迫真エリー都!ホロウレイダーと化した先輩   作:我蔦早瀬

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※微グロ。血がいっぱいいっぱい、いっぱい、いっぱい、入っちゃう!


第31話 Run Away 

 

シンダー・グロー・レイク。

 

郊外の石油算出を一身に担う大油田であり、生命線である。

 

その淵に、黒いエーテル結晶が目立ち始めていた。

 

このままあと数ヶ月も放置すればエーテル結晶はたちまち油田を覆い尽くし、二度と石油を採掘することは叶わなくなる。

 

ポンペイはそれを幾度となく阻んできた。

 

 

何度も、何回も、何年も。

 

 

今年もそう、なにも変わらない。

 

 

そう思っていた。

 

 

大油田を眼下に見下ろしたポンペイが、背後でバイクのエンジン音が止むのと共に振り返る。

 

 

「ほう。見事、成し遂げたのか。」

 

「ポンペイの親分が斃れたらトライアンフの看板を背負うのは私ですからねえ。実力はみせなきゃいけないでしょそりゃあねえ!」「やっぱ右利きだから右のほうが若干太いと思います。」

そう勝ち誇るNKTIDKSGの手には確かに、見慣れた火打石が握られていた(・・・・・・・・・・・・・・)

「ははは。今回に限っては『大した野心だ』と褒めておくべきところだな。よくやった。」

 

「カリュドーンの子は実に歯ごたえの無い相手でしたね、ええ。折角親分が目をかけてやったのに全く不甲斐ないやつらですよ。」

「未熟です…。」

 

「ふっ。俺もまだまだ若いのにとってかわられるつもりは毛頭ない。

とはいえ、一先ずは目先の問題に対処せねばな。」

 

そういって、ポンペイはNKTIDKSGから受け取った火打石をシンダーグローレイクに投げ入れた。

 

 

内部の爆薬が反応し、湖が光を帯びる。

 

 

 

「ど、どういうことだ!?」

次の瞬間、エーテル結晶は崩壊するどころか目に見えて増殖を始めた。

 

 

「親分がいま投げ込んだのは『エーテル重合触媒』。平たく言えば、エーテルの生産量を増やす道具ですよ、ええ。」

 

NKTIDKSGはカリュドーンの子から火打石を奪うことなく敗走している。故に先ほどNKTIDKSGが渡したのは、レース開始前から用意していた偽物の活性剤入り火打石である。

 

「妙なルール変更のせいで余計な手間がかかりましたが、最後に笑うのはやはり私ですよそりゃあ。」

 

「貴様、自分が何をしたのかわかっているのか!?シンダーグローレイクが失われれば、多くの者が路頭に迷うことに…う…あ!!?」

 

憤怒とともに剣を構えるポンペイが、突如膝から崩れ落ちる。

 

「そうそう。この活性剤、付近のエーテル濃度を急上昇させるんで、『エーテル適応体質異常』の人間が使うとかなり浸蝕が進むとクライアントに言われてたんですが、成程成程。

たしかに効果覿面ですよこりゃあ!!」

 

そういって、うずくまるポンペイの顎を蹴り上げる。

 

「クキキキ。」

懐から取り出したビデオカメラで、肉おじゃがその無残な様を撮影する。

 

「おーっほっほっほ。こりゃいい画撮れてますよ!生のこの……水しぶき感覚が、いいじゃないですか!

 

…さきの宣言ですがね、いまこの場で現実にさせてもらいますよ!

今日から私がトライアンフの…いや、郊外の覇者です!

石油なんて古臭い化石燃料から脱却した、新たなる王国のねえ!!」

 

「ォ…愚かな!貴様らなんぞに期待していたとは…俺の目はとんだ節穴だったようだな!!」

 

うずくまるポンペイは、渾身の力で立ち上がり、決死の覚悟で突きを放つ。

 

死に体とは思えないほどの鋭い刃が肉おじゃの腹を貫き、そのままNKTIDKSGに振りかぶられる。

 

しかし、刃は振り下ろされなかった。

 

「う・・ああ・・ガハッ!!?」

 

いざ振り下ろさんとしたその瞬間にポンペイの右腕に黒く禍々しいエーテル結晶が発生し、剣を取り落とす。エーテリアス化の前触れである。

 

寸前のところで命を拾ったNKTIDKSGは、失禁しながら後退る。

 

「な、なんで動けるんですか!?いままでの薬と昨日ルシウスの野郎に渡した薬の量が合わされば、この一息で致死量を超えるはず!

クソッ!なら直接この座薬でダメ押ししてやりますよ、そりゃあ!」

 

NKTIDKSGが懐から怪しげなアンプルを取り出す。

 

 

 

 

しかし次の瞬間、アンプルがNKTIDKSGの指ごと弾け飛んだ。一拍遅れて銃声が響く。

 

 

 

「__ああ、だろうな。途中で気づいたよ。

てめえが親分の酒に妙な粉を混ぜてることも、『親分のご機嫌とりに使え』って俺に渡してきた酒にも同じモンが入ってたこともなァ!」

 

背後から聞こえる軽薄そうな声は、NKTIDKSGにとって聞きなれたものだった。その狙撃の腕前も良く知っていた。

 

「ル、ルシウスゥ!!!?なんでお前がこんな所に!!!わ、私の指…指がぁああ!」

 

「汚ぇ裏ビデオで尻を掘られるのも、裏工作の責任を擦り付けられんのも許容してやらぁ!

それがチームの、親分のためになるなら、俺ァどんな酷ェことだってやれる!

けどなァ、それだけは(・・・・・)駄目だろう!」

 

「途中で薬をすり替えやがったのかァァァァ!この粗チンがァァァァ!!」

 

狙撃を警戒してポンペイの身体を盾に震えるNKTIDKSGだが、その背後からエンジン音が鳴り響く。

 

 

「追いつきましたわ!」

「おい、大将!ありゃあ…!」

「ポンペイのオッサン!?」

 

「カリュドーンの子か!?聞け!

こいつらは裏切り者だ!親分を害し、シンダーグローレイクを潰そうとしてやがる!!!」

 

狙撃ポイントから離れ、銃口をNKTIDKSGに向けたままルシウスが躍り出る。

 

「つまり一連の黒幕はこいつか…!」

 

「ぐぬぬぬぬ。」

悪事を白日の下に晒されたNKTIDKSGは歯ぎしりしながら次の一手を考える。

 

ポンペイは虫の息だが、このままポンペイがエーテリアス化すれば真っ先に殺されるのは自分である。

 

片指が無くともバイクの運転はなんとかなるだろうが、目の前の走り屋たちは手負いの自分が易々と逃げられるほど甘くはない。

 

「糞、せめて肉おじゃが死んでなければ…。ん?」

しかし、NKTIDKSGは気づいた。

 

腹から血を流し、眼も虚ろなな肉おじゃが自分に向かって口をパクパクとさせていた。

 

「ね…ネクデカ…さ…寒い…。た…助け…。」

 

 

 

「あははは…あはああああああっはっはっはっはっ!いいですね、ええ!!天はまだ私を見捨てていませんよそりゃあ!!」

 

NKTIDKSGは目にもとまらぬ早さでゴキブリのようにはい回り、懐に隠していたありったけの座薬を肉おじゃの尻にぶち込んだ。

 

「う・・あぁ。ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

たちまち烏帽子をかぶった肉おじゃの頭部にコアが発生し、エーテリアス化する。

 

咄嗟のことであっけにとられる走り屋たちを尻目に、NKTIDKSGはバイクのエンジンを吹かせて全速力で逃げ出した。

 

「てっめえ!!ポンペイのオッサンにあきたらず、従ってた手下まで!!!?

どこまで腐ってやがる!!!!」

 

髪が逆立ちそうなほど怒りを滾らせるシーザーを、リンが諌める。

 

「シーザー‼気持ちは分かるけど落ち着いて!今は追いかけてる場合じゃない!!!」

 

その言葉に、シーザーのハンドルに伸びかけた手が止まる。

 

「畜生…畜生!!」

奥歯をかみ砕きそうな勢いで歯ぎしりしながらも、シーザーはポンペイに駆け寄る。

 

エーテリアス化して暴れまわる肉おじゃを、三浦・ライト・ルーシーで足止める。

 

 

「オッサン!オッサン!!」

 

シーザーが必死にポンペイに呼びかけるが、反応はない。

 

「酷い浸蝕反応だ!このままじゃ.....!」

バイタルで容態を確認したアキラの悲痛な声が、残酷な現実を告げる。

 

 

 

 

「ライトさん!!マウスピース持ってますか!?あるならください!!」

肉おじゃと戦うライトに、木村が背後から声をかける。

 

「ああ!?持ってるが…、どう見ても助からんぞ…!!」

 

ライトが懐から投げ渡したマウスピースを、木村は意識の無いポンペイに咥え入れる。

 

ポンペイの上体を起こし、特に浸蝕の酷い右腕を持ち上げた。

 

「先輩…。お願いします。」

「ん、おかのした。」

 

野獣が邪剣・夜を抜き、息を整えて刀を上段に構える。

 

それはまるで、時代劇の切腹の介錯人のようだった。

 

「おい、待て!!親分に何しやが…「ヌンッ!!」

 

ルシウスが止める間もなく、野獣は上段の構えから真下に刀を振り下ろした。

 

刃の下にあったポンペイの右腕は、野獣の唐竹割りで切り飛ばされて血しぶきを散らす。

 

 

「~~~~~~っ!!!!…ん゛な゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!ああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

麻酔も無しに腕を切断され激痛でのたうち回るポンペイを、切断面から噴き出す血で顔も服も血塗れになりながらもシーザーと木村が必死で押さえつける。

 

「ちょっと刃ァ当たんよォ~。」

そういって、野獣はポンペイの腕の切断面に血塗れの刃を押し当てた。

 

野獣の腕に憑りついた淫夢くんが「ヴォー」と不気味に咆哮をあげると、邪剣・夜の刀身が怪しく輝く。

 

 

 

ポンペイの容態をイアス越しに観測していたアキラは、彼らの狙いに気づいた。

 

「ポンペイさんの体内のエーテル反応が減衰してる…。そうか、邪剣・夜で体内のエーテルの除去を…!」

 

刃によるエーテル捕食と並行して、バイクや車に予め積まれていた止血剤や包帯でシーザーと木村が手早く応急処置を行っていく。

 

治氣(ナオキ)!」

仕上げに木村がポンペイの胸部に手を押し当て、邪剣・夜で喰いきれなかったエーテルを体外に放出させる。

 

ポンペイの六穴からエーテル特有の青紫色の煙のような粒子が放出され、最後の塊が嘔吐と共に吐き出される。

 

力無く倒れるポンペイを、木村とルシウスがピンキーカーに載せた。

 

「…一時的ですが、侵蝕を遅らせました。早く連れ出して下さい!」

「あ、ありがとう!…ありがとう!「いいから早く!!間に合わなくなる前に!!」

感謝と共に木村の手をとるルシウスを、木村は苛立つように急かした。

 

肌の表層にエーテル結晶こそ見られないが、完全に除去はできていないはずだった。それでなくとも、麻酔も輸血も無しに腕を切り落としたのだ。ショック死してもおかしくはなかった。

 

「し、シー…ザー!」

「親分、喋っちゃだめです!」

「し、シン…ダー…ロ…レ…イ…ま、守…。」

「ああ、任せろ。約束だ。

だからそっちも約束しろ。オッサン、死ぬんじゃねえぞ。」

 

シーザーが皆に素早く指示を出す。

「空手部とルシウスはオッサンを連れて早くホロウの外に!!

プロキシ!今すぐパイパーに連絡して、アイアンタスクにありったけの医療機器と医者を詰め込んで向かわせてくれ!出来るだけ最短・最速で合流!!出来るか!?」

 

「うん!案内は任せて!Fairy、手伝って!」

『了解。……アイアンタスク及びピンキーカーのナビゲーションシステム、ハッキング完了。

両車に位置情報を表示させます。』

 

 

電話越しにパイパーのけだるげな声が通る。事態が会場に伝わったのかざわめきが会話ごしにも聞こえてきていた。

「話は聞いたぜい。アイアンタスクを勝手にハッキングしたことに関しちゃ、今回は目ェつぶってやらぁ。

いま、バーニスが待機してた救護班と医療器材をありったけ詰め込んでる。

三馬鹿、あとで落ち合おうぜい。」

 

「オシ!俺様はライトとルーシーに加勢する!勝ってシンダーグローレイクを守るぞ!」

 

 

 

 

 

「おい、木村早くしろ。」

ピンキーカーの後部座席にポンペイを横たわらせた三浦が、車外の木村に声をかける。

 

しかし、木村はピンキーカーに乗る先輩に背を向けてカリュドーンの子に駆け寄る。

 

 

 

「…ライトさんすいません。またサングラス借りていいですか。」

「…答えは出たのか?」

「ええ、覚悟を決めました。もう誰も失わないため戦います。これが、僕の答えです。」

「いい答えだ。」

 

ライトは木村の言葉に満足そうに頷くと、いつかと同じようにサングラスを投げ渡す。

 

深呼吸とともに、木村はサングラスを抱える

 

 

逆立てた髪が降り、木村の内なる暴力性が覚醒する。

 

 

 

 

 

「おい、Mのぉ楽しみはこれからだぞぉ…(超舌っ足らず)」




【TIPS】

肉体覇王ジャルマル

肉体派おじゃる丸がエーテリアス化した姿。
164cm、72kg、29歳で、特に逞しい胸筋は拓也をはるかに越える胸囲120cmを誇る。
上半身に比べて下半身も見劣りしないビルダーの鑑。

個人的にHZMKNPIにはそんな似てないとおもう。
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