い出していた。

 

 感動的な話だ。でも同時に、耳触りの良い話だと思うぐらいにはアタシの心は冷めてしまっていた。

 

 ──その夢は、本当にアクア自身の(もの)なのだろうか。

 

 確かにアタシは全くの部外者だ。知り合ってから数日の間柄で全てを知っているわけではない。彼女たちの母娘の絆になにかケチをつける余地なんてないし、すべきではないと思う。

 ……でも、どうしても訊かずにはいられなかった。だって今のアタシははちみーを夢中で啜り、ホットドッグを美味しそうに頬張るアクアを知ってしまっているから。

 

「……キャンプで川遊びの時間があったでしょ?」

「え、はい……」

「同級生の子から、アクアは川遊びすごく楽しみにしてけど、お母さんに駄目って言われたから遊ばなかったって聞いたわよ」

「…………そうです」

「その子の言う通り、本当は川で遊びたかったのよね」

「…………」

 

 この沈黙は肯定を表していた。

 ……すごく狡い言い方だなと、言ってから気づいた。

 

「口にするものもそうだし、遊びとかもだけれど、アクアはたくさん我慢してるんじゃない?」

「母さんは怪我をしたウマ娘だから、ぼくは強い身体になるようにってすごく厳しんです」

「……本当にやりたいことをそこまで我慢しなきゃいけないほど、アクアはトレセンに入りたいの?」

「…………」

 

 考えこんでいたアクアはしかし、また強い意志を秘めた瞳であたしを射抜いた。

 

 

「はい。トレセンに入りたいです」

 

 

 我慢していることを否定しなかった。その上で、トレセンに入りたいと言い切った。

 

 

 表面的な言葉なのか心の底にある本音なのかは分からないけれど、こうやって言い切れるのは小学5年生なのに本当に立派だ。

 

 

「そうなのね。……ごめんね、酷いこと言っちゃったかもしれない」

「そんなことありません! ……川遊びのことですけど、そのことについてはぼくも母さんの言うこと分かるんです」

「どういうこと?」

「実は2週間後に地区で一緒にやる練習会があるんです」

 

 アクアは地区の合同練習会についての詳細を話し始めた。

 毎年この時期に行われるらしく、トレーニングだけじゃなくて年齢別のレースが行われるらしい。そしてアクアは年齢別の一番上のクラスのレースのひとつに出走を予定している。

 その練習会は県内のある有名クラブが主催している。そのクラブの指導者はもちろん、他の有力スクールの指導者も見に来ていて、毎年模擬レースで1着のウマ娘はほぼ確実にスカウトされるとのことだった。

 トレセンに行くなら有名なクラブに行くべきだと母親は言っていて、自分もそう思っている。有名クラブなら周りのレベルも高いし、指導者や施設の質もFKBより絶対に良いのだと。狙っている有名クラブはこれまでに何人もトレセンに合格したウマ娘を輩出しているらしい。5年生の今、クラブを変えるなら最後のチャンスだと母親が言っているとも。

 

 去年は6着でスカウトは来なかったけれど、この1年で成長して速くなっているから、今年はチャンスだと深尾も言っていると。ちなみにFKBから違うスクールへ移籍するのはFKBとしても禁止しておらず、今回の件も既に母親から深尾へと通してあるらしい。

 

「大事なレースを控えてるから、川遊びで足裏を怪我するとか、もしものことがあったらいけないって母さんが。ぼくもそう思います」

「……そうなのね」

 

 その話を聞くと川遊びを禁止したことについて納得はできた。事情を知らないとはいえ、勝手なことを言い過ぎたと内省した。

 

「絶対に勝ってぼくは有名クラブに行きます。だから、練習会のレースがFKBでの最後のレースになるんです。走りを最初から教えてくれたコーチたちや、一緒に走ってくれたFKBの仲間に……勝ってありがとうって言いたいです。それに……」

 

 アクアはウエストポーチのファスナーの留め具についていたウマ娘の小さいぬいぐるみストラップを取り出した。

 

「これ、小2ぐらいのときにマリンと一緒に買ったんです。レース会場の売店で2体1セットで売ってて、2人のお小遣いで買いました。海外のウマ娘らしくて、ぼくもマリンも知らなかったんですけど可愛かったから」

 

 そのウマ娘は黒っぽい青鹿毛のウマ娘だった。タグには英語でAuguste Rodinと書かれていた。

 

「アウグステ……?」

「日本語でオーギュストロダン*1っていうウマ娘らしいです。マリンのはキングオブスティール*2ってウマ娘で、2人は友達でライバルなんだって売ってた人が言ってました」

 

 そのぬいぐるみのウマ娘を愛おしそうにアクアは見つめていた。

 

「実はマリンも一緒にレースに出るんです」

「え!? アクアが走るレースに?」

「はい。ぼくがマリンにお願いしたんです。……もしかしたら、マリンと走るのは最後になるかもしれないから、一緒に走ろうって」

 

 アタシは──

 

 

『……なぜ、本気で走らないのですか?』

 

 

 ──あのキャンプの夜に聞いた深尾の言葉を思い出していた。

 

「マリンはずっとぼくと一緒にいてくれました。ぼくが食べちゃいけないものはマリンも食べないでいてくれて……この前のバーベキューの時もぼくと同じものを食べてくれたんです。川遊び駄目だって母さんに言われたときも、一緒にトレーニングしてくれて」

「…………」

「本当に優しくて……大切な友達です。もちろん、1着を取らないといけないですから、最後もマリンには負けません!」

 

 アクアはぬいぐるみをポーチに入れてから勢いよく立ち上がった。

 

「スカーレットさん、今日はありがとうございました! それじゃぼくは家に帰ります!」

「ああ、またね。……気をつけて」

 

 彼女は設置されたゴミ箱へ寄り、ごみを優しく放ってから公園を後にした。

 

 

*1
アイルランドのウマ娘。GⅠ6勝(英ダービー、愛チャンピオンステークスほか)。後述するキングオブスティールとは同期。

*2
イギリスのウマ娘。GⅠ1勝(英チャンピオンステークス)。英ダービー2着。前述のオーギュストロダンとは同期で、現役8戦中5戦で彼女と対戦し結果は1勝4敗。




【海外ウマ娘メモ】
オーギュストロダンとキングオブスティールについて

 同世代でもある2人はジュニア級のフューチュリティトロフィー(GⅠ)からBCターフ(GⅠ)まで生涯を通じて5度対戦。
 2人のレースのハイライトは、3着以下を5バ身近く離しマッチレースとなった英ダービー。結果はオーギュストロダンが半バ身差で勝利(別世界の参考レースhttps://www.youtube.com/watch?v=QGk6rGMi__g)。
 オーギュストロダンは4度先着しているが、その4度全てが1着。

 伝統ある英ダービー1着2着の彼女らが、英愛の中距離GⅠの大レースである英・愛チャンピオンステークスをクラシック級の同年に制覇するなど、英愛レース界を大いに沸かせた。

 戦績的にはオーギュストロダンが圧倒しているものの、彼女のライバルと言えばキングオブスティールになるだろう。ある記者によれば、日本のトゥインクルシリーズで例えるならオルフェーヴルとウインバリアシオン、ジェンティルドンナとヴィルシーナと似たようなライバル関係だと。


 ……実は英ダービー3着のウマ娘がシニア級でオーギュストロダンにリベンジするという展開もあるのだが、それはまた別のお話。


※これから海外競馬要素が物語に関わったりするので説明を入れました。これからもちょくちょく入れる予定。
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