ありふれた戦士の異世界旅行   作:トッポ(チョコ無し)

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焦げた文書3
第3次竜大戦の記録が綴られた文書。
竜に国を焼かれた神々の連合だったが、これまでの大戦より圧倒的に少なく僅か50の神々だけであった。しかし、膜は破られダメージが通り文字通りの全滅だが片翼を捥ぎ取る活躍をした。


謁見とステータス

王宮に着くと、蓮達は真っ直ぐに玉座の間に案内された。

 

 教会に負けないくらい煌びやかな内装の廊下を歩く。道中、騎士っぽい装備を身につけた者や文官らしき者、メイド等の使用人とすれ違うのだが、皆一様に期待に満ちた、あるいは畏敬の念に満ちた眼差しを向けて来る。蓮達が何者か、ある程度知っているようだ。

 

 蓮は居心地は悪く無いものの観察する為、最後尾をこそこそと付いていった。

 

 美しい意匠の凝らされた巨大な両開きの扉の前に到着すると、その扉の両サイドで直立不動の姿勢をとっていた兵士二人がイシュタルと勇者一行が来たことを大声で告げ、中の返事も待たず扉を開け放った。

 

 イシュタルは、それが当然というように悠々ゆうゆうと扉を通る。光輝等一部の者を除いて生徒達は恐る恐るといった感じで扉を潜った。

 

 扉を潜った先には、真っ直ぐ延びたレッドカーペットと、その奥の中央に豪奢ごうしゃな椅子――玉座があった。玉座の前で覇気と威厳を纏った初老の男が立ち上がって・・・・・・待っている。あぁ、嫌な感じだ。

 

 その隣には王妃と思われる女性、その更に隣には十歳前後の金髪碧眼の美少年、十四、五歳の同じく金髪碧眼の美少女が控えていた。更に、レッドカーペットの両サイドには左側に甲冑や軍服らしき衣装を纏った者達が、右側には文官らしき者達がざっと三十人以上並んで佇んでいる。

 

 玉座の手前に着くと、イシュタルは蓮達をそこに止め置き、自分は国王の隣へと進んだ。

 

 そこで、おもむろに手を差し出すと国王は恭しくその手を取り、軽く触れない程度のキスをした。どうやら、教皇の方が立場は上のようだ。これで、国を動かすのが〝神〟であることが確定だな、と蓮は内心で溜息を吐く。ああ、本当、試練の男神よ我等に慈悲を

 

 そこからはただの自己紹介だ。国王の名をエリヒド・S・B・ハイリヒといい、王妃をルルアリアというらしい。金髪美少年はランデル王子、王女はリリアーナという。

 

 後は、騎士団長や宰相等、高い地位にある者の紹介がなされた。ちなみに、途中、美少年の目が香織に吸い寄せられるようにチラチラ見ていたことから香織の魅力は異世界でも通用するようである。

 

 その後、晩餐会が開かれ異世界料理を堪能した。見た目は地球の洋食とほとんど変わらなかった。たまにピンク色のソースや虹色に輝く飲み物が出てきたりしたが非常に美味だった。

 

 ランデル殿下がしきりに香織に話しかけていたのをクラスの男子がやきもきしながら見ているという状況もあった。

 

 王宮では、蓮達の訓練における教官達の紹介もなされた。教官達は現役の騎士団や宮廷魔法師から選ばれたようだ。いずれ来る戦争に備え親睦を深めておけということだろう。

 

 晩餐が終わり解散になると、各自に一室ずつ与えられた部屋に案内された。天蓋付きベッドに愕然としたのは蓮だけではないはずだ。蓮は、豪奢な部屋にイマイチ落ち着かない気持ちになりながら、それでも怒涛の一日に張り詰めていたものが溶けていくのを感じ、ベッドにダイブすると共にその意識を落とした。

 

 

 

翌日から早速訓練と座学が始まった。

 

 まず、集まった生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。

 

 騎士団長が訓練に付きっきりでいいのかとも思った蓮だったが、対外的にも対内的にも〝勇者様一行〟を半端な者に預けるわけにはいかないということらしい。

 

 メルド団長本人も、「むしろ面倒な雑事を副長(副団長のこと)に押し付ける理由ができて助かった!」と豪快に笑っていたくらいだから大丈夫なのだろう。もっとも、副長さんは大丈夫ではないかもしれないが……

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

 非常に気楽な喋り方をするメルド。彼は豪放磊落な性格で、「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員達にも普通に接するように忠告するくらいだ。

 

 蓮達もその方が気楽で良かった。遥か年上の人達から慇懃な態度を取られると居心地が悪くてしょうがないのだ。

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

「アーティファクト?」

 

 アーティファクトという聞き慣れない単語に光輝が質問をする。

 

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

 

 

 なるほど、魔道具や魔武具の様なものか。

生徒達もなるほどと、顔を顰しかめながら指先に針をチョンと刺し、プクと浮き上がった血を魔法陣に擦りつけた。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。ハジメも同じように血を擦りつけ表を見る。

 

 すると……

 

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南雲蓮 17歳 男 レベル:1

天職:錬成師・戦技団

筋力:200

体力:60

耐性:10

敏捷:60

魔力:14300

神秘:90000

魔耐:300

技能:錬成・言語理解・全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛腕・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・重力魔法・魔力操作・駆魔召喚・祈ーー術・限界突破・機魔操作・聖火の祝福

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 と表示された。

 

 まるでゲームのキャラにでもなったようだと感じながら、蓮は自分のステータスを眺める。他の生徒達もマジマジと自分のステータスに注目している。

 

 メルド団長からステータスの説明がなされた。

 

「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に〝レベル〟があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

 

 どうやらゲームのようにレベルが上がるからステータスが上がる訳ではないらしい。

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」

 

 メルド団長の言葉から推測すると、魔物を倒しただけでステータスが一気に上昇するということはないらしい。地道に腕を磨かなければならないようだ。

 

「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

 

 蓮は自分のステータスを見る。確かに天職欄に〝錬成師〟とある。名前から考えると生産系なのだろう。

 

 蓮達は上位世界の人間だから、トータスの人達よりハイスペックなのはイシュタルから聞いていたこと。なら当然だろうと思いつつ、自分に何かしらの才能があると言われれば、やはり嬉しいものだ。

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

なるほど、初期の平均は10か。管理しやすい様に作らせているのか。国家運営、在庫管理としても納得のいく方法だし、完成度も高い。世界への浸透具合からしてバグを起こすのはありえないとは思うのだが、神格が低いのか?調べてみる必要がありそうだ。

 

 メルド団長の呼び掛けに、早速、光輝がステータスの報告をしに前へ出た。そのステータスは……

 

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天之河光輝 17歳 男 レベル:1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

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「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

「いや~、あはは……」

 

 団長の称賛に照れたように頭を掻く光輝。ちなみに団長のレベルは62。ステータス平均は300前後、この世界でもトップレベルの強さだ。しかし、光輝はレベル1で既に三分の一に迫っている。成長率次第では、あっさり追い抜きそうだ。

 

 ちなみに、技能=才能である以上、先天的なものなので増えたりはしないらしい。唯一の例外が〝派生技能〟だ。

 

 これは一つの技能を長年磨き続けた末に、いわゆる〝壁を越える〟に至った者が取得する後天的技能である。簡単に言えば今まで出来なかったことが、ある日突然、コツを掴んで猛烈な勢いで熟練度を増すということだ。

 

 光輝だけが特別かと思ったら他の連中も、光輝に及ばないながら十分チートだった。それにどいつもこいつも戦闘系天職ばかりなのだが……

 

 蓮は自分のステータス欄にある〝錬成師〟と〝戦技団〟を見つめる。響きから言ってどう頭を捻っても錬成師は戦闘できるイメージが湧かない。

見ている限り天職が2つもあるのはありえなそうだ。俺と協力者以外は。

アレも偽造したのを確認できたし、見せに行くか。

報告の順番が回ってきたのでメルド団長にプレートを見せた。

 

 今まで、規格外のステータスばかり確認してきたメルド団長の表情はホクホクしている。多くの強力無比な戦友の誕生に喜んでいるのだろう。

 

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南雲蓮 17歳 男 レベル:1

天職:錬成師

筋力:40

体力:30

耐性:10

敏捷:20

魔力:30

  :200

魔耐:30

技能:錬成・魔力操作・構成理解・限界突破・言語理解

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に偽装したステータスプレートを見て勇者や戦闘職達の後だからか、ちょっと落胆した様な雰囲気を出し技能をみて納得した雰囲気を出した。

 

「ああ、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……。戦闘職じゃ無いのは残念だろうが生産職も立派な職だ。自信を持つんだ。…ところでこの空白に心当たりは?」

「無いです。」

 

その言葉に蓮を目の敵にしている男子達が食いつかないはずがない。鍛治職ということは明らかに非戦系天職だ。クラスメイト達全員が戦闘系天職を持ち、これから戦いが待っている状況では役立たずの可能性が大きい。

 

 檜山大介が、ニヤニヤとしながら声を張り上げる。

 

「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」

「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」

「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」

 

 檜山が、実にウザイ感じで蓮と肩を組む。見渡せば、周りの生徒達――特に男子はニヤニヤと嗤わらっている。

 

「さぁ、やってみないと分からないかな」

「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ~?」

 

 メルド団長の表情から内容を察しているだろうに、わざわざ執拗しつように聞く檜山。本当に嫌な性格をしている。取り巻きの三人もはやし立てる。強い者には媚び、弱い者には強く出る典型的な小物の行動だ。事実、香織や雫などは不快げに眉をひそめている。

 

 香織に惚れているくせに、なぜそれに気がつかないのか。理解できないものを見ていると檜山はメルド団長から奪った。

 

「あっおい!」

 

 メルド団長の声を無視し蓮のプレートの内容を見て、檜山は爆笑した。そして、斎藤達取り巻きに投げ渡し内容を見た他の連中も爆笑なり失笑なりをしていく。

 

「ぶっはははっ~、なんだこれ! 殆ど一般人じゃねぇか!」

「ぎゃははは~、鍛えてるその辺の子供より弱いかもな~」

「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」

「何もステータスだけが戦闘に関係することは無いだろ。返してくれないか?」

「は?知るかよ」

 

 次々と笑い出す生徒に香織が憤然と動き出す。しかし、その前にウガーと怒りの声を発する人がいた。愛子先生だ。

 

「こらー! 何を笑っているんですか! 仲間を笑うなんて先生許しませんよ! ええ、先生は絶対許しません! 早くプレートを南雲君に返しなさい!」

 

 ちっこい体で精一杯怒りを表現する愛子先生。その姿に毒気を抜かれたのかプレートが蓮に返される。

 

 愛子先生は蓮に向き直ると励はげますように肩を叩いた。

 

「南雲君、気にすることはありませんよ! 先生だって非戦系? とかいう天職ですし、ステータスだってほとんど平均です。南雲君は一人じゃありませんからね!」

 

 そう言って「ほらっ」と愛子先生は蓮に自分のステータスを見せた。

 

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畑山愛子 25歳 女 レベル:1

天職:作農師

筋力:5

体力:10

耐性:10

敏捷:5

魔力:100

魔耐:10

技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・聖火の加護・言語理解

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 愛子先生は何がズレてトドメを刺してくるんだよなぁと蓮の目の光が消えた。

 

「あれっ、どうしたんですか! 南雲君!」と蓮の肩を持ち、ガクガク揺さぶる愛子先生。

 

 確かに全体のステータスは低いし、非戦系天職だろうことは一目でわかるのだが……魔力だけなら勇者に匹敵しており、技能数なら超えている。糧食問題は戦争には付きものだ。蓮のようにいくらでも優秀な代わりのいる職業ではないのだ。つまり、愛子先生も十二分にチートだった。

 

 偽装したとはいえ、非戦闘系の天職仲間だと思った蓮にとっては結構なダメージであった。

 

「あらあら、愛ちゃんったら止め刺しちゃったわね……」

「な、南雲くん! 大丈夫!?」

 

 目の光が無く反応もなくなった蓮を見て雫が苦笑いし、香織が心配そうに駆け寄る。愛子先生は「あれぇ~?」と首を傾げている。相変わらず一生懸命だが空回る愛子先生にほっこりするクラスメイト達。

 

 蓮に対する嘲笑を止めるという目的自体は達成したものの、上げて落とす的な気遣いと、これからの前途多難さに、蓮は乾いた笑みを浮かべるのだった。




ーー王国
神が支配する国の中で唯一人が主権の国家。
星の想定から初めて逸脱した集団となった。
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