ホモ二人の
「え、これって…」
その先のホールでリンが発見したのは、探し人であるレインのリュックサックだった。
手掛かりがあるかもと思い、リュックサックの中身を漁るが中から出てきたのはMDプレイヤーが一つだけだった。
一人でに作動したプレイヤーから、チャカポコチャカポコと不幸の訪れを告げるような奇妙な音楽が鳴り響く。
「タイマーか何かが入ってたのかな。ともかく、早くこの先でレイン探さなきゃ。」
リンは気づいていなかった。
その背後から、軽快なスキップをしながら這いよる白い孤影に___。
「後ろに!」
真っ先に気づいたのはリナだった。
それに呼応し、エレンとカリンが白いエーテリアスに強襲する。
それを軽やかなステップでエーテリアスは回避した。
「ぼくひで」
エーテリアスは再度攻勢を仕掛ける。
それをライカンが鋼鉄の左足で受け止めた。
「やれやれ。マナーのなっていないお客様ですね。」
返す刀で右足で薙ぎ払う。並みのエーテリアスであれば首と胴体が永久に離別する一撃である。
「おじさん、やめちくり〜。(挑発)」
しかし、目の前のエーテリアスには軽く首を傾げた程度で有効打になりえなかったようだ。
「…!?」
直後、ライカンが不快そうに眼を細める。
「ライカンさん、どうかしたの!?」
「いえ、ご心配なく。問題ありません。」
「ダイナマイッッ!!」
お返しとばかりに今度はエーテリアスがライカンに連撃を仕掛けるが、ライカンはそれを踊るように華麗に回避する。
それに乗じて木村は背後から回し蹴りの構えをとるが、エーテリアスはそれを頭を軽く下げて最小限の動きで回避する。
しかし、それはブラフ。
木村の本命は、直前に蹴り足を踏み込むことで軸足と蹴り足を入れ替えて放つ足払い。
止めを刺せずとも、ライカンならば即座に体勢を崩したエーテリアスに追撃を加え入れるであろうという判断のもとの二段構え。
そして、ライカンも即座にその意図を察してタイミングを計る。
この作戦は全くもって緻密かつ最適解だったといえる。
誤算があればただ一つ。
このエーテリアスの『技量』である。
エーテリアスは、足払いの瞬間に己の両足を開いて後ろ足の膝を深く曲げた。
後ろ足に体重の大部分を乗せ、前足は軽く曲げることで、身体のバランスを安定させる。
それにより、木村の足払いは耐え抜かれ不発に終わった。
「(う、嘘だろ…!?これは…!!)」
空手における基本の立ち方の一つ、『後屈立ち』である。
足払いに対する最も一般的な対処といえる。
しかし、言うは易く行うは難し。
ましてや技を仕掛けたのは迫真空手有段者の木村。
並みの人間では防ぐことはおろか倒された後で技をかけられたことに気づくほどの練度のそれを、よりにもよってエーテリアスが卓越した技術で以て防いだのである。
「武術の心得のあるエーテリアス!?そんなナオキなことが....!」
エーテリアスが右腕を振り上げる。死神の鎌の如きそれは、攻撃の直後で隙を晒す木村の命をたやすく狩りとるだろう。
ライカンが名を叫ぶ。
しかし、それは死に逝く木村の名ではない。
ヴィクトリア家政はそんな失態は犯さない。
「リナ!」「はい。此方へどうぞ。」
呼ぶのは同僚の名。己を教導した、信頼すべき先達。
リナの指の先端から伸びる極細のワイヤー。そして、それに結びつけられた2体のボンプ『ドリシラ』と『アナステラ』が、木村の周りを旋回して絡めとり、素早く引きづって緊急離脱させる。
直後、木村の頭があった位置のタイルがエーテリアスの一撃で粉々に砕けた。
「木村様、お怪我はございませんか。」
「リ、リナさん、ありがとうございました!!怪我はまあ、あるっちゃありますが無傷です…。」
実はリナのワイヤーから伝う電流で先ほどリンから喰らったお仕置きスタンガンによる股間の一撃に追い打ちが入っていたのだが、さすがに九死に一生を得た直後では命の恩人に何も言えなかった。
「キムラ、機能不全?」「自業自得!」
煽ってくるドリシラとアナステラにも同様に何も言えなかった。
「おい、怪物!こっちだよ!!」
直後、リンがいまだ音楽を垂れ流すMDプレイヤーを吹き抜けから階下へと投げ落とした。
エーテリアスが、それを追うように吹き抜けから飛び降りる。
その直下には、リンが察知した閉じる寸前のホロウの裂け目があった。
直後、裂け目は閉じてエーテリアスはMDプレイヤーと共に消える。
「ふう、助かった。」
「明らかにブービートラップ。どなたかがけしかけてきたとしか思えませんね。」
「いったい誰がこんなことを…うわあああ!?」
息つく暇もなく、リンが絶叫する。
視線の先には大量の小型ミサイルがこちらをめがけて飛んできていた。
「ふんっ!」「「オルルァ!!」」
それを防いだのは、ヴィクトリア家政のエレン。そしてシャッターにプレスされて戦線離脱していた空手部の先輩たち。
ミサイルを切り裂き、蹴り飛ばした三名はその出所目掛けて突進する。
ミサイルを単身で処理するエージェント相手には敵わぬとそれを放った武装集団は空のランチャーを放り捨てて一目散に逃げだすが、頂点捕食者相手に逃げの一手は悪手であると言わざるを得なかった。
たった三名に、武装集団は次々と蹂躙されていく。
「エレン、全員倒しては…!」
全員気絶されては尋問できぬとライカンが叫ぶが、とき既にあずま寿し。
エレンによって既になぎ倒されていた。
「いや、まだだよ!途中でエレンと空手部は二手に分かれてた!
あっち側に意識がある奴がいるかも…。」
戦闘で力を使い果たして昏睡に陥ったエレンをリナとカリンに任せると、一縷の望みをかけてリンはライカンと木村と共に先輩二人が方向を追いかけた。
そして激しく後悔することとなり、エレンに気絶させられたほうがよほど幸せだったと自分たちをミサイルで撃ち殺そうとした人間に同情することとなる。
そこで行われていたのは…。
「お前さっき俺らが戦ってるときチラチラミサイル撃っただろ(因縁)」
「いや・・・撃ってないですよ 」
「嘘つけ絶対撃ったゾ」
「あ、お前さ、さっきヌッ、脱ぎ終わった時にさ、中々風呂来なかったよな?(鈴木福)」
「そうだよ(便乗)」
「い、いやそんなこと・・・ 」
「見たけりゃ見せてやるよ。(震え声)」
「ホラ見とけよ見とけよ~」
「ホラ、見ろよ見ろよ、ホラ」
「なにやってんだよホラ見とけよ 」
「よく見ろよホラ、逃げんなよ~ 」
「見ろよ!」
「見ろよ」
「やめてよ・・・ 」
凄惨な拷問が繰り広げられていた。
リンはイアスとの接続を一時切断し、見た物を忘却の彼方へ追いやることに全力を尽くした。
木村は苦い記憶を思い出し、「あーもう滅茶苦茶だよ。」と頭を抱えた。
ライカンはこの場に同僚の女性三名が居合わせなかったことを、神と今は亡きじっちゃんに感謝した。
【TIPS】
MDプレイヤーだのビデオテープだの、ゼンゼロ遊んでる未成年プロキシはリアルでは見たことなさそうなんだよねMDは速攻で廃れただろいい加減にしろ。