迫真エリー都!ホロウレイダーと化した先輩   作:我蔦早瀬

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第30話 Where's the party?

 

『みんなに誇れる覇者になるために走り続けた。

ツール・ド・インフェルノRTAはーじまーるよー。

皆さんこんにちは。都市機能8割アクセス可能超高性能AI・Fairyです。』

 

「プ、プロキシさん?このアシスタントAI、なんだか様子がおかしくありませんこと?」

「ご、ごめん。なんか朝からずっとこの調子なんだよね。『これ以降ほんへの私が有能すぎて

出番が激減だから爪痕残したい』だのなんだの意味不明なことばっか言っててさ…。」

「ははっ!なんだかわかんねえけどやる気があることだけは伝わってくんぜ!」

 

 

『今回使っていく陣営は【カリュドーンの子】です。名前は入力速度を考慮して【ホモ】にします。レース開始の合図とともにタイマースタートです。』

「大将、ほんとに大丈夫かコレ…。」

 

例年であれば両チームが並走して同時にスタートするツール・ド・インフェルノだが、今回は開幕直後にトライアンフ側がカリュドーンの子側に火打石目当てで攻撃を仕掛けることを防止するために、スタート地点からホロウに入って暫く進行するまでのルートを完全に区切るという措置が取られていた。

 

 

二分割されたスクリーンの片側にトライアンフのポンペイ・NKTIDKSG・肉体派おじゃる丸が今か今とスタートの合図を待っていた。

もう片方の画面にも、同様に逸る気持ちを抑えるシーザーたちが映っていた。

 

 

 

 

「ツール・ド・インフェルノ!!!スタートオオオオオオオオオ!!!」『はーい。用意スタート(棒読み)』

 

スタートランプが赤から青に点滅するとともに、司会者の気合の入った号令とFairyの棒読み気味の合図が響く。

 

シーザーたちの三台のバイクが噴煙をまき散らしながらけたたましく地面を滑る。

 

観客の歓声の向こうで、同様にトライアンフが轟音をあげた。

 

猛スピードで流れていく観客席の一番最後に、メンバーに選ばれなかったパイパーとバーニス、ビッグダディ、それにカーサが、レースを走る自分たちに内緒で作ったであろう横断幕を広げるのが見えた。

 

万の歓声にも勝るそれを背に、シーザーたちはホロウに入った。

 

外界とホロウの境界、エーテル特有の圧迫感を抜ける。

 

 

 

 

「で、Fairyの作戦通り一旦停まったけどよ、こんな序盤で道草食っちまっていいのか?」

 

暫くののちシーザーたちは、少し開けた場所に陣取り、マシンチェックや栄養補給を行っていた。

 

 

 

そこは、序盤で分かたれた両チームの合流地点となる場所…よりも僅かに後方に位置していた。

 

『問題ありません。それより、いつでもスタートできるようにエンジンを温めていてください。

 

このレースの本質は【如何に早くシンダーグローレイクに火打石を投げ込むか】ではありません。

【如何に相手チームに火打石を投げ込ませないか】です。そして、火打石は今現在我々の手にしかありません。

即ち、レースの主導権を握っているのは我々なのです。』

 

Fairyがそう言い切った直後、3つのエンジン音が鳴り響く。

 

その音は吹き上がる粉塵と共にどんどん此方に近づいてきた。

 

「ネクデカ。俺が先行する。」

「あ゛あ゛い゛!?大将を矢面に立たせるわけにはいきませんよそりゃねえ。」

「お前に先行されると、バイクの座席に乗ったお前の汚い尻穴が俺の視界にチラチラ入るんだよ。」

「お尻綺麗でしょ!?(自画自賛) イボが無いでしょ?」

「そう言う問題じゃないんだよ、このバカネクタイ!」

「残当すぎて、笑っちゃうんすよね。」

 

 

「トライアンフが来たようだ。当然か。俺たちの持つ火打石が奴らもどうしても要るからな。」

「へっ!望むところだぜ!」

「ちょ、ちょっとシーザー静かに!!な…なんかまだなにか聞こえますわよ!!?」

嬉々として拳を鳴らすシーザーだが、その直後にもう一つの音が鳴り響く。

 

 

 

 

それはいうなれば騒音だった。

 

無駄に五月蠅いマフラー音。もはや絶滅危惧種レベルのパラリラパラリラと鳴るミュージックホーン。ジャキジャキと砂を擦るようなエレキギターのサウンド。

 

それが鬼の形相で迫りくるトライアンフの後方で鳴り響き、どんどん近くなる。

 

 

 

 

 

「レザマリィ!♪レザマリィ!♪朝まーで踊ろう♪」

珍走団のような騒音をまき散らし、近所迷惑レベルの大音量でピンキーカーのスピーカーの音量を最大にして楽曲を垂れ流す迫真空手部がトライアンフに襲い掛かった。

 

驚異的な馬力でトライアンフを追い越し、ドリフトしながら進行を遮る。

 

「見とけよ見とけよ~」「おら、見ろよ見ろよ、おら」「ナオキキキキキキ」

 

木村が運転して相手の走行を妨害しつつ、三浦が爆竹を進行方向にぶちまけた。野獣先輩は煽るように後部座席で陣取ってどこから持ってきたのか火を噴くエレキギターをかき鳴らす。

 

「ポチっとなおき。」

 

木村がハンドルに備え付けられたボタンを押すと、ピンキーカーの肉厚な唇と歯を備えた口腔部分が、地獄の釜の蓋が如く開いた。

 

開いた口腔から、大量のローションがドバーッとトライアンフにむけて吐き出される。

 

「合気ッ!?」「ぬおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」「未熟です…!」

 

最高に連携のとれたコンビネーションで最低の行為をしながら、ローションまみれになって身動きがとれずに横転するトライアンフを迫真空手部は煽り散らした。

 

「FOO↑気持ちい~!!」

「舐めさせてやるぜ。Mなんだろォ!?」

 

 

ひとしきりローションを吐き出し終えたピンキーカーのスピーカーから、背筋の凍るような合成音声が響く。

 

『一万ディニーくれたらしゃぶってあげるよ?』

 

ローションまみれのトライアンフも、隠れてそれを見ていたカリュドーンの子も、これから起こることを察して青ざめる。

 

 

 

 

身動きの取れないトライアンフに、迫真空手部はあえて速度を落として追い込むようにじりじりとアクセルを踏む。

 

「い、嫌だ…。こんなの、こんなのあんまりです!」「来るなバケモノ!」「いけ、馬鹿ネクタイ!漢を見せろ!」

 

肉おじゃが、NKTIDKSGの背中を蹴って押し出した。

 

「あ゛あ゛い゛!?」

 

既に身体も地面もローション塗れである。

 

ヌルヌルと回転しながら押し流されるNKTIDKSGは、そのまま吸い込まれるようにピンキーカーの口に捕食された。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい!待って!助けて!待って下さい!お願いします!アアアアアアアア!(発狂)」

 

絶叫。そしてぴちゃぴちゃと何かを舐るような異音があたりに響き渡る。

 

その場にいる誰一人、NKTIDKSGのいる方向に目を向けることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「うっわぁ…。」

 

『___はい。このように迫真空手部の性格上、悪知恵だけは無駄に働くため妨害を仕掛けてくることはほぼ確実。

 

そしてトライアンフは我々から火打石を奪い取ることが勝利の絶対条件。あえて我々が行動を遅らせることで、焦れたトライアンフが先行します。

 

迫真空手部は高確率でそうして突出したチームのほうを襲撃します。

トライアンフはこの妨害により、大幅に進行が遅れます。これを専門用語で【ロス】と言います。

 

だから、トライアンフを先行させる必要があったんですね。』

 

「フン、ここは流石と褒めておくべきですわね。」

「ルーシー、油断しないほうがいいよ。そうやって調子コいてたbiim兄貴は直後にメガトンコイン(大ポカ)やらかしたんだから。」

 

 

 

 

 

ローションまみれのおっさん三人を尻目に、カリュドーンの子一行は悠々自適に進んでいく。

 

 

途中、一部道路や石油精製設備が崩落して道を妨げていることはあったが、その程度は難なく走破できなければ郊外で走り屋は名乗れない。

 

「最初はどうなることかと思ったけどよ、思ったより楽勝だったな。」

「最初にトライアンフが大幅にタイムロスしてくれたのが大きいですわね。あの分ではもう私たちに追いつけませんわよ。」

「焦りは禁物だぜ。勝負ってのは最終ラウンドになるまでわからんもんさ。」

 

 

 

 

 

 

周囲を岸壁に囲まれたルートを走る一行は、気づいていなかった。

 

 

 

赤土の大地に紛れ込むように巧妙に張られた赤外線センサーに。

 

それに自分たちが触れたことに____。

 

 

 

気づいたときには何もかもが手遅れだった。

 

気づくことすら不可能だったろう。

 

それは大会運営も、迫真空手部も知りえないものだったのだから。

 

ポンペイすらも知らなかった。

 

 

これを知っていたのは、今現在ピンキーカーの口内でクッソ哀れな凌辱を受けている馬鹿ネクタイのみなのだから。

 

 

 

 

落雷もかくやと言わんばかりの轟音が鳴り響く。

 

奇妙な桃色と青紫色の閃光が奔り、大地を割った。

 

安全を明らかに度外視した爆発が、一向に襲い掛かる。

 

「ば、爆発っっ!!!?」

 

『なんで?なんで?なんで?持ってないじゃーーーーん!

 

罠も確認したし、今だって、張ってないじゃーーーん!

 

このクソゲー!フラグまでイカれてるんじゃないだろうな!

 

…まさか…爆弾かぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 

 

 

 

トライアンフ側のかぁぁぁぁぁ!あああああああああああああああああ!

 

ふーーざーーけーーるーーなーーーーーーーー

 

あああああああああああああああああああああ

 

いちまんりょうがああああああああああああ!

 

おかねがたりなくなるうううううううううう!』

 

「ほら言ったじゃああああああああん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「____シ_!__プ___キシ!!!」

 

不快な耳鳴りが段々と止んでいき、小さなボンプに納まっていたリンの意識が覚醒していく。

 

光を取り戻した視界を、シーザーが心配そうに覆い尽くす。

 

「おい!大丈夫か!?」

「な、なんとか大丈夫…。他の皆は・・!?」

「何とか…生きてるぜ…!フウ。」

「わたくしたち全員、爆発の衝撃で仲良く眠ってましたわ!何が起こったんですの!?」

『…周囲に漂う粉塵は、エーテル爆薬が起爆した際に発生するものです。これは明らかに人為的なものです。

激しい空間の乱脈により、我々は予定ルートから大きく外れました。現在位置を再計算中です。』

 

運営側のトラップというには、あまりに殺意に溢れた行為。

カリュドーンの子一行が無事だったのは奇跡としか言いようがなかった。

 

 

 

遠くからクラクションとともに光が迫ってくる。

 

そのクッソおぞましい車体から、三人の男たちがわらわらと降りてくる。

 

「お、大丈夫か大丈夫か。すっげえ爆発だったってはっきりわかんだね。」

「み、みんな無事かゾ!?」

 

明らかに動揺した迫真空手部の様子からして、やはり今回の件について運営は関与していないようであった。

 

であれば残る容疑者はひとつだった。

 

「__トライアンフの仕業か!やってくれたなポンペイのおっさん!どうしてこんなきたねえマネを!」

 

シーザーが悔し気に左手で崩落した岸壁を殴って罅割る。

 

「で、でもおかしくないですか?ブレイズウッドの一件からして、ポンペイさんはこういうナオキなやり方は好まない気がしませんか!?」

「つまりは、また部下の独断専行ってコトか?だが、どっちにしろ向こうの大将の理屈なら今回もあっちの責任てことになるぜ。」

 

「皆、いったん落ち着こう。兎も角、こんな事態になってしまってはもうレースなんていってる場合じゃない。運営に連絡すべきだ。証言者として迫真空手部(運営側)もいるんだからね。」

 

アキラの中継で観戦するバーニスにホロウ内から連絡をとった一行だが、ここで奇妙なことが分かった。

 

なんと、観客席側からは爆発の映像が一切映っていないというのだ。

映像ではいまだに双方のチームがつつがなくレースをおこなっている。

 

それはつまり、ドローンからの映像が細工されているということである。

 

如何に巧妙に映像に細工しようとも、あとから糾弾する手立てはいくらでもある。このような露骨な妨害工作をしてはトライアンフの覇者たる地位が揺らぐことは避けられない。

 

「…つまりは妨害してきた連中は、これほどの手段を取れるにも拘らず覇者という地位に興味すらない。そういうことなんじゃないですの?」

顎に手をあて思案するルーシー。その頬に冷や汗が流れる。

 

いまこの場でそれ以上に価値のあるもの。そう尋ねられれば、思いつく回答は一つしかなかった。

 

「シンダーグローレイクが危ねえって、そういいたいのか!」

 

シンダーグローレイクは郊外に石油を供給する生命線。それが失われれば、郊外の生活基盤が根こそぎ失われ、新エリー都の支配下に置かれざるを得なくなる。

 

「…シーザー。どうする?あんたはカリュドーンの子の大将で、私たちの雇い主だよ。

みんなにこのことを伝えるためにいま直ぐにホロウから出るってのも一つの手だよ。

パエトーンはあんたの決意を尊重するよ。」

 

シーザーは一瞬だけ目を閉じて、思い返した。カーサの、ルーシーの、ポンペイの、カーリーの言葉を。

再び目を開けたとき、自然と答えは出ていた。

 

「シンダーグローレイクに行くぞ。あそこに危険がせまってるかもしれねえなら、放ってはおけねえ!」

 

 

 

 

 

同時刻、カリュドーンの子が足止めをくらった地点からほど近い分かれ道までトライアンフは追いついていた。

 

「妙な爆発音が聞こえたな。」

「(迫真空手部の妨害の可能性が)濃いすか?」

「いいですね、ええ。カリュドーンの子の足が止まっているなら勝ちの目はまだまだありますよ。」

 

自分が仕掛けたエーテル爆薬が作動したことを察し、NKTIDKSGは内心でほくそ笑む。たとえ火打石がカリュドーンの子諸共吹き飛んでいても関係ない。予備(・・)はすでに用意していた。

 

 

「ここから先は道が二手に分かれてますよ。」

「やっぱ右利きだから右の方が若干太いと思います。」

「確かにシンダーグローレイクまでの最短ルートは右だが...。」

「こちらは火打石を奪うために奴らを探さなきゃなりませんからね。その裏を掻いて左という線も当然ありますよそりゃねえ。」

「よし、俺が右を行く。貴様らは左だ。奴らを発見し、火打石を奪ってシンダーグローレイクで集合する。」

「クキキ、大丈夫ですか親分。もし奴らが先にシンダーグローレイクに来ていたら、親分が三人を相手取る必要があるんすよ。」

「肉おじゃ、親分を見くびるなんて感心しませんね、ええ!

革ジャンでローションプールを全力で泳ぎ切ったあの雄姿をもう忘れたんですか!?」

「それは今すぐ忘れろ!全く、ああいう下品なのを一掃するため戦ってきた俺に対する当てつけか!?」

 

ポンペイはプンプンと擬音が聞こえてきそうなほど肩を怒らせながらシンダーグローレイクへの道を駆け抜けていった。

 

それを見届けたNKTIDKSGと肉おじゃは、見つめあって意地の悪い笑みを浮かべあう。

 

「クキキ、想定どおりにコトが運んでて笑っちゃうんスよね。」「どこぞの馬の骨ともわからん奴の介入は想定外でしたが、計画に狂いはありませんよ。ええ。

では、我々は後詰めと行きましょう。目撃者も生存者も、このツールドインフェルノには必要ありません。」

 

NKTIDKSGと肉おじゃはバイクを走らせる。

 

感知式爆薬の設置場所を考えれば、カリュドーンの子の凡その位置を割り出すのは容易かった。

 

「見つけましたよ、ええ!ちょっと眠ってもらいましょうか!」「クキキ。あのまま一瞬で吹き飛んでりゃ楽に死ねたのに。」

 

バイクを駆りながら、NKTIDKSGはネクタイを模した蛇腹剣を、肉おじゃは全長1メートルほどの巨大な(しゃく)を振り回してカリュドーンの子らに襲い掛かる。

 

「ってことはさっきのはやっぱりお前らの差し金か!」

シーザーはそれを難なく盾で受け止めて弾き返す。

「肉おじゃ、余計なことを…!」「未熟です…。」

 

「あなた方、こんなマネをしてタダで済みませんわよ!シンダーグローレイクで一体何をしようとしてるんですの!?」

「おーっほっほ。すでにそこまで頭が回っていましたか。

頭のいい人は歓迎ですよそりゃあ!どうです、大人しく火打石を渡して、これから起こることにも目を瞑ってくれませんか?私が作る王国で、それ相応のポストを約束しますよ!」

 

「戯言を!生憎、私は自分が一番じゃなきゃ気が済みませんの!あなたみたいな馬鹿ネクタイの下につくなんてまっぴらごめんですわ!」

ルーシーは飛来しながらバットでNKTIDKSGの脳天を狙うが、肉おじゃの巨大な笏に阻まれる。

 

「隙だらけだ!」

ガードで空いた腹にライトの拳が襲い掛かるが、肉おじゃはそれを鍛えぬかれた腹筋で受け止めてライトの拳を止める。

 

「ぬ、抜けねえ!」

「クキキ、いい鍛え方してるじゃん。でも、甘いっすね。俺が足止め役(・・・・・・)ってのに気づいてないんだから。」

「なにっ!」

「くっ!馬鹿ネクタイがいませんわ!狙いははじめからシーザーの持つ火打石でしたのね!」

 

 

 

 

ルーシーの危惧したとおり、NKTIDKSGとシーザーは激しいチェイスを繰り広げていた。

「オラぁ!」

 

幅寄せしてきたNKTIDKSGを、シーザーは左腕の義手のパワーでバイクごと押し返す。

「なんて馬鹿力ですかこの雌ゴリラ!?」

 

苦し紛れに伸ばす蛇腹剣の複雑な動きも、シーザーは剣と盾で冷静にいなす。

 

「てめえみてェな卑怯者に俺様が負けるかってんだ!」

「ふん!甘ちゃんですねえ!勝てばよかろうなのですよ!私がなんの策もなくここに誘い出したとでも!?」

 

そういって、NKTIDKSGは突然車体を地面に擦れそうになるほど寝かせて急停止させた。地面を抉るように旋回させて車体の向きを180°方向転換する。

 

「逃げようってか!させねえ!」

同時にシーザーも同じ動きでドリフトして向きを変える。

 

当然前を向いたまま車体が後ろ方向に滑ることになる。

 

 

 

 

シーザーは気づいていなかった。真後ろに、地面と同じ色に塗られたワイヤー線が張られていることに。

 

「うあっ!!」

 

バイクをワイヤー線に絡めとられ、シーザーは投げ出される。

 

地面に激突する寸前で受け身をとるが、その衝撃で得物は遠くに転がっていく。

 

 

「詰みですね、ええ。所詮、貴女のような小娘は覇者などという器ではなかったのです。まぁ、このレースが終わるころにはその意味すら消えてなくなりますがね。」

 

「シーザー!!」「大将!!」

地面に横たわるシーザーの喉元に、NKTIDKSGは蛇腹剣の刃を突きつける。

 

 

 

「来るな!」

かけよろうとするルーシーとライトを、シーザーは制した。

 

 

忌々しそうに懐からなにかを取り出し、手のひらに載せて見つめる。

 

「大将、なに考えてる!?火打石(それ)を渡しちまったら終わりだぞ!」

「愚かな!!こんなところで貴方の、私たちの夢を終わらせるんですの!?見損ないましたわよ…!」

 

 

 

 

「…こんなモン、欲しけりゃくれてやる!!!」

 

追い詰められたシーザーは、懐から取り出したそれを、崖に目掛けて投げ捨てた。

 

 

NKTIDKSGは、慌ててそれを掴もうと駆けだす。

 

 

「あ゛あ゛い゛!自ら勝機を投げ捨てるとは悪手っすよそりゃねえ!」

 

 

NKTIDKSGは顔面を強打しながらも見事にそれを掴んだ。

 

 

 

 

「…んんん?なんですか今回の火打石は妙にヒラヒラしてますねぇ____。」

 

 

 

 

 

 

 

 株式会社 猪突猛進

  代表取締役社長 キング・シーザー         

 

 〒810-1919

 ブレイズウッド4番地

 TEL 114(514) FAX 114(514)

 

 

 

 

 

 

「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

「(火打石と名刺を見間違えるとか節穴すぎて)笑っちゃうんすよね。」

「肉おじゃぁ!?貴方どっちの味方ですか!?」

 

『ペッ 甘ちゃんが。』

「Fairy、今日のあんた過去一でヒドいよ。」

 

「へっへーん!引っかかりやがったな!お尻ぺんぺんだぜ!」

「シーザー、おやめなさい!はしたないですわよ!?」

「全く冷や冷やしたぜ。」

 

それを横目に、カリュドーンの子一行は馬鹿二人に派手に土埃をひっかけながらバイクで疾走する。

その手には勿論、本物の火打石が握られていた。

 




【TIPS】
柚葉とかいうゆっくりを商標登録しようとしたメスガキJKは無事すり抜けました。

デカ乳メイド姉貴と やきう民お嬢のモチーフはあるけど、柚葉のモチーフもあったほうが濃いすか?
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