迫真エリー都!ホロウレイダーと化した先輩   作:我蔦早瀬

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差し違えてでも殺すつもりだった。

身寄りのない自分を育ててくれた、赤牙組。
そのリーダー・シルバーヘッド。
かつて理想に燃えていた彼は、いつしかみんなを裏切りひとでなしに堕落していった。
そんな彼の末路は、抗争の果ての野垂れ死に。

妥当な最期。相応の結末。因果応報。

事実だ。全くもってその通りだと思った。

それでも、喉に刺さった魚の骨のようなチクリとした痛みと、燃えるような復讐心が残ったことも事実だった。

下手人の名は邪兎屋。金にガメついことで悪名高い何でも屋だ。
赤牙組の残党から追われる邪兎屋の首魁・ニコを懐柔し、高額の報酬をちらつかせた偽の依頼で超危険エーテリアス・デッドエンドブッチャーの巣食うホロウに誘い込んだ。

深部に迷い込ませて肉屋(ブッチャー)の手で文字通り挽肉になれば良い。
そう思っていた。

彼らは今「ホロウに迷い込んだ子供が見えた」という私の嘘を本気で信じて、自らの危険も顧みずに戦っている。

(やめて)

弱きを助け、強気を挫く。
そんな古臭いカビの生えた仁義を体現するような生き様は、まるでかつて自分を育ててくれたあのチームのようで。

(やめてよ)

まるでかつて自分が憧れたあの人のようで。

(あんたたちが殺したくせに)

子供を救うために一つしかない命を賭ける彼ら。
そんな彼らを騙して死なせようとしている自分。

(違う)

昔の赤牙組に近いのはどっち?
今の赤牙組に近いのはどっち?

(違う違う違う違う違う)

だから、自問自答する自分の前に本当にホロウに迷い込んだ子供が現れた時は、罰が当たったんだと思った。

嗚呼。自分の馬鹿な行動のせいで、彼らもこの子供も、みんな死ぬんだ、と。

天罰を下す神様なんていなくなった終わりゆく世界なのに。

最初はそう、本気で思った。




その子供が、奇妙な三人のカラテ・マンに絡まれている様を目撃するまでは。


第一章【極道脅迫!兎たちの逆襲】
第1話 迫真空手 勢の裏技


ときは遡り、いっぽうたどころ

 

新エリー都の外れの古ぼけた廃校舎の部室に、一つのホロウの入り口が存在していた。

様々な要因が重なり、その小さなホロウの入り口は長期に渡って安定した状態で保たれていたのである。

 

ホロウ。

 

それは人類を蝕む災厄。予兆なく出現し、あらゆるものを拒むことなく引きずり込む空間(種壺)

 

そこに呑まれたものは、否応なくエーテルと呼ばれる特異な物質に晒され、最終的に理性も人の姿もなくしたエーテリアスと呼称される怪物に変異する(野獣と化す)

 

言うまでもなく危険な領域であり立ち入りが厳しく禁じられているが、同時に豊富な資源が眠る宝庫でもある。おまけにホロウ内で拾った遺失物は届出なしに我が物とできる法律すらある。

ガバガバなルールのせいで、ホロウに違法に出入りして一攫千金を狙うホロウレイダー(人間の屑)はあとをたたなかった。

 

この三人組もそうである。

安定したホロウの入り口=安定した収入という皮算用の極みのような楽観的展望は、あらゆる不安要素をいい歳こいた三人の大人の脳内から消し去るには十分だった。

 

廃校の部室と、そこに発生したホロウの裂け目を三人は「リスポーン地点」と呼んでいた。

 

「ぬわああん疲れたもおおおおおおん」「チカレタ…」「いやきつかったっすね今日は〜」「今日すっげえきつかったゾ~」「辞めたくなります、よぉ~部活ぅ」「どうすっかな〜俺もな〜(意味深)」「風呂入ってさっぱりしましょうよ〜」「おい、KMR早くしろ」

惰性で繰り返す、他愛のない雑談。実家のような安心感。親の顔より見た光景。

 

「ナオキキキキ。先輩たち、焦ったってホロウは逃げませんよ。」

奇怪な笑い方と整った顔立ちが特徴の男の名は木村。

三人の中では最も歳若いが、最も落ち着きのある人物である。戦いにおいては司令塔に近い動きを担当しており、内心自分は先輩二人より賢いと思っているが、後先考えずにホロウに入り浸る同じケツ穴のムジナである自覚がない時点で馬鹿である。

 

「なんだよ木村嬉しそうじゃねぇかよ」

この浅黒い汚物のような男は田所。

木村の1つ上の先輩であり、親しい者からは野獣と呼ばれている。

三人の中で唯一帯刀しており、戦闘において主力となる男だが、お調子者の馬鹿である。

 

「そうだよ(便乗)」

坊主頭の男の名は、三浦。

戦闘では相手の体勢を崩す斬り込み役を務めていた。

一番年長者のくせに主体性がなく、常にぼんやりした池沼のような男であるが、肝心な時だけ頼りになるので後輩二人からはなんやかんや慕われている。要約すると、馬鹿である。

 

この三馬鹿はとある空手の師範の元に集った弟子であり、まがいなりにも今まで生きてこられたのは、この空手によって鍛え上げられた体と技があってこそのものだった。

 

いつものようにホロウに侵入し、金目のものを物色していたのだが、その日はめぼしいものが見つからず途方に暮れていた。

「野獣、お前収穫はなんかあったかゾ?」

「無いです」

「ポッチャマ…」

アンニュイな憂いを帯びた表情の野獣も、結果は芳しくない。三浦は落胆し、顔を覆った。

 

この一帯のエーテル結晶はあらかたガン掘りし尽くし、遺失物の類も全て拾い終えてしまったのだ。

 

「んにゃぴ・・・やっぱり、プロキシに頼む・・・の方が一番いいですよね。」

顎に手を当て、思案もとい欲をかく野獣。

もう少し遠出すれば新たな資源を見つけられるかもしれないが、ホロウは常に変化し続ける危険地帯。

ゆえに、ホロウ探索おいてはキャロットと呼ばれる時限式の地図と、出入り口までのルートを確保するプロキシと呼ばれる闇業者の随伴が鉄則であった。

しかし、余計な出費をしたく無いというケチな懐事情と安定した出入り口というアドバンテージから、彼らはそれらに頼ったことが無かった。

 

「でも、依頼料って結構するんダルルォ?

伝説のプロキシ・パエトーンとかすっげえ高額だったゾ?」

「ピンキリですよでもね(ドヤ顔)」

 

「安すぎるのも考えものですよ。

下手なプロキシに頼むと、キャロットすら自前で作れないクソ雑魚ナメクジな場合もあるらしいですし。」

ほんのすこし遠出して探索をしていた木村も戻って来たようだ。

 

「お、木村戻って来たじゃんアゼルバイジャン」

「木村も収穫無しかな〜俺もな〜(意味深)」

 

しかし、木村は手ぶらでは無かった。

 

「ファ!?」「ポッチャマ...」

 

その手に、幼い少女を連れていたのだ。

 

「ないですね、これはない。」

「木村、見損なったゾ。身代金欲しさに誘拐とは、迫真空手部の恥さらしめ。」

 

怒りの表情で野獣は抜刀し、三浦は拳を構える。

 

「大丈夫だって安心しろよ。峰打ちで済ませてやるからさ。

♰悔い改めて♰」

「迫真空手部の掟その1

弟弟子の不始末は兄弟子の不始末。

豚箱には一緒に入ってやるからケツ出せ!」

 

「いや、何勘違いしてんですかこの池沼どもは。

迷子ですよ迷子。危ないんで連れて来ました。

 

でも、あんたらみたいなパブリック・エネミーに引き合わせちゃったことを後悔してます。」

心底軽蔑した眼差しを先輩二人に向ける木村。

 

木村の弁明に、先輩二人は先ほどまでの怒りはどこへやら。

構えを解いて笑顔になる。

 

「あっそっかぁ!」

「やりますねぇ!お前のことが好きだったんだよ!」

「てっきり木村が性犯罪者になったのかと勘違いしちゃってすっげえキツかったゾ〜」

「兄弟子の立場を利用して、僕に性犯罪したのはあんたらでしょうが。」

 

馬鹿な先輩二人に青筋を浮かべながらも、内心木村は安堵していた。万が一危険なエーテリアスに襲われた場合、自分一人で子供を抱えたまま逃げ切る自信も、子供を巻き添えにせずに倒す自信も無かった。

彼ら先輩は多少性格と遵法意識に難があれど、戦闘力と正義感に関しては一定の信頼が置けた。

 

「お嬢ちゃん、もう大丈夫だゾ〜。

怖かったよなぁ?お菓子あるから食べるといいゾ」

「お、大丈夫か大丈夫か。

顔がすっげえ青白くなってる。はっきりわかんだね。

怪我してたり気分悪くなったらすぐに言って、どうぞ。」

 

しかし、その静寂は直ぐに破られることとなる。

 

 

 

「見つけた!!女の子はあそこだ!」

幼い少女を追いかけた邪兎屋の視線の先には、女の子を取り囲み、武器を構えた不審な男達。

おそらく悪質なホロウレイダーだ。

子供を誘拐し、身代金でもせびるつもりなのであろう。

 

「猫又。申し訳ないけど、あの汚物が女の子に見えるのなら眼科に行くべき。

良い闇医者を紹介してあげる。」

「違うって!女の子はあいつらが取り囲んでるほう!

そんなことよりどう見ても誘拐の現行犯だゾ!」

 

 

「なっ...いきなり汚物呼ばわりどころか誘拐犯扱いとかお前やりませんねスギィ!

MURはん、こいつら殺しましょうよ!!」

「迫真侮辱罪ゾですゾねぇ…(憤怒)」

唐突に侮辱されたことで、野獣と三浦は臨戦体勢に入る。

 

が、しかし

 

「隙だらけ。貴方たち、それでよく今まで生きてこられたわね。」

「おねんねしてな!」

ビリーの2発の弾丸。アンビーの斬撃。

それらが挟撃する形で三浦と野獣に既に迫っていた。

 

 

 

「やれやれ。先輩たち、熱くなりすぎですよ?

じゃ、『流し』ますね?」

「なにっ」

 

それを防いだのは、割って入った木村。

空間が歪んだと錯覚するほどに身体を廻天させ、その身に受ける攻撃を滑らせる。

それは言うなればスリッピング・アウェー。

 

現実においてもボクシングで相手の拳と同じ方向に顔を背けて受け流すことを目的に使われる、受け身の技。

 

しかし、木村のそれは全身を使った超高難易度のスリッピング。

それは打撃のみならず、斬撃、果ては銃弾すらも受け流す『弾丸滑り(たますべり)』。

 

弾丸は木村の体を貫くことなく明後日の方向に飛んでいき、鉈の刃は皮膚を切り裂くことなく滑る。

アンビーはよろめいて体勢を崩した。

そして、それを見逃すほど三浦も野獣も甘くは無かった。

「しゃあ!」「爆砕かけますね!」

 

「させねぇよ!」「アンビー、下がって!」

拳と刀が襲いかかるが、それより早く後隙を潰すためにビリーの弾丸とニコのエーテル弾が二人を強襲する。

 

「「ヌッ」」

 

着弾の直前にアンビー、そして三浦と野獣は後ろに飛び下がり、体勢を整える。

 

息もつかせぬ攻防に一区切りがつき、相手の力量を見誤っていたことを双方が悟る。

 

一連の攻防において最も動揺していたのは、直前まで迷いに苛まれて動揺していた故、参戦に一歩遅れた猫又____

 

 

 

 

ではなく木村であった。

 

「(なんて人たちだ....)」

 

木村はアンビーとビリーの初撃を捌いたとき、既に一つの布石を打っていた。

刃を生身で無傷のまま受けられるという異常事態に動揺するアンビーの身体を、廻天の勢いのまま弾丸の方向に押し流す。

 

即ち、既に滑らせていたビリーの弾丸のうち1発目をアンビーの利き手に、2発目を鉈に撃たせて戦闘能力を奪う腹積りであった。

 

しかし、アンビーは体勢を崩された時点でその目論見を看破し、鉈を握り直して武器を狙う2発目の弾丸を切り裂いた。

同時に、利き手を狙った1発目の弾丸はこの時点でビリーによって間髪入れずに放たれた神速の早撃ちによる3発目の弾丸により、既に弾かれていた。

 

既に受けてしまった初見の技を、瞬時にその意図すら見切り、身に迫る弾丸よりも武器を狙う弾丸の処理を優先する胆力。

それら全てを察知し、自らの放った弾丸に即座に3発目を当てる精密性。

コンマ0.001秒の世界の中、1つのミスが生死に直結する刹那の判断。

仲間と己の技術に全幅の信頼をおかなければ成し得ない、まさに神業であった。

 

 

「やりますねぇ。」

「うむ。こいつら只者ではないゾ」

どうやら先輩たちもあの一瞬の攻防を理解していたようだ。

そうだ、彼らもすごいが自分たちだって負けてはいないはず。

動揺は一瞬。木村も構え直し、敵を見据える。

 

 

「ヒュー!たまげたぜ!」

「こんな危険な場所でうかうかしてられないわね。アンビー!」

「了解。」

先に仕掛けたのはまたしてもアンビーだった。

青白い雷光を刀身に纏った斬撃は、並のエーテリアスなら消し炭にしうる威力である。

 

「ヌッ!」

それを野獣が得物で受け止める。

小柄な少女の一撃が、野獣の体幹を大きく削った。

 

「ちょっと刃ァ当たんよー。」

帯電する鉈との鍔迫り合いは危険と判断した野獣は、渾身の一撃ではなく手数による圧倒を選んだ。

 

「ホラホラホラホラホラホラ」

葛木流 淫夢之一太刀(いんむのひとたち) 九の型 矢雨血繰(やめちくり)

上下・左右・前後のあらゆる方向から雨霰の如く降り注ぐ刃の乱撃だが、アンビーは表情一つ崩さず冷静に斬り伏せる。

 

「速い。けど雷ほどじゃないわ。」

「ん、そうですね。鉈で防がせて足止めるために、わざと速度落としてんスから。」

「!?」

 

「よし、じゃあぶち込んでやるぜ!」

「オッスお願いしまーす」

野獣の剣戟に便乗して、三浦がアンビーに迫る。

その卓越した身のこなしは、野獣に剣速を落とさせぬまま、刃の檻をすり抜けるように正拳突きを届ける。

 

野獣の刀を防げば三浦の拳を防げない。

三浦の拳を防げば野獣の刀を防げない。

あちらを勃てればこちらが勃たず。

 

「ッッ!?サンダー!(これは!避けるのが!最善!)」

 

離脱を選んだアンビーは、体を捻って踵落としを放ち、牽制としてさらに雷撃を見舞う。

同時に地面に転がる消火器を通電で誘爆させ、煙幕を張って物陰に潜む邪兎屋と合流した。

 

 

ニコは攻防の隙に乗じて確保した幼い少女を抱え、悲鳴をあげる。

「なんなのよあの変態カラテマンどもは!

ただのチンピラホロウレイダーの割に強すぎない!?」

「生身でハジキを弾くなんてスターライトナイトの怪人かっつーの!」

「ええ、今も見事にしてやられたわ。避けたと思ったのだけれど。」

 

「!?アンビー、お前その腕。」

アンビーの肩が不自然にだらりと垂れ下がる。完全に脱臼していた。

アンビーは壁に自らの体を打ちつけて関節を嵌め直す。

ぐきりと骨と肉の軋む音の後、握り拳を繰り返して動作を確認した。

 

「うん、骨は問題無い。

さっきの技のからくりは見破った。

2度同じ技は喰らわない。」

 

「ほう、流石だゾ。」

煙幕の中、三浦の声が響く。

 

 

「「「!?」」」

「落ち着いて。場所が割れてるなら既に踏み込まれているはずよ。

さっきの技の正体は、一発にしか見えないほどの超音速で放たれる正拳突き二連打。

でしょ?」

 

「そうだよ(肯定)」

 

空手の基本の正拳突き。

木村のように柔拳を修めることも、野獣のように剣技を修めることも、不器用な三浦には叶わなかった。

故に、ただひたすらに拳を鍛えた。

より強く。より剛く。

故に、ただそれのみに没頭した。

より早く。より疾く。

 

鍛錬の果てに、その拳は音を置き去りにした。

 

それこそが、三浦に許された武器。

歴史上、ただの数人しか成し得なかった常識の速度から外れた魔技。

 

その技の名は____

 

「____『双打(そうだ)』よ。

 

 

俺は、下手で良いゾ。

 

ただし、俺が勝つゾ。」

 

これは、夢なのか、現実なのか…。過熱した戦いは、遂に危険な領域へと突入する。




【TIPS】
よお。ホモの兄ちゃん(栄えあるゼンゼロ淫夢小説第1号の栄誉は)いただいていくぜ?
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