迫真エリー都!ホロウレイダーと化した先輩   作:我蔦早瀬

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第2話 キメツケの刃

仕込み銃付きアタッシュケースを構える少女ニコ。

彼女がリーダーであり司令塔であることを、僅かな攻防で木村はすでに見抜いていた。

 

猫又と斬り合う野獣。

ビリー・アンビーペアと戦う木村・三浦ペア。

 

戦いはこの二局の組み合わせの同時進行で展開されていた。

互いの実力は拮抗している。

おそらく勝負を決めるのは僅かな天秤の傾き。

 

そして、その天秤を握っているのは他ならぬニコであった。

 

4対3。

 

数という単純にして圧倒的アドバンテージ。

それは互いの実力が拮抗すればするほど、如実に現れる。

 

空手部は、エネルギー銃を構えるニコに睨まれて決定打を打つことができないでいた。

 

相手の一瞬の隙。否、攻撃の前後の僅かな硬直すら見逃す迫真空手部ではない。

 

あらゆる角度から即座に追撃を仕掛けるが、それをニコの銃口が牽制する。

 

銃口に充填された高濃縮エーテル弾は、先ほどの初撃とは比べものにならないほどのエネルギーを有していた。

まともに喰らえばひとたまりもないだろう。

 

木村も戦いつつその作戦を見抜こうと思考を巡らせるが、確証には至らない。

「(考えられる択は4つ!

 

①多少のメンバー負傷を加味してでも、一撃にて空手部の誰かを屠る

②エネルギー弾をあえて拡散させることで僕らではなく戦場自体を破壊して撹乱する

③チャージされたエネルギー弾に破壊以外の機能が備わっている

④これら全てがブラフ又は見当違いであり、前提が間違っている

 

①か②なら対応できる自信がある。

まずいのは③と④!

場合によっては戦いを盤面ごとひっくり返される!)」

 

木村の第六感が、尻を掘られるような悪寒を感じ取っていた。

 

一方たどころ、猫又と斬り合う野獣。

猫の亜人(シリオン)特有の瞬発力に裏打ちされた、縦横無尽の剣戟に遅れをとり始めていた。

野獣の斬撃は全て回避され、逆に猫又の斬撃が細かい傷を増やし続ける。

 

「速すぎィ!?」

「膾斬りと失血死、好きな方を選ばせてやるゾ」

 

「その口調、先輩にそっくりスギィ!

やめてもらっていいっスかぁ?」

悪態と共に放つ斬撃も、虚しく空を切る。

直後、腕に細い裂傷が増えた。

 

「これもう(攻撃の予兆が)わかんねぇな。」

 

野獣はそう呟くと、何を思ったのか刀を鞘に納めた。

疲れきったように体を弛緩させる。

 

「(諦めた!?いや、あの表情は違うゾ!)」

 

しかしその姿に一切の隙は無かった。

顔には微かに御満悦と言わんばかりの笑みを浮かべている。

 

力みは心身を曇らせる。

故にスポーツでも戦いでも、パフォーマンスを発揮させるのに重要なのは脱力。そして不動の精神。

 

野獣の精神はいま、自宅の屋上で日焼けを楽しむが如く平穏であった。

 

依然として細かい切り傷が増え続けるが、もはや動揺はない。

おそらく野獣の耳やイボを切り落としたとしても心を乱すことはできないだろう。

 

 

「(くそ、腹の立つ汚物だにゃ!)」

 

そして、野獣本人に知る由もなかったが、これこそ猫又にとって不得手な戦い方であった。

 

猫科のシリオンの俊敏性は人のそれを大きく上回るが、彼女は最高速を維持する持久力という面ではチーターのシリオンのそれに遠く及ばなかった。

小攻撃が決定打にならなくなった時点で、先に息切れを起こすのは猫又の方である。

 

故に、猫又は居合いの構えをとる剣豪という虎の口(野獣と化した先輩)に自ら飛び込み、必殺の一撃を決めなければ勝利はなかった。

 

「上等!!

一瞬で仕留めてやる、『クロースマッシュ』!!」

 

「淫夢之一太刀 一の型 縫ツ枯攩(ぬわつかれたも)

 

先程までの高速移動が児戯に思えるほどの猫又の疾風の如き一撃。

対するは、葛木流最速の抜刀術。

 

その結末すなわち____

 

 

 

 

 

予期せぬ第三者による妨害。

「なにっ」

「なんだぁ!」

 

 

 

大地を揺らす地響き。

大気を揺らす轟音。

 

 

超危険エーテリアス・デッドエンドブッチャーの乱入であった。

 

その場にいた全員に動揺が走る。

 

木村はたまらず顔を顰めた。

「ナオキッ!!(答えは④!それも最悪の!!

糞ッ!なんで僕の予感は悪い方にばかり当たるんだ!)」

 

 

「ああもう!このタイミングで来る!?」

 

ニコが最大にまで貯めたエネルギー弾を即座に放つ。

温存など論外。

相手はこの場で残りの手札を切らねば全てが終わる、最悪の鬼札(ジョーカー)

経営者・ホロウレイダーどちらの面からも、損切りとして最善・最速の手といえる。

 

しかし、それでもなお彼の怪物を屠るにはチップが足りない。

 

 

 

故に、野獣は奥義がぶつかり合う間際、居合の軌道をブッチャーに修正した。

 

「(俺のこの一撃はアレに当てなきゃならない。

仕留めるのは無理でも足止めなら出来るってはっきりわかんだね。

代わりにこの三浦先輩のパチオン*1の技をモロに受けて死ぬけど、俺一人の命でみんな生き残るならまぁ多少はね?)」

 

それは自らの命すら投げ打つ最期の一撃。故に人生最高の集中力・威力を以て放たれた。

 

 

 

 

そして、それは猫又も全く同じであった。

 

「ファ!?」「にゃ!?」

 

文字通り決死の覚悟でエーテリアスに放たれる二つの奥義。

互いに困惑の表情を浮かべるが、同時に互いに意図を汲み取り己の責務を果たすことに集中する。

 

「「おおおおおおおおお(ン)!!」」

 

二種の斬撃は、超危険エーテリアスの一撃を押し返し、僅かだが退かせる。

 

稼いだ時は僅か。

しかし、それは万金を積んでも買えぬほどの貴重な時間。

 

木村はその時間を、あたりを見渡すことに注ぐ。

そして、目の端で捉えたのはホロウの裂け目。 

「皆さん!あそこに裂け目がありますよ!」

 

たとえその先が地獄であろうと、眼前の明確な死に比べれば天国である。

故に、その場のすべてのホロウレイダーが迷うことなくその穴に飛び込んだ。

 

生存の糸口が那由多に一つであろうとも、ゼロではない。後はただそれを手繰り寄せれば良いのだから。

 

*1
パチモン・シリオンの略




【Tips】エージェント紹介

<野獣先輩>
・陣営:迫真空手部
・属性:エーテル
・特性:異常

ポイントを貯めて消費して強化攻撃を撃つ、顔に似合わず癖のない性能。
流石に倍率は(某虚狩り並みに狂っては)ないです。

でも欲しい(確信)



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