迫真エリー都!ホロウレイダーと化した先輩   作:我蔦早瀬

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第3話 和解提案おじさん

「ヴォエ!」

「ン゛ン゛ッ!」

「ンンッ… マ゜ッ!ア゛ッ!↑」

 

 

虚空に空いた裂け目から投げ出された空手部は、固いコンクリートの地面に叩きつけられた。

痛みにえずきながらも、すぐさま戦闘体制にはいる。

しかし、エーテリアスの気配どころかホロウ特有の圧迫感も感じられない。

あの裂け目は幸運なことに、どうやらホロウの外に繋がっていたようだ。

 

「ぬわああん疲れたもおおおおおおん」「チカレタ…」「いやきつかったっすね今日は〜」「今日すっげえきつかったゾ~」「辞めたくなります、よぉ~探索ぅ」「どうすっかな〜俺もな〜(意味深)」

互いに軽口を叩きながら、仲間の無事を確認して安堵する。

生きているなら儲けものだ。

 

そんな和気藹々とした雰囲気を破る五つの足音。

空手部を襲ったホロウレイダーの一派・邪兎屋と猫又。そして木村が見つけた幼子だった。

 

「ファ!?あの子、攫われちゃってますよ?あーめんどくせーマジで。早く助けて家に帰してあげなきゃ(使命感)」

野獣が抜刀しようと武器に手をかけるが___

 

「待ちな。ホモの兄ちゃん。」

それを遮ったのはビリーだった。

無手の両腕を前に出し、ホルスターに収められた拳銃に指一本触れる気配はない。

アンビーと猫又も帯刀していない。

子供を抱えるニコも、鞄は地面に置いていた。

 

「....。」

戦う意志なし。

そう判断し、野獣も刀をゆっくりと地面に置いた。

 

続いてインタビューを受けるかのようにシャツとズボンを脱ぎ、手を頭の後ろで組んでパンツ一丁の裸体を晒す。

三浦と木村も構えを解いてそれに倣った。

 

「いや、流石に脱ぐ必要はないだろ常識的に考えて!」

「ん、そうですか。」

「子どもの教育に悪いのよ!早く着なさい!この変態!」

「「キモい」」

 

いそいそと脱いだ服を再び身につける空手部たち。

 

「この子から聞いたのよ。ホロウで迷ったところをあんた達が助けてくれたって。どうやら、お互い勘違いしていたみたいね。」

「ん、そうみたいですね。

気づくの、ちょっと遅かったんちゃう?」

「うぐっ!悪かったわよ。」

バツが悪そうにニコは顔を顰めた。

 

 

「ままええわ、今回は許したる。」

 

「え、いいの?」

「お互いその子が心配だったのは嘘じゃないですし。

誰も死んでないなら問題ないじゃんアゼルバイジャン」

あっけらかんと答える野獣とそれに同調して朗らかに笑う先輩と後輩。

ぶっちゃけ慰謝料を請求されたらどうやって踏み倒そうかと思案していたニコにとっては拍子抜けもいいところだった。

 

「全く。ホロウレイダーやってる割に欲深いのやら無欲なのやら。」

「性欲はまぁ人並みでしょうね。」

「うん。次に小さい子の前で下ネタ言ったらタマに風穴開けるから。」

「すいません、許してくださいなんでもしますから!」

 

「ええと、その人たちが孫を助けてくれたんですか?」

物陰から現れたのは、一人の老婆だった。

あの少女の祖母だという。

「ありがとうございます!小さいのにホロウ適正があるせいか、ホロウを遊び場にしてしまっていて...。

よく言って聞かせますので。

ほら、あんたも。」

「う、うん。おじちゃんたち、ありがとう。そんで、ごめんなさい。」

 

その言葉に、空手部は温かさよりもショックを受けた。

「お、おじ...」

「うそだよ...」

「涙が、で、出ますよ。」

おじさん扱いに傷つく3人の涙を家族の感動の再会によるものだと盛大に勘違いした祖母と孫に、野獣は真実を飲み込み言葉を続ける。

 

「ほんでおばあちゃん、こ↑こ↓どこ?

ホロウから命からがら逃げてきたから、ここがどこかこれもうわかんねぇな。」

 

ホロウの裂け目の先は、とある廃墟だった。

そこは本来、明日行われる都市計画において爆破解体が決定しており、住民は避難したため公式には無人となっているはずの場所だった。

しかし、実際には住民は爆破解体そのものを知らされておらず、未だその場に留まっていた。

 

聞けば、一度避難区域から出たところ治安官に「じきに迎えの電車をよこすので、待機するように。」と追い返されたそうだ。

 

ここ数日、ニュースで避難民の話題が一度たりとも取り上げられたことはなかった。

そして、爆弾の誘爆防止のための妨害電波により、彼らに最新のニュースは届いていない。

 

明日に迫る爆破解体を前に前日にまで迎えが来ないどころか、爆破計画自体を知らせないなどあり得ない。

それはつまり、最初から迎えなどないと言うことだ。

 

ツヨ(T)シ工業、コカ(O)コーラ、日本ペイ(P)ント、あずま寿し(S)

それぞれの社名から一文字ずつ取って『TOPS』とよばれる四大企業。

及びその傘下の会社が新エリー都における経済活動を牛耳っていた。

 

その狭い尻穴に食い込み、ガン堀りしようと企む新興企業があった。

名をヴィジョン・コーポレーション。

かの企業こそ、件の都市計画を落札・発案した張本人である。

 

「チョッチョッちょっと待ってくださいっ!待って!!

ヴィジョンの都市開発計画が落札されたのってクッソ低予算なのが理由でしたよね!?

開発区間を住民ごと爆破するから避難計画や補填の予算も省ける。

そういう魂胆だったってことですか!?

あまりにナオキです!」

「人の心とかないんか!?(呪術並感)

頭にキますよ!(憤怒)」

「人間の屑がこの野郎。」

 

激しい憤りを隠せない空手部。

その怒りは、ともすれば邪兎屋に性犯罪者のゴミゴキブリホモガキ呼ばわりされた時以上のものだった。

 

聞けば、邪兎屋と猫又はこの件を明るみにした上でヴィジョン相手に集団訴訟を起こすつもりだという。

乗るしか無い。このビッグウェーブに。

空手部は、互いに見つめ合い無言で頷く。

空手部はこの件にトコトン突き合うことを決めた。

 

「お、お前ら手伝ってくれるのか?

助ける義理も理由もないだろ?」

猫又は困惑の声を上げる。見ず知らずどころか、先程まで命のやり取りをしていた相手に、なぜそこまでできるのか。

 

「(誰かを助けるのに理由とかいら)ないです。(ff9並感)」

「当たり前だよなぁ?」

「ナオキです。」

 

 

 

「馬鹿じゃねーの(笑)

そんな甘ちゃんじゃあ、この世界でやってけねぇぞ。」

そんな彼らを嘲るようなドスの効いた声。

 

「誰ゾ?」

 

声の先にいたのは、ベージュ色のスーツに花柄ネクタイの眼光鋭い男だった。

スーツの左胸の不自然な膨らみはおそらく拳銃であろう。

カタギの人間でないことは明らかだった。

「おう、察しの通り、スジモンだよ。 

 

久しいじゃねぇか、猫又。」

 

「た、谷岡!あんた生きてたのか!」

「猫又はん、知ってるんすか?」

「俺は谷岡。赤牙組の副組長だ。

そこのシリオンのガキもな。」

 

「はぁ!?」

「ちょっと猫又!初耳なんだけど!?」

「....」

 

みるみる顔が青くなる猫又。

当然だ。『赤牙組に殺された家族の形見を探す。』という依頼で邪兎屋を雇ったのに、その大前提が覆されたのだから。

 

「指も詰めずに組を抜けた挙句、ウチの組長の仇を勝手にとると息巻いてたお前が、その仇と仲良しこよしとはな。

俺ァ、てめぇをそんな腑抜けに育てた覚えはねぇぞ。」

 

「ぐうっ!」

最悪の展開だった。すべて白日の元に晒された。

邪兎屋の面々の突き刺さるような視線が身を苛む。

 

「ニコはん、こマ(これマジ)?

あんたらヤクザの組長殺ったの?」

「...赤牙組が盗んだ品を奪還する依頼を受けたのよ。

そのドンパチの最中、あたしらもアイツもホロウに落ちた。

あたし達はエーテル適正がある方だけど、あいつはそうじゃなかった。

あいつがエーテリアスになるのをこの目で見たわ。

その後、エーテリアス化したあいつを殺したのは確かにあたし達よ。

だから、仇といわれて「関係ありません。」って弁明する気はないわ。」

 

エーテリアス化した時点で、その人間は法的に死んだと見做される。

確かに件の組長・シルバーヘッドがホロウに落ちたのは邪兎屋との抗争の末だったが、そもそも引き金を引いたのはシルバーヘッドの方である。

新エリー都の常識において、猫又が邪兎屋を恨むのは筋違いと言えるものだった。

 

「そんな、じゃああたしは勘違いで...。

いったい、あたしは!誰を恨んだら....」

力なく崩れ落ちる猫又。

その小さな膝に、ポタポタと涙が垂れ落ちる。

 

「.....」

 

その哀れな姿に、責任がないとはいえその死に関わる邪兎屋はかける言葉を持ち合わせなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな超シリアスな空気をぶち壊せるのものはこの世にただ一つ。

 

「勘違いは誰にでもあるってそれ一番言われてるから。大丈夫だって安心しろよ。

パパパっと謝って、終わりっ!」

「そうだよ(便乗)」

「僕らなんていまさっき勘違いで殺し合いましたからね。」

「「「HAHAHAHAHAHA!!」」」

 

超弩級のバカだけである。

 

同情?慰め?

否、この三馬鹿は何も考えていない。

 

「お前精神状態おかしいよ。」

「ありえないでしょこいつら。(ドン引き)」

「神経太すぎ。」

「馬鹿じゃねーの(笑)」 

邪兎屋と谷岡は、あまりの軽さに絶句するほかなかった。

 

「馬鹿でもホモでも構わないからさ、先にやるべきことやんない?時間ないよ。」

「そうだよ(便乗)

明日にはここ吹き飛ぶんだゾ?

急いでここの人たちを避難させないといけないゾ。」

「とはいえ、僕らは特に伝手とか無いですしね。

秋吉師範に頼んでも「どうにかしろ(無責任)」って丸投げされるのは目に見えてますし。」

 

愚者と賢者は紙一重。

この三馬鹿は最短・最善ルートを選ぼうとしていた。

 

「うう...ぐすっ。

ふざけんなやめろ馬鹿!

あたしだって、このまま何もしないなんて出来るわけない!

でも、あたしにも他に頼れる奴はいない。だから!」

 

くるりと猫又は邪兎屋に向き直り、頭を下げた。

「騙しててごめん!

虫のいいことを言ってるのはわかってる!

だけど、この人たちを助けるために力を貸して!

あんた達が頼りなんだ!」

 

暫しの沈黙。

そして、我慢できずに吹き出すニコ。

「ふふ。何言ってんのよ!

あのヴィジョンを相手取れるのよ?ケツの毛まで毟り取れるチャンスをアンタに独り占めさせるわけないでしょ?

住民の委任状だってあたしの名前で書かせてるんだから!」

 

その言葉に、空手部も猫又も笑みを浮かべる。

「ニコ早いっすね(呼び捨て)」

「全く馴れ馴れしいわね!?

まぁいいわ。あんた達、お使いよ。

あたしのとっておきを紹介したげる。」

自信満々なニコ。余程の大物なのだろう。

 

「誰ですか?虚狩りの星見雅とか?」

「木村ァ、流石にそれは高望みしすぎゾ。」

「ブリンガー長官とか?」

「人なつっこいけど、ちょっと足りなそう。」

「胸囲107センチだって すごいわね」

「顔がね・・・」

「きっしょ。もう貼るな。そして死ね。」

 

 

「聞いて驚きなさい!

伝説のプロキシ・パエトーンよ!」




【Tips】エージェント紹介

<MUR大先輩>
・陣営:迫真空手部
・属性:物理
・特性:撃破

エーテル&物理の異常蓄積デバフと防御デバフを同時にまき散らす池沼

普通に欲しい(確信)
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