迫真エリー都!ホロウレイダーと化した先輩   作:我蔦早瀬

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第五章【星流行らせコラ!GOの奔るが如く】
第33話 たまげるホモは久しからず


昏睡状態だったパールマンが目を覚ましたという一報を受け、リンは邪兎屋・迫真空手部とともにブレイズウッドを訪れていた。

 

妙に似合う工場のおじさんみたいな格好に着替えたパールマンが語るには、自分は一連の事件の黒幕ではないという。

 

「....と、とにかくだ!私は名義上こそヴィジョンのCEOだったが、実際にはお飾りに過ぎんかったのだ!会社の長期的な事業計画はみな、サラのやつが仕切っとった!あの女があれほど危険な橋を渡ることができたのは、治安局のブリンガーが後ろ盾になっていたからなのだ!」

 

「その話本当?嘘だったらあいつらに処理まかせることになるよ?」

 

ゴミを見る眼付きのリンが親指で指した背後には、迫真空手部が控えていた。

 

「おい、ちっとあれ、どうする?」「おぅ、やっちまおうぜ、あれ!」「やっちまうか?」「やっちゃいますか?」「やっちゃいましょうよ!」「そのための右手、右手・・・あと、そのための拳・・・?」「拳・・・?」「拳はやるためにあるでしょ」「金!暴力!SEX!」「金暴力SEXって感じで・・・」

 

「ひっ…ひいいいい!誓う!誓って真実だ!だからあいつらに引き渡すのだけは止めてくれ!お嫁に行けなくなるっ!」

 

 

 

邪兎屋の平社員三人がそれをドン引きしながら眺めているが、一人足りないことにリンは気づいた。

 

「あれ、ニコはいないの?ついに免許永久剥奪くらった?」

「なんですか、ニコさんそんなクレイジードライバーなんですか?」

 

尋問(拷問)がひと段落ついたのか、木村がウエットティッシュで手を拭きながら空になったイチジク浣腸を投げ捨てる。

 

「速度超過+無免許+ナンプレ外しの常習犯だよ。」

「ええ…(ドン引き)。流石にナオキです。」

「うっるさいわね!!?郊外で運び屋相手に事故ったドアホにどうこう言われたくないのよ!!!」

 

ニコの怒声とともに、ブレイズウッドにトラックが乗り入れてきた。木村が追突した件のアイアインタスクである。

 

助手席にニコが、運転席にはパイパーが座っている。

 

「おうおう、時間ぴったりだなあ。本日は猪突猛進をご利用くださり、まことにありがとうだぜい。ほーら降りた降りた~。」

 

そして、後部座席からわらわらと降りてきたのは…。

 

「うわぁ~!ここが郊外なの!?すごいねぇ~お空がくるくる、地面がゆらゆら、空気のにおいでゲーしちゃいそう!」「それは車酔いですよ、蒼角。しばらく私の手を取って休んでいてください。浅羽隊員、貴方は大丈夫ですね?」「と、飛ばしすぎだってぇ....信じられないな、あのドライバー!あ、やばい....アレどこですか、アレ....――おろろろ!」「このような特別な日に、一目を盗んで郊外まで連れ出すとは....我らを謀っているなら、容赦はしないぞ。邪兎屋のニコ。」

 

 

対ホロウ六課。

 

新エリー都の平和の一翼を担う精鋭部隊であり、英雄たち。

 

虚狩り・星見雅を筆頭に、その武勇と人気は天にも轟かんばかりである。

 

そんな彼らが、郊外の大地を踏みしめていた。

 

「嘘ォ…。」「は?虚狩り?ウツロガリ・ナンデ?」「ナオキ デス。」

 

どう考えても一介のホロウレイダーが呼び寄せてよい相手ではない。リンも迫真空手部も口をあんぐりと開ける。

 

「ふふん、驚いた?この私。邪兎屋のC・E・O!ニコ・デマラ様を舐めないでちょうだい!

こいつとは、新人の頃に家宝の刀を騙しとって以来の付き合いなのよ!!」

 

ドヤ顔で過去の悪行を暴露する一般ホロウレイダーに迫真空手部はドン引きするしかなかった。

 

「まったく誇れる過去じゃないんですがそれは…。」

 

 

「あ!三浦だ!やっほー!」

「あ、蒼角ちゃんだゾ?今日は柳さんお出かけゾ?ここのダイナーはすっげえ美味いからオススメゾ。」

そしてそんな驚愕のつながりをよそに、六課の最年少メンバーである鬼族の少女・蒼角とその保護者である副課長・月城柳とにこやかに会話する三浦の姿があった。

 

「いやなんでそんなノリが軽いの!?知り合い!?」

ニコにしてみれば自分の持つツテの中ではパエトーンに並ぶ大物なのだが、どうみても同じく三浦とも旧知の仲のようだ。

 

「前に妹がルミナス・スクエアで迷子になったとき、蒼角ちゃんが見つけてくれたんだゾ。それ以来家族ぐるみで仲良しゾ。」

「ふふふ。蒼角もRMA(ルーミア)ちゃんといるときはお姉さんぶれるのが嬉しそうですから。」

 

どういうことよとニコは迫真空手部の後輩を問い詰めんと振り返るが、彼らも自分と同じく、いやそれ以上に困惑していた。

 

「もうどっからツッコんでいいかこれもうわかんねえな…。」「あったま痛くなってきた…。」

どうやら三浦はがっつり制服姿なのに柳も蒼角も天下の対ホロウ六課だといまのいままで認識していなかったらしい。

 

「いや確かに僕とか割と制服着崩してるし、みんなの制服デザインも結構バラけてるけどさ…。僕らの顔も所属も全く知らないとかそんなことある?

六課を交番のお巡りさん扱いする普通?結構広報の写真とか出回ってるでしょ?」

車酔いがすっかり醒めた浅羽悠真だが、いまは頭痛薬が欲しかった。

 

「いやほんとすいません。うちの先輩、どうしようもない池沼で。悪気はないんです。」

木村は三浦に代わってペコペコと浅羽に頭を下げた。

 

 

三浦も新エリー都の英雄たる星見雅は流石に知っていたようだが、ほか3名は何度も何度もかみ砕いてようやっと「あっ そっかあ」と彼女の同僚だと理解できたようだ。

 

三浦が池沼過ぎたため、その説明が終わるころにはすっかり六課もパールマンへの聞き取りを終えていた。

 

パールマンの証言の真偽を確かめるべく、六課と今後の展望は一致による決着を見た。

そう思えたのだが___。

 

 

「そうだな....先ほど述べたように、ヴィジョン事件の背後についてはもっと踏み込んだ調査がいる。そして....我らが連行すべきは、パールマンだけではない.....」

 

そう告げる星見雅の赤い瞳は、刀を佩いているが如く鋭かった。

 

その視線の先には___。

 

「え?連行するって....私を?」

困惑するリンだが、他の六課のメンツの顔も険しい。星見雅の独断といった雰囲気ではないことは確かだった。

 

「ここで貴方にお会いすることも、我々にとって想定外でした。独立調査チームの責任者様、いえ....プロキシ様、とお呼びすべきでしょうか?」

「ははっ、民間人にしては大したスキルだと思ってたけど.....『副業』で場数を踏んでたんだとしたら、まぁ納得だよね。いや....零号ホロウの方が副業って可能性もあるかな?」

 

納得できかねるニコがリンと六課の間に入る。

 

「ちょっと!こいつはヴィジョンの件とは無関係でしょ?」

 

「パールマンの供述によると、件の不祥事には全体を通して『あるプロキシ』の関与があったとのことでした。工事を引き継いだ白祇重工に起こったことについても、我々の調べで同様にプロキシの介入が判明しています。更には、治安局の証人護送にまつわる飛行船の件。そして郊外...。たしか郊外はこのほど、彼らの伝統にまつわる重要な催事を行ったばかりだそうですね。責任者様が再びこの地に訪れたのは、偶然でしょうか?」

 

「新エリー都は今、極めて稀な時期にある。各役職の要たる方々が一堂に会しているのだ。何が起きた暁には、都市運営の根幹が揺らぐだろう」

 

「もちろん分かってるわよ。だからわざわざあんたを呼んで、黒幕探しを手伝ってもらおうとしたんじゃないの!どうして無関係な人間も巻き込まなきゃいけないワケ!?」

 

「お前が我らに見せたのは、如何様にも形をとる陰謀の断片.....そしてお前の主張する『真相』とは、その可能性の中のいちパターンに過ぎない。都市の潜在的脅威は何であれ徹底的に排除する。それがH.A.N.D.の流儀だ」

 

両者の間にピりついた空気が流れる。

 

意を決したニコの口調は、ゾッとするほど冷たかった。

 

「考えが変わったわ。今回はあんたたちの助けはいらない。帰ってくれる?帰り賃くらいは持つわ。」

 

最後通牒だ、とっとと失せろ。

 

言外にそう滲ませ、いつでも得物を構えられる位置に着く。

 

「月城さん、蒼角ちゃん。俺も妹の恩人に手荒なことはしたくない…。ここは退いてくれないか。」

 

同様に、三浦もリンをかばうように前に出る。その顔は別人のように凛々しかった。

 

背後でビリー・アンビー・猫又・野獣・木村も殺気を滾らせ、臨戦態勢に入る。

 

 

 

 

 

その静寂を破ったのは。

 

「なっ!!?銃撃!?」

 

突如浴びせられる弾幕。

 

しかも、邪兎屋や迫真空手部だけでなく六課も巻き添えにせんとばかりに無遠慮に弾丸は浴びせられた。

 

そしてその鉄火の特に集中する位置にいるのは…。

 

「ひいいいいいいいいい!」

 

「狙いはパールマン!!?」「口封じか!!」「させません!」

 

それぞれの得物や武術で迫りくる弾丸を切り捨て・撃ち落とし・流し・掴み取る。

 

 

「…あまりに無差別でナオキな攻撃。どうやら、六課の罠ってことはなさそうですね。」

「無論。そして、邪兎屋の差し金の線も無いようだ。ニコの財布は鞘ごと錆びついた刀より硬い。このように派手に弾丸を消費するなどありえまい。」

「ったりめーよ!親分がこんなバカスカ撃たせてくれるかってんだ!!」「信頼は嬉しいけど嬉しくなーーーい!!」

 

「馬鹿やってないで対処!いまのは制圧射撃のリズムだな....包囲する気だ!三方向から!」

浅羽が状況判断と同時に高所からの狙撃を警戒する。

 

同時にビリーとニコもそれに倣う。

 

 

直後、統制の取れた武装集団による再度の射撃が襲い掛かる。

 

 

「立地が最悪。逃げ場がないわ。」「このままじゃまずいゾ…。」

アンビーと猫又が迫りくる弾丸を悉く切り伏せ、足元に大量に散らばらせる。

 

 

このままではジリ貧である。

 

リンの額から汗が落ちると同時に、それはやってきた。

 

 

けたたましいクラクション。

 

同時に、フェンスを突き破って突入する大型トラック。

 

運転席には見慣れた小柄なドライバー。

 

 

「へへっ!だよなあ!手前のお膝元で好き勝手やられて、走り屋がだまってるわきゃねえ!!」

 

嬉々として飛び出たビリーが、踊るような華麗な動きで弾幕を避けつつ二丁拳銃から火を吹く。

 

隊列が一瞬乱れたのを見逃さず、トラックの屋根に飛び乗って今度は頭上から弾丸を浴びせる。

 

「いまだ乗れェ!!」「パイパー、車を出して!今がチャンス!」

 

パイパーがアクセルを踏んで、勢いよくその場を離脱する。それと同時に、光るものを窓から投げ渡した。

 

 

「待てっ!!」

 

取り残された六課が後を追おうとするが、再度始まった武装集団の掃討に阻まれる。

 

一方、同じく取り残された迫真空手部はパイパーが投げ渡したものをまじまじと見つめる。

それは、林檎にも成人男性の睾丸にも見える奇妙なキーホルダーのついた鍵だった。

 

同時に、彼らの背後の弾痕で穴だらけになったガレージががたがたと音を立てて開いていく。

 

 

 

「こっこれは…」「ウ…ウソやろ」「こ… こんなことが こ… こんなことが許されていいのか」

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

離脱した邪兎屋とリンは、パイパーが駆るトラックで郊外を土煙をあげて疾走する。

 

「六課とあいつら置いてっちゃったけど大丈夫なの!?」

 

「大丈夫でしょ。あの対ホロウ六課の精鋭よ。あんな程度でやられるようなら英雄呼ばわりされないわ。」

 

「空手部の三馬鹿も殺しても死なななそうだゾ。」

 

「プロキシ先生。今は自分の安全のほうを考えて。」

 

「そういうこった!!店長、舌噛むなよ!!!」

 

そういって、トラックの屋根に邪兎屋は陣取る。

 

周囲をバイクやトラックに乗った武装集団が展開していた。

 

個々の実力ではこちら側に分があるが、数という利では依然として向こうに分がある。

 

「安心しなぁ。ちゃんと『足』は用意してやったからよォ。」

郊外の悪路を物ともせず走りながら、それでもパイパーは不敵に笑う。

 

「あし?」

 

「そうだぜい。プロキシも知ってる、とっびっきりだ。」

 

そういって、パイパーはトラックのバックミラーを動かす。

 

「ほら、来たぜ?」

 

その汚れた鏡の中に、奇妙な噴煙が映る。

 

 

 

 

 

 

「う・・・うそ・・・い・・・いや・・・・」

 

 

 

 

新エリー都で乗り回したら確実に治安官に止められる爆音のマフラー音とミュージックホーン。

 

 

地面を切りつけて疾走するNSDRホイール。

 

 

彼のタイムフィールド家のご令嬢でも「いやーきついっす(素)」と拒否すること必須の醜女のシンメトリー。

 

ニタニタと歯を見せて笑う、この世の終わりみたいな桃色の車体が絶望を振りまいていた。

 

それを視界に入れてしまった哀れな武装集団の何人かは、ショックで車の運転を誤って爆散した。

 

 

「おまたせ。ピンキーカーしかなかったけどいいかな?」「いいゾ^~これ」「ナオキキキキ!」

後部座席に対ホロウ六課を乗せた迫真空手部が、ピンキーカーで爆走していた。

 

「うわーん!もう二度と見たくなかったのに!」「店長、俺の視覚センサーの故障だよな?そうだと言ってくれ!」「ビリー、残念だけど現実よ。」「おえっぷ。夢に出来そうだゾ。」「ひえええ。」

 

 

 

増援というにはあまりに冒涜的なそれを、邪兎屋は直視することができなかった。

 

 

 

 

しかし、一番不幸なのはこんなのに乗らざるを得なかった対ホロウ六課である。

 

「ナギ姉!大変だよ、ハルマサがショックで心肺停止しちゃった!」

「浅羽隊員!起きてください!気をしっかり!」

「柳、電気ショックしてやるといい。悠真ならばきっと帰ってこられる。」

「課長!?やめてくださいよ本当に!?あんなのが車!!?僕は認めませんよ!!」

 

もはやヤケクソ気味に悠真がピンキーカーから身を乗り出して電撃矢を乱射する。

 

感電した武装集団の一人がピンキーカーの進路上に転がり落ちた。

 

しかしその上をピンキーカーが通り過ぎても、車が人体に乗り上げた嫌な衝撃は伝わらなかった。

 

代わりにぴちゃぴちゃと不快な咀嚼音と叫び声がボンネット下から聞こえた気がしたが、皆全力で無視した。

 

「僕は何も聞こえない聞いてない聞こえない聞いてない聞こえない聞いてない聞こえない聞いてない。」「是非も無し。」「うわっナギ姉!どうして耳塞ぐの?」「三浦さん、連れてきていただいているのに大変申し訳ないのですが、この音どうにかなりませんか?蒼角の教育に悪いです。」

 

「あ そっかあ。」「んにゃぴ。NONAのNSDR兄貴のソロアルバム*1ならありますよ。」「もうなんでもいいので早く流してください!」「よし、じゃあオーディオにぶち込んでやるぜ!」

 

軽快なミュージックをバックに次々と武装集団を咀嚼したあげくローション塗れにして路肩に吐き捨てるピンキーカー。その様は後に郊外の悪魔として語り継がれることになった。

 

 

「そこの、木村といったか。ニコたちのトラックにもっと近づいてくれ。私が乗り込む。」

雅がたちあがり、ピンキーカーのドアに足をかける。

 

「で、できますけど、見てくださいよ!囲まれてます!あれじゃあ飛び移るなんてとてもナオキです!」

 

木村が言うように、武装集団の車はパイパーの駆るトラックの四方を囲むように展開していた。

 

「問題ない。寧ろ囲んでくれなければ困る(・・・・・・・・・・・・・)。」「?」

 

 

「皆、露払いは任せたぞ。」「課長、任せてください。」「有給はずんでくださいよ~。」「ボス、がんばって!」

 

無謀としか思えない作戦だが、六課の精鋭たちが太鼓判を押す以上やらないわけにはいかなかった。

 

「今だ!」

 

雅の合図とともに、木村がハンドルを大きく切って幅寄せる。

 

雅は跳んだ。

 

 

 

同時に柳が薙刀から雷撃を・蒼角が刃旗から吹雪を・悠真が矢を放つ。

 

彼らの攻撃で走行を阻害された車両が吹き飛び、宙を舞う。

 

まるで古の武者が舟から舟に飛び移った逸話のように、空中の車を足場にして雅は一気に距離を詰めていく。

 

「はえ~すっごい動き。」「たまげたなあ。」

 

 

丁度そのとき、囲い込みをかけようと突進する武装集団をパイパーが華麗なドライビング・テクニックで振り切ったところだった。

 

 

正面衝突して爆散する車。

 

そして、その噴煙に紛れて放たれる2発のロケットランチャー。

 

懸命に避けるパイパーだが、二発目が運悪く後部タイヤに被弾した。

 

 

大きく横滑りしながら、トラックはホロウに突っ込んでいく。

 

それは、雅がトラックの天井に乗り込むのと同時だった。

 

 

 

*1
2025/4/16に4枚目のソロアルバム『HEARTBREAK』発売したゾ。みんな聴こう(ステマ)




【TIPS】
アリス(淫夢)はジェーン姉貴いるからスルーして、柳姉貴お迎えしましたグレース姉貴がすり抜けました(2凸)。

気持ちいですね(建前)いや気持ちよくはない(本音)。
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