ベルラムとの一戦を下したカリュドーンの子一行が次に向かったのは、バイクの部品を取り扱うリサイクル工場である。
レースにあたり、ギアの更新は必要不可欠であるからだ。
しかし、リサイクル工場に向かう彼らは目当てのパーツを手に入れることが叶わなかった。
リサイクル工場の経営者曰く、なんと直前にカリュドーンの子を名乗る団体にパーツを買い占められたというのだ。
「自分たちが購入したことを忘れたのか...(困惑)」
「ポッチャマ...」
「カリュドーンの子らが報連相も出来ないなんて、ナオキです。」
完全にアホを見る目の眼差しを向ける迫真空手部だったが、カリュドーンの子の実質的経営者であるルーシーがそのようなミスを犯すはずがなかった。
「貴方たち池沼と同じにしないでいただけますこと!?これは明らかに私たちにパーツを買わせないための妨害工作ですわ!ご丁寧に醜聞をばら撒いてまで!」
「...酷い!」
「ルーシー、犯人に心当たりはあるかゾ?」
「ありますわ!ありますあります!トライアンフという長年覇者を務めている走り屋連中に違いありませんわよ!
奴らは私たちに質の悪いルートばかり担当させたり、新エリー都に卸すクッソ汚い裏ビデオのチェックを任せたりと酷い仕事ばかり押し付けてるんですわ!」
襲ってきたプルクラと名乗る劇エロシリオン曰く、自分は雇われの身であるとのことであった。
依頼主に関しては守秘義務があるとのことで名を明かすことはなかったが、このタイミングでカリュドーンの子に妨害を行うことにメリットのある集団が誰なのかは火を見るよりも明らかだった。
「人間の屑がこの野郎...」「頭にきますよ!」
風評被害とホモビデオの恐ろしさを誰よりも知る迫真空手部は、激しく憤る。
「あれ市場に流してたのあんたらだったのか(呆れ)」
一方で、裏ビデオの存在にパエトーン、否、RandomPlay店主には覚えがあった。
Random playは街のみんなに愛される健全なビデオ屋である。故にR-15指定の作品までしか取り扱っていないが、仕入れの際にそう言った作品を目にする機会は多々あった。
中には中古ですらあれよあれよと値段が上がるものすらある。特にとある伝説的な作品は、最初に見かけた時点で114,514ディニーもしたのだが、次に見かけた時は364,364ディニーに。最後に市場に出回った時にはなんと810,810ディニーもの値段がついていた。その金がよりによって郊外の走り屋たちの生活の糧になっているのは流石に頭を抱えたくなる事態ではあったが。
何はともあれ、無事パーツを購入することに成功したカリュドーンの子らであったが、目下の問題は何一つ解決していない。
先日の件といい今回のことといい、カリュドーンの子らの行動予定が筒抜けになっているのは明らかである。
それは、カリュドーンの子又は拠点とするブレイズウッドに内通者がいることを指していた。
一連の妨害工作がトライアンフのものであることはほぼ確実であるとルーシーはみているが、相手は郊外の実質的統治者である。
ただ糾弾しただけでは握りつぶされるばかりか此方がより不利になりかねないため、確実な証拠をつかむ必要がある。
既に内通者について目星をつけていたルーシーは、パイパー・ライトとともにリンに秘密裏に炙り出しの協力を申し出た。
他のメンバー…長であるシーザーにすら告げずに調査を行うのには理由があった。
「…内通者が、カーサさん!?」
「ええ。状況からしてそれが一番可能性が高いんですの。」
カーサはブレイズウッドの町長であり、カリュドーンの子…特にシーザーにとって知己の仲である。もし推測が的中してしまった場合、シーザーのショックは計り知れないだろう。
「ポッチャマ…。ルーシーは優しいんだなゾ。」
「ええ、シーザー社長が出来るだけ傷つかない方法を考えてくれたんですね。ナオキですよ。」
「やっぱ好きなんすね~(百合)」
「あ~もう五月蠅いですわ!?余計な口を叩くならあなた方の借金にトイチで利息をつけますわよ!!?」
「「「すいません許してください!何でもしますから!」」」
「ちょっと三馬鹿もルーシーも静かに!カーサさんに尾行がばれちゃう!」
一行はブレイズウッドの工芸品(意味深)の出荷の時期に不自然なタイミングでホロウに入ることが常態化していたカーサを尾行し、誰と落ち合っているのかを突き止めようとしていた。
「…あれは!」
物陰から現れてカーサと話し込んでいるのは、顔に大きな傷のある優男だった。
「知っているのかゾ、ルーシー?」
「ルシウス。トライアンフの序列四位の大物ですわ。やはり一連の裏にはトライアンフの息が…。」
「…撮影のほうは順調のようだな。」
「ええ、昨日クランクアップしたわ。マスターテープはここに。」
カーサが懐からビデオテープを取り出し、ルシウスに手渡す。
その中身がなんなのか、想像に難くなかった。
「まさか…カーサが!?こんなの絶対シーザーには言えませんわ…。」
真っ青な顔で最悪の予想をたてるルーシー。他の一行も同じだった。
「結構。約束の品は向こうだ。…と言いたいところだが。」
突如、ルシウスが手に持ったライフルを壁に向かって発砲する。
「オオン!?」
その弾丸はトタン板を貫通して野獣の薄い頭頂部を掠め、まあまあデカめの十円禿を作り出した。
「おい、いまのはマグレじゃないぞ?さっさと出てこいステハゲ共。」
その目線と銃口は冷徹に、壁の向こうのカリュドーンの子らを見据えていた。
「はっ 遠慮はいらないってわけですわね!?」
「てめぇ様は、何をしてくれちゃってんだスギ?」
「お前やりませんねぇスギィ!!!!」
「迫真侮辱罪ゾですゾねぇ…(憤怒)」
皆、怒りの表情で得物を構えて練り歩く。特に貴重な毛根に致命傷を負わされた野獣先輩の怒りは一塩である。
「カーサ!こんな奴らと取引なんていけません!!貴女がその身を穢す必要なんてありませんわ!」
「ちょっ、ルーシー!?なにか勘違いしてないかい?」
「(勘違いじゃ)ないです。おなじ女性として、カーサ姉貴の尊厳が穢されるのを見過ごせないってはっきりわかんだね。」
「待っておくれ、あんたたちは誤解してるよ! 私はただ___」
「私はただトライアンフが作る『最強雄筋肉チンポバトル』の撮影および編集を手伝っていただけだよ?」
「「「…は?」」」
「いや、だから『最強雄筋肉チンポバトル』の...」
「すんません、すいません!ちょっと止めてもらっていいっすか?」
話を要約するとこうである。
ブレイズウッドへの石油ラインの供給が滞っていたため、町全体の収入が激減。必然的に食料や医薬品等の物資が不足し始めた。
ブレイズウッドはカリュドーンの子の傘下であり、本来は長たるシーザーに相談すべき案件であるのだが、当のシーザーはツール・ド・インフェルノの準備で手一杯なのが誰の目にも明らかだった。
シーザーは覇者になるという幼いころからの夢にようやく手が届きそうなところまで来ている。
いま自分たちの困窮を告げることでその妨げになるようなことは、シーザーを妹のように思っていたカーサにはどうしてもできなかった。
トライアンフから仕事の依頼が舞い込んできたのはちょうどそんなころだった。
事情はわかった
だが、それでも納得できなかった。
カーサがそのような恥辱に塗れたシノギに手を染めてしまったことが……。
「いや、別にそれほど苦でもなかったけど...。」
「ファっ!?」
しかし、その苦慮に反してカーサの表情に後ろめたさことあれ、仕事内容に対する嫌悪感は感じられなかった。
「そんなわけないでしょう!?
あんなクッソ汚い代物の撮影ですわよ!?モザイクなしで長時間眺める羽目になるんですのよ…!?
それを……!
いや、カーサ!?
…なんでちょっと顔赤いんですの!?」
「いやほら、あんな雄々しい絡みを生で見れる機会なんてそうそうないだろ////」
怒号と困惑をまき散らすルーシーを尻目に、カーサは頬を赤らめてもじもじと悶える。
「ええ…」「身体は穢されてないけど精神がバッチェ汚染されてるんですがそれは....。」
一同がドン引きしているさなか、突如バイクのエンジン音と煙幕が広がる。それはルシウスがバイクで逃走したことを示していた。
慌てて追いかけるが、直後にルシウスのバイクが跳ねるように宙を舞って飛来してくる。
運転していたルシウスは壁に叩きつけられて昏倒している。
「シーザーはん…どうして こ↑こ↓に?」
その側では、木箱に詰め込まれた食料や医薬品を検品するシーザーの姿があった。
「話はあとだ。これ以上、物資をホロウに置いとけねえ…。カーサ、全部持ってけ。」
ルーシーが危惧したような取り乱す様子はなく、シーザーは冷静だった。
箱に詰められた生活必需品・トライアンフ・カーサ。これらの要素から、シーザーは凡その事態を把握した。なぜ、自分たちカリュドーンの子でなくトライアンフを頼ったのかも。
「己の未熟さを知って尚、守るべき民を取るか。…どうやら、いっぱしの長ではあるようだな。もうビッグダディの傍にいた ただの小娘ではないようだ。」
そう告げて現れたのは、壮年の偉丈夫だった。背後に二人の男を引き連れている。
「覇者・ポンペイ!」
彼こそ、トライアンフのリーダーであり、現覇者であるポンペイである。
「ブレイズウッドは依然として貴様らの側だ。だが俺は覇者として、土地の民が願うなら見て見ぬふりはせん。」
「あっ、おい待てぃ(江戸っ子)まだ肝心なとこ洗い忘れてるゾ。」
「そ、そうですよ!じゃあカリュドーンの子の動向があんたらに筒抜けだったのは無関係だってシラを切るつもりですか!?流石にそれはナオキですよ!?」
割って入った空手部に、ポンペイは冷たいまなざしとため息を向ける。
「…シーザーよ、先達として助言してやる。いくら債務者だから、一時的だからとはいえ、こいつらは現時点では貴様の部下だ。子の無礼・失態はそのまま親のものになると知れ。」
「失礼ですね、ええ(不服)」「笑っちゃうんすよね。」
ポンペイの背後で嘲笑う二人の男たち。
「誰ゾ?」
「おおっと、申し遅れましたね。
私、トライアンフでNo.2を張らせていただいておりますNKTIDKSGと申します。
又の名を政治家風兄貴、又の名をネクタイがデカすぎる男、又の名を肉体派玉デカ若リーマンとも。好きにお呼びください。
以後お見知りおきを。」
「候補にロクな名前が無い…。」
「同じくNo.3の肉体派おじゃる丸です。肉おじゃって呼んでね、クキキキ。」
「あ、こっちはまだマトモそう。」
「マトモの概念こわれる」
肉おじゃのパンイチに烏帽子スタイルも大概酷いが、それ以上に酷いNKTIDKSGの上半身スーツにクソデカネクタイ&下半身は尻穴丸出しオーバックのみのパンツレススタイルにその場の全員がドン引きした。
「ふん。このファッションの素晴らしさがわからないとはお里がしれますね全く。」
「わかりたくないよ。」
「クレしん映画の敵キャラみたいだゾ。」
「ふたいたいはお笑い芸人か妙に大御所の声優起用する奴ッスね。」
「二人とも、その辺にしておけ。いいか。俺がこの場にいるのは『この件』を解決するためだ。」
おもむろにポンペイはトライアンフの供与した撮影機材の一つを手に取り、剣で叩き斬った。一刀両断された機械の内部から、小さな機械を引きずり出してカリュドーンの子らに投げ渡した。
「これは…盗聴器!?」
「そうですわ…確かによくよく考えればおかしな話ですわ!だってトライアンフは…」
トライアンフはこのようなシノギに手は出さない。それは、郊外に住む者なら皆知っていることだ。
「そうだ。貴様らカリュドーンの子も知っておろうが、俺は長年郊外で行われてきた裏ビデオという悪しき慣習の撲滅に力を入れてきた。
公序良俗に悪影響極まりなく、品位に欠けるからな。」
「ポンペイさん、次の市政選挙に出馬してくれないかなぁ。」
「全くだよ。メイフラワー市長の対抗馬がガバ穴ダディーとブリンガー長官と武田信玄だからね。投票先が一択過ぎて困ってたんだ。」
「んにゃぴ。撮影依頼も機材貸し出しもあんたんとこのルシウスとかいう奴が手配したんだよなぁ?
それっておかしく無いスか?言ってることとやってることが真逆じゃんアゼルバイジャン。」
「その通りだ。
ルシウスよ。この件、説明してもらうぞ。勿論、このところブレイズウッドへの物資供与が約束の量に届いていないことも含めて…な。」
問い詰められたルシウスは青ざめる。
「へ…!?俺は物資に関してはキッチリ箱に言われた量を積めたはず…!」
しかし、口を開いたルシウスをNKTIDKSGが締め上げる。
「あ゛あ゛い゛!?ルシウス…貴方みたいな粗チンに目をかけてくれたポンペイの親分の顔に泥を塗った挙句に言い訳ですか!?信頼が あぁ落ちたねぇ、落ちましたね……。」
そういってルシウスと額を突き合わせる。NKTIDKSGの唇が動き、何か囁いたのを気づく者はいなかった。
「あ…グゥ…あ…。も…申し訳ありません。ォ…俺が間違っていました。
今回の件はすべて俺の…責任です。俺に罰を…!」
うずくまるルシウスは、ポンペイの足元に跪く。
「罰だと…?思い上がるな!貴様が台無しにしたものを、貴様ひとりへの罰で贖いきれると思っているのか?
先ほど俺がシーザーに言ったことを聞いていなかったようだな。
貴様の失態は全て俺の失態!故にこれは俺の責なのだ。」
ルシウスを一喝し、ポンペイはカーサとカリュドーンの子に向き直る。
「カリュドーンの子、ならびにカーサよ。
ルシウスは俺の部下。こいつがしでかしたことの責任は、こいつを正しく導かなかった俺の責だ。
覇者として、この件は俺が然るべき補償の責を負う。」
ルシウスをかばいすべての責任を負ったポンペイが言い渡した示談の条件とは…。
【TIPS】
シーザーの胸囲は110弱でしょうねぇ、最近測ってないからわからないですけど。