迫真エリー都!ホロウレイダーと化した先輩   作:我蔦早瀬

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第21話 種マンをまく日々

「あんたセスっていったか、お前……本気で、言ってるのか? お前……本気で、言ってるのか?(二回目)」

「ああ、本気だ。お前はほかの拓也組の奴らとは違う。人質の市民にだって気を遣ってやってただろう?」

 

拓也組の中継地点の人質部屋で、セスとマジメと名乗る拓也組の構成員が話し込んでいる。他の人質は、それを固唾を呑んで見守っている。

 

「組織を裏切るって…そんなことしちゃあダメだろ!いきなり、そんな事言われても……困るよ。」

 

「安心しろ。ここからでたら、俺が自分の信用を担保にしてでも治安局に掛け合ってやる。

だから足を洗うんだ!」

 

真っ直ぐにマジメを見つめるセスだが、マジメの表情は芳しくない。

それも当然である。拓也は裏切りを決して許さない。

裏切者が掘られた末にホロウに放置されてエーテリアスの餌にされてしまうのを何度も見てきたのだ。

あんな死に方はごめんだった。

 

「マジメ、お前なんで拓也組に入った。」

「ケンを…、助けたかったんだ。俺の…恋人だった。」

 

ケンは病に侵され、余命幾ばくもなかった。治療には莫大な金が要る。

 

短期間で金を稼ぐ術など、コネも才能もないマジメにはホロウで犯罪行為に手を染める以外になかった。

 

 

新エリー都ではありふれた話だ。

 

そして、そんな努力が実を結ばないという結果もありふれていた。

 

 

「でも、ダメだった。間に合わなかったんだ。

…行動するのが遅すぎた!俺はいつだってそうだ!!

優柔不断で、救えないクズだ…。

でも、だからって拓也組がバイトみたいに辞させてくれるわけもなくて、そのままズルズルと…。

抜けられるなら、そりゃ抜けたいけど…。」

 

 

 

うなだれるマジメの耳に、嗚咽が届く。

顔をあげると、セスが滝のような涙を流して号泣していた。

 

「え…。え…?」

「そうか…そうだったんだな。辛かったよなあ…。」

 

マジメは困惑した。何故この治安官はあったばかりの、それも自分を捕まえた犯罪者の身の上話で号泣しているのだ、と。

 

「マジメ。お前が本気で抜けたいんなら…俺は、その言葉に応える。」

 

「で、でも!俺みたいなクズが、どの面下げて生きていけば。」

 

 

「何言ってんだよ!……ケンのために……生きろ。」

 

 

 

 

 

深夜のルミナスクエア。

 

中継地点にて待機していたジェーンと三浦だが、自分たちの急な来訪で日用品等の物資が足りなくなったので買い出しに来ていた。

 

本来なら幹部である彼らにとっては役不足な仕事なのだが、外部に出られる格好の機会ということもあって自ら名乗り出ていたのだ。

 

あらかた必要なものを買い出したあと、三浦は人通りの少ない路地裏に入口がある雑居ビルにジェーンを連れて行った。

 

入口を固めるサングラス姿の男たちに三浦が財布から取り出したカードを見せると、彼らは頷いて二人を通した。

 

外見は小汚い雑居ビルだったが、ドアをくぐれば中は外見と比べて不自然なほど清潔に保たれていた。

 

「ここはどういう店なのかしら?」

「ポッチャマの頭では説明するのは難しいゾ。直接見たほうが早いゾ。」

 

そういって、三浦は奥の扉を開く。

 

それと同時に、中からぬっと男が出てきた。

鋭い眼光に頬の刀傷。白いスーツの上からでもわかる鍛え抜かれた身体。カタギというには迫力のありすぎる男である。

 

男はジェーンと三浦を一瞥すると、彼らが入ってきた扉から出ていった。

迎えには黒塗りの高級車が来ている。

 

扉からは煙草の紫煙と酒の香りが漂ってくる。どうやらバーの一種のようだ。

 

「まいどありー。また御贔屓に。

 

…おや、珍しいねあんたが女連れとは?お姉さん、同族のよしみで教えたげるけどそいつ女に興味無いよ。」

 

店内に入り、二人を出迎えたのは一人のネズミのシリオンだった。

 

「ご忠告どうも。アタイもそんな気はしてたわ。」

 

女シリオンが己の目の前のカウンターテーブルを指さし、彼らは席に着いた。

 

眼鏡とスーツをかけた如何にもインテリヤクザといった風貌の男が、トレイに載せたバーボンとクッキー☆を運んでジェーンの席に置いた。

 

「アタイ、まだ注文してないけど?」

「なに、初回サービスってやつさね。こんな店だからね。ご新規さんは大事にしないと。」

 

「たしかに、こんなお店があったのなんてアタイ知らなかったわ。」

「まぁ無理はないよ。うちは完全紹介性、所謂一見さんお断り。おまけに客はカタギじゃない奴や脛に傷のある奴ばかりだからね。」

 

NYN姉貴と名乗る女主人の言うとおり、席に着く人間たちはどれも小指が欠けていたり、スーツの胸板に不自然な膨らみがあったりとマトモな客層でないことは明らかだった。

 

「客層のわりにはみんな随分お行儀が良いのね?」

「うちの(ルール)でね。ここでは仕事を含めたドンパチは厳禁なのさ。

破ればポートエルピスに沈む死体が一つ増えることになる。」

「あら怖い。なんだか旧文明の古い映画みたいね。『ジョン・ウィック』だったかしら?」

「お姉さんいい趣味してるね。私もアレ大好き。」

 

NYN姉貴は美味そうに煙管を加えて煙を吐き出す。

 

「というか三浦はどういう経緯でこの店を知ったのよ。あんたみたいなのにツテがあるとは思えないんだけど。」

「ヴィジョン社の爆破未遂事件は知ってるかゾ?」

「まあ、新エリー都に住んでてあの事件を知らない人間のほうが珍しいでしょうね。」

「実は俺と後輩たちはあの件に一枚嚙んでいたんだゾ。そのとき、俺たちを助けてくれたヤクザの副組長さんが死んだんだゾ。」

 

その後、その副組長・谷岡の葬儀で出会い、彼の最期を訪ねてきた男がいたのだ。

 

「…俺ら若い衆が腐っていく組に見切りつけていくなか、あの人だけは最後まで赤牙組にこだわっとった。

最期の一瞬まで、あの人は立派な赤牙組やった。三浦はあの人の生き様をその目で見て、伝えてくれたんや。

これくらいの礼はせんと、地獄で谷岡の叔父貴にどやされてまうからな。」

 

そうつぶやいてNYN姉貴の横でグラスを磨く イニ義と名乗る男は、元赤牙組の構成員だった。

 

 

 

「で、今夜は何をお望みかしら?未登録の拳銃から新しい戸籍、新エリートの市長の行動予定etc...。報酬次第でご用意するよ。」

 

「アタイらね、”おやつカルパス”を潰そうと思ってるの。」

「…へえ。」

NYN姉貴の灰色の耳がピクリと動く。

 

”おやつカルパス”。

それは裏社会において拓也組及びその首領を指す隠語である。

 

「確か、ここ最近ずっと治安局がその件につきっきりだったねえ。先日も大規模な掃討作戦を行ったばかりだ。」

「あら、耳が早いわね。」

「ねずみだからねえ、人の噂はよくきこえるのさ。

ありがたいことじゃないか。ウチらもあのバカ乳首どもにシマを荒らされて頭に来てんだ。もうこちとらキレッキレのNYN姉貴だからね。

でも、解せないねえ…?」

 

NYN姉貴が眉をひそめながら紫煙を吐き出す。

 

 

「…どうして未来の親衛隊候補サマがわざわざ手前の巣を潰すんだい?」

 

 

「あら、知ってたんだ。」

 

「ねずみだからねえ。

でも、一番解せないのはそこじゃあない。あんたは『それより前』が無い。

ジェーン・ドゥ(身元不明死体)なんて巫山戯た偽名以外、アタシの情報網になんにも引っかからなかった。

こんな芸当、裏社会のコネだけじゃ とてもじゃないが無理だね。

表の、デカい権力がいる。

 

そうだろ、正義の味方さん?」

 

「…成程、確かに大した組織ね。

治安局犯罪行動学外部顧問がお墨付きをあげちゃうわ。」

 

ジェーンの口が三日月のように裂ける。その顔は冷や汗ひとつかいていない。

 

「ははは、お姉さんこそ大した糞度胸じゃないか。ここで誤魔化すようならそのドタマに風穴を開けてたよ。」

 

「あら失礼しちゃう。せめて誠意と言ってほしいわね。

で、どうなの?商談に入っていいのかしら?」




【TIPS】
(NYN姉貴の)原型ないやん(笑)
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