それでもダスカは走らない   作:シェーク両面粒高

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第一章
第7話 初日


「はーい。じゃあ始めましょうか。みなさん、おはようございます!」

 

 森の奥にあるFKBのグラウンドに集まったウマ娘たちを前にして、ブルーのチームジャージに身を包んだ深尾が挨拶をした。子供からは快活で元気な声が、大人たちはそれぞれのトーンで挨拶を返していた。アタシを含めウマ娘たちは自前のシャツやハーフパンツ、ジャージを着ていた。

 アタシは集まったウマ娘の中ではなく、深尾の斜め後ろに控えてその様子を見ていた。

 

 挨拶を終えた深尾はアタシへチラッと振り向いてから口を開いた。

 

「以前体験された時に一緒になられた方もいらっしゃると思いますが、今日から新しい仲間がクラブに加わります。……ささ、どうぞ自己紹介を」

 

 笑顔の彼と立ち位置を入れ替わる。目の前にいるウマ娘たちは全員で30人ぐらいで、それぞれの視線がアタシに注がれていた。その中には幼いウマ娘たちやパーマーなど見知った顔がいくつもあった。

 

「高校2年のダイワスカーレットです。スカーレットと呼んでください。今日からよろしくお願いします」

 

 頭を下げたアタシに対し、パチパチと拍手が注がれた。幼いウマ娘たちからは「スカーレットちゃん!」「よろしくー」などの声が聞こえてきた。

 

 今日から始まるのだ。正式なクラブの一員としてのスタートが。

 

「はい。それでは準備体操から始めましょうか。スカーレットさんもあちらへ」

「分かりました」

「今日も怪我なく明るく楽しく走りましょう! アンナさん、体操お願いします」

「はい。それでは皆さん、広がってくださーい」

 

 アンナの掛け声でウマ娘たちはお互い手が当たらないよう距離を取り始めた。

 アタシもその中に混ざると、近くにいたパーマーが声をかけてきた。

 

「よろしくね、スカーレット」

「こちらこそ。これからお願いね」

 

 パーマーと言葉を交わし、準備体操をしながらFKBに入会の手続きをした昨日のことを思い返していた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「本日はお越しいただきありがとうございます。代表兼コーチをしております、深尾渡です」

「ダイワスカーレットの母のスカーレットブーケです。今日はよろしくお願いしますね」

 

 クラブに入る意思を伝えてから数日後の金曜日の放課後、アタシは母と一緒にFKBの事務所を訪れ、深尾と向かい合っていた。これからクラブへの入会手続きに臨んでいた。

 以前訪れた時と同じソファに座り、母と並んで向き合っていた。窓から見えるグラウンドでは大人から子供まで多くのウマ娘たちがウッドチップの上を駆けていた。

 

「まず最初にご確認させてください。クラブに入ることについて、お母様は娘さんとはお話はされましたか?」

「はい。この子と……主人とも、3人で話しました。入会に関して異存はありません」

 

 あの日の夜、帰宅したアタシは真っ先に母にそのことを話した。理由は……正英のことは話せなかったので、少し体を動かしたくなったからということにした。

 姉たちとは違いアタシは走ることに対して全く興味を示してこなかったからか、アタシの第一声を聞いた母は面食らった様子だった。でもその後は話を聞いてくれて、後日父を交えてまた話し合って許可を貰えたのだ。

 

 その2日後に無料体験で実際にトレーニングに参加させてもらい、そしてこの場を迎えていた。

 

「承知致しました。では入会へ向けて話を進めさせていただきます。娘さんにお渡ししたパンフレットはご覧になられましたか?」

「拝見しました。娘は高校生ですのでクラブへの入会ということでよろしいんですよね?」

「はい。そうなりますね。簡単に説明しますね。このFKBは代表である私と従業員のアンナの2人で運営しており──」

 

 深尾の説明が始まった。

 

 入口の看板の通り、FKBには“School(スクール)”と“Club(クラブ)”がある。前者は小学生から中学生、後者は高校生以上が対象となっていた。

 パンフレットや深尾の話によると、スクールは小学生や中学生にコーチが密着指導をし、走りそのものを基礎から学んでいく。毎年開催されるジュニアクラブやポニースクールの大会へ向けて走りを磨き、また勝ち負けだけでなく健康的な身体作りやお互いを尊重する礼儀正しさを学ぶことも目的としている。中にはよりレベルの高いクラブへステップアップしたり、果てには中央や地方のトレセン学園入学を目指す、所謂競技者を目指していくウマ娘もいると。

 後者のアタシが入る予定のクラブは、競技者として走りを追求するのではなく、年齢を重ねたウマ娘たちへ体を動かす場を提供するというのが主な目的だ。高校生から中年のママさんまで幅広い年齢層のウマ娘が所属している。コーチはいくらか指導はするがスクールみたいに密着指導ではなく、自主的にメニューをこなしていく。強制ではないが大人向けのアマチュアの大会に参加するウマ娘もいるとのことだ。

 ちなみに練習時間はスクールもクラブも2時間程度。また月の会費は利用回数に応じて変わるらしい。

 

 用意された資料に目を通しながら、深尾の説明に耳を傾けていた。

 

「基本的に月曜日がお休みとなっています。週何回でも利用可能ですが、クラブなら大体週2、3回の方が多いですかね。スカーレットさんは利用回数についてご希望とかございますか?」

 

 深尾から話を振られた。その辺も既に両親と話してある。

 

「週3回を希望しています。月曜と水曜は塾なのでそれ以外で2回、あとは土日に1回がいいです」

「なるほど。曜日の希望は? 空きはあるのでどの曜日でも結構ですよ」

「火曜と木曜、土曜でも大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫です。……お母さまもそれで構いませんか?」

「はい」

「承知致しました。では火曜日、木曜日、土曜日の週3回利用で。都合の悪いときは違う曜日に利用するとか、学生さんですからテスト期間は休むとかも全然大丈夫なので、気軽に連絡してください。次は開始時間を決めましょう。改めて説明しますが平日のクラブの練習は2部あって、1部は16時半スタート。2部は19時スタートとなっています。内容は一緒で始まる時間が異なるだけです。どちらにされますか?」

「1部でお願いします」

 

 利用日は塾も無いので16時半スタートなら学校から直行すればちょうどいい時間だった。

 

「承知致しました。では平日は火曜と木曜の1部16時半から。土曜日は9時からスタートです。あ、火曜と木曜についてですが時間が間に合わないなら途中から参加されても構いませんし、2部に参加されても構いません。その辺も連絡していただければ対応いたしますので。……あとは諸々細かいところを──」

 

 その後、深尾は次々と書類を出しながら説明を始めた。入会の申込書や怪我をしたときの保険、レース協会や連盟への登録などについて説明を聞いたのちにアタシや母が必要事項を記入していった。

 最後に記入し終わった書類を彼は一枚一枚確認し、とんとんと机で叩いて書類の端を揃えていた。

 

「……はい、ありがとうございます。以上で今日ご記入いただくものは全てになります。お渡しした口座振替の書類は後日で構いません。トレーニングやメニュー、目標については実際に始まってから決めていきましょう。お二方、何か質問などございますか?」

「あの……私の方からふたつ良いでしょうか?」

「ママ……?」

「どうぞ」

 

 手を上げたのは母だった。

 

「まずひとつ。このクラブ、所属しているウマ娘のレベルはどれくらいのものなんでしょう?」

「レベル、ですか?」

「はい」

「…………」

 

 母の質問の意図が読めない。

 

「事実を申し上げるなら、ウマ娘によってまちまちとしか。中には元トレセン生なんてウマ娘もいらっしゃいますがごく少数です。大多数は地方含めトレセンとは関係のないウマ娘ですよ。アマチュアの大会でも県大会に進める程度で、全国まで行けるウマ娘はほぼいません。引退した元競技者だけで行われるRetired(リタイア―ド) Umamusu(ウマ娘)me Cup(カップ)についても同様です」

「分かりました。あともうひとつ」

 

 深尾は温和な笑みを崩さず母の言葉を待っていた。

 

「深尾さんはヒルエスタの元コーチだと存じております。今でも深尾さんやこのクラブはヒルエスタと提携などはしているのでしょうか」

「いいえ、全く。確かに私はヒルエスタで少しの間勤めていましたが、私個人としてもこのクラブとしても現在は全く関係は持っておりません」

「そうですか。……すみません、不躾に尋ねてしまい。ありがとうございます」

「とんでもございません。スカーレットさんは?」

「アタシは特に……」

 

 今のところ疑問が無いのは本当だが、それより母がなぜこんなことを訊いたのかが気になっていた。

 

「また疑問などあればいつでも何でも聞いてください。それでは明日……土曜日の9時からですね。よろしくお願いします」

 

 こうして入会手続きを終え、正式にクラブの一員となった。

 

 

 

 

 

 

 

 帰り道、母の運転する車の中で先程の質問の意図について訊いてみた。

 

「最後に質問してたけど、何か気になったことあったの? クラブのレベルとか、コーチとヒルエスタと関係が……とか」

「どんなクラブなのかなーって、ちょっと気になっただけよ。ヒルエスタについては……ほら、ママはヒルエスタにお世話になってたし、お姉ちゃんたちもヒルエスタ主催の合同トレーニングに参加してたから」

「ふ~ん」

 

 答えになっていないような気がする。本当に気になっただけなのか、何か隠していることがあるのかは分からない。

 

「ねえスカーレット」

「なに?」

「クラブに入った理由、体を動かしたいって言ってたけど、本当にそれだけ?」

 

 ……流石は母親。

 

「……うん」

「…………」

 

 母は何も言わなかった。代わりにもうひとつ質問が飛んできた。

 

「走って、どうしたいの?」

「どうって?」

「えーっと……目標とかはある?」

「目標……今のところはないわ。コーチもこれから決めていこうって言ってたじゃない」

「……そうね。ママ、変なこと訊いちゃったみたい」

「そんなことないけど……」

 

 それ以降は会話もなく、モニターから流れるテレビの音だけが車内を満たしていた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 そんなことを思い返しているうちに準備体操やストレッチが終わった。

 

「スカーレットさんはこっちへどうぞー」

「あ、はい」

 

 深尾と同じく上下ブルーのジャージに身を包んでいるアンナに呼ばれた。彼女はクラブのウマ娘たちに「いつも通り始めてくださいね」と声を掛けると、彼女たちはまばらに返事をしてそれぞれで別れていった。

 一方の深尾は離れたところでスクールのウマ娘たちと一緒にいた。どうやら今日は彼がスクール担当らしい。

 

「改めまして、コーチ補佐のアンナです。気軽にアンナと呼んでください。これからよろしくお願いしますね」

「こちらこそよろしくお願いします。アンナさん」

 

 彼女は恭しく頭を下げた。柔らかい雰囲気の中にも礼儀正しさや真面目さが見え隠れしていた。

 アタシも彼女を模倣するように頭を下げた。

 

「本日は初日なのでデータ計測が中心になります。簡単に言えば、どんなタイムで走れるかとか、体力がどの程度かとかを調べて現状のスカーレットさんの競走能力の評価を行います。そのデータを元にしてメニューを作っていくので、協力お願いしますね」

「分かりました」

「ありがとうございます! なら、まずはペース走から。私が速度を調節して走るので、後ろから追走してください」

 

 アンナはストップウォッチを片手にコースに出たので、アタシも髪の毛を持ってきていたゴムでツインテールにして後をついていった。

 

「走るのが苦しかったり、痛みなど何か異常があれば遠慮なくすぐにおっしゃってください。それでは行きましょっか!」

「はい! ……ふっ!」

 

 そうして彼女の後をついて走り始めた。

 

 

 ◇

 

 

「ふぅ……」

「お疲れさまスカーレット。今日はどうだった?」

 

 初日のトレーニングを終えて全身の疲労感と共に更衣室にあるベンチに座って一息ついていると、パーマーがアタシの横に腰を下ろしてきた。

 更衣室の中にはスクールとクラブのウマ娘たち30人ぐらい入っていてもまだ余裕があるくらい広かった。ウマ娘もとい女性だけが使うだけあって、鏡のある洗面台が3つも設置されていた。更には壁際に鍵がついたロッカーが並んでおり、施錠したあと事務所の方に預ける形となっていた。

 

「最初だから色んな走りやったっしょ?」

「そうね。けっこう脚はパンパン」

「だよね~。私も最初は体鈍ってて疲れてた」

 

 パーマーは立ち上がってから着ているものを脱ぎ始めていた。

 

「スカーレットはシャワー浴びる?」

「何も準備してないから今日はいいわ」

 

 体験の時にここへ入って驚いたのだが、更衣室の奥にはトイレとは別にシャワーブースが2つも設置されていた。見た目は武骨なコンテナハウスなのに、逆に内部のアメニティは充実していた。

 

「みんな浴びてるの?」

「子どもはほとんど使ってないかな~。大人の人も人によるって感じ。順番待たなきゃ駄目だし、私も日によるかな。この後バイトとか仕事とかデートとか、予定がある人は浴びてるみたい。てか、今日はシャワーセット持ってきてないから私もシートだよ」

 

 パーマーは汗拭きシートを取り出して体を拭き始めた。アタシも同じように普通に着替えを行った。

 

 着替えながら目に入ってくる他のウマ娘を見ていると、やはりと言うべきかみんなトレーニング用の蹄鉄をつけたトレーニングシューズを使っていた。小学生のウマ娘でさえも普段使い用の靴とトレーニングシューズは分けているようで、みんな着替えと一緒に普段使い用の靴やサンダルへ履き替えていた。

 今日は学校でも使う運動靴を履いて来てそのまま走ったが、出来るだけ早くトレーニングシューズと蹄鉄を買いに行こうと決意した。

 ……トレーニングシューズで走った感覚がどんなものか、ちょっと気になってたのしみにしてる自分に気がついた。

 

 アタシより先に帰るウマ娘に挨拶しながら、あるいはパーマーと話しながら着替えを進めていった。子供から大人を含め、まだまだ名前も知らないウマ娘が多い。早く覚えていかないと。

 

「そうだ、今日予定空いてる? 親睦を深めるためにもさ、ご飯でも行かない?」

「いいわよ。行きましょ」

 

 特に午後からの予定は無かった。強いて言うなら家に帰って勉強するぐらいだった。

 

「よし来た! じゃあさ、最近行ってみたかったお店あるんだよね~。一人じゃ行く勇気無くてさ」

「どんな店?」

「最近できた個人経営のカレー屋さんでさ、美味しいらしいんだって!」

「…………」

「あれ、どうしたの? もしかしてカレー苦手?」

「いいえ、そんなことはないけど……」

 

 

 最近できた個人経営のカレー屋。

 

 

 どこかで聞いたフレーズだった。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「更衣室の清掃終わったわ」

「ありがとうございます。お疲れさまです」

 

 FKBの事務室にはアンナと深尾の姿があった。その言葉通り、更衣室の清掃を終えたアンナが事務所に戻ってきたのだ。

 トレーニングが終わった後2人でバ場整備をしてから深尾は事務仕事を、アンナは清掃作業を行っていた。

 

 深尾は利用料の請求に向けた事務仕事を終えてから本日のトレーニング記録の整理をしていた。クラブはまだしもスクールの子どもたちのデータは毎回記録しているので、そのまとめ作業をしていたのだ。

 今日はそれに加えて追加の仕事があった。新しく入ってきたダイワスカーレットのデータも纏め、トレーニングメニューを作成しなければならないのだ。

 深尾はアンナが記録したダイワスカーレットのデータを眺めていた。

 

「……このデータ、本当に正しいですか?」

 

 目の前に提示されている計測データは驚愕の数値を叩きだしており、深尾は思わずアンナへとそう訊いてしまった。

 

「私のミスだって疑ってるの?」

「いや、そういうわけでは……」

 

 アンナは深尾へと非難がましい冷たい視線を送った。コーチ補佐をしているときのような人当たりの良い雰囲気は、今の彼女からは消え失せていた。

 

 

 ともすれば、おそらくこちらがアンナと言うウマ娘の素の姿なのだ。

 

 

「驚きを通り越して恐ろしいですね。しかも今日は普通の運動靴ですって? ……今この状態でも中央で通用するんじゃないですか。本格的に鍛えたら重賞も勝てるレベルかもしれません。ヒルエスタも大物を逃しましたね」

 

 深尾の言葉に嘘偽りはなかった。単純にダイワスカーレットのスピードとスタミナは並外れたものだった。この能力なら不良ウマ娘に圧勝するのも何らおかしくない。大雑把な予測だが、現役で中央のオープンクラスじゃないと相手にならないだろうと彼は見ていた。

 

「あの子から聞いたのだけれど、昔から週に1回以上は走ってるみたい。最低でも1時間、長いときは休みながら数時間」

「それはいいトレーニング代わりになってますねえ」

 

 本格的なトレーニングではないにせよ、普段から走っているのといないのでは雲泥の差だ。この走力は日頃から走る習慣の賜物だろう。

 もっとも、これだけ速いのは彼女のポテンシャルが高すぎることに他ならない。

 

「そういえば知ってます? あの一家のウマ娘たち」

「何のこと?」

「母親のスカーレットブーケが重賞4勝。あの子が三姉妹の末っ子で、長女のダイワルージュが重賞1勝。そして極めつきは次女がなんとあのダイワメジャーなんですよ」

 

 ダイワメジャーは皐月賞・天皇賞秋・マイルCS2回・安田記念を勝ちGⅠを5勝。最近まで中央で大活躍していたウマ娘で世間一般でも広く知られている。現在はDTL(ドリームトロフィーリーグ)に所属しており、華やかな場で活躍を続けている。

 

 超良血に高すぎる素質、何より親や姉がトレセン関係者という環境にありながら、トレセンに入らなかったダイワスカーレットというウマ娘。そんな彼女が高校2年生になった今になって走ろうとしている。

 親か姉かもしくは自身か、家族の間に何かあったのか疑ってかかりたくなるのは職業柄と言っても良かった。

 

「親にはちょっと気になる質問されましたが、変わった風には見えませんでした。自身も上の娘2人も競技者ですから、()()()()()かもって警戒してましたが……モンペかどうかはこれからですね」

 

 何かあるのか、何もないのか、現時点では何も分からない。

 

「走りを実際見てどうでした?」

「荒削りでフォームも安定しないけどとにかく速いわ。生まれ持った基礎スピードが他のウマ娘と違い過ぎる。少なくともこのクラブにいるウマ娘の中じゃ群を抜いている」

()()()あなたが実際に出会った中では?」

「……現時点で5本の指には入るでしょうね」

 

 深尾はパソコン越しにアンナの表情を伺った。そこに好戦的な色が僅かに滲んでいるのを彼は見逃さなかった。

 

「……()()()、まさか今日ずっとそんな調子だったんですか?」

「そんなわけないでしょ。……それと」

「ん?」

「もう2人だけなのに、どうして今日はその気色悪い喋り方をしているの? その皮を被った感じも本当に気色悪いわ」

 

 深尾は大きくため息をついて体を椅子の背へと預けた。

 

「……2回も気色悪いとか言うなよ。ノリでやってただけだ」

「付き合ってあげてたけど、2人のときにされると違和感が凄いのよ」

「お前だって()()()みたいな感じで普段やってるくせに」

「……愛想よくしろって言ってるのはあなたじゃない。着替えてくるわ」

 

 奥へ着替えに向かったアンナの右耳には、チェーンピアスについた青と赤の宝石が揺れていた。

 

 

 




Retired Umamusume CupについてはRRC(Retired Racehorse Cup・引退競走馬杯)を元ネタにしています。トレセンやトゥインクルシリーズにいたウマ娘が参加するアマチュアのレースとなります。細かい設定などは追々。
もちろんRRCとは意義や目的も全く異なりますが、トレセンとかトゥインクルシリーズにいたウマ娘が引退後に走ったときのことを考えると、一般的なアマチュアとは別にこういう制度が必要かなと。
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