第25話 Get・Up・Lucy
「失踪したパールマンの居場所が判明した。」
アキラとリンがその一報を受け取ったのは数日前のことだった。
情報の出所は、邪兎屋のビリーだった。
彼の古巣であり、新エリー都の郊外で運び屋を営む集団『カリュドーンの子』が、墜落した飛行船と意識不明で重体のパールマンを発見したのだ。
彼の身元の引き渡しに対し、カリュドーンの子らが出した示談の条件とは....。
「で、そのレース(?)に勝ったら何が貰えるの?ほんへ(暴言)?」
「郊外における石油の采配権さ!郊外にはエーテルをエネルギーに精錬する技術が無いからな。実質、水道光熱費と燃料費を牛耳るみたいなモンんだ。デカいシノギになる。」
それを采配する郊外のトップたる覇者を決めるレース『ツール・ド・インフェルノ』において、パエトーンの協力を得たいというのがカリュドーンの子の依頼だった。
カリュドーンの子は、長年覇者を務めるトライアンフという運び屋により閑職に追いやられているのだそうだ。
ツール・ド・インフェルノは、そんな苦境を打開する唯一にして最大のチャンスなのである。
トラックを運転するビリーが、隣に乗せたリンとともに郊外の荒野を走る。
コンクリート・ジャングルに囲まれた新エリー都とはうってかわり、砂とサボテンとタンブルウィードばかりの世界はリンにとって新鮮であった。
しかし、そんな呑気なドライブ気分はすぐに終わりを告げた。
狭い道路のカーブを曲がった瞬間、対向車線をはみ出して大型トラックがビリーの運転する車に突っ込んできたのだ。
「あ、あぶねえーーーー!!!」
カリュドーン時代に培った卓越した運転技術でギリギリのところで追突を避けたビリーだったが、その代償として車はガードレールを突き破って谷に転落していく。
その先には、ホロウがパックリと口を開けて待ち構えていた。
「 あぁ落ちたねぇ、落ちましたね。」
そう呟き、ホロウに飲まれたトラックを見下ろす一人の男。
郊外に似つかわしく無い、仕立ての良いスーツに上半身を包んでいた。
しかし、それ以外の風体はスーツに輪をかけて場違いだった。
首に巻かれた、膝に付かんばかりに巨大なデカすぎるネクタイ。
下半身は尻の割れ目が丸出しの、この世の終わりみたいなピンク色の
「クキキキ...」
その横で笑う大男も、烏帽子にブーメランパンツ一丁と、隣のネクデカに負けず劣らずの奇妙な装いだった。
その後、なんやかんやあってホロウ内で依頼主であるカリュドーンの子らに助けられたり、そのカリュドーンの子らにクッソ不謹慎な火葬未遂をされたりしつつ、彼らの拠点の一つである郊外の寂れた村・ブレイズウッドに招かれたのだが…。
「ふぉ~~あっつー」
「ふぉ~、ニトロフューエル!あっつー↑!」
「あ~早くニトロフューエル飲もうぜ~。」
「おっ、冷えてるか~?」
「んぁ、大丈夫っすよ、バッチェ冷えてますよ Foo↑」
そこではいつもの三馬鹿が馬車馬の如く働かされていた。
「うわぁ。おはぎの見間違いじゃなかった。ほんとこいつら何処にでも湧くなぁ…。」
こいつらがいる限り、ここは
唯一変わらないのは
突如、野獣の後頭部に赤いイノシシのシリオンの子供が打球の如く直撃した。
「オオン!?」
「野獣!!!貴方 わたくしのリンス使いましたわね!?
てめぇ様は、何をしてくれちゃってんだスギですの!?
その
「え、なにこれは。」
パンキッシュな出で立ちの やきう民お嬢様ルーシーに、野獣先輩がボコボコにされていた。
カリュドーンの子の若き女社長シーザーはそれを爆笑しながら見ている。
「覇者先輩(PRSN5)!笑ってないで助けて!オナシャスセンセンシャル!」
「それ声が一緒の違う人だよ。」
「いいだろ遠野!きっとジョーカーみたいな怪盗もいるぜ!」
「誰が遠野よ このステハゲ!!てかなんであんたら郊外にいるの?またニコに毟られた?」
「それは俺から説明するゾ…。これには海より深い事情があるんだゾ。」
三浦が悲しそうに口を開く。
「うん、聞かなくても深さが浅瀬レベルなのはわかった。」
「イクぞーーーーーーーーー!!!ダイナモ感覚ダイナモ感覚YOYOYO!!!」
数日前、空手の三馬鹿は郊外でドライブを楽しんでいた。
平たく言えば、人通りもなく信号も少ない直線道路でエンジンフルスロットルで車をブッ飛ばしていた。
「Foo↑気持ち~。」
「いいゾ~コレ!」
「ナオキキキキキキキキ!!」
しかし、郊外にも当然信号はあるし交通ルールもある。
深夜ともなれば視界が悪くなるのも当然である。
空手部は、疲れからか不幸にもカリュドーンの子らが所有する大型トラック・アイアンタスクに追突してしまったのだ。
「やべぇよ・・・やべぇよ・・・」「 朝飯食ったから(意味不明)」
「おいゴルァ!降りろ!おい免許持ってんのかゴルァ!おいゴルァ免許見せろ!」
怒りの表情で車から降りてきたパイパーと名乗る女ドライバーは子供と見間違うほどの小柄な女性だったが、その剣獏と迫力は本物のヤクザが裸足で逃げ出すレベルで恐ろしかった。
「あくしろよ」「はい・・・」
あまりの迫力に木村はエンジン全開で逃げ出すことも出来ず、言われるがままに財布から免許を取り出した。
木村からひったくるように免許を奪いったパイパーは、忌々しそうに舌打ちする。
「チッ おしお前ら
空手部は「「「(クルルァってなんだよ…)」」」という当然の疑問を口にすることすらできなかった。
「夜道は暗いけど、安心してね!私がしっかり後ろから照らしてあげるから!」
バーニスと名乗る少女が火炎放射器から高々と火柱を噴き上げたからだ。
満面の笑顔なのに、炎に照らされた目は全く笑っていなかった。
「というわけなんだゾ…。」
「リンちゃん助けてくれよなぁ~頼むよ~。」
「いや 10:0であんたらの過失じゃん。しっかり働いて返して、どうぞ。」
「クウーン」
「てかアイアンタスクみたけど、あの程度の凹みならそこまで修理代いかないでしょ?なんか希少な代物でも運んでたの?」
「それがよぉ。この馬鹿どもこいつと借金の減額かけた博打でボロ負けしたんで、負債が膨れ上がってんだぜい。」
怒る気力すら失せたパイパーが、げんなりした顔で空手部を斧の柄でブン殴る。
「シーザーじゃあるまいし*1。ウリで稼げる人じゃないんだから早くまともに働くべき。」
「俺悪くねぇよォ!お馬さん!お馬さんが「俺に賭けろ!ヒヒーン!」ってよぉ!」
「クズすぎ。」